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色男
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人とコボルトとの世紀の初会談は、ひとまず良い着地点にたどり着いたと感じる。
ここまで来るのに、この世で一番失ってはいけないものを一度失ってしまったが……まぁ必要な代償だった、かな? イーリス様のご加護様々だわ、あはは。
昼食を終えた俺たちは、それぞれ別行動を取ることにした。
ガストンさんは、すぐにギルドへ向かい、緊急クエストの発令と参加者の募集に取り掛かっている。
エスピアさんも騎士団寮へ戻り、仲間たちに参加の意思を伝えている最中だ。
二人とも、さすがの手際の早さだ。頼りがいがある!
アビフ様はというと、日が高いうちは外出が難しいため、お待ちかねの『ガストン・コレクション』をじっくり鑑賞中だ。
同行したティガ、ボアーズ、ヤーキンも、目を輝かせながら、食い入るように武具やマジックアイテムを眺めていた。
一方で、アテナさんとララは、中庭で優雅に茶会を開いていた。
ガストン邸のメイド長・レイラさんに礼儀作法を教わりながら、『紅茶』という香り高い飲み物と甘味を楽しんでいる。
——そして俺はというと、再び厨房へと足を運んでいた。
きびだんごの代用品となる『団子』を作るためだ。
「あぁ、待っていましたよ桃太郎様。材料の準備、バッチリできておりますよ!」
「ありがとうございます、チャットさん。……あ、それと、敬語はいいですよ。名前も呼び捨てで構いません」
「そうですか? では、桃太郎……いや、太郎でも?」
「呼びやすいのでいいですよ」
「じゃあ太郎で! 太郎、材料は全て揃ってるよ。まずは何から始めようか?」
「ええっと……」
前世で店の手伝いはしていたが、一から何かを作るのは初めてだ。あの時は、母ちゃんの指示に従って、動いていただけだったからなぁ。
けど今は、頼れるのは自分だけ……何とかしなくちゃ。
記憶の断片を手繰りながら、美味しい団子を作ってみせよう!
「ええっと、まずはアロスを挽いた粉(上新粉)と、砂糖、水を混ぜてください」
「オーケー! 分量はどのくらい入れるんだ?」
「分量……どのくらい……すみません、わかりません」
「わからないって、作ったことあるんじゃないのか?」
「実は、いつも母が作っていたのを手伝っていただけでして……一から作るのは初めてなんです……すみません」
伏し目がちに謝る俺を見て、チャットさんはきっと怒っているだろう。
「ふざけるな」という罵倒が飛んで来るに違いない……そう思っていると——
「ワァオ、なんだって⁉ そいつは面白い! じゃあ、フィーリングで作っていこうぜ、兄弟! 太郎が目指してる団子のイメージを僕に教えてくれよ。一緒に試行錯誤だ!」
(ぽ……ぽわわわ~ん)
怒るどころか、むしろこの状況を楽しんでる……だと⁉
チャットさん……なんて優しい人なんだ!
俺は紙に団子の絵を描きながら、ぷにぷにした触感で、ほんのり甘くて、丸い形をした菓子だと伝えた。
「ぷにぷに触感のデザートか……いいね! 他に特徴は?」
「食べると、少しびよ~んと伸びます」
「ワァオ! なんて楽しい食べ物なんだよ、団子ってのは! とにかく、まずは試作だ!」
「お願いします!」
鍋に目分量で粉と砂糖、水を入れて火にかけてみる……が、一向に固まる気配がない。水を入れすぎたようだ。
次は水の量を減らしてみたが、今度はカチカチに固まってしまった。
「またダメでしたね……」
「大丈夫! きっと上手くいくさ。……あ、アロス粉が少なくなってきたな。少しの間、鍋を見ててもらってもいいかい?」
「わかりました」
「焦がさないよう、こうやってヘラを鍋底につけたまま、優し~く撫でるように混ぜ続けるんだよ!」
チャットさんは俺の手を取って、ヘラの動かし方を教えてくれた。
ち、近いです……チャットさん——
「じゃ、粉を挽いてくるね。すぐ戻ってくるから!」
チャットさんは走って蔵へと向かっていった。
言われた通り、鍋の番をしていた俺は、さきほどから体が火照っているのを感じていた。
にしてもチャットさん、めっちゃ優しくて格好いいなぁ~。ああいうのを『色男』って言うんだな! どうやったら、あんな色気が出せるようになるんだろう……?
そんなことをぼんやり考えていると——焦げた匂いが鼻を突いた。
「あ、やばっ! めっちゃ焦げてる! 変なこと考えてたせいで、混ぜる手が止まってた……あちゃ~」
臭いを嗅ぎ付けたのか、チャットさんが慌てて厨房に戻ってきた。
「太郎! すごく焦げ臭いけど、大丈夫かい……って、あ~あ。やっちまったなぁ」
「す……すみません!」
「ちゃんと見ててって言ったじゃんか~。あ、分かったぞ! 好きな女の子のことでも考えてたんだろ~⁉ もう、太郎はおっちょこちょいさんだなぁ」
チャットさんはにやりと笑いながら、俺のおでこを指先で優しくチョンとつついてきた。
な、なんだよ……チョンってすなよ……。
「す、すみません。少し体が熱くて、ぼーっとしちゃってたみたいで……って——⁉」
チャットさんが突然、俺の髪をそっとかき上げ、額に手を当ててきた。
ファッ⁉ な、なにごと⁉
「うーん、熱はなさそうだけどなぁ。太郎、少し休んでおいていいよ。あとは僕に任せて!」
チャットさんのキラキラ笑顔と優しい声に、心臓がトゥクンと跳ねた。
ああっ……その笑顔、まぶしすぎて逆に体温上がりそう……な、なんなんだこの気持ちは……!
「だ、大丈夫です! ちょ、ちょっとお水をもらえたら……」
「オーケー! ちょっと待ってな、すぐ持ってくるよ!」
失敗も笑って許容してくれて、体調の変化にも本気で気遣ってくれる。あぁ、俺もあんな器の大きい男になりたい!
——そう切に思った。
ここまで来るのに、この世で一番失ってはいけないものを一度失ってしまったが……まぁ必要な代償だった、かな? イーリス様のご加護様々だわ、あはは。
昼食を終えた俺たちは、それぞれ別行動を取ることにした。
ガストンさんは、すぐにギルドへ向かい、緊急クエストの発令と参加者の募集に取り掛かっている。
エスピアさんも騎士団寮へ戻り、仲間たちに参加の意思を伝えている最中だ。
二人とも、さすがの手際の早さだ。頼りがいがある!
アビフ様はというと、日が高いうちは外出が難しいため、お待ちかねの『ガストン・コレクション』をじっくり鑑賞中だ。
同行したティガ、ボアーズ、ヤーキンも、目を輝かせながら、食い入るように武具やマジックアイテムを眺めていた。
一方で、アテナさんとララは、中庭で優雅に茶会を開いていた。
ガストン邸のメイド長・レイラさんに礼儀作法を教わりながら、『紅茶』という香り高い飲み物と甘味を楽しんでいる。
——そして俺はというと、再び厨房へと足を運んでいた。
きびだんごの代用品となる『団子』を作るためだ。
「あぁ、待っていましたよ桃太郎様。材料の準備、バッチリできておりますよ!」
「ありがとうございます、チャットさん。……あ、それと、敬語はいいですよ。名前も呼び捨てで構いません」
「そうですか? では、桃太郎……いや、太郎でも?」
「呼びやすいのでいいですよ」
「じゃあ太郎で! 太郎、材料は全て揃ってるよ。まずは何から始めようか?」
「ええっと……」
前世で店の手伝いはしていたが、一から何かを作るのは初めてだ。あの時は、母ちゃんの指示に従って、動いていただけだったからなぁ。
けど今は、頼れるのは自分だけ……何とかしなくちゃ。
記憶の断片を手繰りながら、美味しい団子を作ってみせよう!
「ええっと、まずはアロスを挽いた粉(上新粉)と、砂糖、水を混ぜてください」
「オーケー! 分量はどのくらい入れるんだ?」
「分量……どのくらい……すみません、わかりません」
「わからないって、作ったことあるんじゃないのか?」
「実は、いつも母が作っていたのを手伝っていただけでして……一から作るのは初めてなんです……すみません」
伏し目がちに謝る俺を見て、チャットさんはきっと怒っているだろう。
「ふざけるな」という罵倒が飛んで来るに違いない……そう思っていると——
「ワァオ、なんだって⁉ そいつは面白い! じゃあ、フィーリングで作っていこうぜ、兄弟! 太郎が目指してる団子のイメージを僕に教えてくれよ。一緒に試行錯誤だ!」
(ぽ……ぽわわわ~ん)
怒るどころか、むしろこの状況を楽しんでる……だと⁉
チャットさん……なんて優しい人なんだ!
俺は紙に団子の絵を描きながら、ぷにぷにした触感で、ほんのり甘くて、丸い形をした菓子だと伝えた。
「ぷにぷに触感のデザートか……いいね! 他に特徴は?」
「食べると、少しびよ~んと伸びます」
「ワァオ! なんて楽しい食べ物なんだよ、団子ってのは! とにかく、まずは試作だ!」
「お願いします!」
鍋に目分量で粉と砂糖、水を入れて火にかけてみる……が、一向に固まる気配がない。水を入れすぎたようだ。
次は水の量を減らしてみたが、今度はカチカチに固まってしまった。
「またダメでしたね……」
「大丈夫! きっと上手くいくさ。……あ、アロス粉が少なくなってきたな。少しの間、鍋を見ててもらってもいいかい?」
「わかりました」
「焦がさないよう、こうやってヘラを鍋底につけたまま、優し~く撫でるように混ぜ続けるんだよ!」
チャットさんは俺の手を取って、ヘラの動かし方を教えてくれた。
ち、近いです……チャットさん——
「じゃ、粉を挽いてくるね。すぐ戻ってくるから!」
チャットさんは走って蔵へと向かっていった。
言われた通り、鍋の番をしていた俺は、さきほどから体が火照っているのを感じていた。
にしてもチャットさん、めっちゃ優しくて格好いいなぁ~。ああいうのを『色男』って言うんだな! どうやったら、あんな色気が出せるようになるんだろう……?
そんなことをぼんやり考えていると——焦げた匂いが鼻を突いた。
「あ、やばっ! めっちゃ焦げてる! 変なこと考えてたせいで、混ぜる手が止まってた……あちゃ~」
臭いを嗅ぎ付けたのか、チャットさんが慌てて厨房に戻ってきた。
「太郎! すごく焦げ臭いけど、大丈夫かい……って、あ~あ。やっちまったなぁ」
「す……すみません!」
「ちゃんと見ててって言ったじゃんか~。あ、分かったぞ! 好きな女の子のことでも考えてたんだろ~⁉ もう、太郎はおっちょこちょいさんだなぁ」
チャットさんはにやりと笑いながら、俺のおでこを指先で優しくチョンとつついてきた。
な、なんだよ……チョンってすなよ……。
「す、すみません。少し体が熱くて、ぼーっとしちゃってたみたいで……って——⁉」
チャットさんが突然、俺の髪をそっとかき上げ、額に手を当ててきた。
ファッ⁉ な、なにごと⁉
「うーん、熱はなさそうだけどなぁ。太郎、少し休んでおいていいよ。あとは僕に任せて!」
チャットさんのキラキラ笑顔と優しい声に、心臓がトゥクンと跳ねた。
ああっ……その笑顔、まぶしすぎて逆に体温上がりそう……な、なんなんだこの気持ちは……!
「だ、大丈夫です! ちょ、ちょっとお水をもらえたら……」
「オーケー! ちょっと待ってな、すぐ持ってくるよ!」
失敗も笑って許容してくれて、体調の変化にも本気で気遣ってくれる。あぁ、俺もあんな器の大きい男になりたい!
——そう切に思った。
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