桃太郎は、異世界でも歴史に名を刻みます

林りりさ

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共闘作戦に向けて

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 ガストンがギルドに到着すると、入口でベリアが出迎えてくれていた。
「ベリア、おはよう!」
「ガストンさん、おはようございます。早速ですが、緊急クエストで招集された冒険者の方々が、すでに会場で待機されています。どうぞ、そちらへ」

「了解。結構集まってくれてるか?」
「そうですね。久しぶりの緊急クエストということもあって、隣町に出張していたAクラス冒険者パーティも、テソーロに戻ってきてくれていましたよ」

「おぉ、『風の大地』と『紅蓮の翼』か! そりゃ心強いな!」
「他にも、Cランク以上の冒険者が、おおよそ四十名ほどいらっしゃっています」
「上々だな。——そういや、前に頼んでた、例の冒険者夫婦の名前、分かったか?」

「ええ。お二人は『流星』という名でパーティ登録されていました。ご主人がテイラー・メルクリウス、奥様がサラ・メルクリウスというお名前でした」
「あぁ、そんな名だったな……」

「お二人は、共同墓地に埋葬されているそうです。もしご都合がつけば、お参りされると良いかと」
「……そうだな。ありがとな、ベリア」
「いえ。——では、いってらっしゃいませ」


 会場には、全部で四十九名の冒険者たちが集まっていた。
 壇上に上がり、ガストンが皆へ向けて話し出す。

「今日は集まってもらい感謝する。早速だが、今回の緊急クエストの概要を説明する。まず目的だが、西の森および、その周辺地域に出没している魔物の掃討だ。
 そして今回——この任務に協力してくれる、心強い助っ人が二グループいる。
 まず一グループ目は……近衛騎士団だ!」

 ガストンからの思いもよらない発表に、ざわめきが広がる。
 ギルドのクエストに、国家直属の近衛騎士団が参加するなど、通常ならあり得ない。何かとんでもないことが起きていると、誰もが感じ取っていた。

「といっても、少数精鋭の密偵部隊の十名だけだがな。エスピアという部隊長と共に、作戦を実行していく」
 ざわめきが一度静まりかけたそのとき、ガストンがふと口を閉ざし、腕を組む。少し難しい表情をしていた。

 それに気づいた一人の冒険者が声をかけた。
「どうしたんです、ギルマス?」
 そう言ったのは、Aランクパーティー『風の大地』のリーダー、フィン・アルヴィンだった。

「あぁ、すまん。……これから話すことはな、正直、簡単には信じてもらえないと思ってる。俺自身、最初はまったく信じられなかったくらいだ」
「ほぉ……。まっ、僕らも死線は何度もくぐってきてますし、魔物と手を組んで仲良く戦え~、なんて冗談くらいなら、笑い飛ばせる自信はありますよ!」

 その軽口に、場の空気が一瞬やわらぎ、笑いが起こる。
 だが、ただ一人だけ笑えない者がいた。ガストンだ。
 彼は苦い顔をしながら、こめかみを掻いた。

「……その冗談がな、まさかのほぼ正解だ」
 一瞬で、場の笑いが凍りついた。
 冒険者たちは目を見開き、ガストンを見つめる。

「う……嘘だよなぁ、ギルマス⁉」
「嘘じゃない。厳密に言うと、魔獣——いや、コボルト族たちと共闘する!」
 静まり返った会場に、再びざわつきが走った。

「コボルトと一緒に戦うだって⁉」
「聞いてねぇぞ、そんな話!」
「緊急クエストだって言うから来てやったのに、どうなってんだよ!」

「コボルトと言えば、集落殲滅の依頼が出てなかったか?」
「あ、そういや俺見たぞ。最近テソーロに来たって新米冒険者がその依頼を受けてたのを」

「ってことは、そいつがコボルトをテイム(従属)させたってことか?」
「あの小僧が……いや、そんな芸当できるようには見えなかったぞ」
「そもそも、コボルトと一緒に戦うなんて、無理だろ⁉ どうやって意思疎通すんだよ?」

 口々にコボルトとの共闘への疑念、不満、困惑などを言い合っている。
 そのとき、ガストンが床を勢いよく踏み鳴らし、大きな音を響かせる。
 反射的に全員が静まり、彼のほうへ目を向けた。

「わーってるよ、お前らの言いたいことは! きちんと説明するから、ちょっと間黙って俺の話を聞いてくれ。……実はだな——」
 ガストンは桃太郎との出会い、きびだんごの話、アビフたちとの交渉と合意までの経緯を、順を追って丁寧に語り始めた。

 場には沈黙が戻り、誰もが耳を傾けていた。
 だが、その内容はあまりに常識外れで、完全に信じ切るには無理があった。納得しきれない表情の者も少なくない。

「——というわけで、作戦の実行へ向けて、きびだんごの複製を今やってもらっている段階だ。この話を聞いて、無理だと思った者は帰ってくれて構わない。だが、協力してくれるなら、このまま残ってくれ」

 そう言ったガストンの声に、会場は静かに揺れた。
 数秒の沈黙の後、六名の冒険者が無言で立ち上がり、会場を後にした。
 その背を、残った者たちはただ見送っていた。
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