キャロットケーキの季節に

秋乃みかづき

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(2)イングリッシュガーデン

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 すぐだよって言ってたとおり、本当にすぐだった
乗ったと思ったら数分で下車
「ここから住宅街抜けて、少しだけ歩くね~」
おー綺麗な家がいっぱい
こういうところ散歩するのも楽しいな
電信柱から覗く猫もカワイイ

そういえば、お兄さんの名前聞いてなかった
向こうに着いたら教えてもらおう



10分もしないうちに、住宅街から自然の多い雰囲気へと変わっていった
するとお兄さんの足が止まり、
「ここ、お待たせ。」
指差した先には、小さな一軒家
そして白いベンチが置いてある素敵な庭も

「えっなんかイメージしてたのと違う!
男っぽさ全開な美容室かと思ってたら、すんごいお洒落というか、素敵というか、絵本に出てきそうなお店ですね!」
男の自分から見てもあまりにセンスの良い店だったので、興奮してベラベラと喋ってしまった

「めっちゃ早口 笑。
今カギ開けるから、とにかく入って。」

店に入った瞬間、また感動に襲われる
客席はたった2つというこの小さな空間に、控えめなんだけど品のあるヨーロピアンなテイスト
暖かな日差しが差し込む窓からは、先ほどの庭を眺めることができる

「イングリッシュガーデンって知ってる?
この店のコンセプトはそれなんだ」

へぇ~だからヨーロッパみたいって感じたのか

「今の季節は色がないけど、春は薔薇なんかが咲いてものすごく綺麗だよ。
美しすぎていつまでも眺めていたくなる。
お客さんにも好評いただいてるよ。」

人って好きなものの話をする時、ほんと良い顔するなぁ
お兄さんの顔、ただでさえ整ってるのに、今めちゃくちゃかっこいいや

早速シャワー台に上がり、髪を洗ってもらう
良い香りと共に、手慣れた指先でマッサージされる爽快感がたまらない
あ、そういえば名前聞かないと

「すみません、僕ずっとお尋ねするの忘れてて。
お兄さんのお名前は?
あと、ここ1人でやってるんですか?
それと今日は日曜ですけど、お店休みなんですか?」

「あははっ質問一度に多すぎ。
えっとじゃあ全部答えるね。
名前はたかまつれお(高松礼央)。
高いのたか、松の木のまつ、お礼のれいに中央のおうだよ。
1人で店やってる?はYES。
シャンプーカットパーマ、そして会計から予約受付も全部俺。
だから客席も2人分しかないの。
で、今日は日曜だけど?っていうのは、年に3.4回は日曜の休みも取ってて。
これも1人で経営してるからできることなんだけど。」

なんか名前から仕事から、何から何までかっこいいな
自分とは別世界というか



 …その後も色んな話をして、初めて会ったとは思えないくらい楽しい時間を過ごした
礼央さんは結局、洗髪だけじゃなくてカットまでしてくれて
ほんと来て良かったな
ていうかこんなに素敵な美容室があることも知らなかったし
職場の奴らや友達にも教えなきゃ

て、そうだ!

「礼央さん、すみません。
そういえば来週、姉が結婚式に出席するんですけど。
姉は今、美容室ジプシーで。
ヘアセットどこでやってもらおうかってずっと悩んでて…。
このお店の雰囲気、そして僕にしてくれたこのカット。
絶っ対に姉も気に入る!
礼央さんにお願いしても良いですか?」

「え、あ~と…
俺はそれはもちろん嬉しいし構わないけど、ご本人に確認しなくて大丈夫なの?」

「大丈夫です!
ほんと、ずっと良いお店ないかなって探してて。
ついには僕の所へ来て、一緒に口コミ見てとか誰かに聞いてこいとか。
大変だったんですよ。
ここ、ドンピシャです。」

「会ったことないけど、姉弟のそのやり取り、想像すると笑えるな 笑。
うん、分かった。
じゃあこれもせっかくの縁だし、ぜひ任せてよ。
来週の何曜日?」

「水曜日なんですけど、あ、ちなみに定休って…?」

「うちちょうど水曜が休みだわ。」

!!!

「あー…。
そうだったんですね。
最初にそれ聞かずにすみません。
そしたら他探してみるの気にしないで下さい。」

「違う違う、ちょうど良いじゃんって意味だよ。
ありがたいことに、2ヶ月先まで予約びっしりで。
営業の日だったら、じっくりやってあげられなかったと思うから。
もともとこういうイベントの日には臨時でやってるから、なんも気にしないで。
むしろお姉さんにもぜひお会いしたいし。」

「え良いんですか?
じゃ、じゃあお願いします。
詳しい時間は姉に確認して、後日お店に電話する形で大丈夫ですか?」

「店に電話とか面倒くさいじゃん 笑。
こうなったら、連絡先交換しとこうよ。
バーコード出して?」

ピッ

偶然のハプニングから連絡先を交換するまで
これがたった半日で起こったなんて
後から思うと、運命だったのかな?

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