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112.立ち昇る熱気(3)
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完成した連弩を手に、俺は2週間ぶりとなる【三卿一亭の会同】を招集した。
ジーウォ城の最高幹部たちを前に、連弩を披露し、住民全員を集めて現在置かれている全ての状況を説明することを提案した。
この国に民主主義はない。
住民の全員に説明する意義がなかなか理解されず、会議は長引いた。
司徒のウンランさんはニコニコしながら煮え切らないし、剣士長のフェイロンさんも難しい顔をしてた。
けど、最終的に司空のミンリンさんの言葉で決まった。
「知るということは、力です」
学問を修めることに情熱を注ぎ、27歳にして純潔というミンリンさんの言葉には説得力があった。ミンリンさんの設計した荷運び櫓が稼働し始め、威力を発揮し始めていたことも言葉に重みを増していた。
そして今、宮城の南側にある広場に、ジーウォ城に残る住民が総て集まっている。
その数、およそ1,200人。
剣士が約300名と、それ以外が約900名。元は約2,500人が暮らしていたというジーウォ城内の人口は、半数以上が人獣の爪牙に果てた。
連弩の威力を目にした住民たちの、どよめきが収まると、俺は皆に向かって声を張り上げた。
「ジーウォ城に兵士団を復活させます!」
遠い昔に初代マレビトの打った剣によって剣士団が創設され、「兵」という概念は自然と廃れていた。シキタリで禁じられた訳ではなく、自然消滅していた。
その「兵」の復活を、俺は宣言した。
長弓隊、短弓隊、槍隊、熱湯隊、荷運び隊、その総てを表す「兵」という概念は、皆の心をひとつにするのに必須の核になると考えた。
「兵士団は、剣士団を援け、その闘いを支え、共に人獣に立ち向かいます!」
闘いの主力である剣士団のプライドを損ねないよう、慎重な言い回しで、新たに設ける兵士団の役割を説明すると、集まった群衆からは大きな歓声が起きた。剣士団も概ね肯定的に捉えてくれているようだ。
「この城の食糧は、あと60日ほどで尽きます。それまでに第3城壁を越え、外城壁との間に広がる農地を取り戻さないと、私たちは餓えて死にます」
俺の言葉に、皆は水を打ったように静まり返った。
「農地の奪還後に、育ちの速い作物を植えて収穫することまで考えると、残された時間は約35日ほどです。それまでに、どうしても人獣を退けなくてはいけません! そのために、今、この連弩が祖霊から遣わされたと、俺は考えています!」
絶望に染まっていた群衆の目に、少し熱が戻ってくるのを感じた。
「今までの王国のやり方とは違うかもしれない。それでも! 今、この城に残る全員の心をひとつにしないと、あの怖ろしい人獣たちを押し返せるとは、俺には思えません! だから、良くない情報、心が折れそうになる情報も、皆で分かち合い、皆で支え合って、立ち向かいたいんです!」
静まり返っていた群衆から、やがて声が上がり始めた。
――やろう。
――やらなければ、死ぬだけだ。
――マレビト様は、俺達を信じてくれてるんだ。
――やろう。
――やって、やろうじゃないか。
ザワめきが広がり、やがて、大きなうねりのような歓声が再び巻き起こった――。
ジーウォ城の最高幹部たちを前に、連弩を披露し、住民全員を集めて現在置かれている全ての状況を説明することを提案した。
この国に民主主義はない。
住民の全員に説明する意義がなかなか理解されず、会議は長引いた。
司徒のウンランさんはニコニコしながら煮え切らないし、剣士長のフェイロンさんも難しい顔をしてた。
けど、最終的に司空のミンリンさんの言葉で決まった。
「知るということは、力です」
学問を修めることに情熱を注ぎ、27歳にして純潔というミンリンさんの言葉には説得力があった。ミンリンさんの設計した荷運び櫓が稼働し始め、威力を発揮し始めていたことも言葉に重みを増していた。
そして今、宮城の南側にある広場に、ジーウォ城に残る住民が総て集まっている。
その数、およそ1,200人。
剣士が約300名と、それ以外が約900名。元は約2,500人が暮らしていたというジーウォ城内の人口は、半数以上が人獣の爪牙に果てた。
連弩の威力を目にした住民たちの、どよめきが収まると、俺は皆に向かって声を張り上げた。
「ジーウォ城に兵士団を復活させます!」
遠い昔に初代マレビトの打った剣によって剣士団が創設され、「兵」という概念は自然と廃れていた。シキタリで禁じられた訳ではなく、自然消滅していた。
その「兵」の復活を、俺は宣言した。
長弓隊、短弓隊、槍隊、熱湯隊、荷運び隊、その総てを表す「兵」という概念は、皆の心をひとつにするのに必須の核になると考えた。
「兵士団は、剣士団を援け、その闘いを支え、共に人獣に立ち向かいます!」
闘いの主力である剣士団のプライドを損ねないよう、慎重な言い回しで、新たに設ける兵士団の役割を説明すると、集まった群衆からは大きな歓声が起きた。剣士団も概ね肯定的に捉えてくれているようだ。
「この城の食糧は、あと60日ほどで尽きます。それまでに第3城壁を越え、外城壁との間に広がる農地を取り戻さないと、私たちは餓えて死にます」
俺の言葉に、皆は水を打ったように静まり返った。
「農地の奪還後に、育ちの速い作物を植えて収穫することまで考えると、残された時間は約35日ほどです。それまでに、どうしても人獣を退けなくてはいけません! そのために、今、この連弩が祖霊から遣わされたと、俺は考えています!」
絶望に染まっていた群衆の目に、少し熱が戻ってくるのを感じた。
「今までの王国のやり方とは違うかもしれない。それでも! 今、この城に残る全員の心をひとつにしないと、あの怖ろしい人獣たちを押し返せるとは、俺には思えません! だから、良くない情報、心が折れそうになる情報も、皆で分かち合い、皆で支え合って、立ち向かいたいんです!」
静まり返っていた群衆から、やがて声が上がり始めた。
――やろう。
――やらなければ、死ぬだけだ。
――マレビト様は、俺達を信じてくれてるんだ。
――やろう。
――やって、やろうじゃないか。
ザワめきが広がり、やがて、大きなうねりのような歓声が再び巻き起こった――。
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