【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら

文字の大きさ
284 / 307
最終章 聖山桃契

268.本腰を入れよう

しおりを挟む
 アイカ率いる〈救国姫軍〉が受け持つ、王都ヴィアナの北側。

 コノクリア草原兵団のわかい兵士たちが、祭礼騎士団の古豪から訓練をつけてもらっている。

 ならんで眺めるナーシャとステファノスは、ともに旧都で焦れるような時間を過ごしてきた者同士でもある。

 ナーシャが青い瞳をほそめた。


「草原兵団の兵は、圧倒的に経験が足りませぬ。ステファノス殿下のお計らいで、よき機会をいただきました」

「ふふっ。祭礼騎士団の年寄りどもにも、わかき兵と触れ合うはよき機会。こちらこそナーシャのお計らいに感謝しております」


 そばには、アイカも立ち合い、

 また旧都からステファノスの妃ユーデリケも来ている。


「アイカ殿下。野営暮らしが続いておりますが、お体にご負担ではありませんか?」

「あ、はい! 旅の間はずっと野営でしたし、そもそもずっと山で暮らしてたんで大丈夫です!」


 戦陣に一輪の華が咲いたように、優雅に微笑む〈上品ハイソ美魔女〉なユーデリケ。

 アイカだけではなく、みなの心に少しずつの潤いをもたらす。

 サラナは、アイカの隣でナーシャから受け取った手紙に目を通していた。


「ロザリーさんからは、どんなお手紙でした?」

「コノクリアの法体系を整備するのに、意見を求められました」

「おお――っ!! さすが内政のスペシャリスト。法律にもお詳しいんでしたよね? ロザリーさんからも頼りにされるんですね!?」

「そのような、いいものではありませんが……。やはり、風習が異なれば、異なる法が必要になるため、ロザリー様も頭を悩まされているようです」

「しっかりした国になりそうですね」

「ええ、バシリオス陛下とロザリー様が治められているのです。きっと立派な国ができあがります」


 と、曇りのない笑顔のサラナが、空を見あげた。

 かつて自分のすべてを捧げて仕えたバシリオス。その国づくりが順調に進んでいることは、サラナにも誇らしい。

 そして、ロザリーからの手紙には、


 ――コノクリアに居を移した、バシリオスの正妃エカテリニが繰り返し繰り返し、サラナへの感謝を口にしている。


 と、書き添えられていた。

 ヴールの公宮で抱き締められ、ともに涙してくれたエカテリニ。

 自分のことを、そのように語ってくれていることは、


 ――生きていて、良かった。


 と、素直に満たされた。

 目のまえでは、祭礼騎士団の万騎兵長ヨティスをはじめ歴戦の古豪たちに、わかい兵士たちが、何度もなんども挑んでいる。

 きっと、彼らが国王バシリオスを支え、活力あふれる国を作ってくれるだろう。

 自分もこの動乱が終結すれば、主君アイカに従ってザノクリフという新天地に向かうはずだ。

 ようやく、あのツラく苦しかった幽閉生活が終わったのだと、サラナは赤縁眼鏡の奥で目をほそめた。


 そこに、ロマナが顔を見せた。


「噂の草原兵団を、ひと目見ておきたく思いまして」


 と笑いながら、近衛兵アーロンを従え、ナーシャとステファノスの横に並んだ。


「リーヤボルク本軍15万を、3分の1の兵力で壊滅させたと聞いております」

「いやいや、あの大戦おおいくさは、アイカ殿下の指揮があればこそ」


 ナーシャが、ロマナに笑みを向ける。

 そして、ステファノスはソワソワしていた。


「ロ、ロマナ……?」


 ステファノスからみれば、ロマナは実妹ウラニアの孫にあたる。


「はい! なんでしょう、ステファノス殿下?」

「……その、ウラニアは来ぬのか?」

「お祖母様は……、どうでしょう? 何も言ってきておられませんが……?」


 ロマナの倍はあろうかという格闘家のような体躯を、モジモジとさせるステファノス。


 ――そうか。ステファノス殿下は、妹ラブでしたもんね!!


 と、アイカがジッと見詰める。

 いや愛でる。


 ――強面シスコン……。なかなか、いいものです。アリです!!


 ユーデリケが上品に微笑みながら、ステファノスをたしなめる。


「あなた。ロマナ様には、先に言わねばならないことがあるでしょう?」

「……ん?」


 ユーデリケが、ロマナに嫋やかに頭をさげた。


「ベスニク様におかれましては、まことに残念なことでございました。ロマナ様もどうか、お気を落とされませんよう」

「……ユーデリケ妃殿下。ご丁寧にありがとうございます。しかし、泣くのも悔やむのも、このいくさを終えてからと決めております」


 ふっと微笑んだユーデリケが、やさしくロマナを抱き締めた。


「……ユ、ユーデリケ妃殿下?」

「ロマナ様。ご無理なさらないでくださいね……?」

「……はい」


 ユーデリケの温もりに、ロマナは心の内に張り詰めているものが、そのまま裂けて噴き出してしまいそうで、

 そっと、目を閉じた。


「こ、これは……、すまなかった」


 と、ステファノスが頭をさげた。


「ロマナにも、ウラニアにも申し訳なかった」

「いえ、いいのです。お祖母さまも、頼れる兄ステファノス殿下に想われて、お喜びになれることでしょう」

「……ウラニアは気落ちしておらぬか? ベスニク公を亡くして……」

「ふふっ。わたしもソフィア大叔母様も一緒に、ペノリクウスをコテンパンにして憂さを晴らしました。今頃、ヴールでお祖父さまと、ゆっくり語らっておられることでしょう」

「そうか……、そうであるな」


 抱きしめたまま少し顔をはなしたユーデリケが、ロマナを見詰めた。


「ウラニア様の孫であるロマナ様は、わたしたち夫婦にとっても大切な存在です。どうかご自愛くださいね」

「はいっ! ありがとうございます!」


 ふたりは微笑みあい、ユーデリケはロマナをそっと放した。

 そこにリティアも姿を見せた。


「みんなそろっていて、ちょうど良かった」


 と、快活に笑うリティア。

 ユーデリケとはまた違う華が、場にパッと咲き乱れる。

 そばには侍女長アイシェがおり、またミトクリア候も従っていた。

 サヴィアスの女官であった娘のソーニャは、ロマナの計らいで既に故郷ミトクリアに帰った。

 かるく頭をさげるミトクリア候に、ロマナも会釈して応えた。


「おっ。サラナもいるのか」


 と、リティアがサラナの肩を後ろから抱いた。


「これは、話を一度に終わらせられそうだ」

「……わたしに、なにか?」

「うん。ステファノス兄上にも……、まあ、みんなに話がある」


 悪戯っぽい笑顔を浮かべたリティアに、みなが苦笑いで応えた。

 どうせまた、とんでもないことを言い出すのだろう、と。


「徐々にだが〈仕掛け〉がそろってきた。そろそろ、王都攻略に向けて本腰を入れようと思う。まずは――」


 みなの視線がリティアにあつまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

【完結】憧れの異世界転移が現実になったのですが何か思ってたのと違います

Debby
ファンタジー
【全話投稿済み】  私、山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。  好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリストなのだけど、やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。転移先の条件として『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。  そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。  更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。  これにはちゃんとした理由があって、必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ないし、もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった私は、頼もしい仲間と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。  いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。  なんで私が転移することになったのか。謎はいっぱいあるし、理想通りだったり、思っていたのと違ったりもするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 2025.4.26 女性向けHOTランキングに入りました!ありがとうございます(๑•̀ㅂ•́)و✧ 7時、13時、19時更新。 全48話、予約投稿しています。 ★このお話は旧『憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと』を大幅に加筆修正したものです(かなり内容も変わってます)。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

処理中です...