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第一章 代筆屋と客じゃない客
第七片 裏表がありすぎる
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市場から大通りに入り、私はずっとロイさんに手を引かれて歩いていた。
ロイさんはかっこいいけれど、とても「やったー!イケメンと手つなぎだ!」とか喜べる気分じゃない。逮捕されて拘束されている感じだ。
「ちょっと!ちょっと警吏さん!」
「なんだ」
振り返らずに、返事だけするロイさんは不機嫌そう。仕事中に面倒なことが起こったとでも思っているのだろうか。だとしたら、放っておいてくれればいいのに!私は思わず眉間にシワを寄せた。
「お仕事中ですよね!?明るいし一人で帰れるから!大丈夫だから離して!」
「尾行されているという女性を一人で帰してなんかあったら、それこそ職務怠慢だと言われて都合が悪い。俺が代筆屋まで届けるから今日はもうじっとしておいてくれ」
「届けるってそんな荷物みたいな……」
送られることは早々に諦めたが、せめて手だけでも離してもらおうとぐいぐい腕を引っ張る。でも彼はまったく離そうとせず、むしろぎゅっと手首を捕まれてしまった。
これでは盗みでもはたらいて連行されているように見えないか、と世間体が心配になってしまう。
ほら、やはり時計塔通りの見知った顔が、隊服のロイに引きずられるように歩いている私を見てぎょっと目を瞠っている。私が苦笑いで会釈をすると、みんな心配そうにヒソヒソと話し始めた。
これはマズイ!私の平穏な暮らしが!私、何もやってませんよ!
焦った私は思いきり体重をかけて、その場に立ち止まろうとした。さすがにロイさんも私の抵抗に気づき、やっと後ろを振り返ってくれた。
手首は真っ赤になっているだろうが、そんなものかまうもんかと懸命に踏みとどまってよかった!
「警吏さん!みんなが見てる!私が何か悪いことをして連行されているみたいに見える!」
そこまで言われてやっと手を離したロイさんは、周囲の人ににっこりと微笑んで「お騒がせしました」と詫びた。ほっと安心した私の知り合い達は、わらわらとその場から離れていった。
「もうここから店は近いから!帰れるから!」
真っ赤になった左手首をもう片方の手で押さえながら、私はロイさんに向かって叫んだ。すると彼は、なぜか嬉しそうに笑い少しだけかがんで視線を合わせた。
「そういえばカレン、普通にしゃべれるんだな。こないだとは大違いだ」
「なっ……!?」
「今日は年相応だな。やっぱり店に出てるときは代筆屋を演じてるんだ?」
興味津々といった風にいたずらに瞳を合わせるロイさんは、都合の悪いことを指摘されて顔を赤く染める私を面白がっていた。
「演じてるって、私は代筆屋よ!?何だと思ってるの?」
「何って、無表情で怪しげな女だと思った」
あれでもがんばって笑顔を作っていたのに。無表情だと言われちょっとばかしショックだった。
「それはあなたが怪しかったからよ!嘘ついて代筆屋に来るなんておかしいでしょ!」
ロイさんは私から一歩離れると、笑いをかみ殺すように口元に手をやった。
なんなのこの人!裏表がありすぎでしょう!?
私が食ってかかっても小動物がフーフーと唸り声を上げているようにしか見えないだろうが、この怒りはぶつけないと気が済まない。
「ごめん、それには事情があったんだ。確かに嘘をついて時間を無駄にさせた。それは謝る。やっぱりバレてたかぁ。意外に鋭いね、カレン」
「そう言えば何で呼び捨て?だいたいあなた何者なの?警吏は警吏なのよね?」
拗ねたようにロイさんを見た私だけれど、すでに警戒心は薄れていた。警吏の隊服はおそらく本物で、悪い人ではないと直感があったからだ。
「いいじゃないか、カレンで。俺のこともロイって呼べばいい。仕事は見ての通り警吏だよ。よく巡回にも出てる。代筆屋に行ったのは、仕事じゃないよ。知り合いに頼まれたんだ」
「じゃあ、うちのことを調べようとしていたわけじゃないのね?」
「うう~ん、違うとも言い切れない。でも悪意はないよ。これは本当」
ロイを品定めするように睨みつける私に、彼はへらりと笑ってみせた。くっ……!やっぱり美形はずるい!
しばしの沈黙の後、ふぅっと諦めたように息をついた私に対し、一変して真面目な顔をしたロイは本題を投げかけた。
「アルト・ジャックマンって男を知らない?代筆屋の客にいたはずなんだけど」
その名前を聞いた私は、ピクリと反応を見せてしまった。目ざとくそれを察したロイは、顎に手をやり「へぇ」と呟く。アルト・ジャックマンさんは、代筆屋のお客さんだ。
「知ってるんだね」
「……ここは目立つから歩きましょう。うちの前まで来て」
私はロイの前を通り過ぎ、いつもより早いスピードで店に向かう。歩きながら、私はアルト・ジャックマンについて知っていることを話しはじめた。
「お客様だったわ。二か月くらい前まで」
「彼に恋人がいたのは知ってるよね?」
「もちろん。彼が代筆屋に来ていたのは、恋人に手紙を書くためよ」
「いいの?それを俺に話して」
「あら、それを知ってるからロイは私のところに来たんでしょう?すでに知られてるってわかってることを、今さら隠したりしないわ。めんどうだもの」
ロイは私に、浮気疑惑の話をストレートに伝えてきた。
私は、自分に浮気相手の疑惑がかかっていることに驚いた。でも、アルト・ジャックマンの近況について何か知らないかと問われると返す言葉はない。
苦い表情でもしていたんだろう、ロイが私に目線を合わせてじっと瞳の奥を見つめてきた。
「……私はジャックマンさんとは何の関係もない。彼は私のことを好きとか、そういう感情は持っていないと思う。この二か月、店にも来ていないし連絡もない。もちろん、それまでもただの客と代筆屋の関係よ」
まっすぐにロイの瞳を見つめて私は話した。嘘なんて言っていない。手紙を書かなくなったらそれは破局したと察するのが当然だし、かといって客にわざわざそれを尋ねたりしない。代筆屋はそういう仕事だ。
だいたいなんて聞いたらいいのか。「恋人とどうなりました?」なんて聞けるわけがない。
店に到着したロイは裏口の扉の前で腕組みをしたまま、しばらく私の姿を眺めていた。
なんなの……?じろじろ見られると怖い。制服の威圧感もあって、悪いことをしていないのにここから逃げたくなる。
「私に話せることはこれ以上ない。……ロイは私が何か知ってると思ってるんでしょう?」
「ああ」
「正直ね」
「客の個人的な話は、簡単にできないってことだろ?それは、自分が関係することじゃないから。そういう解釈で合ってる?」
試すようににやりと笑うロイを見て、私は自然に笑いがこぼれた。これ以上踏み込んでこないとわかって、安心したんだと思う。
「あれ、笑った」
突然驚いた表情をするロイに、私はつい訝し気な視線を送る。そりゃ笑うよ、人間ですから。
代筆屋の裏口の前で、私たちの間には沈黙が流れた。
――カチャッ……
「ここで何をしている?」
私たちが立ち止まっていると、出張から帰ってきたゼンがロイの背後に突如現れた。殺気のこもった声はいつもより鋭く、左手に握りしめた小刀をロイの首元に突き付けている。
「ゼン!」
その状態に慌てたのはロイではなく私だった。仮にも警吏に小刀を突き付けるなんて、即刻逮捕されてもおかしくない状況だ。
刃物を突き付けられている当の本人は、「お?」と緊張感のない声を上げるだけでへらりと笑っているのだけれど。えええ、あなた警吏でしょう!?危機管理はどうなってるの……!?
「おお、君が代筆屋の従業員さん?こんにちは。ロイと言います。以後、お見知りおきを」
呑気に自己紹介を始めたロイに、怪訝な表情を見せるゼン。小刀は変わらず、ロイの喉元に突き付けたままだ。
「うちのカレンに何の用だ。……おまえ、どっちだ?」
「ゼン!違うの!その人は私用で来ただけよ!お客さん!」
とっさに止めに入った私は、無謀にも小刀を素手で握ろうとする。それに気づいたゼンはパッと手を挙げてロイから離れ、一瞬で私の前にその身を移した。
私に止められたものの、ゼンはまだロイを疑って鋭い視線を送っている。
「従業員っていうか護衛かい?俺の用事はもう済んだからこれで帰るわ。じゃ、またなカレン」
ロイはそのまま代筆屋に背を向けると、本当に消えて行ってしまった。
残されたゼンは、私の姿に異変がないかあちこち触れてチェックを始める。
「けがは?何もされなかった?」
いつもながら、ゼンの過保護が発動している。私はゼンの腕から何とか逃れ、今日起こったことを端的に報告した。途中、明らかに顔を歪めたゼンをなだめながら。
話を聞き終えたゼンは深いため息をつき、私をぎゅうっと強めに抱きしめた。
そして、尾行の件が落ち着くまでは家を離れるのをやめるとも言い出した。心配性が過ぎる、と思いつつもゼンがそばにいてくれることに安心する私。結局はゼンに依存していることを認めざるを得ない。
「とにかくカレンはひとりでうろうろしないこと。わかった?」
こどものように注意され、渋々それに従って頷いた。扉の前に置いていた小麦粉とリンゴの袋を持ったゼンは、にっこり笑って扉の鍵を開ける。
その日は夜になったからパイを作って焼き上げ、ゼンは嬉しそうにそれを頬張った。残りは布に包んでバスケットに入れ、お世話になっているリタばあさんのところに持っていくことにした。
「雨、降りそうだね」
出張から帰ってきたばかりだというのに、夜からまた出かけるというゼンに防水仕様の外套を手渡す。疲れた様子も見せず陽気に笑ったゼンは、すぐに帰ってくるよと言い残して静かに暗闇に消えていった。
ロイさんはかっこいいけれど、とても「やったー!イケメンと手つなぎだ!」とか喜べる気分じゃない。逮捕されて拘束されている感じだ。
「ちょっと!ちょっと警吏さん!」
「なんだ」
振り返らずに、返事だけするロイさんは不機嫌そう。仕事中に面倒なことが起こったとでも思っているのだろうか。だとしたら、放っておいてくれればいいのに!私は思わず眉間にシワを寄せた。
「お仕事中ですよね!?明るいし一人で帰れるから!大丈夫だから離して!」
「尾行されているという女性を一人で帰してなんかあったら、それこそ職務怠慢だと言われて都合が悪い。俺が代筆屋まで届けるから今日はもうじっとしておいてくれ」
「届けるってそんな荷物みたいな……」
送られることは早々に諦めたが、せめて手だけでも離してもらおうとぐいぐい腕を引っ張る。でも彼はまったく離そうとせず、むしろぎゅっと手首を捕まれてしまった。
これでは盗みでもはたらいて連行されているように見えないか、と世間体が心配になってしまう。
ほら、やはり時計塔通りの見知った顔が、隊服のロイに引きずられるように歩いている私を見てぎょっと目を瞠っている。私が苦笑いで会釈をすると、みんな心配そうにヒソヒソと話し始めた。
これはマズイ!私の平穏な暮らしが!私、何もやってませんよ!
焦った私は思いきり体重をかけて、その場に立ち止まろうとした。さすがにロイさんも私の抵抗に気づき、やっと後ろを振り返ってくれた。
手首は真っ赤になっているだろうが、そんなものかまうもんかと懸命に踏みとどまってよかった!
「警吏さん!みんなが見てる!私が何か悪いことをして連行されているみたいに見える!」
そこまで言われてやっと手を離したロイさんは、周囲の人ににっこりと微笑んで「お騒がせしました」と詫びた。ほっと安心した私の知り合い達は、わらわらとその場から離れていった。
「もうここから店は近いから!帰れるから!」
真っ赤になった左手首をもう片方の手で押さえながら、私はロイさんに向かって叫んだ。すると彼は、なぜか嬉しそうに笑い少しだけかがんで視線を合わせた。
「そういえばカレン、普通にしゃべれるんだな。こないだとは大違いだ」
「なっ……!?」
「今日は年相応だな。やっぱり店に出てるときは代筆屋を演じてるんだ?」
興味津々といった風にいたずらに瞳を合わせるロイさんは、都合の悪いことを指摘されて顔を赤く染める私を面白がっていた。
「演じてるって、私は代筆屋よ!?何だと思ってるの?」
「何って、無表情で怪しげな女だと思った」
あれでもがんばって笑顔を作っていたのに。無表情だと言われちょっとばかしショックだった。
「それはあなたが怪しかったからよ!嘘ついて代筆屋に来るなんておかしいでしょ!」
ロイさんは私から一歩離れると、笑いをかみ殺すように口元に手をやった。
なんなのこの人!裏表がありすぎでしょう!?
私が食ってかかっても小動物がフーフーと唸り声を上げているようにしか見えないだろうが、この怒りはぶつけないと気が済まない。
「ごめん、それには事情があったんだ。確かに嘘をついて時間を無駄にさせた。それは謝る。やっぱりバレてたかぁ。意外に鋭いね、カレン」
「そう言えば何で呼び捨て?だいたいあなた何者なの?警吏は警吏なのよね?」
拗ねたようにロイさんを見た私だけれど、すでに警戒心は薄れていた。警吏の隊服はおそらく本物で、悪い人ではないと直感があったからだ。
「いいじゃないか、カレンで。俺のこともロイって呼べばいい。仕事は見ての通り警吏だよ。よく巡回にも出てる。代筆屋に行ったのは、仕事じゃないよ。知り合いに頼まれたんだ」
「じゃあ、うちのことを調べようとしていたわけじゃないのね?」
「うう~ん、違うとも言い切れない。でも悪意はないよ。これは本当」
ロイを品定めするように睨みつける私に、彼はへらりと笑ってみせた。くっ……!やっぱり美形はずるい!
しばしの沈黙の後、ふぅっと諦めたように息をついた私に対し、一変して真面目な顔をしたロイは本題を投げかけた。
「アルト・ジャックマンって男を知らない?代筆屋の客にいたはずなんだけど」
その名前を聞いた私は、ピクリと反応を見せてしまった。目ざとくそれを察したロイは、顎に手をやり「へぇ」と呟く。アルト・ジャックマンさんは、代筆屋のお客さんだ。
「知ってるんだね」
「……ここは目立つから歩きましょう。うちの前まで来て」
私はロイの前を通り過ぎ、いつもより早いスピードで店に向かう。歩きながら、私はアルト・ジャックマンについて知っていることを話しはじめた。
「お客様だったわ。二か月くらい前まで」
「彼に恋人がいたのは知ってるよね?」
「もちろん。彼が代筆屋に来ていたのは、恋人に手紙を書くためよ」
「いいの?それを俺に話して」
「あら、それを知ってるからロイは私のところに来たんでしょう?すでに知られてるってわかってることを、今さら隠したりしないわ。めんどうだもの」
ロイは私に、浮気疑惑の話をストレートに伝えてきた。
私は、自分に浮気相手の疑惑がかかっていることに驚いた。でも、アルト・ジャックマンの近況について何か知らないかと問われると返す言葉はない。
苦い表情でもしていたんだろう、ロイが私に目線を合わせてじっと瞳の奥を見つめてきた。
「……私はジャックマンさんとは何の関係もない。彼は私のことを好きとか、そういう感情は持っていないと思う。この二か月、店にも来ていないし連絡もない。もちろん、それまでもただの客と代筆屋の関係よ」
まっすぐにロイの瞳を見つめて私は話した。嘘なんて言っていない。手紙を書かなくなったらそれは破局したと察するのが当然だし、かといって客にわざわざそれを尋ねたりしない。代筆屋はそういう仕事だ。
だいたいなんて聞いたらいいのか。「恋人とどうなりました?」なんて聞けるわけがない。
店に到着したロイは裏口の扉の前で腕組みをしたまま、しばらく私の姿を眺めていた。
なんなの……?じろじろ見られると怖い。制服の威圧感もあって、悪いことをしていないのにここから逃げたくなる。
「私に話せることはこれ以上ない。……ロイは私が何か知ってると思ってるんでしょう?」
「ああ」
「正直ね」
「客の個人的な話は、簡単にできないってことだろ?それは、自分が関係することじゃないから。そういう解釈で合ってる?」
試すようににやりと笑うロイを見て、私は自然に笑いがこぼれた。これ以上踏み込んでこないとわかって、安心したんだと思う。
「あれ、笑った」
突然驚いた表情をするロイに、私はつい訝し気な視線を送る。そりゃ笑うよ、人間ですから。
代筆屋の裏口の前で、私たちの間には沈黙が流れた。
――カチャッ……
「ここで何をしている?」
私たちが立ち止まっていると、出張から帰ってきたゼンがロイの背後に突如現れた。殺気のこもった声はいつもより鋭く、左手に握りしめた小刀をロイの首元に突き付けている。
「ゼン!」
その状態に慌てたのはロイではなく私だった。仮にも警吏に小刀を突き付けるなんて、即刻逮捕されてもおかしくない状況だ。
刃物を突き付けられている当の本人は、「お?」と緊張感のない声を上げるだけでへらりと笑っているのだけれど。えええ、あなた警吏でしょう!?危機管理はどうなってるの……!?
「おお、君が代筆屋の従業員さん?こんにちは。ロイと言います。以後、お見知りおきを」
呑気に自己紹介を始めたロイに、怪訝な表情を見せるゼン。小刀は変わらず、ロイの喉元に突き付けたままだ。
「うちのカレンに何の用だ。……おまえ、どっちだ?」
「ゼン!違うの!その人は私用で来ただけよ!お客さん!」
とっさに止めに入った私は、無謀にも小刀を素手で握ろうとする。それに気づいたゼンはパッと手を挙げてロイから離れ、一瞬で私の前にその身を移した。
私に止められたものの、ゼンはまだロイを疑って鋭い視線を送っている。
「従業員っていうか護衛かい?俺の用事はもう済んだからこれで帰るわ。じゃ、またなカレン」
ロイはそのまま代筆屋に背を向けると、本当に消えて行ってしまった。
残されたゼンは、私の姿に異変がないかあちこち触れてチェックを始める。
「けがは?何もされなかった?」
いつもながら、ゼンの過保護が発動している。私はゼンの腕から何とか逃れ、今日起こったことを端的に報告した。途中、明らかに顔を歪めたゼンをなだめながら。
話を聞き終えたゼンは深いため息をつき、私をぎゅうっと強めに抱きしめた。
そして、尾行の件が落ち着くまでは家を離れるのをやめるとも言い出した。心配性が過ぎる、と思いつつもゼンがそばにいてくれることに安心する私。結局はゼンに依存していることを認めざるを得ない。
「とにかくカレンはひとりでうろうろしないこと。わかった?」
こどものように注意され、渋々それに従って頷いた。扉の前に置いていた小麦粉とリンゴの袋を持ったゼンは、にっこり笑って扉の鍵を開ける。
その日は夜になったからパイを作って焼き上げ、ゼンは嬉しそうにそれを頬張った。残りは布に包んでバスケットに入れ、お世話になっているリタばあさんのところに持っていくことにした。
「雨、降りそうだね」
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