【本編完結】ラスボス系悪役令息が望むのは、原作通りの没落ルート

司馬犬

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4章

7.ものとしてできること1

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 回帰して、まず俺が警戒したのはメラニーだった。
 彼女の最終目標は、契約者を自分の手元に置くことだ。その目標を果たすまでは、どんな犠牲を出しても決して止まらない性格であることは前の付き合いからわかっていた。
 だからこそ、契約者であるサタリアを守るためには以前のようにラクトフェル家を没落させる訳にはいかなかった。何故ならラクトフェル家が没落しなければ、メラニーであっても簡単に手を出すことができないからだ。
 次に厄介なのが、メラニーの寵愛者の力だ。あれは愛に飢えたものを操り、人であれば誰であっても好感を抱かせる。そのため、誰にも回帰の力に関して伝えることはしなかった。
 下手を打ってメラニーにバレることがあれば、危険が増す。
 回帰前はサタリアとメラニーが対峙して話すことがなかったため、彼女の力がどれほどサタリアに影響を及ぼすかわからなかった。そのため、サタリアにさえも回帰については伝えなかった。
 しかし、サタリアはメラニーの要求を簡単に撥ね付けた。どうやらサタリアには寵愛者の力が効きづらいことがわかったが、その理由まではわからなかった。
 それでもメラニーの執念は俺の想像以上に凄まじかった。彼女は、俺が力を貸さなくても自力でラクトフェル家を没落させようと動き始めたのだ。
 サイラを操り、自らの立場を取り戻し、サタリアにゆっくりと忍び寄っているのがわかった。そして、サタリアが自分の身を挺してサイラを庇った時、ようやく気付いた。
 ──サタリアは、いずれ追い詰められる。
 サタリアは俺が知るよりもずっと情が深く、弟たちを愛していた。まさか自分の身を捧げてまで止めるとは思いもしなかった。結局欲望に逆らえず、受け入れてしまった俺自身にも問題がある。
 しかし三つ子を見捨てることが出来ないなら、いくらラクトフェル家の力があろうとも、いずれは彼らを利用され、サタリアはメラニーに捕まることになるだろう。
 その結末がどうなるかを俺はこの目で見た。あの時と同じことになることはなくとも、メラニーに捕まればどうなるかわからない。そうなれば現状に絶望し、自殺してしまうことだってあり得るだろう。
 だから──俺は、決めた。
 
「アルヴェン、よく似合ってます」
 
 メラニーは蕩けた目を俺に向けながら、頬を仄かに赤らめる。それを見れば、まるで恋に落ちたかのような表情に見えるだろうが、これはただ俺の存在に見惚れているだけだ。例えるなら、ずっと欲しかった絵画を手元で飾れることによる喜び、といったところだろう。
 メラニーは今も前も変わらない。彼女は俺を人として見たことはない。キメラであっても魔法生物に近い、貴重な存在として気に入っているだけだ。
 ──反吐が出る。
 メラニーが俺を自分のものだと確信する目付きが煩わしくて仕方ない。前はそこまで不快に感じなかったが、今は吐き気を感じる程だ。
 
「今宵は建国祭だけど、あなたを見せ付ける場でもありますから、堂々としていてくださいね」
 
 メラニーはふわりとした柔らかな微笑みを浮かべる。彼女の容姿と相まって、まさに花咲くような笑顔というやつだろう。メラニーはこうして善人ぶることが誰よりも上手い。
 ──サタリアには、できない笑顔だな。
 その時ふと思い浮かんだのは、ずっと側にいたあの人の顔だった。
 サタリアはメラニーに劣らないほどに美人だが、彼女と違い棘を感じさせるような美貌だ。彼がどれだけ優しく微笑んでも、それを見た者は微笑みの奥の真意を勝手に探って背筋を凍らせてしまうだろう。
 けれど、それでいい。サタリアの真意を知れるのは、いつだって自分だけがいい。
 
「さあ、行きましょう」
 
 メラニーは、広間に続く扉に向かって歩き出す。俺は何も言わずにただ、その小さな背中を睨みつけた。
 
「第四皇女殿下。今日もお美しい姿で……」
「ありがとうございます。この場でお会いできて」
 
 会場入りしたメラニーは、次々と声を掛けてくる貴族たちに笑顔で受け答えを続けている。俺は黙ってメラニーのすぐ側に立っているだけだ。
 今俺がいるのは大広間の中央にある大階段の踊り場だ。ここからは階下にいる貴族たちの姿がよく見える。各貴族たちの衣装は過度な装飾で彩られ、それらは煌びやかなシャンデリアの灯りを浴びて、煩わしい光を返す。
 会場となった室内は広く、壁だけではなく天井にも過度な装飾が施された眩い空間だ。この場には各家の当主しかいないため、人はさほど多くはない。ただ、雑用や給仕をする魔法生物は多くいた。キメラがいないのは、メラニーが手を回したのだろう。
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