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フレームの変化
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シャイニーが部屋に戻ると、早速フルルが元気に飛び回り始めた。
ーーーコン、コン、コンーーー
すると、続き部屋の扉がノックされフレームの声が聞こえてきた。
「シャイニー、俺だ入るぞ。」
「うん。フレーム、どうぞ。」
ーーーギィーーー
フレームがゆっくりと扉を押し入ってくると、シャイニーはその姿にギョッとした。
「あの…フレーム、一体どうしたの?」
恐る恐るフレームに話しかける。
「え?俺…何か変か?」
「うん…いつもと様子が違うよ。」
シャイニーは、遠慮がちに手鏡を渡した。
フレームがおずおずと鏡を覗くと、そこには見慣れた自分の姿は映っていなかった。
目は釣り上がり、瞳は赤黒くギラギラと光っている。
そして、口元には牙が生えている。
フレームの特徴の一つでも炎のように温かさを含んだ赤い髪は、瞳と同じように赤黒くメラメラと燃えているようだった。
真っ白だった翼は、薄い灰色へと変色している。
「これが…俺?」
フレームは手鏡を握り締めたまま、呆然と立ちすくんでいる。
「シャイニー…俺、一体どうしたんだ?俺の体…おかしくなったのか?シャイニー、助けてくれよ…」
フレームの体は、恐怖からガタガタと震えている。
「シャイニー…シャイニー!」
取り乱し、涙混じりの声でシャイニーの名を叫んだ。
変化したフレームの姿に呆然としていたシャイニーは我に返り、震えているフレームの体を抱き締めた。
「大丈夫。大丈夫だよ、フレーム…落ち着いて。」
シャイニーが抱き締めながらフレームの背中をさすると、震えは徐々に治まり落ち着きを取り戻していった。
すると、フレームの心に反応するように体も少しずつ変化していった。
震えるフレームを抱き締め続けた時間は、恐ろしく長く感じたが、気が付けば彼の体はすっかり元に戻っていた。
「フレーム、もう大丈夫だよ。鏡を見てごらん。」
再びフレームが鏡を覗くと、いつもの自分の姿が映し出されていた。
「良かった…」
フレームは安心し力が抜け、その場にしゃがみ込んでしまった。
「フレーム…大丈夫?気分は悪くない?」
シャイニーは、しゃがみ込みフレームの顔を覗き込んだ。
「あぁ…もう大丈夫だ。ありがとな…」
フレームは力なく笑っている。
「良かった…フレーム…一体何があったの?」
「それが、俺にも分からないんだ。ハーニーの手伝いをしている時に、俺の胸の中の炎が少しずつ大きくなる感じがしたんだ…その炎が、突然ブワッと大きくなった事までは覚えてる。でも、その後の記憶が全くない…気が付いたら自分の部屋にいた。暫くボーッとしてたんだけど、シャイニーの部屋から物音が聞こえてきたから声を掛けたんだ…」
「そうだったんだ…」
シャイニーは、フレームに掛ける言葉が見つからなかった。
ーーーコン、コン、コンーーー
「シャイニー、フレーム戻ってる?」
扉の外からハーニーの声が聞こえてきた。
「ハーニーだ!」
シャイニーが扉を開けようと歩き出した時、フレームが後ろから腕をグッと引っ張った。
「シャイニー、お願いだ。俺の姿が変わった事はハーニーに…いや、誰にも言わないでくれ。」
フレームの瞳は不安気に揺れている。
「分かったよ。誰にも言わない。」
シャイニーは笑顔で頷くと、腕を握る手をソッとほどき扉へ向かった。
「ハーニー、僕もフレームも戻ってるよ。」
扉を開けると、ハーニーが心配そうに立っていた。
「ハーニー、中に入って。」
部屋に入りフレームの姿を見つけたハーニーは、大きな瞳を見開いた。
「フレーム!一体どうしたの?探したのよ。急に黙ったと思ったら消えちゃって…慌てて探したけど、どこにもいないし…もしかしたらと思って部屋に来てみたのよ。」
「ハーニー、ごめん。俺、なんだか疲れちゃってさ~部屋に戻って寝てたんだよ。」
フレームは、わざとおどけて見せた。
「フレーム…本当?」
ハーニーは、ジーっとフレームの瞳を見つめた。
「本当だよ。な!シャイニー。」
「う、うん。本当だよ。」
「ふ~ん…」
ハーニーは2人を探るように、交互に見つめている。
「フレーム、、ヒューはどこに行ったの?」
「ヒューなら俺の髪の中さ。ヒュー、出てこいよ。」
ヒューは、フレームの髪の中から少しだけ姿を現すと、すぐに髪の中に潜ってしまった。
するとフルルがやって来て、髪の中からヒューを引っ張り出した。
ヒューはなぜかガタガタと震えていて、髪の中へ戻ろうとしたが、フルルが戻らないように抱きついて離さなかった。
「ヒュー、いらっしゃい。」
ハーニーが優しく声を掛けると、ヒューが恐る恐る近付いて来た。
「さぁ、もう大丈夫よ。」
ハーニーが手を広げると、ヒューが手の平に乗った。
「ヒュー、酷く怯えているけど…何があったの?」
ヒューは、フルフルと体を左右にふっている。
「教えてくれないのね…」
ハーニーは溜め息を吐くと、ヒューを手の平から下ろしハープを弾き始めた。
その音色はとても美しく、そして温かく怯えていたヒューやフレーム、シャイニーやフルフルの心まで癒していった。
演奏を終えると、ヒューの心はすっかり落ち着きを取り戻しているようだった。
「ヒューは大丈夫ね。フレームも本当に疲れただけなのね?」
「そう、疲れただけ。もう大丈夫だから。ハーニーは相変わらず心配性だな~」
フレームはニカッと笑って見せた。
その笑顔は、いつもと変わらないいつもの笑顔であった。
「そう…分かった。明日は、ちゃんと手伝ってね。」
ハーニーは、そう言うと振り返る事もなく部屋を出ていった。
ーーーパタンーーー
シャイニーとフレームは、閉まった扉を言葉なく暫く見つめていた。
「さてと…そろそろ夕食の時間だな。シャイニー、食堂へ行こうぜ。」
「うん…」
2人は、ハーニーの事については触れる事なく、食堂へと向かう為に部屋からフッと消えた。
ハーニーは、シャイニーの部屋の前で考え込んでいた。
(フレーム…一体何があったの?ヒューも怯えていたし…シャイニーも何か知っているようだったわ。)
ハーニーは暫く考えていたが、意を決して顔を上げた。
(サビィ様に相談しよう。)
その瞬間、目の前に8枚の翼が描かれた扉が現れた。
ハーニーがノックをしようと拳を上げた時、扉が開きサビィが現れた。
「ハーニー、待っていた。お入り。」
おずおずと中に入るとラフィがソファに座っていた。
「ラフィ様…」
「やぁ、ハーニー。君が来る事は分かっていたよ。ここに座って。」
ラフィは自分の隣に掛けるよう促した。
ハーニーが座ると、目の前にマレンジュリティーがフッと現れた。
「ハーニー、思い詰めた顔をしているが…フレームの事だね。」
サビィが、ラフィとハーニーの目の前に座りながら言った。
「はい。実は…フレームが私の手伝い中に、突然黙り込みました。何度呼び掛けても返事もせず一点を見つめるばかりで…それまでは、私と他愛のないお喋りをしていました。」
「ハーニー、それ以外にフレームに変わった様子はなかったかい?」
「ええ…実は…」
ハーニーは、ラフィの質問に答えるべきかどうか悩んだ。
「ハーニー、大丈夫だから話してごらん。」
ラフィが優しく言葉を掛けると、意を決したように話し始めた。
「フレームが一点を見つめていた時に、姿が少しずつ変わったように見えました。」
「それは本当か?」
それまで優雅にマレンジュリティーを飲んでいたサビィが、目を見開き身を乗り出した。
「はい…ただ…私の見間違いかもしれませんが…翼が少し灰色になり、髪の色も温かい赤色から赤黒く変わっていってるように見えました。そして、突然フレームが消えたんです。私は、すぐに探しましたがどこにもいなくて…」
「フレームは。見つかったのか?」
サビィの問い掛けにハーニーは頷き更に続けた。
「はい。部屋に戻っているかもしれないと思い、シャイニーとフレームの部屋を訪ねると、2人とも部屋にいました。その時には、いつものフレームの姿でした。ただ…」
ハーニーは、そこまで話すと口をつぐみ考え込むように、自分の手元を見ている。
「ハーニー、話してごらん。心配はいらないよ。」
ラフィは、優しい笑顔でハーニーの手をソッと握った。
「僕達は、フレームの変化を薄々感じてはいたんだ。彼も大きな可能性を秘めた天使である事は間違いない。今は、心と力のバランスが上手く取れないだけ。サビィも僕もフレームをサポートしていくから、安心して話してごらん。」
ハーニーはラフィの言葉に頷くと、ゆっくりと慎重に話し始めた。
「恐らく…シャイニーは何か知っています。フレームは、疲れたから…と言っていましたが、明らかに2人の様子がおかしくて…そして、フレームを気に入った音符のヒューが酷く怯えていました。」
「なるほど…話してくれて感謝する。」
「サビィ…ハーニーには、調理室での出来事を話した方が良いんじゃないかな?」
「調理室で何かあったんですか?」
ハーニーが顔を上げ、サビィとラフィを交互に見た。
「その話しは、私からする事にしよう。」
サビィは優雅に立ち上がると、パチンと指を鳴らした。
すると、目の前に並んでいたマレンジュリのティーセットがフッと消えた。
「しかし、その前に夕食を取る事にしよう。」
サビィが再び指を鳴らすと、目の前に夕食がズラリと並んだ。
「ハーニー、この夕食はファンクだけではなく、私やラフィ、シャイニーやストラとマトラで作ったのだ。」
「え!この夕食をサビィ様やラフィ様、シャイニー達が作ったのですか?」
ハーニーは驚き目を大きく見開いた。
「おや、ハーニーの目がまた大きくなった。今にも瞳が落ちそうだ。」
サビィがクスクス笑うと、ハーニーは恥ずかしさから顔が真っ赤になっていた。
「サビィ、からかったらいけないよ。ハーニー、ごめんね。サビィは、からかう事が趣味みたいなものだから気にしないで。」
「ラフィ…今のその言葉をそっくり君に返そう。」
サビィは、ムッとした表情で言った。
「おやおや、僕がからかわなければ誰が君をからかうんだい?」
ラフィは、茶目っ気たっぷりの笑顔でサビィを見た。
「誰も私をからかう必要などない。ラフィ…全く君という天使は…」
半ば諦めたような表情で、サビィは溜め息を吐いた。
そんな2人のやり取りを呆然と見ていたハーニーは、突然笑い出した。
「ククク…ご、ごめんなさい…し、失礼な事は…アハハ…十分承知しているのですが…アハハ…お、お二人のやり取りが、お、おかしくて…もう我慢できない!キャ~ハハハ!」
ハーニーは、肩を揺すりながら暫く笑い続けた。
そんな彼女を見た、サビィとラフィもお互い目を合わせ笑い始めた。
3人の笑い声が天使長室に響き渡り、先程までの重苦しい空気は消えていた。
ハーニーは笑いの波が引くと、我に返り慌てて頭を下げた。
「サビィ様、ラフィ様、大変失礼いたしました。」
「謝る必要はないよ。君のおかげで重苦しかった空気が変わったからね。」
「私も、これほどにも笑ったのは久し振りだ。」
2人の言葉に頭を上げると、サビィもラフィも温かい笑顔でハーニーを見ていた。
その温かい笑顔に、ハーニーの心にも温かさが広がっていくのであった。
夕食後、調理室での火事についてサビィがハーニーに話した。
「フレームは、調理室での火事に関係しているのでしょうか?」
ハーニーは、マレンジュリティーから優しく立ち昇る湯気を見つめながら言った。
「現時点では分からない。ただ…ストラとフレームの様子が共におかしかった事が気になる。ラフィ、ストラは火に魅入られた…と言っていたが…」
「そうだよ。ストラは火に魅入られたんだ。彼の目を見た時、情景が頭に浮かんだ。ストラは火が美しいと感じ、その火からフェニックスが現れるかもしれない…そう思った。その瞬間、ストラの心に何かが入った。その何かが掴めずにいるんだ。」
「現時点では、答えは出ない…と?」
「まぁ…今後共、フレームの様子は良く見ていた方が良いね。シャイニーが何かを知っているようだけど…恐らく、聞いても今は答えないだろうね。」
「何か大きな事に発展しないと良いのですが…」
黙って、2人の会話を聞いていたハーニーがポツリと呟いた。
「ハーニー、確かにフレームは危うさはあるが優しい子だ。その事は、君が一番理解しているのではないか?シャイニーもフレームも、素晴らしい天使に成長すると私は信じている。」
「ハーニー、僕もシャイニーとフレームは素晴らしい天使に成長していくと信じてるよ。2人の秘めた力と可能性は無限だからね。」
ハーニーはサビィとラフィの優しく温かい言葉に、顔を上げ力強く頷いた。
「はい。私も2人の秘めた力を感じています。これからも2人を見守り、支えていきます。」
「ハーニーなら、そう言うと思ったよ。それじゃ、僕はそろそろ部屋に戻るとするよ。」
ラフィはソファから立ち上がり、ウ~ンと伸びをした。
「あ!私も失礼します。すっかり長居してしまいました。」
ハーニーも立ち上がると頭を下げた。
「ハーニー、君も話せて良かったと思っている。今後も話しを聞かせてもらいたい。それから、今回の火事の件については口外しないでもらいたい。皆が心配するだろうし、調査を続けていく上で知られない方が都合が良いのだ。」
「はい。分かりました。では、失礼します。
ハーニーは、サビィの言葉に頷き頭を下げるとフッと消えた。
「それじゃ、僕も戻るね。」
ラフィは、ヒラヒラと手を振りながら天使長室から消えていった。
「ラフィは、あの軽さの裏で一体何を考えているのか…」
サビィの呟きは、ラフィには届かず風に吹かれた煙のように消えていき、サビィは溜め息を吐くのであった。
ーーーコン、コン、コンーーー
すると、続き部屋の扉がノックされフレームの声が聞こえてきた。
「シャイニー、俺だ入るぞ。」
「うん。フレーム、どうぞ。」
ーーーギィーーー
フレームがゆっくりと扉を押し入ってくると、シャイニーはその姿にギョッとした。
「あの…フレーム、一体どうしたの?」
恐る恐るフレームに話しかける。
「え?俺…何か変か?」
「うん…いつもと様子が違うよ。」
シャイニーは、遠慮がちに手鏡を渡した。
フレームがおずおずと鏡を覗くと、そこには見慣れた自分の姿は映っていなかった。
目は釣り上がり、瞳は赤黒くギラギラと光っている。
そして、口元には牙が生えている。
フレームの特徴の一つでも炎のように温かさを含んだ赤い髪は、瞳と同じように赤黒くメラメラと燃えているようだった。
真っ白だった翼は、薄い灰色へと変色している。
「これが…俺?」
フレームは手鏡を握り締めたまま、呆然と立ちすくんでいる。
「シャイニー…俺、一体どうしたんだ?俺の体…おかしくなったのか?シャイニー、助けてくれよ…」
フレームの体は、恐怖からガタガタと震えている。
「シャイニー…シャイニー!」
取り乱し、涙混じりの声でシャイニーの名を叫んだ。
変化したフレームの姿に呆然としていたシャイニーは我に返り、震えているフレームの体を抱き締めた。
「大丈夫。大丈夫だよ、フレーム…落ち着いて。」
シャイニーが抱き締めながらフレームの背中をさすると、震えは徐々に治まり落ち着きを取り戻していった。
すると、フレームの心に反応するように体も少しずつ変化していった。
震えるフレームを抱き締め続けた時間は、恐ろしく長く感じたが、気が付けば彼の体はすっかり元に戻っていた。
「フレーム、もう大丈夫だよ。鏡を見てごらん。」
再びフレームが鏡を覗くと、いつもの自分の姿が映し出されていた。
「良かった…」
フレームは安心し力が抜け、その場にしゃがみ込んでしまった。
「フレーム…大丈夫?気分は悪くない?」
シャイニーは、しゃがみ込みフレームの顔を覗き込んだ。
「あぁ…もう大丈夫だ。ありがとな…」
フレームは力なく笑っている。
「良かった…フレーム…一体何があったの?」
「それが、俺にも分からないんだ。ハーニーの手伝いをしている時に、俺の胸の中の炎が少しずつ大きくなる感じがしたんだ…その炎が、突然ブワッと大きくなった事までは覚えてる。でも、その後の記憶が全くない…気が付いたら自分の部屋にいた。暫くボーッとしてたんだけど、シャイニーの部屋から物音が聞こえてきたから声を掛けたんだ…」
「そうだったんだ…」
シャイニーは、フレームに掛ける言葉が見つからなかった。
ーーーコン、コン、コンーーー
「シャイニー、フレーム戻ってる?」
扉の外からハーニーの声が聞こえてきた。
「ハーニーだ!」
シャイニーが扉を開けようと歩き出した時、フレームが後ろから腕をグッと引っ張った。
「シャイニー、お願いだ。俺の姿が変わった事はハーニーに…いや、誰にも言わないでくれ。」
フレームの瞳は不安気に揺れている。
「分かったよ。誰にも言わない。」
シャイニーは笑顔で頷くと、腕を握る手をソッとほどき扉へ向かった。
「ハーニー、僕もフレームも戻ってるよ。」
扉を開けると、ハーニーが心配そうに立っていた。
「ハーニー、中に入って。」
部屋に入りフレームの姿を見つけたハーニーは、大きな瞳を見開いた。
「フレーム!一体どうしたの?探したのよ。急に黙ったと思ったら消えちゃって…慌てて探したけど、どこにもいないし…もしかしたらと思って部屋に来てみたのよ。」
「ハーニー、ごめん。俺、なんだか疲れちゃってさ~部屋に戻って寝てたんだよ。」
フレームは、わざとおどけて見せた。
「フレーム…本当?」
ハーニーは、ジーっとフレームの瞳を見つめた。
「本当だよ。な!シャイニー。」
「う、うん。本当だよ。」
「ふ~ん…」
ハーニーは2人を探るように、交互に見つめている。
「フレーム、、ヒューはどこに行ったの?」
「ヒューなら俺の髪の中さ。ヒュー、出てこいよ。」
ヒューは、フレームの髪の中から少しだけ姿を現すと、すぐに髪の中に潜ってしまった。
するとフルルがやって来て、髪の中からヒューを引っ張り出した。
ヒューはなぜかガタガタと震えていて、髪の中へ戻ろうとしたが、フルルが戻らないように抱きついて離さなかった。
「ヒュー、いらっしゃい。」
ハーニーが優しく声を掛けると、ヒューが恐る恐る近付いて来た。
「さぁ、もう大丈夫よ。」
ハーニーが手を広げると、ヒューが手の平に乗った。
「ヒュー、酷く怯えているけど…何があったの?」
ヒューは、フルフルと体を左右にふっている。
「教えてくれないのね…」
ハーニーは溜め息を吐くと、ヒューを手の平から下ろしハープを弾き始めた。
その音色はとても美しく、そして温かく怯えていたヒューやフレーム、シャイニーやフルフルの心まで癒していった。
演奏を終えると、ヒューの心はすっかり落ち着きを取り戻しているようだった。
「ヒューは大丈夫ね。フレームも本当に疲れただけなのね?」
「そう、疲れただけ。もう大丈夫だから。ハーニーは相変わらず心配性だな~」
フレームはニカッと笑って見せた。
その笑顔は、いつもと変わらないいつもの笑顔であった。
「そう…分かった。明日は、ちゃんと手伝ってね。」
ハーニーは、そう言うと振り返る事もなく部屋を出ていった。
ーーーパタンーーー
シャイニーとフレームは、閉まった扉を言葉なく暫く見つめていた。
「さてと…そろそろ夕食の時間だな。シャイニー、食堂へ行こうぜ。」
「うん…」
2人は、ハーニーの事については触れる事なく、食堂へと向かう為に部屋からフッと消えた。
ハーニーは、シャイニーの部屋の前で考え込んでいた。
(フレーム…一体何があったの?ヒューも怯えていたし…シャイニーも何か知っているようだったわ。)
ハーニーは暫く考えていたが、意を決して顔を上げた。
(サビィ様に相談しよう。)
その瞬間、目の前に8枚の翼が描かれた扉が現れた。
ハーニーがノックをしようと拳を上げた時、扉が開きサビィが現れた。
「ハーニー、待っていた。お入り。」
おずおずと中に入るとラフィがソファに座っていた。
「ラフィ様…」
「やぁ、ハーニー。君が来る事は分かっていたよ。ここに座って。」
ラフィは自分の隣に掛けるよう促した。
ハーニーが座ると、目の前にマレンジュリティーがフッと現れた。
「ハーニー、思い詰めた顔をしているが…フレームの事だね。」
サビィが、ラフィとハーニーの目の前に座りながら言った。
「はい。実は…フレームが私の手伝い中に、突然黙り込みました。何度呼び掛けても返事もせず一点を見つめるばかりで…それまでは、私と他愛のないお喋りをしていました。」
「ハーニー、それ以外にフレームに変わった様子はなかったかい?」
「ええ…実は…」
ハーニーは、ラフィの質問に答えるべきかどうか悩んだ。
「ハーニー、大丈夫だから話してごらん。」
ラフィが優しく言葉を掛けると、意を決したように話し始めた。
「フレームが一点を見つめていた時に、姿が少しずつ変わったように見えました。」
「それは本当か?」
それまで優雅にマレンジュリティーを飲んでいたサビィが、目を見開き身を乗り出した。
「はい…ただ…私の見間違いかもしれませんが…翼が少し灰色になり、髪の色も温かい赤色から赤黒く変わっていってるように見えました。そして、突然フレームが消えたんです。私は、すぐに探しましたがどこにもいなくて…」
「フレームは。見つかったのか?」
サビィの問い掛けにハーニーは頷き更に続けた。
「はい。部屋に戻っているかもしれないと思い、シャイニーとフレームの部屋を訪ねると、2人とも部屋にいました。その時には、いつものフレームの姿でした。ただ…」
ハーニーは、そこまで話すと口をつぐみ考え込むように、自分の手元を見ている。
「ハーニー、話してごらん。心配はいらないよ。」
ラフィは、優しい笑顔でハーニーの手をソッと握った。
「僕達は、フレームの変化を薄々感じてはいたんだ。彼も大きな可能性を秘めた天使である事は間違いない。今は、心と力のバランスが上手く取れないだけ。サビィも僕もフレームをサポートしていくから、安心して話してごらん。」
ハーニーはラフィの言葉に頷くと、ゆっくりと慎重に話し始めた。
「恐らく…シャイニーは何か知っています。フレームは、疲れたから…と言っていましたが、明らかに2人の様子がおかしくて…そして、フレームを気に入った音符のヒューが酷く怯えていました。」
「なるほど…話してくれて感謝する。」
「サビィ…ハーニーには、調理室での出来事を話した方が良いんじゃないかな?」
「調理室で何かあったんですか?」
ハーニーが顔を上げ、サビィとラフィを交互に見た。
「その話しは、私からする事にしよう。」
サビィは優雅に立ち上がると、パチンと指を鳴らした。
すると、目の前に並んでいたマレンジュリのティーセットがフッと消えた。
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サビィが再び指を鳴らすと、目の前に夕食がズラリと並んだ。
「ハーニー、この夕食はファンクだけではなく、私やラフィ、シャイニーやストラとマトラで作ったのだ。」
「え!この夕食をサビィ様やラフィ様、シャイニー達が作ったのですか?」
ハーニーは驚き目を大きく見開いた。
「おや、ハーニーの目がまた大きくなった。今にも瞳が落ちそうだ。」
サビィがクスクス笑うと、ハーニーは恥ずかしさから顔が真っ赤になっていた。
「サビィ、からかったらいけないよ。ハーニー、ごめんね。サビィは、からかう事が趣味みたいなものだから気にしないで。」
「ラフィ…今のその言葉をそっくり君に返そう。」
サビィは、ムッとした表情で言った。
「おやおや、僕がからかわなければ誰が君をからかうんだい?」
ラフィは、茶目っ気たっぷりの笑顔でサビィを見た。
「誰も私をからかう必要などない。ラフィ…全く君という天使は…」
半ば諦めたような表情で、サビィは溜め息を吐いた。
そんな2人のやり取りを呆然と見ていたハーニーは、突然笑い出した。
「ククク…ご、ごめんなさい…し、失礼な事は…アハハ…十分承知しているのですが…アハハ…お、お二人のやり取りが、お、おかしくて…もう我慢できない!キャ~ハハハ!」
ハーニーは、肩を揺すりながら暫く笑い続けた。
そんな彼女を見た、サビィとラフィもお互い目を合わせ笑い始めた。
3人の笑い声が天使長室に響き渡り、先程までの重苦しい空気は消えていた。
ハーニーは笑いの波が引くと、我に返り慌てて頭を下げた。
「サビィ様、ラフィ様、大変失礼いたしました。」
「謝る必要はないよ。君のおかげで重苦しかった空気が変わったからね。」
「私も、これほどにも笑ったのは久し振りだ。」
2人の言葉に頭を上げると、サビィもラフィも温かい笑顔でハーニーを見ていた。
その温かい笑顔に、ハーニーの心にも温かさが広がっていくのであった。
夕食後、調理室での火事についてサビィがハーニーに話した。
「フレームは、調理室での火事に関係しているのでしょうか?」
ハーニーは、マレンジュリティーから優しく立ち昇る湯気を見つめながら言った。
「現時点では分からない。ただ…ストラとフレームの様子が共におかしかった事が気になる。ラフィ、ストラは火に魅入られた…と言っていたが…」
「そうだよ。ストラは火に魅入られたんだ。彼の目を見た時、情景が頭に浮かんだ。ストラは火が美しいと感じ、その火からフェニックスが現れるかもしれない…そう思った。その瞬間、ストラの心に何かが入った。その何かが掴めずにいるんだ。」
「現時点では、答えは出ない…と?」
「まぁ…今後共、フレームの様子は良く見ていた方が良いね。シャイニーが何かを知っているようだけど…恐らく、聞いても今は答えないだろうね。」
「何か大きな事に発展しないと良いのですが…」
黙って、2人の会話を聞いていたハーニーがポツリと呟いた。
「ハーニー、確かにフレームは危うさはあるが優しい子だ。その事は、君が一番理解しているのではないか?シャイニーもフレームも、素晴らしい天使に成長すると私は信じている。」
「ハーニー、僕もシャイニーとフレームは素晴らしい天使に成長していくと信じてるよ。2人の秘めた力と可能性は無限だからね。」
ハーニーはサビィとラフィの優しく温かい言葉に、顔を上げ力強く頷いた。
「はい。私も2人の秘めた力を感じています。これからも2人を見守り、支えていきます。」
「ハーニーなら、そう言うと思ったよ。それじゃ、僕はそろそろ部屋に戻るとするよ。」
ラフィはソファから立ち上がり、ウ~ンと伸びをした。
「あ!私も失礼します。すっかり長居してしまいました。」
ハーニーも立ち上がると頭を下げた。
「ハーニー、君も話せて良かったと思っている。今後も話しを聞かせてもらいたい。それから、今回の火事の件については口外しないでもらいたい。皆が心配するだろうし、調査を続けていく上で知られない方が都合が良いのだ。」
「はい。分かりました。では、失礼します。
ハーニーは、サビィの言葉に頷き頭を下げるとフッと消えた。
「それじゃ、僕も戻るね。」
ラフィは、ヒラヒラと手を振りながら天使長室から消えていった。
「ラフィは、あの軽さの裏で一体何を考えているのか…」
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家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
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はじめまして、私の知らない婚約者様
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この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
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