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210.異世界間交信
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「37日……」
と、俺が召喚されてからの日数に、里佳は絶句した。
里佳がリーファ姫の転生した姿だったと聞かされて、俺が絶句した後のことだった。
「時間の流れが違うのね……」
と、ようやく口を開いた里佳が呟いた。
「えっ? そっちは?」
「卒業式の翌日」
「えっ? マジで?」
「だいたい30倍くらいかな? こっちでは1日半くらいしか経ってないから」
卒業式……。そう。俺が里佳の気持ちも考えずに告白なんかして、泣かせてしまった。
里佳の主観では1日半しか経ってないのに、気丈に振る舞ってくれてる。ホントに申し訳ない。
「ホントに、ごめん」
「なによ、急に?」
「いや……、告白なんかして……」
「な、なんで謝るのよ……?」
「いや、泣かせちゃったし」
「え?」と、里佳。
「え?」と、俺。
「それは……、優吾を異世界に行かせるのが悪くて……」
「そうか……」
「だから、ごめん――」
あっ!
あの「ごめんなさい――」って、そういうことだったのか……。
あれ?
「ひょっとして、俺、フラれてない?」
「フッてはないわよ……」
「あ。そうなんだ」
「なによ、その反応?」
「……付き合う?」
「はあ?」
「イヤ?」
「イヤっていうか……」
「元々、遠距離恋愛になるの覚悟してたし」
「バカね」
里佳は頬を少し赤くした。
「でも、アレでしょ? 勇吾はマレビトなんだから純潔の乙女をとっかえひっかえ、よろしくやってるんでしょ……?」
「ヤ、ヤッてないんだ……」
「はあ……?」
「だって……、俺、里佳のことが好きだし……」
「え? じゃあ、呪力を発現してないんじゃないの?」
「うん。してない。けど、昨日ようやく第2城壁を奪還したんだ」
「ど、どうやって……?」
俺は兵士団を復活させたこと、狩人や農民も戦闘に参加してもらってること、そして回廊決戦のことを手短かに説明した。
「呆れた」
と、里佳は笑った。
「私に義理立てして、そこまでやる? ……でも、皆んなをまとめてシキタリまで乗り越えさせるなんて、さすが勇吾ね」
「へへっ。大変だったんだから」
「そうよね。ありがとう、皆んなを救けてくれて」
この感じ。里佳だ。俺の知ってる里佳と話してる。
「あれ?」
と、里佳が怪訝な顔をした。
「じゃあ、呪力もなしに、この『交信』はどうやってるの?」
「色々、話したいんだけど、あまり時間がないんだ……」
祖霊は『月が中天に昇る僅かな時間』と言っていた。次に交信出来るのは、満月が欠け始める夜。28日後になる。
「いいよ。付き合おっか」
と、里佳が言った。
「えっ……?」
「もう、勇吾。気になって他の話が出来ないんでしょ? いいよ。付き合おう。私を恋人にしてください」
「ホント?」
「昨日もOKするつもりだったし……」
「そうだったんだ」
「あ。言っとくけど、勇吾をマレビトに選んだのは私じゃなくて祖霊だから」
「うん?」
「私たちを異世界間恋愛にしたのは、私じゃなくて祖霊だからね」
「わ、分かった……」
「ふふっ。末永く、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ! よろしくお願いします」
と、2人で頭を下げ合って、2人で照れ笑いした時、俺を包んでる光が弱くなり始めた。交信の時間が終わろうとしていた。
「次はいつ?」
と、里佳が尋ねた。
「こっちの時間で28日後だから、たぶんそっちでは明日」
「そうか……。頑張ってね」
「うん、頑張るよ」
「私の故郷を救けて」
里佳と見詰め合う中、俺を包んでいた白い光は消え、元の真っ暗な寝室に戻った。
外からは戦闘音が響いてくる。
巻き物をどけると、青い髪をした里佳――リーファ姫が穏やかな表情で眠っていた。
と、俺が召喚されてからの日数に、里佳は絶句した。
里佳がリーファ姫の転生した姿だったと聞かされて、俺が絶句した後のことだった。
「時間の流れが違うのね……」
と、ようやく口を開いた里佳が呟いた。
「えっ? そっちは?」
「卒業式の翌日」
「えっ? マジで?」
「だいたい30倍くらいかな? こっちでは1日半くらいしか経ってないから」
卒業式……。そう。俺が里佳の気持ちも考えずに告白なんかして、泣かせてしまった。
里佳の主観では1日半しか経ってないのに、気丈に振る舞ってくれてる。ホントに申し訳ない。
「ホントに、ごめん」
「なによ、急に?」
「いや……、告白なんかして……」
「な、なんで謝るのよ……?」
「いや、泣かせちゃったし」
「え?」と、里佳。
「え?」と、俺。
「それは……、優吾を異世界に行かせるのが悪くて……」
「そうか……」
「だから、ごめん――」
あっ!
あの「ごめんなさい――」って、そういうことだったのか……。
あれ?
「ひょっとして、俺、フラれてない?」
「フッてはないわよ……」
「あ。そうなんだ」
「なによ、その反応?」
「……付き合う?」
「はあ?」
「イヤ?」
「イヤっていうか……」
「元々、遠距離恋愛になるの覚悟してたし」
「バカね」
里佳は頬を少し赤くした。
「でも、アレでしょ? 勇吾はマレビトなんだから純潔の乙女をとっかえひっかえ、よろしくやってるんでしょ……?」
「ヤ、ヤッてないんだ……」
「はあ……?」
「だって……、俺、里佳のことが好きだし……」
「え? じゃあ、呪力を発現してないんじゃないの?」
「うん。してない。けど、昨日ようやく第2城壁を奪還したんだ」
「ど、どうやって……?」
俺は兵士団を復活させたこと、狩人や農民も戦闘に参加してもらってること、そして回廊決戦のことを手短かに説明した。
「呆れた」
と、里佳は笑った。
「私に義理立てして、そこまでやる? ……でも、皆んなをまとめてシキタリまで乗り越えさせるなんて、さすが勇吾ね」
「へへっ。大変だったんだから」
「そうよね。ありがとう、皆んなを救けてくれて」
この感じ。里佳だ。俺の知ってる里佳と話してる。
「あれ?」
と、里佳が怪訝な顔をした。
「じゃあ、呪力もなしに、この『交信』はどうやってるの?」
「色々、話したいんだけど、あまり時間がないんだ……」
祖霊は『月が中天に昇る僅かな時間』と言っていた。次に交信出来るのは、満月が欠け始める夜。28日後になる。
「いいよ。付き合おっか」
と、里佳が言った。
「えっ……?」
「もう、勇吾。気になって他の話が出来ないんでしょ? いいよ。付き合おう。私を恋人にしてください」
「ホント?」
「昨日もOKするつもりだったし……」
「そうだったんだ」
「あ。言っとくけど、勇吾をマレビトに選んだのは私じゃなくて祖霊だから」
「うん?」
「私たちを異世界間恋愛にしたのは、私じゃなくて祖霊だからね」
「わ、分かった……」
「ふふっ。末永く、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ! よろしくお願いします」
と、2人で頭を下げ合って、2人で照れ笑いした時、俺を包んでる光が弱くなり始めた。交信の時間が終わろうとしていた。
「次はいつ?」
と、里佳が尋ねた。
「こっちの時間で28日後だから、たぶんそっちでは明日」
「そうか……。頑張ってね」
「うん、頑張るよ」
「私の故郷を救けて」
里佳と見詰め合う中、俺を包んでいた白い光は消え、元の真っ暗な寝室に戻った。
外からは戦闘音が響いてくる。
巻き物をどけると、青い髪をした里佳――リーファ姫が穏やかな表情で眠っていた。
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