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別離
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バアルは、暗闇をただよっていた。意識が浮上しかけたと思ったら、再び沈む。生まれたばかりの時のことを思い出した。ここは、混沌に似ている。自分は今、曖昧な存在なのだ、と思った。
──バアル。
呼び声に、瞳を開いた。暗闇の中、ソロモンがこちらを見つめている。最期に見た、老いた容貌ではない。若い時の、精悍な姿だ。なぜ、ソロモンがここに? ああ、幻覚か。もしくは夢だろうか。
「レイチェルが目覚めたぞ」
「そうか」
バアルが相槌をうつと、ソロモンは目を細めた。
「彼女は賢い。あんな姿でいても、私が誰だかを突き止めた」
「レイチェルは愚かだ。両親の仇を取るために死のうとした。そんなことしても無駄なのに」
「愚かだと思うのに、彼女を助けたのか? 指輪を彼女につけさせた」
「笑えるだろう。悪魔なのに、人を助けるなんて」
「おかしくはない。おまえは彼女に、恋をしたんだろう」
──恋? 悪魔が人間に? くすみのない金髪、新緑のようなグリーン・アイズ。すぐ泣いて、精神が安定しない、哀れなレイチェル・キーズ。
──バアル。
その声に、バアルは顔を上げた。
「レイチェル?」
もう一度、彼女が自分を呼ぶ声がした。暗闇を照らす、光が見える。ソロモンがすっ、と光の方角を指差す。
「行きなさい、バアル」
「行って、どうしたらいい」
今まで、ソロモンを蘇らせるために生きてきたのに。もう、バアルがすべきことは何もない。
「おまえがしたいようにしたらいい。なににも縛られる必要はない」
おまえは自由だ。その言葉に背中を押されるように、バアルは光に向かって歩き始めた。
◆
「──バアル!」
眩しさに目を細めた瞬間、何か暖かくて柔らかいものが抱きついてきた。ふわりと靡いた金の髪。肩に滲んだ涙の感触。潤んだグリーン・アイズがこちらを見上げている。
「会いたかった」
バアルはそっとレイチェルの?茲を撫でた。にじんでいる涙を、指先でぬぐいとる。
「泣くな」
「いつもは、泣けっていうくせに」
レイチェルは泣きながら笑った。その顔をじっと見ていたら、くい、とズボンの裾を引っ張られる。
バラムが顔を赤らめ、ちょいちょい、と魔法陣を指差していた。
「ああ、そうだな」
バアルはそう言って、レイチェルに告げた。
「レイチェル、君を向こうに帰す」
彼女は戸惑い気味にバアルを見た。
「え……でも、帰る方法は分からないんでしょう?」
首を振ったバアルに、レイチェルは目を見開いた。
「うそ、ついたの?」
あの時バアルは、彼女の話を聞き流した。いや、聞き流しているふりをした。涙がなければ召喚ができない。利己的な考えに縛られていたのだ。もっと早く、彼女を元の世界に帰してやるべきだったのに。真実など知らずに、平和に生きていくべきだったのに。自分のような悪魔とは、もう関わるべきではない。
「君、言ってただろう。バベルの塔が、向こうの世界と繋がってるんじゃないか、って」
「あそこから、帰れるの?」
「ああ、悪魔なら問題なく行き来できる。人間は……どうだかわからない」
だが試してみる価値はある。バアルの言葉に、レイチェルは頷いた。
「バラム、おまえはここで待っていろ」
バアルの言葉に、バラムはふる、と首を振った。身振り手振りで、ついていく、と主張する。
「バラム」
レイチェルはしゃがみこんで、バラムと視線を合わせた。その手を握り、
「今までありがとう。あなたに会えて、本当によかった」
バラムはつぶらな瞳でレイチェルを見つめて、うつむいた。うるうる、と膜が張った瞳から、ぽた、と涙が落ちる。レイチェルはあわてた。
「泣かないで」
「君の泣き虫が移ったんだろう」
バアルはそう言って、バラムを見下ろす。
「仮にも悪魔だろう。泣くんじゃない」
バラムはゴシゴシ涙をぬぐい、すん、と鼻をならす。そうして、レイチェルにくまの帽子を差し出した。
「バラム……これはあなたの大切なものでしょう? もらえないわ」
「何があるかわからない。もらっておけ」
バアルの言葉に、バラムは激しく頷いている。レイチェルは帽子を受け取り、ありがとう、と微笑んだ。
涙をこらえ、ぶんぶん手を振るバラムに見送られ、レイチェルとバアルは玄関を出た。
◇
レイチェルは、自分を抱き抱えて飛ぶバアルをちら、と見る。艶のある黒髪、ルビーのような赤い瞳。ぼんやり見とれていたら、その瞳がこちらを向いたので、慌ててそらす。
「どうした」
「あ、あの……ソロモンのことは、よかったの? どこかへ行ってしまったけど……」
バアルはふ、と瞳を緩める。
「あれは、ソロモンじゃない。紛いものだ」
「え……」
「だから君が正体を暴いたら、消えてしまっただろ。君の世話をするためのヒトガタだ。僕は、ソロモン以外の人間とはあまり関わりがないから、彼の人格を手本にした」
「どうして女の子の姿だったの?」
その問いに、バアルは口ごもった。
「バアル?」
「……君の世話をするのに、男だとまずいだろう」
本当にそうだろうか。バアルは、ああいう女の子がタイプだったりして……。悶々と悩んでいたら、バアルが怪訝そうにこちらを見た。
「レイチェル?」
「ええと、ルイスは……どうなったの?」
「君は知らなくていい」
沈黙。
「まさか、殺……」
「死んではいない。だが死んだほうがマシな目にはあってるかもしれないな」
それってどんな目──? 怯えた顔になったレイチェルに、バアルは言う。
「出会った時と同じような顔をしてる」
僕が怖いか、レイチェル。尋ねられ、レイチェルは口ごもった。
「……あなたは、悪魔なのよね」
「他の何に見える」
尖った耳、蝙蝠のような翼、作り物のような美しい顔立ち。彼は、レイチェルとは違う種族。違う世界に住むもの。バビロンの悪魔。優しさを感じることはできた。だけど確かに、このひとには冷たい部分もあるのだ。
「……怖いわ。あなたが悪魔じゃなくても、誰かを殺すなんていうひとは、私には理解できない」
バアルは何も答えなかった。
しばらく上昇していくと、雲の向こうに、バベルの塔が見えてきた。天辺は霞みがかって見えない。もし、この向こうにレイチェルの住む世界があったのなら。
もうすぐ、お別れなのだ。そう思いながら、彼の袖をそっと掴んだ。
巨大な巻貝を縦に置いたような、バベルの塔。バアルとレイチェルは、先日買い物に行ったあたりを超え、上へ上へと飛んでいた。視界の端に、ジズの背中が見える。まるで山のようだ。
「すごくおっきいわね……」
「世界最大級の悪魔だからな」
「あの首、何メートルあるのかしら」
レイチェルはぽかん、と巨大な鳥の悪魔を見上げる。
「口が開いてる」
指摘され、レイチェルは慌てて口を閉じた。髪がペシペシと?茲に当たって痛い。先ほどから、やけに風が強い気がする。
「乱気流か……上はもっと酷いだろう。いったん戻ったほうがいいかもしれないな」
バアルが呟いた瞬間、突風が吹いて、レイチェルが被っていたくまの帽子が吹き飛ばされた。
「!」
帽子に向かって手を伸ばした拍子に、レイチェルの身体がぐらりと揺れ、バアルの腕から離れる。
「レイチェル!」
バアルが手を伸ばすが、すんでで間に合わず、レイチェルの身体は落下する。
「──っ!」
レイチェルは帽子をぎゅう、と抱きしめ、バサバサと煽られる髪の毛に目をつむった。そのまま落ち続けるのかと思いきや、ばいん、と何かにはじかれる。
「っわ」
身体が滑り落ちそうになったので、慌てて下にある物体にしがみついた。こちらに飛んできたバアルが、レイチェルの身体を抱き起こす。
「大丈夫か」
「え、ええ」
バアルはほっと息をつき、レイチェルを睨んだ。
「君はどうしてそう無茶をするんだ。帽子なんか放っておけばいいだろう」
「帽子なんかって、これはバラムの大事なものなのよ。あなただって知ってるでしょう」
「君の命と引き換えにするほどのものか?」
「取ろうとしたら落ちちゃっただけよ、大体あなたがちゃんとかかえてくれないから」
「レイチェル」
耳元に囁かれ、レイチェルはびくりとした。
「誰が悪い?」
間近に響く美声に、心臓がどくどく音を立てる。
「わ……私が悪いわ」
「なら反省して、もう無茶はしないって誓って」
「わかったから、耳元で喋らないで!」
耳を塞ぐと、バアルがふ、と口元を緩めた。レイチェルは顔を赤らめてバラムの帽子を懐にしまいこみ、自分の真横にあるものを見てぎょっとする。これは……目玉? 直径がレイチェルの身体ほどもある巨大な目玉がぎろりと動き、こちらを凝視する。
思わず悲鳴をあげて、バアルにしがみつく。
「きゃあ」
目玉は怯えるレイチェルをじいっと見ている。
「こ……これなに?」
「ジズの目玉だ」
「えっ」
「つまり、ここはかなり上空ってことだな」
バアルはそう言って、ジズに話しかける。
「ジズ、バベルの塔の最上階に行ったことはあるか?」
ジズはゆっくり瞬きした。それだけで風が起きて、レイチェルの髪をなびかせる。
「わっ」
「イエスなら一回、ノーなら二回」
バアルがそう言うと、ジズは一回瞬きをした。レイチェルの髪がまたぶわりとなびく。
「一番上まで連れて行ってくれ」
彼の言葉に、ジズが一回瞬きする。バアルはレイチェルをジズの頭に下ろした。
「あなたは?」
「僕は自分で飛んでいく。頼んだぞ、ジズ」
バアルにそう告げられ、ジズは一度瞬きした。のち、レイチェルの身体がぐん、と持ち上げられる。
「っ!」
レイチェルは慌てて、ジズの頭にしがみついた。どうやら、飛んでいるようだ。
耳の奥が詰まった感じがしてきもちが悪く、唾を飲んで解消する。雲を抜け、ぐんぐんと身体が持ち上がって行った。ちらほらみえていた他の悪魔たちもみえなくなる。下から吹き上げる風のせいで、髪がばさばさと?茲を叩く。ぎゅうっと目を瞑り、風圧に耐えた。
ふいに、ジズの動きが止まり、強く?茲をなぶっていた風がやんだ。
レイチェルは恐る恐る目を開く。
「……あ」
ちょうど、人がひとり乗れるくらいの小さな足場が、目の前にあった。中央には光の柱が通っていて、上空へと一直線に走っている。レイチェルはぼんやりと、その光をながめた。
「ここが、バベルの塔の……一番上?」
「なるほど、こうなってるのか」
ばさり、と羽音がして、バアルが現れた。
「バアル」
赤い瞳がちらりとこちらを見る。
「髪がすごいことになってるぞ」
なぜか彼の黒髪は一切乱れていない。レイチェルは不可解に思いつつ、自分の髪を治した。
「この光はなに?」
「バベルの塔は、天に届くほど高くしようと人間が作ったものだ」
バアルは光の柱を見つめながら言う。
「だけど結局それは叶わずに、この塔は未完成になった。そうして人間たちはバビロンからいなくなった……。消えた人間たちは、この光に吸い込まれたのかもしれないな」
「そうして、違う世界に?」
「ああ。憶測だけど。この光の柱が、君の言う『ロンドン』に繋がっているかはわからない」
レイチェルはごくりとつばを飲んだ。もしかしたら、また違うところに飛ばされるかもしれないのだ。ひゅうっ、と風が吹き、その髪がなびいて、足元に何かが絡みつく。
「?」
パサパサと音を立てるそれを手に取り、レイチェルはあ、と声をあげた。
「これ、ロンドンで売られてる新聞だわ」
紙面をなぞった彼女の瞳が見開かれる。
「限嗣相続制《げんしそうぞくせい》が廃止されたって」
「げんし?」
「男の人だけが土地や屋敷を継げる決まりよ……」
レイチェルは新聞を握りしめた。バアルが首を傾げる。
「つまり?」
「私、家を取り戻せるかもしれない……!」
彼の赤い瞳が緩んだ。
「よかった」
レイチェルは頷きかけ、は、として目を伏せる。
「レイチェル?」
「でも、帰っても一人だわ」
「ずっと、帰りたかったんだろう?」
「そう、だけど」
ここにいれば、バアルやバラムがいる。二人と一緒にいられる。うつむいたレイチェルの肩を、バアルが押した。
「あ」
レイチェルは足を踏み出し、塔の天辺に降り立つ。振り向くと、バアルがゆっくりうなずいた。
ジズが、用は済んだとばかりに頭を引っ込める。レイチェルの身体を取り巻く光が一層強くなり、視界が白くなる。バアルの姿に目を凝らしながら、レイチェルは手を伸ばした。
「バアル、握手して」
「なぜ?」
「なぜって……人間は、あいさつで、そうするの」
バアルは腕を伸ばし、レイチェルの手を握った。冷たい手。だけど、優しい手だ。
レイチェルの脳裏に、バビロンでの思い出がよぎる。
初めて会った時は、血のような赤い瞳が怖かった。悪魔だとわかって、恐ろしくて仕方がなかった。
尊大で、冷たくて、きっとわかりあうことなんかできないと思った。
だけどバアルは優しかった。犬に化けてまで、レイチェルをなぐさめようとしてくれた。
子ぐまのバラムはかわいくて、いい子だった。最初はレイチェルに怯えていたけど、大事な帽子をくれるほど、心を許してくれた。
間違って呼ばれたのに、いつのまにかここにいるのが当たり前のようになっていた。泣いたっていいんだと、ここにきて初めて思った。
泣ける場所、帰ることができる場所。ふたりが与えてくれた。ここにいていいんだって、そう思った。
──帰りたくない。
バアルの赤い瞳が見開かれた。
「レイチェル?」
いつのまにか、泣いていた。
「っ」
慌てて目を伏せ、レイチェルはバアルの手を離す。涙が足元に落ちた、その瞬間、レイチェルの身体がふっと浮き上がった。視界から、バアルが消える。
「──!」
ぐん、と身体が引っ張られる感覚がして、レイチェルの視界が真っ白になった。
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