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87.差し出された大浴場(1)

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おそらく木材が足りなくなります」

と、スイランさんが俺の耳元でささやいた。

――くにゅ(右)。

スイランさん、あなた。泡だらけの身体からだを俺に押し当てながら、よくそんな実務的じつむてきな話ができますね……?

――くにゅ(左)。

ほどよいサイズ感のふくらみが背中をすべっていく。けど、洗い方はツルペタ姉さんと同じで、上半身全部を押し当てて右に左にクネクネ動く。

ほどよくやわらかなふくらみもそうだけど、おなかまで密着みっちゃくしてるのが、気恥きはずかしさを刺激しげきしてくる。

――くにゅ(右)。

「今は大丈夫ですが、矢で消費しょうひされていくスピードが速いです」

――くにゅ(左)。

「そ、そうか」

――くにゅ(右)。

「はい」

――くにゅ(左)。

いや、テンポいいな! 効率的こうりつてきで、仕事の出来るスイランさんらしいですね!

左腕にはツイファさん。

――むきゅ(上/左腕)。

ツイファさんは昼間、いつものまし顔でシュエンをき出しに加えるように連れて来てくれて、俺の用事も淡々たんたんと引き受けて、サクッとこなしてくれた。

――くにゅ(右/背中)。

……け、今朝けさ実務肌じつむはだのお二人の昼間の姿とのギャップに、気恥きはずずかしさマックスです。

テキパキ事務じむのお姉さんが実は柔肌やわはだで、それにつつまれてるような、独特どくとく気恥きはずかしさです。

右腕にはシュエン。

――ぱにゅ(上/右腕)。

昼間はシュエンが一歩み出してくれたのが飛び上るほど嬉しかった。き出しの中年女性おばさんたちと汗を流しながら一生懸命料理してた。

……そうですか。大浴場ここでも一歩踏み出しちゃいますか。シュエンはクゥアイと同い年の16歳、日本だと高1。先輩オレ、そんなれない手付てつきで、一生懸命頑張ってるのをどう受け止めたらいいか分かりませんよ。

でも、ちょっと表情が豊かになったようで、良かった、良かった。

――くにゅ(右/背中)。

他の女子たちに目を移すと、メイファンが今日もみんなからめてもらってるようだ。うれしそうにれ笑いをしてる。

――むきゅ(下/左腕)。

まだ2日目とはいえ、疲労ひろう相当そうとうなものだろう。みんなからの賞賛しょうさん激励げきれいが力になるといいな。

――ぱにゅ(下/右腕)。

……シュエンの不器用ぶきよう手付てつきも、いつもと違った感触かんしょくで……。このさいにおけるがなんなのか分かりませんけど。

「この分だと、まだ、矢の消費スピードは上がりますよね?」

と、スイランさん。

――くにゅ(右/背中)。

「あ……、はいはい。その通りです……」

――むきゅ(下/左腕)。

「どの程度ていどまで上がるのか、私では分かりませんが、おそらく30日をたず、木材がそこくと思われます」

――ぱにゅ(下/右腕)。

猛烈もうれつに集中できない環境かんきょうだけど、問題は重大じゅうだいだ。弓矢の攻撃が出来なくなると、計画は全てたおれる。

シビアな話をシュエンに聞かせない配慮はいりょなのか、ツイファさんがわの耳元でささやき続ける、スイランさんの吐息といきがかるのも、俺から集中力しゅうちゅうりょくうばっていく。

「わ、分かりました……。報告ありがとうございます」

「いえ、当然のことです」

「シーシや、ほかの人たちにも相談してみます……」

「よろしくお願いいたします」

ようやく、スイランさんは俺の耳元から口をはなして、背中をのに集中し始めた。

刺激はひとつ減ったけど、――くにゅ、――むきゅ、――ぱにゅ、というやわらかな感触かんしょくつつまれ続けてて、気恥ずかしくてたまらない。

特にツイファさんを意識いしきしてしまう。言葉は悪いかもしれないけど、侍女の中ではシアユンさんやユーフォンさんに比べると、キャラの立ってない、マンガでいえばヒロインの親友しんゆうキャラのように感じてたツイファさんにて、女の人を感じるのが猛烈もうれつ気恥きはずかしい。

――やむをない。

俺はクゥアイをんだ。

クゥアイは俺の前に来て、両膝りょうひざいて、クンッと胸をらす。

うん。これは、まだ、見慣みなれて来たし……。

ツイファさんやスイランさん、それにシュエンの、――くにゅ、――むきゅ、――ぱにゅ、の気恥きはずかしさをまぎらわせるのに、大変な決意をしてるであろうクゥアイの話を聞くのは、後ろめたくもあったけど、はらえられない。

「や、やりが使いたいんだって……?」

「はい。お願いします」

クゥアイのコバルトブルーの瞳には、並々なみなみならぬ決意けついちていて、俺はすさまじく後悔こうかいした。

――お、おっぱいで身体からだを洗われながら聞いていい話なのか?

しばらく、俺に向けられたクゥアイの瞳を見詰みつめて、なにも言うことが出来なかった。

――くにゅ(左/背中)。

――むきゅ(上/左腕)。

――ぱにゅ(上/右腕)。

――くにゅ(右/背中)。

――むきゅ(下/左腕)。

――ぱにゅ(下/右腕)。

ああっ! もう! 失敗した! ほんとに失敗した!

俺はなか自棄やけになって、クゥアイに槍を持ちたい理由というか、気持ちをたずねた――。
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