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153.城壁上の偉業(1)
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外征隊が城門から出陣し夕陽に染まる。今日も南側城壁の上から見守る。
やがて、秘密裡に連行された褐色女子(巨)が姿を見せた。
手枷を嵌められ、目隠しをされ、フェイロンさんと、柿色髪の女剣士エジャが両脇を固めている。
あの鬼強いフェイロンさんをしても、ここまで警戒させるのかと、軽い驚きがあった。
「手枷と目隠しを外してもらえませんか?」
と、俺が言うと、エジャは躊躇いを見せたけど、フェイロンさんが頷いた。
手枷と目隠しを外された褐色女子(巨)の銀髪が風にたな引き、夕陽が紅く染めた。
「2人で話したい」
と、俺が言うと、フェイロンさんは「お気を付けを」とだけ言って、城壁の上で少し離れた。
褐色女子(巨)はその碧い瞳を俺に向け、無表情に見詰めてくる。
黒い装束は身体のラインにピッタリとしたデザインで、微細に造られた金の装飾が夕陽を反射している。
「北のお方……」
と、俺が話し掛けても、表情はピクリとも動かない。
「城壁の外を見てください」
俺が指差すと、褐色女子(巨)は物憂げに目線を動かし、そして、目を大きく見開いた。
城壁の外では大量の人獣たちがウロついている。虎型、獅子型、狼型……。
異形の人獣に目を釘付けにされた、褐色女子(巨)は一歩二歩と外に向かった。
「これは……」
「分かりません。突然、現れたのだそうです」
美しい褐色の横顔が、驚愕の色で満ちている。
「地下牢でキツネのような小さなヤツは見られたはずです」
と、俺が言うと、褐色女子(巨)はこちらに目を向け小さく頷いた。碧い瞳には恐れの色が浮かぶ。
「俺たちは今、こいつらと闘っています。既に半数以上、1,300人以上が、人獣に喰われました」
褐色女子(巨)は再び、城壁の外に視線を向けた。眼前の風景を信じることが出来ないようでもあった。
「あそこを見てください」
と、俺が指差した西側では外征隊が人獣と戦闘している。
俺たちの立つ南側城壁の東側、その反対の西側半分には長弓隊と短弓隊が展開していて、次々に矢が放たれている。
東の端に立つ俺たちからも、戦闘の様子はよく見える。
「人獣は強い。だからと言って、黙って喰われてやる訳にはいきません。城の人間が一丸となって闘っています」
「呪いはどうした……?」
と、褐色女子(巨)は侮蔑するような調子で尋ねてきた。
「シャンの者は呪いを用いるのではないのか?」
「今、この城に呪術師はいません」
「其方は呪い師に呼ばれた異世界の者なのであろう? 呪いは使えぬのか?」
……幼馴染にフラれたばかりでして。とか言っても埒があかないしなぁ。
と、一瞬、考えてしまった。
「残念ながら使えません」
「そうか……」
褐色女子(巨)は、しばらくの間、外征隊を睨むように見詰めた。
そして、口を開いた。
「余は……、いや、私の名はアスマという。シャンの者が北の蛮族と呼ぶ、リヴァント聖堂王国の女王であった」
……び、びっくりしたぁ。
女王? 女王様? 確かに気品ありますけど。
え? 聖堂王国?
なにそれ、カッコいい。
『聖』なのに装束は黒なんスね。
とかとか、心の中は大騒ぎだったけど、顔には微笑みを浮かべて、余裕を見せてた……、はず。
アスマと名乗った褐色女子は、話を続けた。
「追放されて、ここに流れ着いた」
と、アスマは自嘲するような笑みを浮かべた――。
やがて、秘密裡に連行された褐色女子(巨)が姿を見せた。
手枷を嵌められ、目隠しをされ、フェイロンさんと、柿色髪の女剣士エジャが両脇を固めている。
あの鬼強いフェイロンさんをしても、ここまで警戒させるのかと、軽い驚きがあった。
「手枷と目隠しを外してもらえませんか?」
と、俺が言うと、エジャは躊躇いを見せたけど、フェイロンさんが頷いた。
手枷と目隠しを外された褐色女子(巨)の銀髪が風にたな引き、夕陽が紅く染めた。
「2人で話したい」
と、俺が言うと、フェイロンさんは「お気を付けを」とだけ言って、城壁の上で少し離れた。
褐色女子(巨)はその碧い瞳を俺に向け、無表情に見詰めてくる。
黒い装束は身体のラインにピッタリとしたデザインで、微細に造られた金の装飾が夕陽を反射している。
「北のお方……」
と、俺が話し掛けても、表情はピクリとも動かない。
「城壁の外を見てください」
俺が指差すと、褐色女子(巨)は物憂げに目線を動かし、そして、目を大きく見開いた。
城壁の外では大量の人獣たちがウロついている。虎型、獅子型、狼型……。
異形の人獣に目を釘付けにされた、褐色女子(巨)は一歩二歩と外に向かった。
「これは……」
「分かりません。突然、現れたのだそうです」
美しい褐色の横顔が、驚愕の色で満ちている。
「地下牢でキツネのような小さなヤツは見られたはずです」
と、俺が言うと、褐色女子(巨)はこちらに目を向け小さく頷いた。碧い瞳には恐れの色が浮かぶ。
「俺たちは今、こいつらと闘っています。既に半数以上、1,300人以上が、人獣に喰われました」
褐色女子(巨)は再び、城壁の外に視線を向けた。眼前の風景を信じることが出来ないようでもあった。
「あそこを見てください」
と、俺が指差した西側では外征隊が人獣と戦闘している。
俺たちの立つ南側城壁の東側、その反対の西側半分には長弓隊と短弓隊が展開していて、次々に矢が放たれている。
東の端に立つ俺たちからも、戦闘の様子はよく見える。
「人獣は強い。だからと言って、黙って喰われてやる訳にはいきません。城の人間が一丸となって闘っています」
「呪いはどうした……?」
と、褐色女子(巨)は侮蔑するような調子で尋ねてきた。
「シャンの者は呪いを用いるのではないのか?」
「今、この城に呪術師はいません」
「其方は呪い師に呼ばれた異世界の者なのであろう? 呪いは使えぬのか?」
……幼馴染にフラれたばかりでして。とか言っても埒があかないしなぁ。
と、一瞬、考えてしまった。
「残念ながら使えません」
「そうか……」
褐色女子(巨)は、しばらくの間、外征隊を睨むように見詰めた。
そして、口を開いた。
「余は……、いや、私の名はアスマという。シャンの者が北の蛮族と呼ぶ、リヴァント聖堂王国の女王であった」
……び、びっくりしたぁ。
女王? 女王様? 確かに気品ありますけど。
え? 聖堂王国?
なにそれ、カッコいい。
『聖』なのに装束は黒なんスね。
とかとか、心の中は大騒ぎだったけど、顔には微笑みを浮かべて、余裕を見せてた……、はず。
アスマと名乗った褐色女子は、話を続けた。
「追放されて、ここに流れ着いた」
と、アスマは自嘲するような笑みを浮かべた――。
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