【本編完結】嫌われ偽聖者の俺に、最狂聖騎士が死ぬほど執心する理由

司馬犬

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1章

4.聖騎士は訪問する

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 俺は、生まれつき運のない男だった。
 この国、唯一の公爵、ヴァルギース家の次男として生まれたが、母親は俺を産んだことが原因で命を落とした。
 父親は母を殺し産まれた俺が憎かったのだろう。物心ついたころには別邸に押し込まれ、父親が住む本邸へ訪れることを禁止されていた。ただ別邸にいても、金の援助だけはしっかりと送られた。
 別に虐待はされなかった。必要な物はしっかりと与えられていた。
 ただ、父親は俺を徹底的にいないものとして扱った。彼が俺に会いに来ることは一度もなかった。
 その頃くらいだろうか。俺は、自分自身がとてつもなく不運な人間なのだと自覚した。
 両親の代わりに育ててくれていた乳母はすぐに他界し、代わりに訪れた使用人は父親に捨てられた俺を毛嫌いした。
 別に殴られたりなどはされなかったが、彼らも俺をいないものとして扱った。それは、使用人一人の名前すら知らない状況といえばわかってもらえるだろう。
 これだけでも十分といえる不運さであるのだが、これだけでは終わらない。
 友人を作ろうとすれば、なぜか金目当ての盗人ばかりで、先生を呼んで剣を習おうものならば数回に一度は剣が折れ、更にその剣先が先生に毎度向かうので、わざとだと罵られすぐに逃げられた。
 ほかにも大なり小なり不運は絶えず俺に襲い掛かってきて、それらは大抵が俺を孤独にして、嫌われるように作用した。
 だからこそ、俺は愛を知らない。
 友人も親も兄弟も先生も、いたことがない。全部不運が奪っていくのだ。
 挙句の果て、俺が成人してからしばらくして父親と跡継ぎであった兄が流行り病で死んだ。その時、公爵家を継げるものは俺しかおらず、まさかの爵位を俺が継ぐことになった。
 見捨てられた次男が、公爵となったのだ。しかし、これは更なる不運を呼ぶことになる。
 最悪なことに公爵家の財政は継いだ時点で、取り返しのつかない程に破綻していたのだ。
 それでも何とかしようと自分なりに力は尽くしてきたが、所詮は何の教育も受けてない若造だ。家臣たちの裏切りもあり、あっという間に、財政破綻や家族を殺し公爵家を壊したのは次男である俺ということになった。
 結局、ありがたい神託とやらで俺は教皇の言葉によって悪魔とされ、聖騎士たちに囲まれ処刑された。
これが、俺の一度目の人生が終わった理由。
 ──その時の遺言が「神様のクソ野郎、役立たずめ」だったのがまずかった。図らずとも、それが終わりの始まりとなったのだ。

◆◆◆


「やはり神なんて、クソ野郎だ」

 俺は、寝転んだベッドに顔を押し付けながら罵倒する。ここは教会堂内にある俺の自室だ。自室といっても室内はかなり狭く、あるものといえば少し大きめのチェストとベッドくらいだ。それでも一人部屋というだけでこの教会内では贅沢な自室なほうだ。
 俺は、フシェンの問いかけを無視して「考えを整理したいから一人にしてほしい」と告げて、逃げた。聖の間を出る際にフシェンには何度か呼び止められたが、全てを無視して自室に飛び込んだ。
 ──フシェン・イザリオティス。
 彼こそが、一度目の人生で公爵となった俺を殺した、いや殺してくれた男だ。
 俺はシャウーマ教会に異端者として、悪魔と認定されたので火あぶりとして処刑されることになった。
 火あぶりは相当苦しい刑であり、俺も酷く苦しんで死ぬ予定だった。しかし、そうはならなかった。
 何故なら、火をつけられたと同時に、俺は心臓を剣で貫かれたからだ。即死だったのだろう。刺された瞬間までは覚えているが、そこからの記憶は曖昧だ。
 そうやって、俺が苦しむ前に殺してくれたのがフシェンだったのだ。
彼が、どうしてあのようなことをしたのか、何を考えていたのか、それらは今もわからない。
 俺が最期に見た彼の表情は一切動かず、その目には何の感情も浮かんでいなかった。
 だが、俺が前の人生の中で、誰かの好意を感じたと思ったのはあの瞬間だけだった。

「その相手が、今度は俺の護衛……か」

 改めて彼に会ったが、違和感があった。一度目の人生で出会ったフシェンとは明らかに様子が違う。前も聖騎士ではあったが、あれほど熱心な教徒ではなかったはずだ。
 評判も、容赦のないというところは変わらないが、もっと畏怖に満ちた言われようで、万人に対して冷酷非情だった。
 俺が直接見た印象もそうだ。もっと、この世の全てがどうでもいいといったような態度と目をしていた。それこそ聖騎士でありながら、神すらどうとも思っていないような……。
 俺はベッドの上で寝返りをうち、仰向けへ体勢を変える。その際、あることに気付いて辺りを見渡すが、探している“彼”の姿が見えない。
 そういえば、部屋に戻ってから一度も姿を見ていない。いつもならすぐに現れるのに、どこにいったのだろうか。その姿を探そうとした時、自室の扉が力強く叩かれた。

「聖者様。私です、フシェンです」

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