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人間の苦しみと不穏な影
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琴は更に明るく元気なり、学校の友達とも進んで遊ぶようになっていった。
ある日の夕方、琴は友達と公園に遊びに来ていた。
シャイニーは、楽しそうに遊ぶ琴を見守りながら公園を見渡していた。
「この公園、初めてこの町に来た時に寄ったな~あれ…あの人達は…」
木陰のベンチに座り話している、見覚えのある2人の母親に目が止まった。
「あの時に見かけたお母さん達だ…」
シャイニーは仲良さそうな母親達が、友達を悪く言っていた時の事を思い出していた。
「今日は、悪く言われていたお母さんはいないんだ…」
シャイニーは、夢中で話している母親達の側に行った。
「今日の夕ご飯、何にしようかな~」
「毎日の献立考えるのって、ホントに大変よね。」
「そうそう。何食べたいって聞いても何でも良いって言うしね。」
(この人達の本当の気持ちが知りたいな…)
シャイニーは、他愛のない話しをしている母親達の心の中を覗いてみる事にした。
(お母さん達ごめんね。ちょっと心の声を聞かせてくれる?)
目を閉じ意識を集中して、母親達の心の声に耳を澄ましてみる。
(どうして、私ばかりこんな思いしなければならないの!たっちゃんママは、あんなに幸せそうなのに!)
(私も、たっちゃんママみたいに幸せになりたい…どうして、あの人ばかり何もかも持ってるの?不公平よ!)
シャイニーは、2人の心の声を聞くと目を開けた。
(そっか…この人達は苦しいんだ…だから、幸せそうなたっちゃんママさんの事が羨ましいんだね…僕に何かできる事はないかな…)
他愛のない会話を続ける2人の母親を見つめながら、シャイニーは考えるのだった。
その日の夜、シャイニーは眠っている琴の頭を優しく撫でながら、穏やかな寝顔を見つめていた。
「良く寝てる。琴ちゃん、ちょっと出掛けて来るね。朝には帰って来るから待っててね。」
シャイニーは、窓から外に出ると空に舞い上がり公園へと向かった。
「えっと…あのお母さん達の家はどこかな?何も考えないで出て来ちゃったよ。」
夜空を漂いながらキョロキョロと、公園の周辺の住宅やアパートを見回していると、シャイニーの指からラフィから渡された指輪がスルリと抜け、宙に舞い上がりキラリと光ると一方向に飛んで行った。
「あ!待って!」
慌てて指輪を追って行くと、指輪はアパートの2階の一室のベランダでユラユラと揺れている。
「もしかして…家を教えてくれたの?」
ベランダに舞い降りると、指輪はシャイニーの手の平にポトリと落ちてきた。
指輪を握り締め、そのまま部屋に入り奥に進むと、木製のドアプレートに「はやと」と書かれた扉にぶつかった。
ソッとその部屋に入って行くと、ベッドでスヤスヤ眠る男の子と、絵本を片手にベッドにもたれかかるように眠る母親が目に入った。
「公園にいたお母さんだ…あれ?涙…」
疲れて寝てしまった母親のまつ毛が涙で濡れている。
シャイニーは、その目元を優しく拭うと、母親の頭に手を置き目を閉じた。
「ちょっとごめんね。僕にあなたの悲しみを見せてくれる?」
すると母親と父親だと思われる男性が、リビングで口論をしている様子が頭に浮かんできた。
「パパ!ちゃんと私の話しを聞いてよ!」
母親が声を荒げると、食事を取っていた父親が箸をテーブルに叩き付けジロリと睨んだ。
「俺は疲れてるんだよ!毎日、毎日、帰って来れば同じような話しを聞かせられる俺の身にもなれ!」
父親は言い放ち席を立った。
「パパ、まだ話しが途中よ!」
「付き合ってられない。風呂入って寝る。」
ムッとした表情で振り返る事なく、父親はリビングを出て行ってしまった。
「どうして、いつもこうなの…ただ、話しを聞いて欲しいだけなのに…」
母親は、そのまま崩れるように座り込み泣き始めた。
「本当に、たっちゃんママが羨ましい…」
「ママ…大丈夫?」
ミニカーで遊んでいたハヤトが、心配して顔を覗き込んだ。
「ハヤト、ごめんね…大丈夫よ。」
「嘘だよママ…泣いてるもん。大丈夫じゃないでしょ。ママ、いい子いい子…」
ハヤトは母親の頭を優しく撫でた。
「僕が泣いてると、ママはいつもこうしてくれるよね。いい子いい子…」
ハヤトは何度も優しく頭を撫でている。
「ハヤト…ありがとう。」
母親はギュッとハヤトを抱き締めた。
「僕はママの味方だよ。」
「ハヤト…」
ハヤトを抱き締めたまま、母親は暫く泣き続けたのだった。
(そうだったんだ…あまたも苦しかったんだね。)
「何とかしてあげたいな…」 、
シャイニーが思わず呟くと、握り締めていた指輪から声が聞こえてきた。
「シャイニー、聞こえるかい?」
「ラフィ先生?」
シャイニーは、固く握り締めていた手を広げ指輪を見た、
「うん。ラフィだよ。君が、そのお母さんを助けたい気持ち分かるよ。でも君は、琴ちゃんの事で手がいっぱいなんだ。今のシャイニーでは、そのお母さんを助ける余裕はないと思うよ。」
「ラフィ先生…僕が、このお母さんを助けたいと思っている事がどうして分かったんですか?」
「君の様子をずっと見ているからね。シャイニーが考えている事も分かってるよ。でも、今君がすべき事は、琴ちゃんを守り元気にする事なんじゃないかな?」
「はい…そう思います。でも、ハヤト君のお母さんも元気になってもらいたいです。最初は、どうして友達を悪く言うのか分からなかったけど…今苦しみを知って…」
「僕が元気にしてあげたい…そう思ったんだね?」
ラフィは、シャイニーの言葉を引き継ぎ言った。
「はい…」
「シャイニーの気持ちは良く分かるよ。でもね、君にはまだ難しい。」
「そっか。今の僕では無理なんですね…」
シャイニーはガックリと肩を落とした。
「シャイニー、良く聞いて。今の君には一度に複数の人達を守る事はまだできないんだ。でもね、君がこれから経験を積み重ね、成長する事でそれができるようになるんだ。」
「そうなんですか?」
シャイニーは、顔を上げ希望に満ちた瞳で指輪を見つめた。
「うん。だから、今は一つづつ経験を積み重ねる事が大切だよ。経験は必ず身になり宝となるからね。ハヤト君のお母さんについては、他の天使に任せるようにするから大丈夫だよ。」
「分かりました。実は、もう1人気になるお母さんがいるんです。」
「友達を悪く言っていた、もう1人のお母さんだね。」
「はい。あのお母さんも何か苦しみを抱えているかもしれない…そう思うんです。」
「分かったよ。そのお母さんについても僕に任せて。君は琴ちゃんの事に集中するんだよ。」
「はい…もし、僕が経験を積み成長すれば、もっとたくさんの人を守ったり助けたりする事ができますか?」
「もちろんだよ。君の可能性は無限なんだ。君がなりたい天使の姿を思い描き願い、経験を積み重ねる事で、その願いは必ず叶い理想の自分になれるんだ。例え時間が掛かったとしてもね。」
「理想の自分…そっか…分かりました。今回、お母さん達を守れない事は残念だけど、今すべき事に集中します。あのお母さん達をお願いします。」
シャイニーは、指輪にぺこりと頭を下げた。
「うん。分かったよ。僕に任せて。シャイニー、人は幸せになる為に生まれてきているんだ。例え苦しい事がやって来たとしても、その先には必ず幸せが待っているんだよ。そのサポートをする事も、僕達天使の大切な仕事であり役目なんだ。」
「はい。僕は…たくさんの人達が幸せになれるように、守りサポートできる天使になりたいです。」
「君なら必ずなれるさ。さぁ、琴ちゃんが待ってるよ。あとは僕に任せるんだ。」
「はい。ラフィ先生お願いします。」
シャイニーは、再びぺこりと頭を下げると指輪をはめた。
そして窓から外に出て振り返り、翼を羽ばたかせながら暫く部屋を眺めた。
「今はまだ無理だけど…もっともっとたくさんの人達を守りサポートできる天使になるね。ハヤト君のお母さん…今は守れなくてごめんなさい。」
シャイニーは、名残惜しそうに何度も振り返りながら、琴が待つ家へと戻っていった。
そんなシャイニーを闇に紛れ見ている者がいた。
「やっと見つけた…私とした事が、サビィやラフィの守りにこんなにも惑わされるとは…待っていろシャイニー。必ずお前をこの手で潰す!」
ガーリオンの手下イガレスが、小さくなっていくシャイニーの後ろ姿を見送りながら不気味にニヤリと笑った。
ある日の夕方、琴は友達と公園に遊びに来ていた。
シャイニーは、楽しそうに遊ぶ琴を見守りながら公園を見渡していた。
「この公園、初めてこの町に来た時に寄ったな~あれ…あの人達は…」
木陰のベンチに座り話している、見覚えのある2人の母親に目が止まった。
「あの時に見かけたお母さん達だ…」
シャイニーは仲良さそうな母親達が、友達を悪く言っていた時の事を思い出していた。
「今日は、悪く言われていたお母さんはいないんだ…」
シャイニーは、夢中で話している母親達の側に行った。
「今日の夕ご飯、何にしようかな~」
「毎日の献立考えるのって、ホントに大変よね。」
「そうそう。何食べたいって聞いても何でも良いって言うしね。」
(この人達の本当の気持ちが知りたいな…)
シャイニーは、他愛のない話しをしている母親達の心の中を覗いてみる事にした。
(お母さん達ごめんね。ちょっと心の声を聞かせてくれる?)
目を閉じ意識を集中して、母親達の心の声に耳を澄ましてみる。
(どうして、私ばかりこんな思いしなければならないの!たっちゃんママは、あんなに幸せそうなのに!)
(私も、たっちゃんママみたいに幸せになりたい…どうして、あの人ばかり何もかも持ってるの?不公平よ!)
シャイニーは、2人の心の声を聞くと目を開けた。
(そっか…この人達は苦しいんだ…だから、幸せそうなたっちゃんママさんの事が羨ましいんだね…僕に何かできる事はないかな…)
他愛のない会話を続ける2人の母親を見つめながら、シャイニーは考えるのだった。
その日の夜、シャイニーは眠っている琴の頭を優しく撫でながら、穏やかな寝顔を見つめていた。
「良く寝てる。琴ちゃん、ちょっと出掛けて来るね。朝には帰って来るから待っててね。」
シャイニーは、窓から外に出ると空に舞い上がり公園へと向かった。
「えっと…あのお母さん達の家はどこかな?何も考えないで出て来ちゃったよ。」
夜空を漂いながらキョロキョロと、公園の周辺の住宅やアパートを見回していると、シャイニーの指からラフィから渡された指輪がスルリと抜け、宙に舞い上がりキラリと光ると一方向に飛んで行った。
「あ!待って!」
慌てて指輪を追って行くと、指輪はアパートの2階の一室のベランダでユラユラと揺れている。
「もしかして…家を教えてくれたの?」
ベランダに舞い降りると、指輪はシャイニーの手の平にポトリと落ちてきた。
指輪を握り締め、そのまま部屋に入り奥に進むと、木製のドアプレートに「はやと」と書かれた扉にぶつかった。
ソッとその部屋に入って行くと、ベッドでスヤスヤ眠る男の子と、絵本を片手にベッドにもたれかかるように眠る母親が目に入った。
「公園にいたお母さんだ…あれ?涙…」
疲れて寝てしまった母親のまつ毛が涙で濡れている。
シャイニーは、その目元を優しく拭うと、母親の頭に手を置き目を閉じた。
「ちょっとごめんね。僕にあなたの悲しみを見せてくれる?」
すると母親と父親だと思われる男性が、リビングで口論をしている様子が頭に浮かんできた。
「パパ!ちゃんと私の話しを聞いてよ!」
母親が声を荒げると、食事を取っていた父親が箸をテーブルに叩き付けジロリと睨んだ。
「俺は疲れてるんだよ!毎日、毎日、帰って来れば同じような話しを聞かせられる俺の身にもなれ!」
父親は言い放ち席を立った。
「パパ、まだ話しが途中よ!」
「付き合ってられない。風呂入って寝る。」
ムッとした表情で振り返る事なく、父親はリビングを出て行ってしまった。
「どうして、いつもこうなの…ただ、話しを聞いて欲しいだけなのに…」
母親は、そのまま崩れるように座り込み泣き始めた。
「本当に、たっちゃんママが羨ましい…」
「ママ…大丈夫?」
ミニカーで遊んでいたハヤトが、心配して顔を覗き込んだ。
「ハヤト、ごめんね…大丈夫よ。」
「嘘だよママ…泣いてるもん。大丈夫じゃないでしょ。ママ、いい子いい子…」
ハヤトは母親の頭を優しく撫でた。
「僕が泣いてると、ママはいつもこうしてくれるよね。いい子いい子…」
ハヤトは何度も優しく頭を撫でている。
「ハヤト…ありがとう。」
母親はギュッとハヤトを抱き締めた。
「僕はママの味方だよ。」
「ハヤト…」
ハヤトを抱き締めたまま、母親は暫く泣き続けたのだった。
(そうだったんだ…あまたも苦しかったんだね。)
「何とかしてあげたいな…」 、
シャイニーが思わず呟くと、握り締めていた指輪から声が聞こえてきた。
「シャイニー、聞こえるかい?」
「ラフィ先生?」
シャイニーは、固く握り締めていた手を広げ指輪を見た、
「うん。ラフィだよ。君が、そのお母さんを助けたい気持ち分かるよ。でも君は、琴ちゃんの事で手がいっぱいなんだ。今のシャイニーでは、そのお母さんを助ける余裕はないと思うよ。」
「ラフィ先生…僕が、このお母さんを助けたいと思っている事がどうして分かったんですか?」
「君の様子をずっと見ているからね。シャイニーが考えている事も分かってるよ。でも、今君がすべき事は、琴ちゃんを守り元気にする事なんじゃないかな?」
「はい…そう思います。でも、ハヤト君のお母さんも元気になってもらいたいです。最初は、どうして友達を悪く言うのか分からなかったけど…今苦しみを知って…」
「僕が元気にしてあげたい…そう思ったんだね?」
ラフィは、シャイニーの言葉を引き継ぎ言った。
「はい…」
「シャイニーの気持ちは良く分かるよ。でもね、君にはまだ難しい。」
「そっか。今の僕では無理なんですね…」
シャイニーはガックリと肩を落とした。
「シャイニー、良く聞いて。今の君には一度に複数の人達を守る事はまだできないんだ。でもね、君がこれから経験を積み重ね、成長する事でそれができるようになるんだ。」
「そうなんですか?」
シャイニーは、顔を上げ希望に満ちた瞳で指輪を見つめた。
「うん。だから、今は一つづつ経験を積み重ねる事が大切だよ。経験は必ず身になり宝となるからね。ハヤト君のお母さんについては、他の天使に任せるようにするから大丈夫だよ。」
「分かりました。実は、もう1人気になるお母さんがいるんです。」
「友達を悪く言っていた、もう1人のお母さんだね。」
「はい。あのお母さんも何か苦しみを抱えているかもしれない…そう思うんです。」
「分かったよ。そのお母さんについても僕に任せて。君は琴ちゃんの事に集中するんだよ。」
「はい…もし、僕が経験を積み成長すれば、もっとたくさんの人を守ったり助けたりする事ができますか?」
「もちろんだよ。君の可能性は無限なんだ。君がなりたい天使の姿を思い描き願い、経験を積み重ねる事で、その願いは必ず叶い理想の自分になれるんだ。例え時間が掛かったとしてもね。」
「理想の自分…そっか…分かりました。今回、お母さん達を守れない事は残念だけど、今すべき事に集中します。あのお母さん達をお願いします。」
シャイニーは、指輪にぺこりと頭を下げた。
「うん。分かったよ。僕に任せて。シャイニー、人は幸せになる為に生まれてきているんだ。例え苦しい事がやって来たとしても、その先には必ず幸せが待っているんだよ。そのサポートをする事も、僕達天使の大切な仕事であり役目なんだ。」
「はい。僕は…たくさんの人達が幸せになれるように、守りサポートできる天使になりたいです。」
「君なら必ずなれるさ。さぁ、琴ちゃんが待ってるよ。あとは僕に任せるんだ。」
「はい。ラフィ先生お願いします。」
シャイニーは、再びぺこりと頭を下げると指輪をはめた。
そして窓から外に出て振り返り、翼を羽ばたかせながら暫く部屋を眺めた。
「今はまだ無理だけど…もっともっとたくさんの人達を守りサポートできる天使になるね。ハヤト君のお母さん…今は守れなくてごめんなさい。」
シャイニーは、名残惜しそうに何度も振り返りながら、琴が待つ家へと戻っていった。
そんなシャイニーを闇に紛れ見ている者がいた。
「やっと見つけた…私とした事が、サビィやラフィの守りにこんなにも惑わされるとは…待っていろシャイニー。必ずお前をこの手で潰す!」
ガーリオンの手下イガレスが、小さくなっていくシャイニーの後ろ姿を見送りながら不気味にニヤリと笑った。
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