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数日もの間、クリスは滞在していた。
その間、本物の家族であるかのように私達は過ごしていた。
私とクリスの間で、息子が笑みを浮かべて本を読んでいる。
時には一緒にお菓子をつくり、息子の頬についた粉をクリスが指で拭いていた。
ある日の夜、息子が寝静まったのを確認してから寝室に入るとクリスは後ろから抱きしめてきた。
「……兄弟は、何人ほしい?」
その言葉に、私は言葉ではなく口づけで返事をしていた。
クリスの大きく包み込むような手が、私の肌をなめらかに滑る。
その口づけも、その身の逞しさもあの時から何も変わっていなかった。
あの子は、クリスと体を重ねた時の子供だった。
ニコラに捨てられた私は、クリスと出会い惹かれ合っていた。互いに激しく愛しあい、その将来を誓おうとクリスは縁談を申し込んでくれていた。
けれどニコラが、私たちの仲を引き裂いたのだ。
しかし都合がよかったのは、ニコラがこの子を自らの子供だと勘違いをしていたということ。
息子は私に似て、ニコラは何も疑いもしなかった。
だから私は、彼を許すことにしていた。
全ては、あの子の幸せのためにと。
けれども、クリスのその愛に勝るものはなかった。
「カレン。僕はいつまでも、君のことを愛しているよ」
「私も、愛しているわ」
息子はいつまでも目を覚ますことはなく、私とクリスは長年の愛を確かめあっていた。
大きく垂れ下がった私の乳房を目にしても、クリスはただ綺麗だと言って優しく吸い上げていた。
「まだ、出るみたいだね」
そう言いながら、彼は照れたような顔をしてその味を感じていた。私もまた、その柔らかな手つきに心の芯から湧き上がるような熱を感じていた。
溢れでるほどに、その蜜は止まることを知らなかった。それはニコラに抱かれている時では考えられないほどの量であり、私はわずかに驚いていた。
「ずっと僕のことを、待っていてくれたんだね」
その様子を見つめながら、彼は静かにその身を埋めた。
熱いほどに燃え上がるその身は、私の中を喜ばそうと何度も擦り上げていた。時折漏れ出る声を手で押さえながら、それでも彼は優しく私の身を気遣ってくれていた。
「カレン、大丈夫かい?」
「ええ、」
何度も与えられる刺激に、私は久しぶりに絶頂を迎えていた。
クリスの身も、衰えることを知らなかった。
「君のことも、あの子のことも……。そしてこれから、生まれてくる子のことも僕は愛するよ」
そのような言葉に笑みを浮かべて、私は何度も熱い口づけをしてその種をねだっていた。
今のこの時だけは、真実の幸せに浸っていたかった。
「クリス、……愛しているわ」
夜が明けるまで、私たちはその身を離すことはなかった。
朝のあたたかな陽がのぼり、私はそっと下腹部に手を添えていた。
「次は、クリスに似た子がいいわ」
「それは、どうかな……。僕は、カレンに似てほしいと思うよ」
静かに口づけをして、私は浴室へと向かった。
***
いよいよニコラが帰ってくるというその日、私はクリスと息子と三人で手を取り合っていた。
「もう、帰っちゃうの?」
「そうよ。でもまたいつかきっと、会えるから」
「そうだとも。また君に会える日を、楽しみにしているよ」
そう言いながら、クリスは息子の身を強く抱きしめていた。
「カレンも、元気で」
「ええ」
クリスが去ったあと、家の中は急に広く感じられていた。
風の抜ける音が、やけに静かに響く。
私はその音を聞きながら、静かに微笑んでいた。
彼は、また来る。なぜだか私はそう、確信していた。
まだ、私たちの物語は終わっていないのだから。
***
明くる日、昼を過ぎた頃にニコラは満面の笑みを浮かべて扉を開けていた。
「おーい、かえったぞ!」
多くの酒でも飲んだのだろうか、その身は変わらず鼻をつくような匂いが漂い、駆け寄った息子も思わず顔を背けていた。
「どうしたんだ、ただいまのハグは?」
「おさけくさい」
そのような息子を抱き上げながら、私は水を差し出した。
「おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
ニコラは水を飲み干しながら、夢うつつに遠い国の出来事を語りはじめた。
しかしそれに耳を貸すほど、私たちも馬鹿ではない。
横になるニコラの身に毛布をかけて、私は息子とともに夕飯の支度にとりかかる。
夜、息子を寝かしつけた後にすぐに私は寝室へとその手を引かれていた。
「まったく、向こうの女は強すぎだ!さんざん搾り取られて折れちまうかと思ったぜ」
そうは言いながらも、変わらずその身を私に向けて突き立てていた。
それは荒々しく、ただの作業のようでもあった。
「やっぱりお前が一番だな、女はしおらしいに限る!」
そのような笑みを浮かべながら、ニコラは腰を振っていた。
しかし私も、かすかな笑みを浮かべていた。
これで私も、嘘を貫き通すことができるのだからと。
長い間、憎しみと愛のあいだで揺れ続けていた。
裏切りも嘘も、無関心も、すべてが私の胸に刺さっていた。
けれど私は、ようやく悟っていたのだ。
許すということは、相手のためではなく、自らのその心を解放することなのだと。
***
しばらくして、私の身には新たな命が宿っていた。
息子は大いに喜び、ニコラもまた呑気な笑みを浮かべていた。
私は息子の手を腹部にあてて、静かに囁いた。
「これからも、この子と三人でいつまでも仲良く過ごしましょうね」
その言葉に、息子は満面の笑みを浮かべていた。
「うん!」
ニコラがいつものように外に出た後、息子は私のスカートを引いていた。
「次は、いつクリスに会えるの?」
「さあ、いつかしら……」
私はその身を抱きしめて、頬に小さくキスをした。
爽やかな風が吹き抜け、私と息子の髪を穏やかに揺らしていた。
次に出会えるこの子はきっと、クリスに似ているのだと信じて。
END
その間、本物の家族であるかのように私達は過ごしていた。
私とクリスの間で、息子が笑みを浮かべて本を読んでいる。
時には一緒にお菓子をつくり、息子の頬についた粉をクリスが指で拭いていた。
ある日の夜、息子が寝静まったのを確認してから寝室に入るとクリスは後ろから抱きしめてきた。
「……兄弟は、何人ほしい?」
その言葉に、私は言葉ではなく口づけで返事をしていた。
クリスの大きく包み込むような手が、私の肌をなめらかに滑る。
その口づけも、その身の逞しさもあの時から何も変わっていなかった。
あの子は、クリスと体を重ねた時の子供だった。
ニコラに捨てられた私は、クリスと出会い惹かれ合っていた。互いに激しく愛しあい、その将来を誓おうとクリスは縁談を申し込んでくれていた。
けれどニコラが、私たちの仲を引き裂いたのだ。
しかし都合がよかったのは、ニコラがこの子を自らの子供だと勘違いをしていたということ。
息子は私に似て、ニコラは何も疑いもしなかった。
だから私は、彼を許すことにしていた。
全ては、あの子の幸せのためにと。
けれども、クリスのその愛に勝るものはなかった。
「カレン。僕はいつまでも、君のことを愛しているよ」
「私も、愛しているわ」
息子はいつまでも目を覚ますことはなく、私とクリスは長年の愛を確かめあっていた。
大きく垂れ下がった私の乳房を目にしても、クリスはただ綺麗だと言って優しく吸い上げていた。
「まだ、出るみたいだね」
そう言いながら、彼は照れたような顔をしてその味を感じていた。私もまた、その柔らかな手つきに心の芯から湧き上がるような熱を感じていた。
溢れでるほどに、その蜜は止まることを知らなかった。それはニコラに抱かれている時では考えられないほどの量であり、私はわずかに驚いていた。
「ずっと僕のことを、待っていてくれたんだね」
その様子を見つめながら、彼は静かにその身を埋めた。
熱いほどに燃え上がるその身は、私の中を喜ばそうと何度も擦り上げていた。時折漏れ出る声を手で押さえながら、それでも彼は優しく私の身を気遣ってくれていた。
「カレン、大丈夫かい?」
「ええ、」
何度も与えられる刺激に、私は久しぶりに絶頂を迎えていた。
クリスの身も、衰えることを知らなかった。
「君のことも、あの子のことも……。そしてこれから、生まれてくる子のことも僕は愛するよ」
そのような言葉に笑みを浮かべて、私は何度も熱い口づけをしてその種をねだっていた。
今のこの時だけは、真実の幸せに浸っていたかった。
「クリス、……愛しているわ」
夜が明けるまで、私たちはその身を離すことはなかった。
朝のあたたかな陽がのぼり、私はそっと下腹部に手を添えていた。
「次は、クリスに似た子がいいわ」
「それは、どうかな……。僕は、カレンに似てほしいと思うよ」
静かに口づけをして、私は浴室へと向かった。
***
いよいよニコラが帰ってくるというその日、私はクリスと息子と三人で手を取り合っていた。
「もう、帰っちゃうの?」
「そうよ。でもまたいつかきっと、会えるから」
「そうだとも。また君に会える日を、楽しみにしているよ」
そう言いながら、クリスは息子の身を強く抱きしめていた。
「カレンも、元気で」
「ええ」
クリスが去ったあと、家の中は急に広く感じられていた。
風の抜ける音が、やけに静かに響く。
私はその音を聞きながら、静かに微笑んでいた。
彼は、また来る。なぜだか私はそう、確信していた。
まだ、私たちの物語は終わっていないのだから。
***
明くる日、昼を過ぎた頃にニコラは満面の笑みを浮かべて扉を開けていた。
「おーい、かえったぞ!」
多くの酒でも飲んだのだろうか、その身は変わらず鼻をつくような匂いが漂い、駆け寄った息子も思わず顔を背けていた。
「どうしたんだ、ただいまのハグは?」
「おさけくさい」
そのような息子を抱き上げながら、私は水を差し出した。
「おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
ニコラは水を飲み干しながら、夢うつつに遠い国の出来事を語りはじめた。
しかしそれに耳を貸すほど、私たちも馬鹿ではない。
横になるニコラの身に毛布をかけて、私は息子とともに夕飯の支度にとりかかる。
夜、息子を寝かしつけた後にすぐに私は寝室へとその手を引かれていた。
「まったく、向こうの女は強すぎだ!さんざん搾り取られて折れちまうかと思ったぜ」
そうは言いながらも、変わらずその身を私に向けて突き立てていた。
それは荒々しく、ただの作業のようでもあった。
「やっぱりお前が一番だな、女はしおらしいに限る!」
そのような笑みを浮かべながら、ニコラは腰を振っていた。
しかし私も、かすかな笑みを浮かべていた。
これで私も、嘘を貫き通すことができるのだからと。
長い間、憎しみと愛のあいだで揺れ続けていた。
裏切りも嘘も、無関心も、すべてが私の胸に刺さっていた。
けれど私は、ようやく悟っていたのだ。
許すということは、相手のためではなく、自らのその心を解放することなのだと。
***
しばらくして、私の身には新たな命が宿っていた。
息子は大いに喜び、ニコラもまた呑気な笑みを浮かべていた。
私は息子の手を腹部にあてて、静かに囁いた。
「これからも、この子と三人でいつまでも仲良く過ごしましょうね」
その言葉に、息子は満面の笑みを浮かべていた。
「うん!」
ニコラがいつものように外に出た後、息子は私のスカートを引いていた。
「次は、いつクリスに会えるの?」
「さあ、いつかしら……」
私はその身を抱きしめて、頬に小さくキスをした。
爽やかな風が吹き抜け、私と息子の髪を穏やかに揺らしていた。
次に出会えるこの子はきっと、クリスに似ているのだと信じて。
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