【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

文字の大きさ
96 / 297

96.信頼の大浴場(3)

しおりを挟む
「マレビト様が……。城壁を奪還だっかんされることを……、私は信じております」

ミンリンさんは、はにかんだような口振くちぶりだけど、ハッキリと確信かくしんを持った口調くちょうで、俺にそう言ってくれた。

すごく、を言ってくれた後、それをみだすような感触かんしょくが背中をすべっていくのは、ともかく……。

――むにゅうぅぅ(上)。

うん。滑る感触に、一旦いったん、色々と気持ちを持って行かれますね。

「今、設計せっけいしているやぐらは、第2城壁を奪還した後も、上に1段かさねて使えるものにしたいと考えています」

「えっ?」

「第3城壁を奪還した後も同様です」

「……」

「今を闘い抜くことは、もちろん大切ですが、先のことを考える者もります」

「はい……」

「……これは、私をこのジーウォ城にまねいてくれた城主じょうしゅ様から常々つねづね、言われていたことなのです」

「……」

「今は、剣士たちはもちろん戦闘にくわわり始めた住民も、ひょっとするとマレビト様も、最終城壁でこたえさせることだけで手一杯ていっぱいだと思います……。大切なことですし、無理もないことです……。ですが、昨夜ゆうべ、ミンユーたちの短弓たんきゅうが、クゥアイたちの槍が、一歩前に進めてくれました」

「はい。俺もそう思います」

「そうですよね。ならば、宮城きゅうじょうに守られるこのが出来ることは、10歩先に必要なことを用意することではないかと……、考えたのです」

昨夜ゆうべ短弓たんきゅう隊の奮闘ふんとうは、確かに俺にも住民たちにも希望をもたらした。

それでもまだ、最終城壁の向こう側に大量にいる人獣たちを、第2城壁まで押し返すことに、現実感はない。

誰もそんなことは口にしない。

初めて城壁にのぼった短弓たんきゅう隊が翌朝よくあさ、無事にりられただけで、胸いっぱいになっている。みんな、そうだ。

俺も、ミンユーとクゥアイが帰って来てくれただけで、目頭めがしらに熱いものを感じていた。まだ、第2城壁は遠い。すぐそばに見えているのに、遠い。

だけども、ミンリンさんは、その先を見てくれていた。

人獣じんじゅうを「退しりぞける」と言った俺に「しびれる言葉」と返したフーチャオさん。「押し返す」と言った俺にキョトンとしたイーリンさん。

今の時点じてんでは、俺の夢物語ゆめものがたりとしか受け止められていない城壁奪還だっかんを、ミンリンさんは真剣に受け止め、信じ、その時に必要なものを考案こうあんして用意しようとしてくれている。

そのひとみは、先々を見詰みつめてくれている。

夢で終わらせてはいけない。

げんに、残りの食糧しょくりょうという切実せつじつなタイムリミットもある。人獣じんじゅう侵入しんにゅうふせぐだけでは、みなぬ。木材のりも気がかりだ。

背中をゆっくりと丁寧ていねいすべる「むにゅう」という感触かんしょくほほを赤らめながら、一人でも俺と同じ夢を見てくれてる人がいた、ということに胸の高鳴たかなりを感じた。

――むにゅ(上)。

「木材は……」

――むにゅ(下)。

「……あります」

「え? どこに?」

唐突とうとつなミンリンさんの言葉に、俺は思わずり返った。むにゅうが横に滑ると、俺の脇がスポッと

うっ、となる感触だったけど、目の前にはまったミンリンさんの顔が見えた。

や、やっぱり、れてるんじゃん!

「最終城壁の向こう側……、第2城壁との間にも備蓄庫びちくこがあります。あそこに行ければ、多少の補充ほじゅうは可能なはずです」

「最終城壁の向こう側……」

あの昼間も人獣たちがウロついている、最終城壁の向こう側。「ちょっと、取りに行ってきます!」って場所ではない。

「さらに向こう、第2城壁の向こう側、第3城壁との間にも次の備蓄庫があります……。ですから、私はマレビト様を信じております……」

真っ赤に染まった顔を上げたミンリンさんは、恥ずかしげな表情でニコッと笑った。

でも、その瞳には、一点のくもりもなかった――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...