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第一章 王都絢爛
27.小麦色の踊り巫女
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「よっ! クレイアっ」
と、街路の片隅でリティア達を待つクレイアを、後ろから呼ぶ声がした。
振り向くと、小麦色の肌で快活そうな娘が手を振っている。
「ニーナじゃないか! それにラウラも。もう、王都に入ったのか」
「稼ぎ時だからね」
ニーナと呼ばれた娘の後ろには、同じく小麦色の肌をした娘が二人立っている。
ラウラと呼ばれた娘は銀髪に限りなく近いプラチナブロンドの髪に内気そうな表情を浮かべ、少し睨みつけるような視線をした娘はクレイアにも見覚えがなかった。
娘たちは3人とも、民族色豊かでガーゼ地のような白いローブを羽織り、健康的な肌が少し透けている。
――いいです! とても、いいです!
アイカは、急に忙しい。娘たち三人の整った顔立ちを見比べたり、ふくよかな胸元を視界に収めたり、視線がせわしなく動く。
ニーナが、クレイアに肩を合せた。
「あれが、無頼姫の狼?」
ニーナの視線の先では、タロウとジロウが伏せの姿勢でアクビをしている。ジロウがチラリとニーナを見上げた。
「耳が速いな。『草原の民』にも、もう噂が届いているのか?」
「まさかぁ! 王都に入ってから聞いたんだよ」
と言うと、ニーナは自分たちを凝視する幼い娘にも気が付いた。
「この子が、『無頼姫の狼少女』?」
――なんですか? その異名みたいなの。
アイカは自分がそう呼ばれていることを、初めて知った。
そして、気に入った。
――カ、カッコイイじゃないですか。
鼻息がふんすと漏れる。
少し腰をかがめてアイカに目線を合せたニーナが、笑顔を向けた。
「こんにちは。北の草原から来ました」
アイカは一瞬、その金色の瞳を見開き、すぐに目を逸らした。
――カワイイ! 部長だ! アイシェさんが運動部なら、ニーナさんは文化部の部長だ。
俯いてしまったアイカの肩に、クレイアがそっと手をやった。
「アイカ、紹介しよう。ニーナとラウラ、それに……」
「イェヴァよ。王都は今年が初めて」
と、ニーナが紹介すると、ニーナの後ろに立つ二人が小さく頭を下げた。イェヴァは警戒するようにクレイアから目線を外さない。クレイアが続けた。
「ニーナたちは、聖山の北西に住む遊牧民『草原の民』の踊り巫女で、毎年『総候参朝』に稼ぎに来るんだ。一昨年知り合って、仲良くなった」
「最初に会ったときは、貧民街のゴロツキだったのに」
「ゴロツキはヒドイな。まっとうにやってたぞ」
「それが、去年は王女様の侍女様になってるんだから。まだ、クビになってないの?」
「おかげさまでな」
アイカは、興奮していた。
――ふおぉぉぉ。そういうお顔もお持ちなんですね!?
クレイアが旧友に見せる砕けた表情に、新しい美しさを発見していた。
王宮入り三日。毎晩一緒に入浴し語らっただけで、クレイアの全てを知ったつもりだったことを静かに猛省した。
「今年もアイラのところで?」
と、クレイアがニーナに尋ねた。
「うん。ちゃんとした宿を世話してもらってる」
王都を訪れる踊り巫女の中には春をひさぐ者もいる。
そうしたことに手を出すつもりがないニーナたちは、堅い宿を手配してもらうようにしている。
官能的なダンスパフォーマーとして王都で人気のある踊り巫女だが、本来は祖霊信仰が厚い『草原の民』のシャーマンであり、踊りは宗教儀礼である。
獣の皮やチーズなどの産物を売りに来ると共に、街角や列候の開く宴席などで舞い、投げ銭を稼ぐ。
ふと、風体の悪い男たちの一群が、クレイアの目に留まった。
祝祭を控え、王都には得体の知れない者たちも多くなる。だがそれも、猥雑な賑わいを生み、踊り巫女たちもその一翼を担っている。
行き過ぎるかと思われた男たちが、瞬く間にクレイアたちを取り囲み、突然、ラウラの腕を掴み上げた。
「ラウラだな? マエル様がお呼びだ。ちょっと来て貰おうか」
と、街路の片隅でリティア達を待つクレイアを、後ろから呼ぶ声がした。
振り向くと、小麦色の肌で快活そうな娘が手を振っている。
「ニーナじゃないか! それにラウラも。もう、王都に入ったのか」
「稼ぎ時だからね」
ニーナと呼ばれた娘の後ろには、同じく小麦色の肌をした娘が二人立っている。
ラウラと呼ばれた娘は銀髪に限りなく近いプラチナブロンドの髪に内気そうな表情を浮かべ、少し睨みつけるような視線をした娘はクレイアにも見覚えがなかった。
娘たちは3人とも、民族色豊かでガーゼ地のような白いローブを羽織り、健康的な肌が少し透けている。
――いいです! とても、いいです!
アイカは、急に忙しい。娘たち三人の整った顔立ちを見比べたり、ふくよかな胸元を視界に収めたり、視線がせわしなく動く。
ニーナが、クレイアに肩を合せた。
「あれが、無頼姫の狼?」
ニーナの視線の先では、タロウとジロウが伏せの姿勢でアクビをしている。ジロウがチラリとニーナを見上げた。
「耳が速いな。『草原の民』にも、もう噂が届いているのか?」
「まさかぁ! 王都に入ってから聞いたんだよ」
と言うと、ニーナは自分たちを凝視する幼い娘にも気が付いた。
「この子が、『無頼姫の狼少女』?」
――なんですか? その異名みたいなの。
アイカは自分がそう呼ばれていることを、初めて知った。
そして、気に入った。
――カ、カッコイイじゃないですか。
鼻息がふんすと漏れる。
少し腰をかがめてアイカに目線を合せたニーナが、笑顔を向けた。
「こんにちは。北の草原から来ました」
アイカは一瞬、その金色の瞳を見開き、すぐに目を逸らした。
――カワイイ! 部長だ! アイシェさんが運動部なら、ニーナさんは文化部の部長だ。
俯いてしまったアイカの肩に、クレイアがそっと手をやった。
「アイカ、紹介しよう。ニーナとラウラ、それに……」
「イェヴァよ。王都は今年が初めて」
と、ニーナが紹介すると、ニーナの後ろに立つ二人が小さく頭を下げた。イェヴァは警戒するようにクレイアから目線を外さない。クレイアが続けた。
「ニーナたちは、聖山の北西に住む遊牧民『草原の民』の踊り巫女で、毎年『総候参朝』に稼ぎに来るんだ。一昨年知り合って、仲良くなった」
「最初に会ったときは、貧民街のゴロツキだったのに」
「ゴロツキはヒドイな。まっとうにやってたぞ」
「それが、去年は王女様の侍女様になってるんだから。まだ、クビになってないの?」
「おかげさまでな」
アイカは、興奮していた。
――ふおぉぉぉ。そういうお顔もお持ちなんですね!?
クレイアが旧友に見せる砕けた表情に、新しい美しさを発見していた。
王宮入り三日。毎晩一緒に入浴し語らっただけで、クレイアの全てを知ったつもりだったことを静かに猛省した。
「今年もアイラのところで?」
と、クレイアがニーナに尋ねた。
「うん。ちゃんとした宿を世話してもらってる」
王都を訪れる踊り巫女の中には春をひさぐ者もいる。
そうしたことに手を出すつもりがないニーナたちは、堅い宿を手配してもらうようにしている。
官能的なダンスパフォーマーとして王都で人気のある踊り巫女だが、本来は祖霊信仰が厚い『草原の民』のシャーマンであり、踊りは宗教儀礼である。
獣の皮やチーズなどの産物を売りに来ると共に、街角や列候の開く宴席などで舞い、投げ銭を稼ぐ。
ふと、風体の悪い男たちの一群が、クレイアの目に留まった。
祝祭を控え、王都には得体の知れない者たちも多くなる。だがそれも、猥雑な賑わいを生み、踊り巫女たちもその一翼を担っている。
行き過ぎるかと思われた男たちが、瞬く間にクレイアたちを取り囲み、突然、ラウラの腕を掴み上げた。
「ラウラだな? マエル様がお呼びだ。ちょっと来て貰おうか」
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