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182.ひねられ大浴場

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「ズハンをろうから出してくれたら、とっておきの情報を教えてやるぞ」

と言うウンランさんと、ひどい言葉でののしるズハンさんの顔を見てから大浴場に向かった。

今朝はシャオリンがひかふくらみを押し当てて、背中をくれてる。

――ふにん(上)。

子爵ししゃく様の膨らみは控え目なのに、しっかりやわらかみがある……。お、お祖父じいさんと会った後のお孫さんにっていうのは、ちょっと引っかかるけど。

――ふにん(下)。

「私がお流しするときは、良くない知らせばかりですみません」

と言ったシャオリンは、赤紫あかむらさき色の髪をした女子をそばに呼んだ。

正面ではなく少し斜め前に両膝りょうひざいたその女子とは、湯船ゆぶねで話したことがある。たしか司徒府しとふ下働したばたらきをしてるって言ってただ。

――ふにん(上)。

「改めまして、ディエと申します」

と言って、斜め前で胸をらした赤紫あかむらさき髪の女子は腰をクイッと動かした。

……バ、バレてるヤツだ。

司徒府しとふなどでスタイルのいいディエを見かけると、ツンと上向きの胸もさることながら、プリッと引き締まったお尻に目が行っていた。

わざわざ斜め前に膝をいたのは、お尻を見やすくしてくれてるのか……。穴があったら入りたい……。

――ふにん(下)。

シャオリンが声をひそめた。

「ディエは大夫たいふの娘でございます」

大夫――、爵位しゃくいを持たない下級貴族って聞いてる。き、貴族の娘さんかぁ。

――ふにん(上)。

シャオリンにうながされたディエが、がちに口を開いた。

「私の父たちが、ズハン殿を出せと、マレビト様に直談判じかだんぱんおよぼうとしております」

シャオリンが耳元でささやくように補足した。

「ズハン殿は病気療養りょうよう中ですので……」

――ふにん(下)。

地下牢に収監しゅうかんしたままのズハンさんも大夫たいふだ。リーファ姫の命をねらったことは伏せてある。けど、既に10日以上。同じ大夫たいふたちがあやしみ始めたか。

――ふにん(上)。

とは言え、ことがおおやけになれば死罪はまぬがれない。

――ふにん(下)。

「スイラン様には、まだ報告しておりません」

役職は上とはいえ平民のスイランさんでは、大夫たいふのオッサンたちをさばくのは負担が大きいと判断したか。

と、ディエが泡立あわだてた手拭てぬぐいから泡を移して、左腕をだ。

「し、失礼いたします……」

――ぷるり。

な、なんだか弾力だんりょくがしっかりした膨らみですね……。

――ぷるり(左腕/下)。

背中の柔らかな感触との差がハッキリ分かって、それはそれで気恥ずかしい。

――ふにん(上)。

シャオリンが耳元で続けた。

「ディエには悪いのですが、シュエンの言い方に合わせると、仕事が出来ずに影で文句ばかり言ってる人たちです」

ふむ。

――ぷるりん(左腕/上)。

ん? ディエが身体からだをよじってるのは、お尻をさわらせようとしてるのか……。いや、それ無理が……。照れるより、無理な姿勢が心配になる。

「どういたしましょう? 私が爵位しゃくいにものを言わせて黙らせることも出来るのですが、マレビト様のさりかたとは違う気もしまして」

「そうか、そうだな。……ディエ」

と、身体からだをグイッとひねろうと頑張っているディエに話しかけた。

「無理しないで……」

「あ……」

「お父さんたちとは、俺の方から話をしに行くよ」

「あ、ありがとうございます……」

と、ディエはほほを赤くして頭を下げた。

放っておいたら、手をとって尻を触らせて来そうな勢いだったので早めに止められて良かった。てるだけでも気恥ずかしくてたまらないのに……。

と思ってる俺の顔もだけど――。
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