【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

文字の大きさ
187 / 297

185.かもしれない秩序(1)

しおりを挟む
大夫たいふたちのことはともかく、一度、ズハン殿の話をよく聞いていただけませんでしょうか?」

と、スイランさんはぐ俺を見詰みつめたまま言った。

「ズハン殿は私にはえらぶるところもないかたでした。この資料もまるで私にぎをするように、丁寧にまとめてあります」

うーん。地下牢ちかろうで俺にどくづいてばかりのズハンさんとイメージが一致いっちしない。

「ズハン殿は、元々はウンラン様が王都から来られたときに、一緒におうつりになられた方です。この資料に目を通せば通すほど、今さらながら、何かわけがあるような気がしてならないのです……」

「分かりました。一度、じっくり向き合ってみます」

そろそろシャオリンとの約束の時間なので、執務室しつむしつを出ようとした時、スイランさんが何気なにげなくたずねてきた。

「母が外征がいせい隊に加わるという話は本当ですか……?」

「ええ。ヨウシャさんが志願しがんしてくださったと聞いてます」

「……ホントに何を考えているのか」

「ヨウシャさんから聞いたんですか?」

と、俺がたずねると、スイランさんがけわしい顔付きをした。

「母とはもう何年も話しておりません」

「あ……、そうなんですね……」

「考え方が合わないのでございます」

それ以上の質問をけない感じだったので、俺はそのまま部屋を出た。

お母さんをくしたジンリーもいれば、近くにいるのに分かり合えないスイランさんもいる。この小さな小さな城の中でさえ、人それぞれだ。

シャオリンがひそかに大夫たいふたちを集めてくれた部屋に入ると、これまたんなそろってエビスがお。こわいなぁ、貴族って。

と思いながら、席に着いた。

ズハンさん以外にジーウォ城に残る大夫たいふは4んなズハンさんとは違って、数代前すうだいまえからジーウォという家柄いえがらだ。

見ると奥の方にディエも座っている。シャオリンではなく、父親に同席を求められたようだ。

「ズハン殿のお加減かげんはいかがですかな?」

と、代表したエビス顔がたずねてきた。

「もうしばらく、隔離かくりが必要ですね」

「とはいえ、既に10日以上。そろそろ我らも見舞いになどうかがいたいのですが……、はて? どちらで療養りょうようされているのやら」

「それにはおよびません。宮城きゅうじょう衛士団えいしだんがキチッと看病かんびょうしておりますから」

後ろに座ったエビス顔のひとつが、般若はんにゃの顔付きになってつぶやいた。

「……我ら大夫たいふないがしろにされては、おさまるものもおさまりませんぞ」

ま、そういうご用事ですよね。俺も冷ややかに答えた。

「と、言うと?」

代表のエビス顔がつくろうように、おもねった声を上げる。

「なになに。我ら大夫たいふには長きに渡ってジーウォの統治とうちに関わってきた知恵がありもうす。マレビト様にもそれを活用していただきたいというだけの話ですよ」

「なるほど」

「私は娘のディエもささげておるのですぞ。マレビト様への忠義ちゅうぎるぎございません」

そうか。この代表エビス顔がディエのお父さんか。後ろを見るとディエが青ざめた顔でうつむいている。

そりゃそうだ。自分を道具のように言われたら、そういう反応にもなるよね。俺もあまりいい気分はしない。というか、不愉快ふゆかいだ。

俺はスッとあごを上げて身をらした。

雰囲気を変えた俺にエビス顔たちが身構みがまえるのが分かった――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

処理中です...