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3章
10.二部
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ふと気付くと俺は、自分の部屋にいた。
自分の部屋といってもラクトフェル家の自室ではない。そこは元の世界での俺の部屋だった。
人気のない役者だった俺の部屋は狭く、家具も必要最低限のものしか揃っていない。ベッドの上では前世の俺がうつ伏せに寝転がりながら、携帯を覗き込んでいた。その目は画面に釘付けになっており、どこか楽しそうだ。
俺自身は、宙に浮いているような状態で、確かに四肢の感覚はあるがどこにも自分の身体は見えない。
「あー……面白かったぁ」
前世の俺は満足そうに呟いて、携帯を胸に置いて仰向けに寝転んだ。陶酔感に浸るように目を閉じて、その表情は満足感に満ちており、口許は締まりなく笑みを浮かべたままだ。
その時、何故かこれは俺が『最強キメラは、悪を許さない』の最終回を読んだすぐ後のことだとわかった。
しかし、次に感じたのは小さな違和感だ。なんだが、じっと見ているとどこか認識がズレているような忘れているような感覚がじわじわと広がる。
「はあ、それにしても……」
前世の俺が、独り言を口にしながら目を開ける。その瞬間、もう一人の自分と目が合ったような気がして、小さく心臓が跳ねる。しかし、次の言葉を聞いた瞬間、凍り付いた。
「──二部、いつから始まるんだろうなあ」
その言葉を聞いた瞬間、脳を直接殴られたような衝撃を受けた。ぐらぐらと目眩でも起こしたように視界が回って、ちかちかと視界の奥で何かが光る。
──そうだ。どうして、忘れていたのか。
俺が読んでいた漫画は終わっていない。俺が読み終えたのは一部だけだった。つまり『最強キメラは、悪を許さない』にはまだ続きがあるのだ。とても綺麗にまとまって終わったのに、二部があるなんて信じられないと思っていたのに。
しかし、俺はその二部を読んだ記憶がない。どうしてサタリアとして転生したのかはわからないが、二部を読むことなく、俺はサタリアになったのだ。
まずい、まずい……!
二部があるのならば、俺の知らない事実がまだあるということだ。それに今予想外の状況を解決する手がかりも何かあるはずだ。
──だから、せめて二部の情報を、些細なことでも!
俺は必死になって、前世の俺が持つ携帯へ手を伸ばす。そしてその指が携帯に触れた瞬間、全身が痺れるような感覚と共にパッと目の前が明るくなる。
視界は白い光に包まれて何も見えなくなる。意識が段々を失われていくのがわかった、その時だった。
『違う! こんなの、望んでいない! こんな終わりは違う!』
最後に遠くから誰かの声が聞こえた気がした。それは、聞いてるだけで胸が苦しくなるような掠れた悲痛な声だった。
◆◆◆
「っ……は!」
はっと息を呑んだと同時に目が覚める。気付くと、俺の手は天井に向かって真っすぐ伸ばされていた。
何かを掴もうとしていた手をぼんやりと眺めて、ゆっくりと自分が寝ぼけて腕を伸ばしたのだと理解する。
「……夢、か」
自分の額に手を添えながら、溜息が零れる。先ほどまで見ていた夢は、妙に現実感のある夢だった。
いまだぼんやりとして、まるで心がここに戻ってきていないようだ。それでも、このまま眠る訳にはいかないと体を起こす。
「った……」
起きた瞬間、体の節々が痛んで眉を顰める。ふと、気付くと自分が真っ裸であることに気付く。そして、同時に思い出すのは昨晩のことだ。その瞬間、顔を両手で覆って動けなくなる。
「し、死にたい……」
羞恥心で死にそうになっていると、俺の呟きを聞いたノエルが白い布の姿を現す。
その布が不安定に右や左に大きく動いている様子を見ると、俺の言葉に慌てているようだ。本気で思った言葉ではないが、狼狽えるノエルの姿を見ると思わず口許が緩む。
「あ、いや、違うんだ。悪かった、ノエル。ちょっとした冗談だ」
そう言った俺の声は枯れており、これも昨夜の残りだ。部屋の中を見渡すと、アルヴェンはどこにもいない。夜の間に使用人室にでも戻ったのだろうか。
まあ、すぐに顔を合わせるのは恥ずかしかったので助かるといえば、助かる。
「ノエル。衣服を用意してくれ」
ノエルに声をかけるとクローゼットから俺の衣装をいくつか、取り出してくれる。そのままノエルに服を着せてもらったが、その際に体中の痕が凄まじいことに気付いた。半分以上が噛み痕であり、犯人は間違いなくアルヴェンだ。
……本当に獣か、あいつは。
行為中も執拗に噛みついたり、吸いついたりと痕を残していた。生々しく昨晩の行為を思い出しては、動きを停止するを繰り返して、ようやく衣装を整えた。ソファに腰をかけて、ふうと一息を吐く。
そして、昨晩見た夢のことを改めて考える。
──間違いない。原作はまだ終わってなかったんだ。
俺が知っているのは一部までで、二部は読めていない。二部が新たな敵の話ならいいが、何かサタリアが関わることが起きるかもしれない。原作のサタリアは一部のラストで自殺したが、俺は生きるつもりだから……何か予想外のことが起こったとしても、対処できるか不安だ。
その時、部屋の扉が叩かれる。ノック音が部屋に響いて、びくりと肩が跳ねる。アルヴェンがやってきたかと思い、心臓の鼓動が早くなる。いつも通りにノエルに頼もうかと思ったが、何となく、気が向いて俺は扉に近付く。
そして、そっと開くとそこに立っていたのは───アルヴェンではなく、リティだった。
自分の部屋といってもラクトフェル家の自室ではない。そこは元の世界での俺の部屋だった。
人気のない役者だった俺の部屋は狭く、家具も必要最低限のものしか揃っていない。ベッドの上では前世の俺がうつ伏せに寝転がりながら、携帯を覗き込んでいた。その目は画面に釘付けになっており、どこか楽しそうだ。
俺自身は、宙に浮いているような状態で、確かに四肢の感覚はあるがどこにも自分の身体は見えない。
「あー……面白かったぁ」
前世の俺は満足そうに呟いて、携帯を胸に置いて仰向けに寝転んだ。陶酔感に浸るように目を閉じて、その表情は満足感に満ちており、口許は締まりなく笑みを浮かべたままだ。
その時、何故かこれは俺が『最強キメラは、悪を許さない』の最終回を読んだすぐ後のことだとわかった。
しかし、次に感じたのは小さな違和感だ。なんだが、じっと見ているとどこか認識がズレているような忘れているような感覚がじわじわと広がる。
「はあ、それにしても……」
前世の俺が、独り言を口にしながら目を開ける。その瞬間、もう一人の自分と目が合ったような気がして、小さく心臓が跳ねる。しかし、次の言葉を聞いた瞬間、凍り付いた。
「──二部、いつから始まるんだろうなあ」
その言葉を聞いた瞬間、脳を直接殴られたような衝撃を受けた。ぐらぐらと目眩でも起こしたように視界が回って、ちかちかと視界の奥で何かが光る。
──そうだ。どうして、忘れていたのか。
俺が読んでいた漫画は終わっていない。俺が読み終えたのは一部だけだった。つまり『最強キメラは、悪を許さない』にはまだ続きがあるのだ。とても綺麗にまとまって終わったのに、二部があるなんて信じられないと思っていたのに。
しかし、俺はその二部を読んだ記憶がない。どうしてサタリアとして転生したのかはわからないが、二部を読むことなく、俺はサタリアになったのだ。
まずい、まずい……!
二部があるのならば、俺の知らない事実がまだあるということだ。それに今予想外の状況を解決する手がかりも何かあるはずだ。
──だから、せめて二部の情報を、些細なことでも!
俺は必死になって、前世の俺が持つ携帯へ手を伸ばす。そしてその指が携帯に触れた瞬間、全身が痺れるような感覚と共にパッと目の前が明るくなる。
視界は白い光に包まれて何も見えなくなる。意識が段々を失われていくのがわかった、その時だった。
『違う! こんなの、望んでいない! こんな終わりは違う!』
最後に遠くから誰かの声が聞こえた気がした。それは、聞いてるだけで胸が苦しくなるような掠れた悲痛な声だった。
◆◆◆
「っ……は!」
はっと息を呑んだと同時に目が覚める。気付くと、俺の手は天井に向かって真っすぐ伸ばされていた。
何かを掴もうとしていた手をぼんやりと眺めて、ゆっくりと自分が寝ぼけて腕を伸ばしたのだと理解する。
「……夢、か」
自分の額に手を添えながら、溜息が零れる。先ほどまで見ていた夢は、妙に現実感のある夢だった。
いまだぼんやりとして、まるで心がここに戻ってきていないようだ。それでも、このまま眠る訳にはいかないと体を起こす。
「った……」
起きた瞬間、体の節々が痛んで眉を顰める。ふと、気付くと自分が真っ裸であることに気付く。そして、同時に思い出すのは昨晩のことだ。その瞬間、顔を両手で覆って動けなくなる。
「し、死にたい……」
羞恥心で死にそうになっていると、俺の呟きを聞いたノエルが白い布の姿を現す。
その布が不安定に右や左に大きく動いている様子を見ると、俺の言葉に慌てているようだ。本気で思った言葉ではないが、狼狽えるノエルの姿を見ると思わず口許が緩む。
「あ、いや、違うんだ。悪かった、ノエル。ちょっとした冗談だ」
そう言った俺の声は枯れており、これも昨夜の残りだ。部屋の中を見渡すと、アルヴェンはどこにもいない。夜の間に使用人室にでも戻ったのだろうか。
まあ、すぐに顔を合わせるのは恥ずかしかったので助かるといえば、助かる。
「ノエル。衣服を用意してくれ」
ノエルに声をかけるとクローゼットから俺の衣装をいくつか、取り出してくれる。そのままノエルに服を着せてもらったが、その際に体中の痕が凄まじいことに気付いた。半分以上が噛み痕であり、犯人は間違いなくアルヴェンだ。
……本当に獣か、あいつは。
行為中も執拗に噛みついたり、吸いついたりと痕を残していた。生々しく昨晩の行為を思い出しては、動きを停止するを繰り返して、ようやく衣装を整えた。ソファに腰をかけて、ふうと一息を吐く。
そして、昨晩見た夢のことを改めて考える。
──間違いない。原作はまだ終わってなかったんだ。
俺が知っているのは一部までで、二部は読めていない。二部が新たな敵の話ならいいが、何かサタリアが関わることが起きるかもしれない。原作のサタリアは一部のラストで自殺したが、俺は生きるつもりだから……何か予想外のことが起こったとしても、対処できるか不安だ。
その時、部屋の扉が叩かれる。ノック音が部屋に響いて、びくりと肩が跳ねる。アルヴェンがやってきたかと思い、心臓の鼓動が早くなる。いつも通りにノエルに頼もうかと思ったが、何となく、気が向いて俺は扉に近付く。
そして、そっと開くとそこに立っていたのは───アルヴェンではなく、リティだった。
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