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コネコのスープ
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翌朝——
ララの「いつまで寝てるですかー、大将!」という大きな声で叩き起こされた。
寝ぼけ眼で周囲を見渡すと、他の皆はすでに身支度を整えていた。どうやら、朝寝坊をしてしまったようだ。
「あ、すみません。俺だけのんびり寝ちゃってたみたいで」
「構わんよ。昨日はいろいろあって疲れておったんじゃろう」
「桃太郎さん、朝食の準備ができていますので、よかったらお召し上がりください」
アテナさんが用意してくれていたのは、コネコのスープだった。具材には人参とごぼうのような根菜が入っていた。
「ありがとうございます。いただきます」
初めて食べるコボルトの料理。どんな味だろうかと期待しながら一口すすってみる。
——何とも言えない野性的な味がした。味付けは……皆無。薄いとかの問題じゃないぞ、これは……。
「どうじゃ、コネコのスープは?」
「あっ、お、美味しいです~」
「……嘘じゃな。正直に言うて良いぞ」
「やっぱり、お口に合いませんよねぇ……」
「い、いえ! これはこれで、独特な旨みがあって——」
「ぶー! マズいです~」
俺が必死で世辞を並べていたのに、ララがその努力をぶち壊してきた。
「お、おいララ! そんなこと言っちゃ——」
「いいんじゃよ。儂らは毎日これを食っておるが、君たちの口には合わんのだろう」
「すみません……。正直言うと、そんなに美味しくはないですね。塩などの調味料はないんですか?」
「塩は、あいにく切らしていてな。この辺りでは、ほとんど手に入らんのじゃよ」
「そうでしたか。なら、なおさら人との交流を成功させなきゃですね! 塩は、命に関わる大事なものですから」
「うむ……たしかに。民の健康のためにも、儂も頑張らねばな!」
「はいっ!」
朝食を済ませた俺たちは、テソーロへ向かうための準備に取りかかった。ふと、居間の片隅に置かれてあったものに目が留まる。
「アビフ様、この綺麗な石……もしかして魔含ですか?」
「うむ、そうじゃ。欲しいのなら持っていけ」
「えっ、いいんですか?」
「言ったじゃろ。儂らとってはただの石っころじゃと。そいつは、ひと際綺麗な輝きをしておったので、記念に取っておいただけじゃ」
アビフ様の言う通り、その魔含は赤く綺麗な輝きを放っていた。大きさも、ダークウルフのものよりも明らかに大きかった。
「ちなみにこれは、どんな魔物の魔含だったんですか?」
「たしか……オーグルだったかのぉ。もう何年も前のことじゃから、詳しくは覚えておらんがな」
オーグル——俺の頭の中で『大鬼』と訳された。
この世界にも、鬼が存在するのか……。
「もしかしたら、これは交渉に使えるかもしれませんので、持って行ってもいいですか?」
「構わん。君に任せよう」
準備が整い、俺とララ・ティガ・アビフ様・アテナさん、そして護衛としてボアーズとヤーキンも一緒にテソーロへと向かうことになった。
道中、一匹のブラックホーンディアという魔物に遭遇した。
漆黒の角を持つ鹿のような魔物だ。
しかし、ボアーズとヤーキンの活躍で、一瞬にして討伐された。コボルト族の強さの片鱗を目の前で見せつけられた。
「わぁ……あっという間にやっつけちゃったよ。完璧な連携でしたね!」
俺の素直な感想を聞いたボアーズが、少し照れたように鼻を鳴らす。
「ふん、これくらいの魔物、我とヤーキンの手にかかれば朝飯前だ」
「おいボアーズ。朝飯はさっき食ってしまったぞ!」
あれ……このやりとり、どこかで見たような……。
「ま、まさに、阿吽の呼吸ですね!」
「意味はよくわからんが……まぁそんなところだ。我とヤーキンは兄弟だからな、言葉を交わさずとも通じ合えるのだ」
「ご兄弟だったんですか! 道理でよく似てる!」
「ほれ、これ要るか?」
ボアーズが、さっきの魔物から取り出した魔含を差し出してきた。
「あぁ、助かります。これを換金したら、街で美味しいものでも買って、みんなで食べましょうね!」
「それは楽しみだ」
その後の道中は、特に問題も起こらず、日が傾く前にテソーロの手前までたどり着いた。
「順調にここまで来れましたね。さすがに、いきなり皆さんを街に入れるのは難しいと思うので、まずは俺が一人でギルドへ行って話をしてきます。その間、ララを置いていくので、何かあれば通訳を頼むな」
「わかったです! 任せてくださいです!」
「では、行ってきますので、少しの間待っててください」
ララの「いつまで寝てるですかー、大将!」という大きな声で叩き起こされた。
寝ぼけ眼で周囲を見渡すと、他の皆はすでに身支度を整えていた。どうやら、朝寝坊をしてしまったようだ。
「あ、すみません。俺だけのんびり寝ちゃってたみたいで」
「構わんよ。昨日はいろいろあって疲れておったんじゃろう」
「桃太郎さん、朝食の準備ができていますので、よかったらお召し上がりください」
アテナさんが用意してくれていたのは、コネコのスープだった。具材には人参とごぼうのような根菜が入っていた。
「ありがとうございます。いただきます」
初めて食べるコボルトの料理。どんな味だろうかと期待しながら一口すすってみる。
——何とも言えない野性的な味がした。味付けは……皆無。薄いとかの問題じゃないぞ、これは……。
「どうじゃ、コネコのスープは?」
「あっ、お、美味しいです~」
「……嘘じゃな。正直に言うて良いぞ」
「やっぱり、お口に合いませんよねぇ……」
「い、いえ! これはこれで、独特な旨みがあって——」
「ぶー! マズいです~」
俺が必死で世辞を並べていたのに、ララがその努力をぶち壊してきた。
「お、おいララ! そんなこと言っちゃ——」
「いいんじゃよ。儂らは毎日これを食っておるが、君たちの口には合わんのだろう」
「すみません……。正直言うと、そんなに美味しくはないですね。塩などの調味料はないんですか?」
「塩は、あいにく切らしていてな。この辺りでは、ほとんど手に入らんのじゃよ」
「そうでしたか。なら、なおさら人との交流を成功させなきゃですね! 塩は、命に関わる大事なものですから」
「うむ……たしかに。民の健康のためにも、儂も頑張らねばな!」
「はいっ!」
朝食を済ませた俺たちは、テソーロへ向かうための準備に取りかかった。ふと、居間の片隅に置かれてあったものに目が留まる。
「アビフ様、この綺麗な石……もしかして魔含ですか?」
「うむ、そうじゃ。欲しいのなら持っていけ」
「えっ、いいんですか?」
「言ったじゃろ。儂らとってはただの石っころじゃと。そいつは、ひと際綺麗な輝きをしておったので、記念に取っておいただけじゃ」
アビフ様の言う通り、その魔含は赤く綺麗な輝きを放っていた。大きさも、ダークウルフのものよりも明らかに大きかった。
「ちなみにこれは、どんな魔物の魔含だったんですか?」
「たしか……オーグルだったかのぉ。もう何年も前のことじゃから、詳しくは覚えておらんがな」
オーグル——俺の頭の中で『大鬼』と訳された。
この世界にも、鬼が存在するのか……。
「もしかしたら、これは交渉に使えるかもしれませんので、持って行ってもいいですか?」
「構わん。君に任せよう」
準備が整い、俺とララ・ティガ・アビフ様・アテナさん、そして護衛としてボアーズとヤーキンも一緒にテソーロへと向かうことになった。
道中、一匹のブラックホーンディアという魔物に遭遇した。
漆黒の角を持つ鹿のような魔物だ。
しかし、ボアーズとヤーキンの活躍で、一瞬にして討伐された。コボルト族の強さの片鱗を目の前で見せつけられた。
「わぁ……あっという間にやっつけちゃったよ。完璧な連携でしたね!」
俺の素直な感想を聞いたボアーズが、少し照れたように鼻を鳴らす。
「ふん、これくらいの魔物、我とヤーキンの手にかかれば朝飯前だ」
「おいボアーズ。朝飯はさっき食ってしまったぞ!」
あれ……このやりとり、どこかで見たような……。
「ま、まさに、阿吽の呼吸ですね!」
「意味はよくわからんが……まぁそんなところだ。我とヤーキンは兄弟だからな、言葉を交わさずとも通じ合えるのだ」
「ご兄弟だったんですか! 道理でよく似てる!」
「ほれ、これ要るか?」
ボアーズが、さっきの魔物から取り出した魔含を差し出してきた。
「あぁ、助かります。これを換金したら、街で美味しいものでも買って、みんなで食べましょうね!」
「それは楽しみだ」
その後の道中は、特に問題も起こらず、日が傾く前にテソーロの手前までたどり着いた。
「順調にここまで来れましたね。さすがに、いきなり皆さんを街に入れるのは難しいと思うので、まずは俺が一人でギルドへ行って話をしてきます。その間、ララを置いていくので、何かあれば通訳を頼むな」
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「では、行ってきますので、少しの間待っててください」
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