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第八章 旧都邂逅
172.山奥で車座で
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アイカはその場で、皆を車座に座らせた。
後ろに戻れば自家発光する女性が、泉を温泉にして寛いでる。これ以上、話をややこしくしたくない。
ムキムキで強面の男も多い中、状況に呆れていたアイカが仕切る。
「は――いっ! 最初から話を聞くと長そうなので、お尻から順番に紐解いていきま――すっ! では、クリストフさんのご事情からどうぞ」
「……アイカ。俺たちは、お前のことをずっと探して……」
「はい! ややこしそうなので後回し」
「はあ?」
「カリュさんのお父さん、どうぞ」
「カリュを探すよう、我が君アルナヴィス侯より命を受け……」
「はい、会えて良かったですね。あちらで、お二人でどうぞ」
「あ、はい……」
カリュとその父が車座から離れる。
「クリストフさん。これで、この人たちが賊じゃないって分かりましたね?」
「お……、おう……。しかし……」
「はい、次。チーナさんのお知り合いさん。えっと、アーロンさん」
「いや……、虜囚の憂き目にあわれている我が君ベスニク様の探索に、北の交易都市タルタミアを目指しておるところ……」
「ああ、それでバッタリ、同郷のチーナさんと?」
「そういうことです……」
「偶然ですねぇ! 神様のお導きかも? あちらで旧交を温めてください……。さっ、どうぞ」
アーロンとチーナが車座から離れる。
「で、えっと……ルクシアさん?」
「そうだよ」
「こちらでは何を?」
「何をって……。ブラブラしてたら、アーロンと知り合って……」
「端的にどうぞ」
「……道に迷ってた」
「なぜ、わざわざ大路を外れて我らの聖地を通り抜けようとするのだ?」
クリストフがルクシアを睨んだ。
飄々とした雰囲気のクリストフが敵意をむき出しにした様子に『聖地』というのは本当なのだろうとアイカは思ったが、今はどうでもいい。
ルクシアが面倒くさそうに頭をかいた。
「だから、アーロンが言ってたろ? 囚われの西南伯閣下を探してるんだ。大路なんか通れば目立つだろ。……裏を通ってるうちに、道に迷ったんだよ」
「説明にスジが通ってます」
アイカが大きく頷いた。
自分も大路を避けて王都に向かい、あらぬ方向に迷ってしまい熊に遭遇した経験があった。
そして、アイラに向き直った。
「突然、秘せられてた生い立ちを聞かされてショックだと思いますが……」
「あ、うん……なにがなんだか……」
「アイラさん。貴女、廃太子アレクセイ殿下の孫娘なんだそうです」
「……えっ?」
「私はアレクセイさん本人から聞いてました。ごめんなさい黙ってて。私とアイラさん、義理の親戚でした」
「ん? どういうこと?」
と、今度はルクシアが戸惑ったような顔をした。
アイカは肩当ての覆いを外して、紋章を見せた。リティアにもらった大切な紋章を汚したくなくて、普段は布をかけている。
「私、第3王女リティア殿下の義妹でして……」
「なっ!? どういうことだ!?」
と、大声を出したのはルクシアではなく、クリストフだった。思わず立ち上がって、驚きの表情を浮かべている。
「どういう……って言うか……、とても仲良しだったので義姉妹の契りを結んでいただきました。えへへっ」
「……なんてこった」
しばらく口をパクパクさせていた、クリストフがドスンと音を立てて腰を降ろした。
その不機嫌さは意味ありげだったが、アイカは後回しにした。
当然、アイラの気持ちの方が大切だったからだ。
「許してくれますか?」
「えっ? ……なにを?」
「私が黙ってたこと」
「あ……うん。今はそれどこじゃないっていうか……」
「親父のヤツ。アイラに言ってなかったのかよ」
ぼやくルクシアをアイラが睨んだ。
「そんなことより、お母さん、なんで家を出ていったのよ!?」
王家の血筋を「そんなこと」で片付けたアイラを、ネビもジョルジュも、豪気な女子だと生温い目で見守った。
話が終わったらしいカリュとチーナも、そっと車座に戻る。
「親父と喧嘩したんだよ……」
「お父さんは!? お父さんはどうでも良かったの!?」
「お父さん……? ああ、シモンか」
「そうよ! お父さんの名前まで忘れてたの!?」
「……あいつは親父の子分で、アイラの父親じゃねぇよ」
「…………は?」
「親父のヤツ……、ホントになんにも説明してねぇのかよ……」
「お母さんのお父さんなんか、会ったことも見たこともないわよ!!」
――渋滞が解消しない。
と、アイカは遠い目をした。
が、アイラも自分の額を手で押さえた。
「まって……。もう、無理……。熱が」
かいたあぐらに立て肘をしたクリストフがボヤいた。
「じゃあ、そろそろこっちの話をしてもいいかな?」
大切な愛で友アイラの様子が心配なアイカは、ぞんざいに応えた。
「あ、はい。とりあえず、どうぞ」
「……俺たちは、アイカを探してた」
「はい、それは聞きました」
「もう、ずっとな……。聖地の結界が晴れるのをずっと待ってた」
「…………」
アイカは初めて、クリストフの方をマトモに見た。
「…………えっ?」
元々、この口の悪い公子のことは苦手にしていた。言葉を交わしたのも一度だけであるし、もちろん、結界のことなど話したことはない。
そもそも結界のことや転生のことは、リティアにさえ話したことがなかった。
「だけど、結界が晴れたと報せを受けて駆け付けた時には、もう誰もいなかった」
クリストフは遠い目をして、小さくため息を吐いた。
――態度、わるっ!
と、アイカは思ったが、歯を食いしばってクリストフを見詰めていた。
この人は、この身体、愛華の魂が宿る《アイカの身体》の元々の持ち主のことを知っている――。
後ろに戻れば自家発光する女性が、泉を温泉にして寛いでる。これ以上、話をややこしくしたくない。
ムキムキで強面の男も多い中、状況に呆れていたアイカが仕切る。
「は――いっ! 最初から話を聞くと長そうなので、お尻から順番に紐解いていきま――すっ! では、クリストフさんのご事情からどうぞ」
「……アイカ。俺たちは、お前のことをずっと探して……」
「はい! ややこしそうなので後回し」
「はあ?」
「カリュさんのお父さん、どうぞ」
「カリュを探すよう、我が君アルナヴィス侯より命を受け……」
「はい、会えて良かったですね。あちらで、お二人でどうぞ」
「あ、はい……」
カリュとその父が車座から離れる。
「クリストフさん。これで、この人たちが賊じゃないって分かりましたね?」
「お……、おう……。しかし……」
「はい、次。チーナさんのお知り合いさん。えっと、アーロンさん」
「いや……、虜囚の憂き目にあわれている我が君ベスニク様の探索に、北の交易都市タルタミアを目指しておるところ……」
「ああ、それでバッタリ、同郷のチーナさんと?」
「そういうことです……」
「偶然ですねぇ! 神様のお導きかも? あちらで旧交を温めてください……。さっ、どうぞ」
アーロンとチーナが車座から離れる。
「で、えっと……ルクシアさん?」
「そうだよ」
「こちらでは何を?」
「何をって……。ブラブラしてたら、アーロンと知り合って……」
「端的にどうぞ」
「……道に迷ってた」
「なぜ、わざわざ大路を外れて我らの聖地を通り抜けようとするのだ?」
クリストフがルクシアを睨んだ。
飄々とした雰囲気のクリストフが敵意をむき出しにした様子に『聖地』というのは本当なのだろうとアイカは思ったが、今はどうでもいい。
ルクシアが面倒くさそうに頭をかいた。
「だから、アーロンが言ってたろ? 囚われの西南伯閣下を探してるんだ。大路なんか通れば目立つだろ。……裏を通ってるうちに、道に迷ったんだよ」
「説明にスジが通ってます」
アイカが大きく頷いた。
自分も大路を避けて王都に向かい、あらぬ方向に迷ってしまい熊に遭遇した経験があった。
そして、アイラに向き直った。
「突然、秘せられてた生い立ちを聞かされてショックだと思いますが……」
「あ、うん……なにがなんだか……」
「アイラさん。貴女、廃太子アレクセイ殿下の孫娘なんだそうです」
「……えっ?」
「私はアレクセイさん本人から聞いてました。ごめんなさい黙ってて。私とアイラさん、義理の親戚でした」
「ん? どういうこと?」
と、今度はルクシアが戸惑ったような顔をした。
アイカは肩当ての覆いを外して、紋章を見せた。リティアにもらった大切な紋章を汚したくなくて、普段は布をかけている。
「私、第3王女リティア殿下の義妹でして……」
「なっ!? どういうことだ!?」
と、大声を出したのはルクシアではなく、クリストフだった。思わず立ち上がって、驚きの表情を浮かべている。
「どういう……って言うか……、とても仲良しだったので義姉妹の契りを結んでいただきました。えへへっ」
「……なんてこった」
しばらく口をパクパクさせていた、クリストフがドスンと音を立てて腰を降ろした。
その不機嫌さは意味ありげだったが、アイカは後回しにした。
当然、アイラの気持ちの方が大切だったからだ。
「許してくれますか?」
「えっ? ……なにを?」
「私が黙ってたこと」
「あ……うん。今はそれどこじゃないっていうか……」
「親父のヤツ。アイラに言ってなかったのかよ」
ぼやくルクシアをアイラが睨んだ。
「そんなことより、お母さん、なんで家を出ていったのよ!?」
王家の血筋を「そんなこと」で片付けたアイラを、ネビもジョルジュも、豪気な女子だと生温い目で見守った。
話が終わったらしいカリュとチーナも、そっと車座に戻る。
「親父と喧嘩したんだよ……」
「お父さんは!? お父さんはどうでも良かったの!?」
「お父さん……? ああ、シモンか」
「そうよ! お父さんの名前まで忘れてたの!?」
「……あいつは親父の子分で、アイラの父親じゃねぇよ」
「…………は?」
「親父のヤツ……、ホントになんにも説明してねぇのかよ……」
「お母さんのお父さんなんか、会ったことも見たこともないわよ!!」
――渋滞が解消しない。
と、アイカは遠い目をした。
が、アイラも自分の額を手で押さえた。
「まって……。もう、無理……。熱が」
かいたあぐらに立て肘をしたクリストフがボヤいた。
「じゃあ、そろそろこっちの話をしてもいいかな?」
大切な愛で友アイラの様子が心配なアイカは、ぞんざいに応えた。
「あ、はい。とりあえず、どうぞ」
「……俺たちは、アイカを探してた」
「はい、それは聞きました」
「もう、ずっとな……。聖地の結界が晴れるのをずっと待ってた」
「…………」
アイカは初めて、クリストフの方をマトモに見た。
「…………えっ?」
元々、この口の悪い公子のことは苦手にしていた。言葉を交わしたのも一度だけであるし、もちろん、結界のことなど話したことはない。
そもそも結界のことや転生のことは、リティアにさえ話したことがなかった。
「だけど、結界が晴れたと報せを受けて駆け付けた時には、もう誰もいなかった」
クリストフは遠い目をして、小さくため息を吐いた。
――態度、わるっ!
と、アイカは思ったが、歯を食いしばってクリストフを見詰めていた。
この人は、この身体、愛華の魂が宿る《アイカの身体》の元々の持ち主のことを知っている――。
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