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幻惑
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夕食時、レイチェルが食堂に降りていくと、皿を並べていたバラムがびくりとした。
「バラム、さっきは」
話しかけようとすると、バラムは慌ててキッチンに戻って行ってしまった。バアルがやってきて尋ねる。
「どうした?」
「……なんでもない」
レイチェルはそう言って、自分の席に腰かけた。バラムが活けたのだろうか、テーブルに飾られた愛らしい花が、なんだか色あせて見えた。
「絵は飾った?」
バアルに問われ、レイチェルは花から彼に視線を移す。
「あなたがバラムに持ってこさせたの?」
一体どういうことだろう。単なる善意?
「ああ。後で飾るのを手伝う」
「自分でやるからいいわ」
「ついでだ。贄をもらわなきゃならないし」
どんなついでなのだ。そう思いながら、レイチェルはため息をついた。まだ泣けてないの。そう言うのも、なんだかばかばかしい気がした。
「ちなみに、あの絵、どんなふうに見える?」
「え? 女の人が、鏡を見てる絵でしょう?」
バアルはそう、と言って、グラスをとった。
その日の夕飯は、野菜炒めだった。バラムと一緒に収穫した野菜。おいしいはずなのに、心が沈んでいたせいか、美味に感じられなかった。夕飯を終え、食堂を去る前、バラムに声をかけようとしたが、ずっと目をそらされていたため、できなかった。
自室に戻り、椅子に座ってぼうっとしていると、きい、と扉が開く音がした。
そちらに目をやると、さっと黒い影が動いた。
「あ」
レイチェルは椅子から立ち上がり、それを追う。影は素早く階段を下りて
いく。
「待って!」
慌ててそれを追い、階段を駆け降りようとしたレイチェルは、勢い余ってつんのめった。
「!」
落ちる! そう思った瞬間、下から腕が伸びてきて抱きとめられる。
「っ」
「何してるんだ」
バアルの赤い瞳がこちらを見あげていた。
「すぐ落ちるな、君は」
「離して、犬がいたのよ」
レイチェルがもがくと、バアルが声を荒げた。
「レイチェル!」
びくりとすると、彼はじっとレイチェルの顔を覗き込んだ。
「この家には、犬なんかいない」
「嘘よ、だって」
「落ち着け。座って」
深い、美しい声で言われると、逆らえなくなった。レイチェルが段差に腰かけると、バアルが隣に座る。
「初めて犬を見たのはいつ?」
「ここに来た夜に……私がここに座ってたら、近づいてきて」
「そう」
バアルはうなずいて、ぼん、と音を立てて変化した。
「ブラック!」
目の前に現れた黒い犬に、レイチェルは声を上げた。のち、目を瞬く。
「って、なんで、あなたが」
バアルが元の姿に戻る。
「『ブラック』は僕だ」
レイチェルはのどをひきつらせた。
「嘘」
「嘘じゃない」
信じがたかったが、確かに、バアルの黒い髪と赤い瞳は、ブラックのイメージと符合する。
「だましたの? ひどい!」
バアルは眉をしかめた。
「別にだまそうとは思ってなかった。君を安心させようと思ったんだ。人間は犬が好きなんだろう?」
「好きだけど、でも、あなただって知ってたら」
だっこしたりとか、顔を舐められたりだとか……思い出すと顔から火がでそうになる。あまつさえ一緒に寝ようなんて言ったのだ、自分は。真っ赤になったレイチェルに、バアルが言う。
「気にしなくていい。君は犬相手だと思ってたんだから」
「そういう問題!?」
レイチェルは上目遣いでバアルをにらみ、
「なんで今更正体をばらしたの。私を馬鹿にするため?」
「君がいもしないブラックを探しているうちに、よくないものを引き寄せたからだよ」
バアルはそう言って、階段の下を見る。何か、黒いものがうごめいていた。
レイチェルは息を飲んでバアルの腕をつかむ。
「あれ、なに?」
「死の香りがする」
「死の、香り?」
「君の不安があれを呼んだ。無理もない。いきなりこんなところに連れてこられたんだ」
そう、不安だった。どんなに楽しくても、不安は心の奥にひそんでいたのだ……。
「これをつけてれば寄ってこない」
バアルはそう言って、「ソロモンの指輪」を差し出した。レイチェルは一瞬、受け取るのを躊躇する。
「でもこれは、危険な指輪なんでしょう」
「魔除けにもなるんだ。心の正しい人なら」
悪魔に心が正しいといわれても微妙な気分だったが、レイチェルはうなずいた。
「指を出して」
そう言われ、レイチェルは左手を差し出した。バアルはレイチェルの手をすくいあげ、すっ、と指輪がはめる。指輪がはまったのが薬指だと気づいて、レイチェルの?茲が赤くなる。
──意味なんかない、絶対!
右手にすればよかった。そうしたら、動揺せずにすんだのに。
バアルはレイチェルを部屋まで送っていき、戸口で手を差し出した。
「絵を」
「え? くれるんじゃないの?」
「いいから」
レイチェルは唇をとがらせ、絵をバアルに渡した。彼は絵をこちらに向け、「よく見ろ」と言う。よく見ろと言われても、どう見たって、女の人が鏡に向かっている普通の絵だ。いや、違う。
「!」
絵の輪郭をじっとみていたら、骸骨が浮かび上がった。
「この絵に惹かれた人間は短命で死ぬという言い伝えがある」
「そんな物騒なものをなぜ玄関先に!?」
「僕は悪魔だぞ」
ああ、そうだった。バアルもバラムも、元々物騒な存在なのだ。
「今日は早く寝たほうがいい。あとでバラムに果実酒をもってこさせるから」
「でも」
レイチェルは言いよどんだ。
「バラムは来たがらないと思うわ。私、あの子を脅かしてしまったから」
「たとえそうだとしても、僕の命令には逆らわない」
ずばりと言った彼に、顔を引きつらせる。さすが悪魔、心の機微なんか気にしないようだ。
「ああそう……」
「じゃあ、おやすみ」
絵をもって去ろうとするバアルに、レイチェルは声をかけた。
「あの」
振り向いた彼に、「ありがとう」と言うと、「礼より涙を頼む」と返ってきた。
「所詮悪魔よね」
レイチェルは髪をとかしながら、ぶつぶつ言った。結局涙がほしいだけなのだ、あの悪魔は。でも、レイチェルを不安がらせたほうが、泣かせることができたはずなのに、どうしてそうしなかったのだろう。彼もまた、正しい心の持ち主だから?
レイチェルはソロモンの指輪をじっと見つめた。大事なもののはずなのに、貸してくれた。本当は、優しいんだろうか。
まさか、彼は悪魔だ。そんなことをぐるぐる考えていたら、コンコン、とノックの音がした。
扉を開けると、バラムが立っていた。つぶらな瞳でレイチェルを見上げ、果実酒を差し出す。
「ありがとう」
お盆をもって言うと、バラムがぺこりと頭を下げて去ろうとした。
「待って」
レイチェルは慌ててバラムを呼び止める。
「ちょっとだけ待っていてくれない? すぐ飲むから。また盃を取りにくるの大変でしょう?」
バラムはこくりとうなずいて、とことこと部屋に入ってきた。レイチェルはバラムを抱き上げた。彼はびくりとしたが、抵抗はしない。そのままバラムをベッドに座らせ、隣に腰かけた。
果実酒を一口飲む。爽やかな甘みが舌に広がった。
「美味しい。なんの果実かしら。ブドウじゃないわね、似てるけど」
口当たりがよくて、ごくごく飲んでしまう。空になったグラスをみつめていたら、なんだか、頭がぼうっとしてきた。バラムが腕を引く。
「ん? なあに?」
にこにこ笑うレイチェルを、困ったように見ている。
「とっても美味しいわね。もっとないの?」
ふるふる首を振るバラムを、じーっと見る。こぐまは困ったように首を傾げ、レイチェルを見あげた。
「かわいいっ」
思い切り抱きしめると、ばたばたと手足を動かした。
「今日は、ごめんね」
頭をなでると、バラムが動きを止める。
「私、あなたのこと、だいすきよ」
レイチェルはそう言って、そのままベッドに倒れこんだ。
「バラム、さっきは」
話しかけようとすると、バラムは慌ててキッチンに戻って行ってしまった。バアルがやってきて尋ねる。
「どうした?」
「……なんでもない」
レイチェルはそう言って、自分の席に腰かけた。バラムが活けたのだろうか、テーブルに飾られた愛らしい花が、なんだか色あせて見えた。
「絵は飾った?」
バアルに問われ、レイチェルは花から彼に視線を移す。
「あなたがバラムに持ってこさせたの?」
一体どういうことだろう。単なる善意?
「ああ。後で飾るのを手伝う」
「自分でやるからいいわ」
「ついでだ。贄をもらわなきゃならないし」
どんなついでなのだ。そう思いながら、レイチェルはため息をついた。まだ泣けてないの。そう言うのも、なんだかばかばかしい気がした。
「ちなみに、あの絵、どんなふうに見える?」
「え? 女の人が、鏡を見てる絵でしょう?」
バアルはそう、と言って、グラスをとった。
その日の夕飯は、野菜炒めだった。バラムと一緒に収穫した野菜。おいしいはずなのに、心が沈んでいたせいか、美味に感じられなかった。夕飯を終え、食堂を去る前、バラムに声をかけようとしたが、ずっと目をそらされていたため、できなかった。
自室に戻り、椅子に座ってぼうっとしていると、きい、と扉が開く音がした。
そちらに目をやると、さっと黒い影が動いた。
「あ」
レイチェルは椅子から立ち上がり、それを追う。影は素早く階段を下りて
いく。
「待って!」
慌ててそれを追い、階段を駆け降りようとしたレイチェルは、勢い余ってつんのめった。
「!」
落ちる! そう思った瞬間、下から腕が伸びてきて抱きとめられる。
「っ」
「何してるんだ」
バアルの赤い瞳がこちらを見あげていた。
「すぐ落ちるな、君は」
「離して、犬がいたのよ」
レイチェルがもがくと、バアルが声を荒げた。
「レイチェル!」
びくりとすると、彼はじっとレイチェルの顔を覗き込んだ。
「この家には、犬なんかいない」
「嘘よ、だって」
「落ち着け。座って」
深い、美しい声で言われると、逆らえなくなった。レイチェルが段差に腰かけると、バアルが隣に座る。
「初めて犬を見たのはいつ?」
「ここに来た夜に……私がここに座ってたら、近づいてきて」
「そう」
バアルはうなずいて、ぼん、と音を立てて変化した。
「ブラック!」
目の前に現れた黒い犬に、レイチェルは声を上げた。のち、目を瞬く。
「って、なんで、あなたが」
バアルが元の姿に戻る。
「『ブラック』は僕だ」
レイチェルはのどをひきつらせた。
「嘘」
「嘘じゃない」
信じがたかったが、確かに、バアルの黒い髪と赤い瞳は、ブラックのイメージと符合する。
「だましたの? ひどい!」
バアルは眉をしかめた。
「別にだまそうとは思ってなかった。君を安心させようと思ったんだ。人間は犬が好きなんだろう?」
「好きだけど、でも、あなただって知ってたら」
だっこしたりとか、顔を舐められたりだとか……思い出すと顔から火がでそうになる。あまつさえ一緒に寝ようなんて言ったのだ、自分は。真っ赤になったレイチェルに、バアルが言う。
「気にしなくていい。君は犬相手だと思ってたんだから」
「そういう問題!?」
レイチェルは上目遣いでバアルをにらみ、
「なんで今更正体をばらしたの。私を馬鹿にするため?」
「君がいもしないブラックを探しているうちに、よくないものを引き寄せたからだよ」
バアルはそう言って、階段の下を見る。何か、黒いものがうごめいていた。
レイチェルは息を飲んでバアルの腕をつかむ。
「あれ、なに?」
「死の香りがする」
「死の、香り?」
「君の不安があれを呼んだ。無理もない。いきなりこんなところに連れてこられたんだ」
そう、不安だった。どんなに楽しくても、不安は心の奥にひそんでいたのだ……。
「これをつけてれば寄ってこない」
バアルはそう言って、「ソロモンの指輪」を差し出した。レイチェルは一瞬、受け取るのを躊躇する。
「でもこれは、危険な指輪なんでしょう」
「魔除けにもなるんだ。心の正しい人なら」
悪魔に心が正しいといわれても微妙な気分だったが、レイチェルはうなずいた。
「指を出して」
そう言われ、レイチェルは左手を差し出した。バアルはレイチェルの手をすくいあげ、すっ、と指輪がはめる。指輪がはまったのが薬指だと気づいて、レイチェルの?茲が赤くなる。
──意味なんかない、絶対!
右手にすればよかった。そうしたら、動揺せずにすんだのに。
バアルはレイチェルを部屋まで送っていき、戸口で手を差し出した。
「絵を」
「え? くれるんじゃないの?」
「いいから」
レイチェルは唇をとがらせ、絵をバアルに渡した。彼は絵をこちらに向け、「よく見ろ」と言う。よく見ろと言われても、どう見たって、女の人が鏡に向かっている普通の絵だ。いや、違う。
「!」
絵の輪郭をじっとみていたら、骸骨が浮かび上がった。
「この絵に惹かれた人間は短命で死ぬという言い伝えがある」
「そんな物騒なものをなぜ玄関先に!?」
「僕は悪魔だぞ」
ああ、そうだった。バアルもバラムも、元々物騒な存在なのだ。
「今日は早く寝たほうがいい。あとでバラムに果実酒をもってこさせるから」
「でも」
レイチェルは言いよどんだ。
「バラムは来たがらないと思うわ。私、あの子を脅かしてしまったから」
「たとえそうだとしても、僕の命令には逆らわない」
ずばりと言った彼に、顔を引きつらせる。さすが悪魔、心の機微なんか気にしないようだ。
「ああそう……」
「じゃあ、おやすみ」
絵をもって去ろうとするバアルに、レイチェルは声をかけた。
「あの」
振り向いた彼に、「ありがとう」と言うと、「礼より涙を頼む」と返ってきた。
「所詮悪魔よね」
レイチェルは髪をとかしながら、ぶつぶつ言った。結局涙がほしいだけなのだ、あの悪魔は。でも、レイチェルを不安がらせたほうが、泣かせることができたはずなのに、どうしてそうしなかったのだろう。彼もまた、正しい心の持ち主だから?
レイチェルはソロモンの指輪をじっと見つめた。大事なもののはずなのに、貸してくれた。本当は、優しいんだろうか。
まさか、彼は悪魔だ。そんなことをぐるぐる考えていたら、コンコン、とノックの音がした。
扉を開けると、バラムが立っていた。つぶらな瞳でレイチェルを見上げ、果実酒を差し出す。
「ありがとう」
お盆をもって言うと、バラムがぺこりと頭を下げて去ろうとした。
「待って」
レイチェルは慌ててバラムを呼び止める。
「ちょっとだけ待っていてくれない? すぐ飲むから。また盃を取りにくるの大変でしょう?」
バラムはこくりとうなずいて、とことこと部屋に入ってきた。レイチェルはバラムを抱き上げた。彼はびくりとしたが、抵抗はしない。そのままバラムをベッドに座らせ、隣に腰かけた。
果実酒を一口飲む。爽やかな甘みが舌に広がった。
「美味しい。なんの果実かしら。ブドウじゃないわね、似てるけど」
口当たりがよくて、ごくごく飲んでしまう。空になったグラスをみつめていたら、なんだか、頭がぼうっとしてきた。バラムが腕を引く。
「ん? なあに?」
にこにこ笑うレイチェルを、困ったように見ている。
「とっても美味しいわね。もっとないの?」
ふるふる首を振るバラムを、じーっと見る。こぐまは困ったように首を傾げ、レイチェルを見あげた。
「かわいいっ」
思い切り抱きしめると、ばたばたと手足を動かした。
「今日は、ごめんね」
頭をなでると、バラムが動きを止める。
「私、あなたのこと、だいすきよ」
レイチェルはそう言って、そのままベッドに倒れこんだ。
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