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第一章 代筆屋と客じゃない客
第十九片 ごめんなさい
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商会長のご厚意で、私たちは応接セットのある一室を借りることができた。ゼンが懇意にしているスタッフがすぐに水差しとグラスを持ってきてくれて、私はしびれ薬の解毒剤を飲まされる。
私は長椅子に座り、隣に座るロイにもたれてぐったりしていた。全身が勝手に震えていたのは、想像以上に体力を消耗したみたい。
甲斐甲斐しく水を飲まされ、肩に腕が回されていることにツッコミを入れる元気はない。でも、どうしても聞いておきたいことがあった。
「で、なんでゼンはここにいるの……?」
水差しを片付けている弟を見て、私は尋ねた。
「ロイが、助けてくれるって言ったから。俺のことも、カレンのことも」
「ゼンのことも……?」
まだ重い頭で必死に考えようとすると、ロイが説明を引き継いでくれた。
「俺が初めてカレンの店に行ったときのこと、覚えてる?」
私は頷く。
確かロイの上司の娘が、さっき私を襲ってきたアルト・ジャックマンと婚約していて、その浮気相手が私なんじゃないかっていうことで様子を見に来たって聞いたような。
おおむねそれで間違いないとロイは言う。
「最初は俺もそう思ってた。でもルベルトは……俺の上司で、その娘の父親なんだが、彼には別の目的もあったらしい」
「別の目的?」
「ルベルトは、カレンがめずらしい容姿だからコレクターに狙われていないかを確かめたかったらしい。俺を向かわせたのは、顔見知りにしといてなんかあったら相談できるようにっていう思惑もあってだとあの後に聞いた。あ、もちろん、娘の婚約者の浮気疑惑も本当だ」
両方の目的があったということか。
「市場で会ったのは?」
誰かに尾行されていて、そのときにロイに会った。
「あれは偶然。多分、カレンを付け回していたのはアルト・ジャックマンだ」
「えええ……」
紛らわしい。おかしな人を二人も同時に引き寄せていたということか。私が顔を顰めると、ロイも同情の色を瞳に滲ませた。
でもここでロイは思わぬことを告げる。
「カレンが誰かに狙われていることはすぐにわかったが、ゼンに会って気になることがさらに出てきた」
「何……?」
「ずっと気になってたんだ。ゼンは俺と初めて会ったとき、小刀を突き付けて『どっちだ』って言ったんだ。あれは、カレンかゼンかどっちを狙ってるんだっていう意味だったんだ」
ゼンはずっと、一人で問題を抱えていたという。仕事中や仕事帰りにおかしな男たちに絡まれたり、尾行されたり、誰かが自分を狙っていると感じていたらしい。
「だからあんな危険な護身用具を作ったりしたの?なんで言わなかったの……」
「そんなこと言ったら心配するだろう?カレンに言えるわけがない」
ゼンを襲うように依頼を出していたのは、クオーツさんだった。
「あの男はカレンの黒い瞳を欲しがっていて、ゼンを排除すれば君を手に入れられると思ったんだろう」
私が夜に一人で出歩くことはないし、昼でも市場やリタさんのお店くらいにしか行かないから、一人になることはまずない。ゼンを私のそばから引き離したかったということか。
「でもカレンの家であの鉢植えを見たときに、もしやと思ったんだ」
クオーツさんが持ってきた月桂樹の鉢植え。あの花を見て、ロイは確信を持ったという。あの花は春先にしか咲かないけれど、クオーツさんの勤め先である研究室であれば一年中手に入る。
花屋の花を片っ端から取り寄せたのに遺体の上に散っている花が見当たらなかったのは、月桂樹は葉の方に価値がある鉢植えだったから。「花をくれ」と言われて、月桂樹を出す花屋はいない。
「ペーパーナイフも?」
「あれはあいつが言ったように、快楽殺人犯の道楽だ。あんなことをするから綻びが出る」
別れの挨拶だと言っていたような。
私のことを近いうちに殺すつもりだったんだろう。
「これ以上、好きにさせるわけにはいかなかった。ゼンに危害を加えられる前に警吏で身柄を押さえてしまえば、カレンは家に一人になる。そうすれば、クオーツが動くと思ったんだ」
あれほど派手にゼンが捕縛されたことを知らしめたのは、クオーツさんが店の近くにいることを尾行で知っていたから。ゼンがいなくなった店には私ひとり。ここぞとばかりに彼は動いた。
「店の中には、裏口と正面の両方から乗り込むつもりだった。それなのにアルト・ジャックマンが予定外に乱入したせいで、ゼンが我慢できなくなって飛び込んで……あとはカレンも見たまんまだ」
「ほんと、邪魔しやがってあいつ」
ゼンが苛々している。アルト・ジャックマンさえ余計なことをしなければ、私がしびれ薬でこんな風になることはなく、クオーツさんはすんなり捕縛されていたということか。
「言ってくれればよかったのに」
私の口からつい恨み言が漏れる。ゼンが捕らわれたと思って、どれほど心配したことか。今日だけで髪が抜け落ちるかと思うくらい心配した。
「現行犯で押さえる必要があった。クオーツは成金の子爵家の三男だから、現行犯でなければ裏で金が動いてうやむやにされる可能性が高い」
「これだから貴族は嫌なんだ」
ゼンが眉を顰めた。私たちも一応は貴族なんだけれど……
黙っていると、ロイはすべて知っている顔で私の髪を撫でた。
「貴族にも色々いるさ」
あぁ、きっと身元を調べたんだろう。だとしたら、私たちがここにいる理由も知っているはず。
もうどうにでもしてくれ、と投げやりな気持ちで私は目を伏せた。
はぁ、とため息を吐くと、ロイは急に真剣な顔で私を見つめた。
「カレン」
「何?」
いつもと違う声のトーンに、ドキリとする。
「すまなかった。たくさん嘘をついて、カレンを騙して傷つけた」
まさか謝られると思っていなかった私は、驚きで目を瞠る。ただの警吏でなかったことや、ゼンを捕縛したり私を囮に使ったことを言っているのだろうか。
「結果的にカレンを危険な目に遭わせたんだ。君が許せないと思っても、仕方がないと思う」
「あれは……」
違う。あれは自分が許せなかっただけで、しかもすべてがわかった今ではロイに感謝すらしている。私ひとりじゃ、ゼンを守れなかった。もしクオーツさんのことに気づいたとしても、また二人で知らない街に逃げて、すべてを一からやり直さなければいけないところだった。
「謝っても謝りきれないが、でもどうしても伝えたいことがある。俺はずっと」
「ごめんなさい!」
私はぎゅっと目を閉じて叫んだ。ゼンがなぜか笑いを堪えているが、とりあえず思っていることを全部吐き出してしまいたくてロイの言葉を遮る。
「カレン……?」
「違うの!私の方こそごめんなさい!信じられなくて、ひどいことを……私のことも、ゼンのことも守ってくれてありがとう。あなたが来るたびにいっぱい嫌な態度をとって、生意気なことも言ってごめんなさい」
「あ、いやそれはいいんだ」
一度は絶望したけれど、ロイに出会えてよかった。本当にそう思う。
「できることなら、これからもまた会いに来て欲しい」
事件が解決した今、もう用なんてないことはわかってる。でもこのままロイが私の日常からいなくなってしまうのは淋しかった。気づきたくなんてなかったけれど、私はロイが好きだから。
仕事でやむを得ず来ていただけのこの人を、好きになってしまっていた。
「もう顔を出す必要はないのかもしれないけれど、また一からやり直せたらって……」
恐る恐る顔を上げると、彼はちょっと嫌そうな顔になっていた。
「一から……?やり直すのか?」
「ええ、普通の友人として。ダメ?」
第七部隊だったか。そんな特殊な部隊に所属しているから、普通の友人としての関係を築くのは無理なんだろうか。
ロイの返事を待っていると、ゼンが水差しと薬の残りを持って笑いながら部屋を出て行った。
パタンと小さな音を立てて扉が閉まり、私たちは二人きりになる。
長い長い沈黙の後、ロイはようやく答えをくれた。
「嫌だ」
「いっ……?」
何この人。正直にもほどがある。
ショックで唖然とする私を見て、ロイは睨むように見下ろした。
「一からやり直すなんてできるわけがないだろう」
いつか見たような尊大な態度。不貞腐れた表情。さっきまで謝ってくれていた殊勝な態度は何だったの……?
「でも仕方がないから、譲歩してやる」
「譲歩……?」
呆れて白い目を向ける私。ロイはいじわるな笑みを浮かべて言った。
「手紙を書くために通う。カレンは俺を相手に仕事をすればいい」
「仕事?だってあなた手紙なんて書く必要ないじゃない」
最初に言ったはずだ。恋をしてから来てください、と。
誰に書くというのか。
「ご両親に手紙?それとも今回の件の始末書でも?」
あり得る。あれだけ派手にやったんだ。あれが正攻法とは思えないから、始末書はかなり濃厚だ。
「どちらも不正解。カレンが言ったんだからな、恋をしてから来いって」
「言った。それは言った」
ふいに彼の顔が近づき、額に柔らかい唇が触れる。
「っ!?」
そしてニヤリと笑った彼は告げた。
「自分に宛てて書かれる恋文を指南する……それがどれだけ苦痛か、たっぷり味わえばいい」
「は!?」
「言っておくが俺はまったく文章が書けない。女が喜ぶような言葉は知らない。だからカレンが早く俺に惚れてくれないと、延々と自分宛の手紙を考えることになるぞ」
「どんな理屈!?」
「さ、元気になったことだし戻るぞ。後片付けが大変だ」
ロイはスッと立ち上がり、目を丸くする私をまたもや肩に担ぐ。
「きゃあっ!」
「カレンは軽いな。もっと食った方がいい」
もうちょっと抱え方があるでしょう!?
なんでこうも荷物みたいに……!
私が叫んでも身をよじっても、ロイは下ろしてくれなかった。商会員たちの視線が突き刺さる中、私は想い人から雑な扱いを受け、家に戻ることになったのだった。
私は長椅子に座り、隣に座るロイにもたれてぐったりしていた。全身が勝手に震えていたのは、想像以上に体力を消耗したみたい。
甲斐甲斐しく水を飲まされ、肩に腕が回されていることにツッコミを入れる元気はない。でも、どうしても聞いておきたいことがあった。
「で、なんでゼンはここにいるの……?」
水差しを片付けている弟を見て、私は尋ねた。
「ロイが、助けてくれるって言ったから。俺のことも、カレンのことも」
「ゼンのことも……?」
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「俺が初めてカレンの店に行ったときのこと、覚えてる?」
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確かロイの上司の娘が、さっき私を襲ってきたアルト・ジャックマンと婚約していて、その浮気相手が私なんじゃないかっていうことで様子を見に来たって聞いたような。
おおむねそれで間違いないとロイは言う。
「最初は俺もそう思ってた。でもルベルトは……俺の上司で、その娘の父親なんだが、彼には別の目的もあったらしい」
「別の目的?」
「ルベルトは、カレンがめずらしい容姿だからコレクターに狙われていないかを確かめたかったらしい。俺を向かわせたのは、顔見知りにしといてなんかあったら相談できるようにっていう思惑もあってだとあの後に聞いた。あ、もちろん、娘の婚約者の浮気疑惑も本当だ」
両方の目的があったということか。
「市場で会ったのは?」
誰かに尾行されていて、そのときにロイに会った。
「あれは偶然。多分、カレンを付け回していたのはアルト・ジャックマンだ」
「えええ……」
紛らわしい。おかしな人を二人も同時に引き寄せていたということか。私が顔を顰めると、ロイも同情の色を瞳に滲ませた。
でもここでロイは思わぬことを告げる。
「カレンが誰かに狙われていることはすぐにわかったが、ゼンに会って気になることがさらに出てきた」
「何……?」
「ずっと気になってたんだ。ゼンは俺と初めて会ったとき、小刀を突き付けて『どっちだ』って言ったんだ。あれは、カレンかゼンかどっちを狙ってるんだっていう意味だったんだ」
ゼンはずっと、一人で問題を抱えていたという。仕事中や仕事帰りにおかしな男たちに絡まれたり、尾行されたり、誰かが自分を狙っていると感じていたらしい。
「だからあんな危険な護身用具を作ったりしたの?なんで言わなかったの……」
「そんなこと言ったら心配するだろう?カレンに言えるわけがない」
ゼンを襲うように依頼を出していたのは、クオーツさんだった。
「あの男はカレンの黒い瞳を欲しがっていて、ゼンを排除すれば君を手に入れられると思ったんだろう」
私が夜に一人で出歩くことはないし、昼でも市場やリタさんのお店くらいにしか行かないから、一人になることはまずない。ゼンを私のそばから引き離したかったということか。
「でもカレンの家であの鉢植えを見たときに、もしやと思ったんだ」
クオーツさんが持ってきた月桂樹の鉢植え。あの花を見て、ロイは確信を持ったという。あの花は春先にしか咲かないけれど、クオーツさんの勤め先である研究室であれば一年中手に入る。
花屋の花を片っ端から取り寄せたのに遺体の上に散っている花が見当たらなかったのは、月桂樹は葉の方に価値がある鉢植えだったから。「花をくれ」と言われて、月桂樹を出す花屋はいない。
「ペーパーナイフも?」
「あれはあいつが言ったように、快楽殺人犯の道楽だ。あんなことをするから綻びが出る」
別れの挨拶だと言っていたような。
私のことを近いうちに殺すつもりだったんだろう。
「これ以上、好きにさせるわけにはいかなかった。ゼンに危害を加えられる前に警吏で身柄を押さえてしまえば、カレンは家に一人になる。そうすれば、クオーツが動くと思ったんだ」
あれほど派手にゼンが捕縛されたことを知らしめたのは、クオーツさんが店の近くにいることを尾行で知っていたから。ゼンがいなくなった店には私ひとり。ここぞとばかりに彼は動いた。
「店の中には、裏口と正面の両方から乗り込むつもりだった。それなのにアルト・ジャックマンが予定外に乱入したせいで、ゼンが我慢できなくなって飛び込んで……あとはカレンも見たまんまだ」
「ほんと、邪魔しやがってあいつ」
ゼンが苛々している。アルト・ジャックマンさえ余計なことをしなければ、私がしびれ薬でこんな風になることはなく、クオーツさんはすんなり捕縛されていたということか。
「言ってくれればよかったのに」
私の口からつい恨み言が漏れる。ゼンが捕らわれたと思って、どれほど心配したことか。今日だけで髪が抜け落ちるかと思うくらい心配した。
「現行犯で押さえる必要があった。クオーツは成金の子爵家の三男だから、現行犯でなければ裏で金が動いてうやむやにされる可能性が高い」
「これだから貴族は嫌なんだ」
ゼンが眉を顰めた。私たちも一応は貴族なんだけれど……
黙っていると、ロイはすべて知っている顔で私の髪を撫でた。
「貴族にも色々いるさ」
あぁ、きっと身元を調べたんだろう。だとしたら、私たちがここにいる理由も知っているはず。
もうどうにでもしてくれ、と投げやりな気持ちで私は目を伏せた。
はぁ、とため息を吐くと、ロイは急に真剣な顔で私を見つめた。
「カレン」
「何?」
いつもと違う声のトーンに、ドキリとする。
「すまなかった。たくさん嘘をついて、カレンを騙して傷つけた」
まさか謝られると思っていなかった私は、驚きで目を瞠る。ただの警吏でなかったことや、ゼンを捕縛したり私を囮に使ったことを言っているのだろうか。
「結果的にカレンを危険な目に遭わせたんだ。君が許せないと思っても、仕方がないと思う」
「あれは……」
違う。あれは自分が許せなかっただけで、しかもすべてがわかった今ではロイに感謝すらしている。私ひとりじゃ、ゼンを守れなかった。もしクオーツさんのことに気づいたとしても、また二人で知らない街に逃げて、すべてを一からやり直さなければいけないところだった。
「謝っても謝りきれないが、でもどうしても伝えたいことがある。俺はずっと」
「ごめんなさい!」
私はぎゅっと目を閉じて叫んだ。ゼンがなぜか笑いを堪えているが、とりあえず思っていることを全部吐き出してしまいたくてロイの言葉を遮る。
「カレン……?」
「違うの!私の方こそごめんなさい!信じられなくて、ひどいことを……私のことも、ゼンのことも守ってくれてありがとう。あなたが来るたびにいっぱい嫌な態度をとって、生意気なことも言ってごめんなさい」
「あ、いやそれはいいんだ」
一度は絶望したけれど、ロイに出会えてよかった。本当にそう思う。
「できることなら、これからもまた会いに来て欲しい」
事件が解決した今、もう用なんてないことはわかってる。でもこのままロイが私の日常からいなくなってしまうのは淋しかった。気づきたくなんてなかったけれど、私はロイが好きだから。
仕事でやむを得ず来ていただけのこの人を、好きになってしまっていた。
「もう顔を出す必要はないのかもしれないけれど、また一からやり直せたらって……」
恐る恐る顔を上げると、彼はちょっと嫌そうな顔になっていた。
「一から……?やり直すのか?」
「ええ、普通の友人として。ダメ?」
第七部隊だったか。そんな特殊な部隊に所属しているから、普通の友人としての関係を築くのは無理なんだろうか。
ロイの返事を待っていると、ゼンが水差しと薬の残りを持って笑いながら部屋を出て行った。
パタンと小さな音を立てて扉が閉まり、私たちは二人きりになる。
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「仕事?だってあなた手紙なんて書く必要ないじゃない」
最初に言ったはずだ。恋をしてから来てください、と。
誰に書くというのか。
「ご両親に手紙?それとも今回の件の始末書でも?」
あり得る。あれだけ派手にやったんだ。あれが正攻法とは思えないから、始末書はかなり濃厚だ。
「どちらも不正解。カレンが言ったんだからな、恋をしてから来いって」
「言った。それは言った」
ふいに彼の顔が近づき、額に柔らかい唇が触れる。
「っ!?」
そしてニヤリと笑った彼は告げた。
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「は!?」
「言っておくが俺はまったく文章が書けない。女が喜ぶような言葉は知らない。だからカレンが早く俺に惚れてくれないと、延々と自分宛の手紙を考えることになるぞ」
「どんな理屈!?」
「さ、元気になったことだし戻るぞ。後片付けが大変だ」
ロイはスッと立ち上がり、目を丸くする私をまたもや肩に担ぐ。
「きゃあっ!」
「カレンは軽いな。もっと食った方がいい」
もうちょっと抱え方があるでしょう!?
なんでこうも荷物みたいに……!
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