オジカさんとコジカちゃん

陽花紫

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オジカさん

 翌朝、俺は寝坊して遅刻しそうになっていた。
 うねる天パはそのままに、慌ててスーツを着込んで駅まで走る。
 ギリギリの電車に飛び乗って、なんとかスレスレ間に合った。

「コジマ、朝礼はじまるぞ」
 と、犬獣人の先輩が教えてくれた。
「あざす」
「どんな人が来るんだろうな」
 今日も爽やかないい笑顔で、期待に尻尾が揺れていた。可愛い。
 それでも先輩は既婚で子持ちだ。
 あーあ、現実は世知辛い。
 そう思い、起きない頭で立っていると奥のほうからイケメンがやってきた。

 その瞬間から、俺の目はイケメンに釘付けになってしまう。
 いや、俺の目から見てイケメンだから他の人にとっては違うかもしれない。

 褐色の肌に、さらりと揺れる黒い髪。
 茶色い目に大きく高い鼻。全体的に、彫りの深い顔をしていた。
 たぶん、俺よりも年上だと思う。
 おまけにガタイがよくて、白い歯をみせてその人は爽やかに笑っていた。

 ぼーっと見つめていると、俺の名前が呼ばれてびっくりする。
「コジマ、いろいろと教えてやってくれ」
「オジカです、よろしくお願いします」
 オジカさんはそう言って笑った。
 もう無理。どタイプすぎる。その笑みに課金したい。
 推し確定。
「お願いしまーす!」
 そんな不純な思いを押し込めながら、俺も営業スマイルを浮かべていた。

 オジカさんは俺より二つ年上だけど、中途入社をしたせいで社歴は俺と同じくらいだった。
 敬語じゃなくてもいいとは言われたものの、それでも俺は年上相手にしっかりしていたかった。

 見慣れないその肌の色以外は、オジカさんは俺と同じ人間の手足に耳を持っていた。
 その顔面偏差値の高さに夢中で詳しい話はよく聞いていなかったけれど、きっと異国の血が流れているんだと俺は思っていた。

 オジカさんは真面目で、俺の大雑把でふんわりとした指導にもいちいちメモを取って聞いてくれていた。

 一緒に営業先を回って挨拶回りをして、名刺を配って。
 気付けばもう昼になっていた。
 コンビニに行って飯を買って、車の中で食べる。
 俺はおにぎりを。オジカさんは、サンドイッチをもくもくと食べていた。
 育ちがいいんだろうな、それか几帳面。
 ちゃんとマイバッグも持って、ゴミを入れるちょっとした袋も持っているだなんて可愛い。

 そして、俺よりも背の高い大の男が両手でサンドイッチを持って食べている。
 そのシチュエーションもたまらん。やっべ、今日これオカズにしよ。

 午後も無事に営業先を回り終えて、会社へと戻って報告書を打ち込む。

「オジカさん、大丈夫そうっすか?」
「なんとか、やっていけそうです。コジマさん、ありがとうございます」

 以前は事務部署であると聞いたため、午前中オジカさんは慣れない営業に戸惑っていた。
 けれど午後にはちゃんと一人で挨拶をして、うちの商品を紹介することができていたんだ。
 俺なんかは独り立ちするのに二年もかかったのに、やっぱり高学歴は違うのか。

 車内で話した内容を思い返しながら、俺も頑張らなくてはと気合を入れ直した。
「じゃ、今日はもう帰りましょうか。すんません、お先でーす!」
「お疲れ様です」
 そう鞄を持って、一緒に会社を出た。

 オジカさんも電車通勤だそうで、駅まで一緒に並んで歩いた。

「コジマさん、今日はいろいろとありがとうございました」
「いいえ、ぜんぜん!俺なんかの説明でわかりました?」
「すごくわかりやすかったですよ、ありがとうございます」
「五日間、一緒に頑張りましょうね!」
 オジカさんが高く評価されているせいか、俺がつきっきりの研修は五日間だけだった。
 それが終わったら、オジカさんは独り立ちをする予定だ。

 強力なライバルだなと思いつつも、オジカさんはその力強い見た目に反して穏やかで落ち着いた性格をしていた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 行き先が反対方向のため、俺たちは改札に入って挨拶を交わした。
「それじゃ、また明日」
「また明日」

 そう別れを告げて、俺は家に帰った。
「ふぃー、つっかれた!」
 これまで何度も人に教えることはしてきたけれど、普段と違う動きをするとやっぱり疲れる。

 風呂上がり、俺はシコるべきかシコらざるべきかを腕を組んで考えていた。

 裏垢を開いても、いいねばかりでメッセージの一つもない。
「今日は休むかー?」
 そう思いながらも、録画はやめるだけで俺はシコった。

 オジカさんのあの肌の色に、太い首。
 綺麗に切り揃えられた爪に、落ち着いた声。白い歯に、スーツ越しでもわかるほどに鍛えあげられた分厚い胸板。
 かすかに香る香水は、爽やかな匂いがしてオジカさんの雰囲気によく合っていた。

 そういえば、休みの日はジムに通っているとも言っていた。
 俺は運動することが苦手だけど、オジカさんがいるなら行ってみたい気もする。

「っ、ああ……!……どんなセックスするのかなぁ……」
 食事も丁寧だから、きっと前戯も丁寧にしてくれるんだろうなあ。
 いや、ここはねちっこく攻めてくるか?それとも激しく?

 俺はオジカさんのあることないことをオカズにして、久々にイきにイきまくった。

 そして、シャワーを浴びて布団に入る。
「何やってんだよ俺、……明日も会うんだぞ?」
 途端に、罪悪感に苛まれる。
「でも、いっか。あと四日も二人きりなんだからな!」
 しかし、立ち直りも早かった。

 明日はどんなオジカさんを知ることができるのか、俺はにやにやしながら眠りについた。

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