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222.王都、そして南へ
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「私が騎馬の練習ですか……?」
と、イーリンさんが怪訝な表情で問い返した。
「はい。雪が融けたら王都の探索に出たいんです」
「あ……」
「だから、今回は王都出身の方に同行して貰いたいんです。だけど、はぐれ人獣に遭遇するかもしれないので騎馬で行きたいんです。で、強くて王都出身でってなると、イーリンさんが適任だと思って。お願い出来ませんか?」
「光栄なことです」
ということで、アスマたちの指導でイーリンさんの特訓が始まった。
王都の探索にも行くけど、さらに南に3代マレビトがいることも分かっている。まずは会いに行きたい。
リーファ姫を目覚めさせる方法、つまり里佳を異世界に呼び戻す方法を、3代マレビトなら知ってるんじゃないかと思う。
「さすがはダーシャンの剣士。勘がいい」
と、アスマとラハマからイーリンさんに合格点が出る頃、里佳と7回目の交信の夜が来た。
「明日、出発するよ。王都の様子も見て来る」
と、里佳に告げた。
「そうか。気を付けてね」
と言う里佳のいる場所に見覚えがない。
「あれ? そこ、どこ?」
「あ……、うん。佐藤さんの病院に入院させて貰ったの」
「え? 病気? 佐藤さんって?」
「ああ、初代マレビト様の佐藤さん」
そうか。そんな名前だった。56日前に聞いた切りだったので忘れてた。
「佐藤さんが言うにはね、私がそっちで目覚めたら、今度はこっちの私が眠り続けるんじゃないかって」
「そうか、なるほどね……」
「飲まず食わずで健康にスヤスヤ寝てたら、日本じゃ怪奇現象でしょ?」
「そりゃそうだな」
「だから、佐藤さんの病院なら事情も分かって貰えるし、一番いいかなって思って」
「里佳の親には、なんて言ってるの?」
「旅行いくって言ってある。ウチの親だから心配はしてないけど、佐藤さんには2週間して目が覚めなかったら親に連絡してくれってお願いしてある」
「2週間か……」
「そっちでは1年ちょっとになるでしょ? 14日×28=392日で。だから上手く目覚めることが出来たら、1年の間にベストな形を探ろう」
「分かった。まずは3代マレビトを探し出すことだな」
「うん。お願いね。こっちは準備万端整えたから、突然、そっちに呼び戻されても大丈夫だから!」
「なるほど! それで入院か」
「いつ来てもいいように病室から出ないし!」
「分かった! だけど、3代マレビトはだいぶ遠くにいるみたいなんで、次の交信は出来ないと思う」
「そっか……、明日の交信はなしね」
「うん」
「ほんとに無理しないでね」
「うん。大丈夫!」
28日おきの、それも僅かな時間の交信だ。それでも7回目ともなれば、ようやく里佳と付き合ってるんだなあという実感が湧いて来た。
いや。里佳も俺のことを好きでいてくれてることを実感できてきたってことかな?
城でヤーモンとエジャの新婚カップルを見かけても「俺にも彼女できたもんね!」って、気持ちがフッとよぎる。
交信の光の向こう側で、里佳がクスッと笑った。
「それにしてもさ……」
「なに?」
「私たち、初エッチするのに必死過ぎない?」
「それな!」
と、2人で顔を赤くして笑い合った。
交信が途絶えるまで、お互いの情報交換もしつつ、彼氏彼女の会話を楽しめた。
そして、夜が明けると王都探索、3代マレビト探索に向けて出発した――。
と、イーリンさんが怪訝な表情で問い返した。
「はい。雪が融けたら王都の探索に出たいんです」
「あ……」
「だから、今回は王都出身の方に同行して貰いたいんです。だけど、はぐれ人獣に遭遇するかもしれないので騎馬で行きたいんです。で、強くて王都出身でってなると、イーリンさんが適任だと思って。お願い出来ませんか?」
「光栄なことです」
ということで、アスマたちの指導でイーリンさんの特訓が始まった。
王都の探索にも行くけど、さらに南に3代マレビトがいることも分かっている。まずは会いに行きたい。
リーファ姫を目覚めさせる方法、つまり里佳を異世界に呼び戻す方法を、3代マレビトなら知ってるんじゃないかと思う。
「さすがはダーシャンの剣士。勘がいい」
と、アスマとラハマからイーリンさんに合格点が出る頃、里佳と7回目の交信の夜が来た。
「明日、出発するよ。王都の様子も見て来る」
と、里佳に告げた。
「そうか。気を付けてね」
と言う里佳のいる場所に見覚えがない。
「あれ? そこ、どこ?」
「あ……、うん。佐藤さんの病院に入院させて貰ったの」
「え? 病気? 佐藤さんって?」
「ああ、初代マレビト様の佐藤さん」
そうか。そんな名前だった。56日前に聞いた切りだったので忘れてた。
「佐藤さんが言うにはね、私がそっちで目覚めたら、今度はこっちの私が眠り続けるんじゃないかって」
「そうか、なるほどね……」
「飲まず食わずで健康にスヤスヤ寝てたら、日本じゃ怪奇現象でしょ?」
「そりゃそうだな」
「だから、佐藤さんの病院なら事情も分かって貰えるし、一番いいかなって思って」
「里佳の親には、なんて言ってるの?」
「旅行いくって言ってある。ウチの親だから心配はしてないけど、佐藤さんには2週間して目が覚めなかったら親に連絡してくれってお願いしてある」
「2週間か……」
「そっちでは1年ちょっとになるでしょ? 14日×28=392日で。だから上手く目覚めることが出来たら、1年の間にベストな形を探ろう」
「分かった。まずは3代マレビトを探し出すことだな」
「うん。お願いね。こっちは準備万端整えたから、突然、そっちに呼び戻されても大丈夫だから!」
「なるほど! それで入院か」
「いつ来てもいいように病室から出ないし!」
「分かった! だけど、3代マレビトはだいぶ遠くにいるみたいなんで、次の交信は出来ないと思う」
「そっか……、明日の交信はなしね」
「うん」
「ほんとに無理しないでね」
「うん。大丈夫!」
28日おきの、それも僅かな時間の交信だ。それでも7回目ともなれば、ようやく里佳と付き合ってるんだなあという実感が湧いて来た。
いや。里佳も俺のことを好きでいてくれてることを実感できてきたってことかな?
城でヤーモンとエジャの新婚カップルを見かけても「俺にも彼女できたもんね!」って、気持ちがフッとよぎる。
交信の光の向こう側で、里佳がクスッと笑った。
「それにしてもさ……」
「なに?」
「私たち、初エッチするのに必死過ぎない?」
「それな!」
と、2人で顔を赤くして笑い合った。
交信が途絶えるまで、お互いの情報交換もしつつ、彼氏彼女の会話を楽しめた。
そして、夜が明けると王都探索、3代マレビト探索に向けて出発した――。
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