キャロットケーキの季節に

秋乃みかづき

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(25)チケット2枚

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 クリスマスが終わると、世間はすっかり年末モード
職場の社員食堂では、
実家に帰るとか海外旅行に行くとか
そんな話で盛り上がってる

僕は東山と向き合いながら、生姜焼き定食を食べていた

「小井川は年末年始、なにすんの?」

東山に聞かれ、そういえば全くノープランだった事に気がつく

「あー…。
考えてなかった。
でもいつも通り、親父に会いに行って、数日泊まって。
で帰ってきたら、ランニング三昧って感じかな。」

「つまんねー 笑。
デカい計画が何にもないじゃん。」

「穏やかにゆっくり過ごす。
これが年末年始のプラン 笑。」

「そうかよ 笑。
あのさ、全然話し変わるんだけど、お前ミュージカルとかって興味ある?」

「は?なんで急に?」

水をガッと飲み干した東山は

「あのさー、俺フラれちゃって…。」

「え。
ちょっと前から付き合ってた、保険会社の人?
まだ2、3ヶ月だよね?
ていうか、それとミュージカル、なんの関係があるの…。」

「いや聞いてよ!
俺はさ、彼女を喜ばせたくて、人気のミュージカルチケットを取ったの。
しかもこの時期だから、ほんとにやっとの思いでさ。
だけど昨夜、あなたは軽い~とかなんとか言われて喧嘩して。
んでそのまま別れるってなっちゃって。
このチケット、もう明日なんだよ…。
急すぎて、売るっていうのもなんか面倒だし。
誰かもらってくれる人がいたら、それが1番良いかなーって。
で、とりあえず小井川に声かけてみた。」

そう言って財布から2枚のチケットを取り出し、渡された

「へ~!
これテレビでかなり宣伝してたやつじゃん。
よく取れたね。
けどもったいないから、誰か誘って自分で行けばいいのに。」

「俺、もともとミュージカルって興味ないんだよ。
彼女のために取ったってだけで。
多分座ってても寝ちゃうから、それこそもったいねぇよ。」

「…それ聞いたら、じゃあ遠慮なくいただこうかな。
僕はこういうの好きだから。」

「小井川、本も読んでるしな。
絶対こういう芸術系好きだと思った!」

「いやあの…本とミュージカルは違うけど…
って、まあいっか。
そしたらいくら払えばいい?
…あ、ごめんチケットに書いてある。
1万円の2枚だから、2万円だね。」

僕が財布を取り出すと

「いらない!いらない!
これは売るんじゃなくて、誰かにもらって欲しいの。
むしろ、困ってたとこ助けてくれてありがとうだから。」

「えっ。
でも2万円って大金だから、そういう訳にはいかないよ…。」

「じゃあさ、今度飲みに行ったらおごってよ。
年明けたらさ。
小井川とゆっくり話したいし、現金もらうよりそっちの方が嬉しい。」

「ん~…。
そうなの?
じゃあ…分かった。
だけど行ったらてんこ盛りに注文してね?」

「笑。
言われなくてもそのつもり!
あー助かった。
マジありがとな。
でもさ、俺ってそんな軽いかな?
いつもフラれるの、大体これが理由なんだよな~。」

…返答に困る

「そういう明るいというか、重く考えないところが東山の良いところだけど。
でも女の子からしたら、もう少し真剣にって感じるのかもしれないね。」

苦笑いしながら、こう返すのがやっとだった。



 「明日?!」

僕と礼央さんは、それぞれベッドに寝転がりながら電話中。

「急なんですけど、すごく良いチケットだから、確認する前に受け取っちゃって。
僕も礼央さんも今日で仕事終わりだし、大丈夫かなーって…。」

「そりゃ行きたいけど、何時なの?」

「えっとそれが結構早くて…。
お昼の12時半開場の、13時開演です。」

「夜じゃないのか~。
明日は午前中に店の発注品が届くから…
でもいつも10時台には来るから、間に合うか。
じゃあ行く行く。」

「良かったー!
そしたら明日、お互いにお昼ご飯はすませてきて、現地集合でどうですか?」

「うん、オッケー。
舞台観るの、何年ぶりだろう。
楽しみにしてる。」

「じゃ、そう言うことで。
おやすみなさい。」

「おやすみ~。」

年内会おうって言ってたけど、こんなに早く会えるとは!

くうう~楽しみ

東山、ありがとう~♩





 昼の12時過ぎ
僕はミュージカル会場の前にいた

「会場30分前だからすごい人だな…。」

お客さんはみんな着飾っているので、周りの人を眺めているのも楽しい

礼央さんもそろそろ来るかな

と、考えていたその時

「お待たせ!ごめん待った?」

息を切らせながら礼央さん到着

「おはようございます。
僕も今来たばかりです。
それにまだ開場まで15分あるので、慌てなくて大丈夫ですよ 笑。
急だったのに来てくれて、ありがとうございます。」

「なら良かったー。
って、マフラー早速使ってくれたんだ?」

フッと優しそうなあの笑顔

「もちろんですよ!
カシミアだからふわっふわ。
似合ってます?」

「似合う似合う。
やっぱりその色で正解だったな。」



 15時
公演が終わり、席から拍手を送る

華やかでパワフルで
素晴らしいステージだった

「すごかったなー!」

礼央さんも興奮を隠せない様子

余韻に浸りつつ、幕が下がったので部屋を出る

「あ、ちょっと通路に出たら電話してきていい?
洋食屋のオーナーから着信あったみたい。」

と礼央さん

「分かりました。あっちで待ってますね。」



数分話して、こっちに戻ってきた

「オーナーさん、何かあったんですか?
大丈夫ですか?」

僕が聞くと、

「歩夢あのさ、今日の夕飯なんだけど、オーナーの店行かない?
前のグランピングの事故、あれオーナーのせいじゃないのに、お詫びにご馳走したいから来てって…。
オーナー関係ないって言っても、自分が誘ったから~って聞かなくて。」

「あ、それ、僕が道でバッタリ会った時にも言ってました。
お詫びしたいから、高松君とおいでって…。」

「そうだったんだ。
こっちとしては本当に関係ないし、逆に申し訳ないんだけど…。
でも何度も言われてるし、せっかくだから行ってみようか。」

「そうですね。
でも…。」

「ん?何か気になる事でもある?」

「足立さん。
礼央さんお付き合い断ったのに、気まずくないですか?」

とは言ったものの、本心は別にあり
断ったとはいえ、2人が顔を合わせるのがちょっと不安…

「あ、そういう事か。
全っ然だよ。
歩夢がどう想像してるか分からないけど、きちんと話したから。
そして今度は向こうも納得してくれて、これからは友達でいようって。
完全に吹っ切れましたって言ってた。
だから避けるほうが変っていうか。
普通にしてればいいんだよ。
向こうも普通だし。」

「…。
そうなんですね。
じゃ、その言葉を信じます。」

「ヤキモチ?笑。」

「もー!
その嬉しそうな顔がムカつきます。」

僕達は洋食屋さんへ向かった

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