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誘惑
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レイチェルは、買い物へ行くために、バラムと共に家を出た。途端に、街灯にとまっていた、頭が二つある鳥がぎゃあぎゃあと鳴く。バラムがさっとレイチェルの前に立ち、歯をむくと、びくりとして固まった。
「ありがとう、バラム。頼りになるわ」
礼を言うと、バラムは得意そうな顔で胸を張った。
バベルの塔がある方角とは反対の道を進んでいくと、露店が開かれているのが見えた。バベルの塔が壊れてしまったから、臨時の市場が開かれているようだ。
露店には、悪魔たちが集まっている。
「何を買うの?」
その問いに、バラムはメモを見せてきた。
「魚と小麦粉?」
まずは小麦粉を買いに向かう。バラムがメモを見せたら、店主がそれを受け取って袋を差し出してきた。バラムはぬいぐるみのような手で金貨をはらう。
「私が持つわ」
レイチェルは買い物かごを手に、バラムの隣を歩く。次は魚屋だ。と、婦人服屋が目に入った。並んでいる服からして、レイチェルが以前買い物をした「ドルチェ」という店のようだ。
「あ。バラム、ちょっとあそこによってもいい?」
バラムに断って、レイチェルはそちらへ向かう。
「こんにちは」
声をかけたら、いらっしゃいませ、と返ってきた。店員はレイチェルの顔を見て、
「あ、以前いらした……」
「ええ、ここに移転したのね」
「そうなんです」
店員はため息をつく。
「まさかあんなことになるなんて。まさにバビロンに神はなし、ですよ」
笑っていいのかどうか微妙な気分でいると、
「あ、そういえば、今日彼氏はいらっしゃらないんですね」
バアルのことだろう。
「彼氏じゃないわ」
顔を赤らめながら言うと、肩をたたかれた。
「やあこんにちは! 偶然ですね!」
振り向くと、満面の笑みを浮かべたマルファスが立っていた。
「あ、こんにちは」
「ここで会ったのも何かの縁。お茶でもいかがです?」
とても偶然とは思えないが……
「ごめんなさい、買い物の途中なの」
「そう言わずに。おっとなんだバラム。おしくらまんじゅうか?」
レイチェルとマルファスの間に割り込んだバラムが、ぐいぐい彼の膝を押す。
「ぬいぐるみがついてきますが、まあそれも一興」
「バラムはぬいぐるみじゃないわ」
「ええもちろん! 比喩ですとも。偉大なる王に親しみを込めているんですよ。なあバラム。かわいいなあ~はく製にしたら高く売れそうだ」
割と本気の声音に思え、慌ててバラムを抱き上げたら、マルファスが目を細めた。
「悪魔に情を抱いてもいいことはありませんよ、お嬢さん」
レイチェルは警戒しつつ彼に問う。
「何か用があるんでしょう?」
「ええ。まあこちらに来てくださいよ。どうぞどうぞ」
彼はレイチェルを促し、露店の中に建っていた簡易のカフェに連れて行った。
「なかなかいいでしょう? 簡易のカフェにしてはおしゃれで」
マルファスはコーヒーを一口飲んで、にこやかに言う。
「ええ、そうね」
レイチェルはバラムを膝の上に乗せて座っていた。マルファスはにやにや笑いながら、
「しかし、地獄の王がこんな女の子に骨抜きにされるとは、バビロンも末ですねえ」
もしかして、先ほどの会話を聞かれていたのだろうか……。レイチェルは顔を赤くする。
「別に、バアルは私のことを好きなわけじゃないわ」
「またまた。彼は昔から人間になつくのが好きですからね」
「でもそれは……恋愛感情じゃないでしょう?」
「悪魔からの恋愛感情が欲しいですか?」
悪魔は肘をついてレイチェルを見つめる。
「危険ですよ。悪魔に恋をすることは、魂の堕落につながる。人間が嫌がるっていう、地獄に落ちるはめになるかもしれない。バビロンよりももっと下。暗くて救いのない世界に」
「あなたが、人間の心配なんかするの?」
「おや、さっきのバアルの言葉を真に受けてらっしゃるんですか。嫌だなあ、俺は無害な悪魔です。バアルに比べたら何の力もありませんよ~」
バラムがぶんぶん首を振っている。
「バラムが違うって言ってる」
「さきほども言いましたが、俺はバラムより位が下なんですよ?」
心外そうに首を振り、
「だから力を貸してほしいと言っているのに。バアルは冷淡だなあ」
彼は身を乗り出した。
「ねえ、あなたから協力するように言ってもらえませんか」
「私から……?」
「そうです。上目づかいで『お願い、バアル♡』って言えばちょろいですって」
「そんな」
「それにね、この提案はバアルのためでもあるんですよ」
「どういう意味?」
こぐまがぐいぐいレイチェルの服を引っ張るが、構わずに尋ねる。マルファスは声を潜め、
「実は、バベルの塔はソロモンの指輪を使って作られたのではないかと言われているんです」
「え」
レイチェルは一瞬息をのみ、首をかしげる。
「でもおかしいわ……どうしてそれで、バベルの塔が壊れたの?」
マルファスの瞳がきらりと輝く。
「バベルの塔の中央の柱、文字がぎっしり刻まれてるでしょう?」
「ええ……」
「あれはね、ソロモンの悪魔たちの名前なんです」
「!」
彼はコーヒーを一口飲み、
「つまりは、あの塔は指輪の魔力によって支えられていたのではないかと」
「バアルが指輪を手に入れる前に……人間が指輪を使って、バベルの塔をつくった?」
「その可能性がなきにしもあらず、ですね。バベルの塔が建った後に、ソロモンの悪魔たちが解放された」
マルファスは蜘蛛が糸を搦めとるような調子で言う。
「再びバアルが悪魔たちを封印したせいで、塔は崩壊を始めた。つまり、バアルにも責任の一端はあるということです。もしかしたらバビロン政府から追及が来るかもしれないな~とね」
レイチェルは表情を硬くした。
「バアルが罪に問われるということ?」
彼は親指を立て、
「そうならないためにも! あなたが愛の力でバアル神を動かしてくださいよ!」
「――何を言ってるんだ」
響いた美声に、マルファスが顔を引きつらせた。
「ひっ、バアル」
「バアル」
レイチェルは驚いて顔を上げる。いつの間にか、バアルが傍に立っていた。冷え冷えとした雰囲気の中に、いら立ちがにじんでいる。彼は冷たい目でマルファスを見て、
「レイチェル、帰るぞ」
「え」
レイチェルの腕を引き、立たせる。
「ちょっと待ってくださいよ、まだ話が終わってな」
その時、マルファスが手に持っていたカップが砕け散った。レイチェルはちいさく悲鳴をあげる。
「なにか言ったか?」
温度のない赤い瞳を向けられ、マルファスは低頭した。
「ははー、申し訳ありませんなんでもございません」
バラムを抱きかかえ、レイチェルはバアルに手を引かれ、共に歩き出す。
「バアル、どうしてここに?」
「ストラスがうるさく鳴いてたからな」
「ストラスって」
いつも窓辺にいる双頭の鳥を思い出し、レイチェルはハッとした。
「あの鳥、もしかして」
「ソロモン七十二柱のひとりだ。君を見張るよう命令した」
「どうしてそんなこと」
「さっきみたいにマルファスに丸め込まれかねないから」
その言い方にむっとした。まるでレイチェルが自分の頭では考えられないようではないか。
「丸め込まれてなんかないわ」
バアルは何も言わず、振り返りもせず、ただひたすら歩き続けた。
「ありがとう、バラム。頼りになるわ」
礼を言うと、バラムは得意そうな顔で胸を張った。
バベルの塔がある方角とは反対の道を進んでいくと、露店が開かれているのが見えた。バベルの塔が壊れてしまったから、臨時の市場が開かれているようだ。
露店には、悪魔たちが集まっている。
「何を買うの?」
その問いに、バラムはメモを見せてきた。
「魚と小麦粉?」
まずは小麦粉を買いに向かう。バラムがメモを見せたら、店主がそれを受け取って袋を差し出してきた。バラムはぬいぐるみのような手で金貨をはらう。
「私が持つわ」
レイチェルは買い物かごを手に、バラムの隣を歩く。次は魚屋だ。と、婦人服屋が目に入った。並んでいる服からして、レイチェルが以前買い物をした「ドルチェ」という店のようだ。
「あ。バラム、ちょっとあそこによってもいい?」
バラムに断って、レイチェルはそちらへ向かう。
「こんにちは」
声をかけたら、いらっしゃいませ、と返ってきた。店員はレイチェルの顔を見て、
「あ、以前いらした……」
「ええ、ここに移転したのね」
「そうなんです」
店員はため息をつく。
「まさかあんなことになるなんて。まさにバビロンに神はなし、ですよ」
笑っていいのかどうか微妙な気分でいると、
「あ、そういえば、今日彼氏はいらっしゃらないんですね」
バアルのことだろう。
「彼氏じゃないわ」
顔を赤らめながら言うと、肩をたたかれた。
「やあこんにちは! 偶然ですね!」
振り向くと、満面の笑みを浮かべたマルファスが立っていた。
「あ、こんにちは」
「ここで会ったのも何かの縁。お茶でもいかがです?」
とても偶然とは思えないが……
「ごめんなさい、買い物の途中なの」
「そう言わずに。おっとなんだバラム。おしくらまんじゅうか?」
レイチェルとマルファスの間に割り込んだバラムが、ぐいぐい彼の膝を押す。
「ぬいぐるみがついてきますが、まあそれも一興」
「バラムはぬいぐるみじゃないわ」
「ええもちろん! 比喩ですとも。偉大なる王に親しみを込めているんですよ。なあバラム。かわいいなあ~はく製にしたら高く売れそうだ」
割と本気の声音に思え、慌ててバラムを抱き上げたら、マルファスが目を細めた。
「悪魔に情を抱いてもいいことはありませんよ、お嬢さん」
レイチェルは警戒しつつ彼に問う。
「何か用があるんでしょう?」
「ええ。まあこちらに来てくださいよ。どうぞどうぞ」
彼はレイチェルを促し、露店の中に建っていた簡易のカフェに連れて行った。
「なかなかいいでしょう? 簡易のカフェにしてはおしゃれで」
マルファスはコーヒーを一口飲んで、にこやかに言う。
「ええ、そうね」
レイチェルはバラムを膝の上に乗せて座っていた。マルファスはにやにや笑いながら、
「しかし、地獄の王がこんな女の子に骨抜きにされるとは、バビロンも末ですねえ」
もしかして、先ほどの会話を聞かれていたのだろうか……。レイチェルは顔を赤くする。
「別に、バアルは私のことを好きなわけじゃないわ」
「またまた。彼は昔から人間になつくのが好きですからね」
「でもそれは……恋愛感情じゃないでしょう?」
「悪魔からの恋愛感情が欲しいですか?」
悪魔は肘をついてレイチェルを見つめる。
「危険ですよ。悪魔に恋をすることは、魂の堕落につながる。人間が嫌がるっていう、地獄に落ちるはめになるかもしれない。バビロンよりももっと下。暗くて救いのない世界に」
「あなたが、人間の心配なんかするの?」
「おや、さっきのバアルの言葉を真に受けてらっしゃるんですか。嫌だなあ、俺は無害な悪魔です。バアルに比べたら何の力もありませんよ~」
バラムがぶんぶん首を振っている。
「バラムが違うって言ってる」
「さきほども言いましたが、俺はバラムより位が下なんですよ?」
心外そうに首を振り、
「だから力を貸してほしいと言っているのに。バアルは冷淡だなあ」
彼は身を乗り出した。
「ねえ、あなたから協力するように言ってもらえませんか」
「私から……?」
「そうです。上目づかいで『お願い、バアル♡』って言えばちょろいですって」
「そんな」
「それにね、この提案はバアルのためでもあるんですよ」
「どういう意味?」
こぐまがぐいぐいレイチェルの服を引っ張るが、構わずに尋ねる。マルファスは声を潜め、
「実は、バベルの塔はソロモンの指輪を使って作られたのではないかと言われているんです」
「え」
レイチェルは一瞬息をのみ、首をかしげる。
「でもおかしいわ……どうしてそれで、バベルの塔が壊れたの?」
マルファスの瞳がきらりと輝く。
「バベルの塔の中央の柱、文字がぎっしり刻まれてるでしょう?」
「ええ……」
「あれはね、ソロモンの悪魔たちの名前なんです」
「!」
彼はコーヒーを一口飲み、
「つまりは、あの塔は指輪の魔力によって支えられていたのではないかと」
「バアルが指輪を手に入れる前に……人間が指輪を使って、バベルの塔をつくった?」
「その可能性がなきにしもあらず、ですね。バベルの塔が建った後に、ソロモンの悪魔たちが解放された」
マルファスは蜘蛛が糸を搦めとるような調子で言う。
「再びバアルが悪魔たちを封印したせいで、塔は崩壊を始めた。つまり、バアルにも責任の一端はあるということです。もしかしたらバビロン政府から追及が来るかもしれないな~とね」
レイチェルは表情を硬くした。
「バアルが罪に問われるということ?」
彼は親指を立て、
「そうならないためにも! あなたが愛の力でバアル神を動かしてくださいよ!」
「――何を言ってるんだ」
響いた美声に、マルファスが顔を引きつらせた。
「ひっ、バアル」
「バアル」
レイチェルは驚いて顔を上げる。いつの間にか、バアルが傍に立っていた。冷え冷えとした雰囲気の中に、いら立ちがにじんでいる。彼は冷たい目でマルファスを見て、
「レイチェル、帰るぞ」
「え」
レイチェルの腕を引き、立たせる。
「ちょっと待ってくださいよ、まだ話が終わってな」
その時、マルファスが手に持っていたカップが砕け散った。レイチェルはちいさく悲鳴をあげる。
「なにか言ったか?」
温度のない赤い瞳を向けられ、マルファスは低頭した。
「ははー、申し訳ありませんなんでもございません」
バラムを抱きかかえ、レイチェルはバアルに手を引かれ、共に歩き出す。
「バアル、どうしてここに?」
「ストラスがうるさく鳴いてたからな」
「ストラスって」
いつも窓辺にいる双頭の鳥を思い出し、レイチェルはハッとした。
「あの鳥、もしかして」
「ソロモン七十二柱のひとりだ。君を見張るよう命令した」
「どうしてそんなこと」
「さっきみたいにマルファスに丸め込まれかねないから」
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