私の父は陽キャな幽霊

悠月かな(ゆづきかな)

文字の大きさ
6 / 7

第六話

しおりを挟む
「お…お待たせ…」

私は、肩で息をしながら玄関のドアを開けた。

「そんなに急がなくても良かったのに。急に来た俺が悪いんだし」

私は、頭をブンブンと振り弦太を見た。
すると、弦太は一瞬眉根を寄せ、手を伸ばすと私の瞼を指でなぞった。

「瞼腫れてる」

私の胸は早鐘を打ち、頬が熱くなっていくのを感じた。

「え!えっと…昨夜、夜更かししたからかな…」

こんなにも動揺する自分に疑問が湧く。
ふと弦太の顔を見ると、彼の頬も薄っすらと赤い。
でも…弦太は手を引こうとはしなかった。
弦太が触れた瞼は更に熱を持ったが、このまま触れていて欲しいと思った。

(そうか…私は弦太の事が好きなんだ…)

突然、頭に降って来た答えが私の胸にストンと落ちる。
私と弦太は暫く見つめ合っていた。
私を見る彼の目は、とても温かい。
どれくらい時間が経っただろうか…
弦太は私の瞼から手を引くと、照れ臭そうに言った。

「結衣…ちょっと歩かないか?」
「うん…良いよ」

私達は肩を並べ、毎朝歩くあの道を歩いた。

「実はさ、俺…不思議な夢を見たんだ」
「夢?」
「うん。結衣のお父さんだって言う人が夢に出て来た」
「え?お父さんが?」

私は、驚いて弦太を見上げた。

「うん。それで、その人は言ったんだ。結衣をお願いしますって」

弦太の言葉に私は思わず足を止めると、バッグからスマホを出し1枚の写真を見せた。
その写真は、私とお父さんの写真。
亡くなる前に撮った写真だった。

「夢に出て来た人って…この人?」

写真を見せると、驚きから弦太の目が大きく見開かれた。

「この人だよ!間違いない!」
「やっぱり…お父さんだ…」

お父さんは、私の前から消えた後に弦太の所に行ったに違いない。

「お父さん…」

私の目から涙が溢れ落ちた。

「お父さん…酷いこと言ってごめんなさい…」

涙が私の頬を伝う。

「結衣…泣くな…」

弦太の声に顔を上げると、再び彼の手が伸びて涙で濡れた頬を拭ってくれた。

「何があったのかは分からないけどさ、お父さんは、結衣のことを大切に思ってるんだよな」

私は、何度も頷いた。
その時、突然後ろから声が聞こえて来た。

「結衣、弦太君」

私達が振り返ると、そこにお父さんが立っていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...