桃太郎は、異世界でも歴史に名を刻みます

林りりさ

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シャブる?

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 広場には大きな焚火が用意され、その周囲にコボルトたちが集まり、ジャバリの肉が焼き上がるのを今か今かと心待ちにしていた。
 脂がしたたるその肉からは、香ばしい香りが漂い、匂いだけで飯が三杯は食えそうだ。

 そんな中、少し遅れて姿を現したアビフ様が、広場の中心に立ち、大声で話し始めた。
「皆の者、よく聞け。我々コボルト族は――人族との交流を持つことに決めた!」

 族長からの突然の発表に、広場はざわめきに包まれる。
「静粛にせい!」
 アビフの一喝で場が静まると、彼は続けた。

「今宵、このジャバリカーニバルを催すことができたのは、ここにおる桃太郎君のおかげじゃ。彼から多くの学びを得た。そして、今後我らがさらに繁栄を望むのであれば、人族との共存共栄こそが最も理に適っておると判断したのだ」

 これまで考えもしなかったであろう、人族との共存共栄という道筋が全く見えないのだろう。皆の顔には、困惑の色が浮かんでいる。

「今宵、ジャバリの肉と共に、儂はもう一つの加護をアイリス様から授かった。それは——人族と話す力じゃ。明日、儂とアテナ、そしてティガが人族の街テソーロへと向かう。そこで、お互いの得手不得手を補い合う道を探る。これは、あくまでも共存であり、我々が人族に従属するわけではない。無論、そのような話であれば、この話は破談にする。平等であること以外は認めん!」

 アビフの力強い言葉に、どっと拍手が湧き上がる。
「皆の理解に感謝する。……そろそろ頃合いじゃな。今日という素晴らしい日に、そしてアイリス様の慈しみに感謝を込めて——ジャバリカーニバル、開幕じゃーーッ‼」

 その合図を皮切りに、皆が焼き上がったジャバリ肉に飛びつき、一心不乱にかぶりつき始めた。
「ウんメェ~」「いつぶりだろうか……ありがたい」「涙が出るくらい美味いぜ」「コレ、美味しいね!」「こんなの始めて食べるよ」

 そんな声があちこちから聞こえてきた。
 偶然の成り行きとはいえ、こんなにも多くの笑顔が見られるとは思ってもみなかった。素直に、うれしかった。

「大将、ジャバリ肉取ってきたです。はい、どーぞ!」
「お、ありがとララ。じゃあ、いただきます——ん、んまぁぁ~い‼」
 こりゃたまげた! 口の中で上質な脂がとろける……これほど美味いとは想像していなかったな。そりゃ小躍りしたくなるってもんだわ、こりゃ。



 あれだけあったジャバリ肉は、みるみるうちに消えていった。
 それと反比例するかのように、皆の笑顔は増える一方だ。
 肉がすべて食べ尽くされると、お次は皆様お待ちかね! 『白いブツ』のお出ましだ。

 無我夢中で骨をしゃぶっているコボルトたちの姿をみて、そんなに美味しいのなら……と少し興味はそそられたが、さすがに骨にしゃぶりつくのは自重しておいた。



 宴のあと、俺たちはアビフ様の家に泊めてもらうことになった。
 ララとアテナさんは、仲良く寄り添ってすやすや眠っている。ふたりとも、本当に可愛らしい寝顔だった。

 俺は部屋の隅に用意された寝床で横になる。
 一方ティガはというと……残念ながら『再犯の疑いあり』ということで、二日連続の野宿だ。こればかりは仕方ない。

 眠りにつく前、俺は少し考えごとをしていた。
 これが俺のなすべきことであっているのだろうかと、自問自答していたのだ。
 ただ、人間とコボルトとの共存は、本心でそうあって欲しいと考えてのこと——

 悩んでも仕方ないか。信じた道を進もう!
 そう決心すると、俺の意識は夢の世界へといざなわれた。
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