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109.温もりの大浴場(3)
「弓を作りたいんだ」
「弓?」
――くにっ(左)。
「うん。新しい弓」
「ほうほう。いいね! 新しい弓」
――くにっ(右)。
「俺にもハッキリとしたイメージはなくて、こう、自動で連射できる弓を作りたいんだ」
「ふむふむ」
俺も全く構造を知らない連弩のことを一生懸命、シーシに伝えようとするんだけど、もちろん伝わらない。
むしろ、シーシが粘り強く俺のイメージを聞き出そうとしてくれてるのが、申し訳ない気持ちになる。
いや、実は気付いていた。槍づくりをお願いしたとき、シーシはなかなか槍という概念を理解できなかった。
シーシは1を100にする天才職人だけど、ゼロを1にするのは苦手だ。
俺が伝える日本の知識や、ミンリンさんの描く設計図を基に、1を100どころか1000にもしてしまうけど、まったくのゼロから発想するのは、あまり得意じゃない。
でも、どうにか伝えたい。まったくの素人を、短弓が使えるところまで育ててる時間はない。誰でも扱える弓が、どうしてもほしい。
「分かった!」
と、シーシが言った。
「一緒に作ろう! マレビト様!」
その時、ふと、背中に密着してるシーシの肌の温もりを感じた。
気が付くと、俺は随分、落ち着きを取り戻している。
思い起こされるのは、賊に背中を向けて抱き締めてくれたシアユンさんの温もり、それよりずっと前、最初にシアユンさんが背中を手拭いで流してくれたときに触れた手の温もり。
そして、今、背中で泡立つ液体越しに、じんわりと包まれるようなシーシの温かさ。
――ボクは、マレビト様がマレビトで良かったのだ!
シーシが言ってくれた言葉も耳に蘇る。
俺は、ようやく顔に少し笑みを浮かべることが出来て、シーシに応えた。
「一緒に作ろう! お願いするよ、シーシ!」
「任せておくのだ!」
その時、左腕をツイファさんが、右腕をユーフォンさんが、……包んだ。
――むきゅ(左腕)。
――ふにゅん(右腕)。
あっ……。そこも律儀に、いつも通りなんスね?
昨夜の出来事も分かってる、素晴らしい人選だと思いますよ。
ただね、少し落ち着いたとはいえ、色々あり過ぎて脳のキャパ少なくなってますよ? 俺。
不意打ちのように包まれた柔らかで温かな感触。
一瞬で気恥ずかしさがマックスに達した俺の頭は、ポンッと爆ぜた――。
ええ、そうですよ。
色々、悩んでたことも、吹っ飛びましたよ……。
――むきゅ。
ツイファさんが、いつもの澄まし顔で微笑んだ。
「弓?」
――くにっ(左)。
「うん。新しい弓」
「ほうほう。いいね! 新しい弓」
――くにっ(右)。
「俺にもハッキリとしたイメージはなくて、こう、自動で連射できる弓を作りたいんだ」
「ふむふむ」
俺も全く構造を知らない連弩のことを一生懸命、シーシに伝えようとするんだけど、もちろん伝わらない。
むしろ、シーシが粘り強く俺のイメージを聞き出そうとしてくれてるのが、申し訳ない気持ちになる。
いや、実は気付いていた。槍づくりをお願いしたとき、シーシはなかなか槍という概念を理解できなかった。
シーシは1を100にする天才職人だけど、ゼロを1にするのは苦手だ。
俺が伝える日本の知識や、ミンリンさんの描く設計図を基に、1を100どころか1000にもしてしまうけど、まったくのゼロから発想するのは、あまり得意じゃない。
でも、どうにか伝えたい。まったくの素人を、短弓が使えるところまで育ててる時間はない。誰でも扱える弓が、どうしてもほしい。
「分かった!」
と、シーシが言った。
「一緒に作ろう! マレビト様!」
その時、ふと、背中に密着してるシーシの肌の温もりを感じた。
気が付くと、俺は随分、落ち着きを取り戻している。
思い起こされるのは、賊に背中を向けて抱き締めてくれたシアユンさんの温もり、それよりずっと前、最初にシアユンさんが背中を手拭いで流してくれたときに触れた手の温もり。
そして、今、背中で泡立つ液体越しに、じんわりと包まれるようなシーシの温かさ。
――ボクは、マレビト様がマレビトで良かったのだ!
シーシが言ってくれた言葉も耳に蘇る。
俺は、ようやく顔に少し笑みを浮かべることが出来て、シーシに応えた。
「一緒に作ろう! お願いするよ、シーシ!」
「任せておくのだ!」
その時、左腕をツイファさんが、右腕をユーフォンさんが、……包んだ。
――むきゅ(左腕)。
――ふにゅん(右腕)。
あっ……。そこも律儀に、いつも通りなんスね?
昨夜の出来事も分かってる、素晴らしい人選だと思いますよ。
ただね、少し落ち着いたとはいえ、色々あり過ぎて脳のキャパ少なくなってますよ? 俺。
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一瞬で気恥ずかしさがマックスに達した俺の頭は、ポンッと爆ぜた――。
ええ、そうですよ。
色々、悩んでたことも、吹っ飛びましたよ……。
――むきゅ。
ツイファさんが、いつもの澄まし顔で微笑んだ。
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