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平凡なマサ×美丈夫なセシル
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セラピストとして働くマサは、その日ふと、手を止めていた。
夜の施術室には、淡いアロマの香りがかすかに漂っていた。
昼も夜も、マサは人の疲れを受けとめる日々であった。誰かの痛みが癒えることを嬉しく思うと同時に、自らの心の中に灯るその炎が少しずつ消えていくような気がしていた。
「大丈夫、もう少しだけ……頑張れる」
そう自らに言い聞かせ再び指圧にあたるものの、いつしかその声さえも渇いていく。
退勤し、家へと戻るとマサは視界が歪むのを感じていた。
やがて辺りは暗くなり、その身は静かに床へと崩れ落ちてしまう。
それは眠りと呼ぶにはあまりにも深い、沈黙の底であった。
***
どこかで風の音がした。
それは心の奥にまで染み入るような、柔らかい響きでもあった。
「マサ」
そう呼ぶ声に目を開けると、そこにはひとりの美しい青年が立っていた。
長い金の髪をその背に流し、その肌は白く、まるで月明かりのような光を纏っていた。
その整った顔つきに、マサはなぜだか懐かしいような感覚に襲われる。
「私は、あなた様を癒すセシルと申します」
不思議と、言葉が胸に落ちた。
これは夢の続きなのではないのかと思ったが、セシルの手がマサの手へと触れた瞬間に、あまりに現実的な温もりが広がった。
それはマサの冷えた心に、春風が吹き通るかのようでもあった。
***
セシルは癒しの世界から遣わされたのだとマサに向けて伝え、その身を静かに抱きしめた。
「私には、あなたの痛みがわかります。例えば、このあたりなど……」
白く細い指が、マサの肩元をなぞる。
セシルの指は、痛みの場所を知っていた。
「どうして、わかるんですか?」
驚きの表情を浮かべるマサに向けて、セシルは控えめに微笑んでみせた。
「それが私の、使命なのですから」
その箇所を強く押せば、そこに眠る疲労が音もなく溶けていく。
わずかな温もりを持つ手のひらは、マサの背を大きく撫でた。すると途端に、張り詰めた心が少しずつ息を吹き返すようでもあった。
「マサ、あなたはいつも人々を癒しているのですね」
「それが俺の、……仕事ですから」
「いいえ。あなたは誰かの痛みを、自らの内へと抱えてしまう人なのですよ」
セシルは優しく、マサの黒髪を撫でた。
その手つきだけで、マサ胸の奥はほどけていく。
「セシルさん……」
マサは思わず、その手を掴んでいた。
指先が重なる。それだけで、何か大切なものを取り戻すことができたような気がしていたのだ。
「セシル、とお呼びください」
セシルの指はマサの手を包み込むように軽やかに触れるものの、そこには確かな熱が残っていた。
次第に腕へと、そして頬へとのぼり額へと静かにあてられる。
いつしかこわばっていたマサのいつもの表情は、次第に穏やかなものへと変わっていく。
その手も軽やかに、慢性的な頭痛も消えていた。
まるでもみほぐされていくかのように、全ての緊張はなくなっていたのである。
「いま取り去ったのは、あなたがその身に抱えていた……これまでの他の人の痛みなのですよ」
その言葉に、マサは目を見開く。
――他の人の痛み。それなら、俺自身の痛みは?
その表情に答えるかのように、セシルは静かにマサの頬を撫で上げた。
「これから、あなた自らの痛みを取り去りましょう」
セシルは長い髪をかき上げながら、艶やかに微笑んでみせた。
***
ベッドの上へと横たえられ、こわばりのなくなったマサの頬をセシルはそっと撫でていた。
その仕草はまるで慈しみを抱いた母のようであり、甘い恋人のようでもあった。
「いつも、あなたは頑張っていますね」
その一言で、マサの目からは涙がこぼれ落ちてしまう。
そのような言葉は、誰にも言われたことがなかったのである。
そして誰も、マサの身を労ってはくれなかった。自らが癒した人々の笑みや礼を言われることはあっても、マサはそれを当たり前のことであると受け止めていたのだ。
「大丈夫ですよ、あなたも……その疲れをみせてもいいのです」
その言葉が、マサの胸の奥深くへと沁みていく。
セシルの柔らかな指が、涙をそっと拭う。
それはそのまま頬に、額に、唇のすぐそばにまで触れていく。
やがてふたりの呼吸は重なり、世界が音を失った。
それは、これまでにしたことのない優しい口づけであった。
マサはさらに涙を流しながら、セシルの身を強く抱きしめた。
静かに、ただ、確かめるかのように。
自らがまだここにいることを、誰かに必要とされていることを全身で感じたかったのだ。
セシルの滑らかな髪が頬に触れ、わずかに花のような香りが漂う。
その香りの中で、マサの心は柔らかく溶けていく。
「マサ。あなたのその全てを、私は受け入れましょう……」
セシルはマサの全身に向けて、丁寧にその唇を落としていく。
髪から、額へ、そして頬や胸元にまで。セシルの形のいい唇が自らの肌に触れるたびに、マサは自らの胸があたたかくなるのを感じていた。
「セシル、」
その名を呼べは、セシルは微笑んで軽く音を立てた。
次第に啄むように、その唇は腹部をなぞり下半身へと行きわたる。
全身の疲労が和らぎ、その身もいつしかほかほかと血の巡りがよくなったような気もする。
いつしかマサの涙は止まり、今度はうとうとと耐えがたい眠気に襲われていた。
「目を閉じていてくださっても、いいのですよ?」
しかしマサは首を横に振って、セシルの姿を目に焼き付けようとしていた。
美しい青年が、自らの身を労わりその笑みを向けている。その姿にも、マサは癒しをおぼえていたのだから。
「ありがとう、セシル」
そう言葉を返しながら、マサは穏やかな顔をしてセシルの姿を見つめていた。
***
いつしかその唇から薄い舌がのぞき、マサの肌に触れていた。
なんともいえぬその感覚に、思わずマサはくすぐったく思ってしまう。
「セシル、そんなことしなくても……」
思わず咎めるものの、セシルは変わらぬ美しい笑みを浮かべてマサに言葉を返していた。
「あなたの全てを、私は癒してさしあげたいのです」
そのように言われてしまっては、マサも静かに口を閉じることしかできないでいた。
柔らかに這いまわるその舌は、先ほどと同じように全身をたどっていた。
まるで動物にでも舐められているようなその感覚に、マサはいつしか喜びを感じてしまう。
「……っ!」
いつしかその舌先はマサの胸元にある飾りをつつき、静かに舐め上げる。
ざらりとしたその感触に、マサは甘い痛みを感じていた。そして漏れ出た声に思わず口に手をあててしまうものの、セシルはその手を取って指の間を舐めた。
「マサ、力を抜いて……楽にしていてくださいね?」
その瞳の奥には、有無を言わさぬ鋭さが宿っていた。
思わずマサは頷き、その手を静かに体の横へと置いた。
左右の胸元に執拗に与えられるその刺激に、いつしかマサの腰元は浮いてしまう。
下半身の熱はゆるやかに持ち上がり、その先からは光る液体がゆっくりと溢れ出ていた。
しかしセシルはそれを気にも留めることなく、その飾りを口に含み静かに吸い上げていた。
何も出るはずはないというのに、マサの心には母性のようなものが浮き上がっていた。
――もっと、飲んでほしい。
セシルはその手で胸元を優しく包み込みながら、しかしその舌先は何かを探り窄められた口元はその全てを飲み干すような動きをしていた。
「ここにも、疲れが溜まっているようですね」
そう微笑みながら、セシルは何度も胸元を吸い上げた。
その口元が離された時、マサは頬を赤く染めながら熱い息を吐いていた。
しかしセシルは涼しげな表情を崩さぬまま、次はほどよく引き締まった腹部へと顔を近づけ、その陰影を静かに舐め上げていた。
「セシルっ……、」
たまらず出てしまったマサその声に、セシルは柔らかな笑みを浮かべていた。
「マサ、まだまだ……これからですよ?」
その言葉の通り、セシルはマサの熱を躊躇なく口へと含んだ。
セシルの口内はその指先よりも熱く、滑らかにマサの熱を包み込む。時折舌を這わせては、溢れ出る疲労を吸い上げる。まるでその味を楽しむかのように、舌で転がしては口元に弧を描く。
その姿にも、マサは自らの胸の鼓動が早くなるのを感じていた。
あまりにも美しく、そしてあまりにも甘やかなその表情にいつしかマサの口角は上がっていた。
「気持ちいいですか?」
その囁きに、マサは静かに頷いた。
その疲労を解き放った後も、セシルは疲れを知らぬようにマサの太ももへと舌を這わせる。
「あなたの全てを、私に教えてください」
そのような言葉を口にしながら、セシルはおもむろにマサの脚を持ち上げた。
そして次の瞬間、マサは自らの目を疑うこととなる。
セシルが、マサの足の裏を舐めだしたのだ。
「セシル、汚いから……!」
しかしセシルは、首を振るだけでその行為をやめようとはしなかった。
先ほどその手にもしていたように、セシルは足の指の間までをも舐め取り指の一本一本に至るまでをしゃぶりつくしていた。
マサは初めて味わうその感触に、下半身から再びその熱を放ってしまう。
セシルは笑みを深めながら、全ての指を舐めきった。
いつしかその身は小さく震え、マサは荒い息を吐いていた。
力を入れようにもその身はゆるやかに和らぎ、顔を上げることすらもままならなかった。
「マサ、あなたに汚いところなど存在しないのですよ?」
そうセシルは静かに髪に口づけをして、満面の笑みを浮かべていた。
マサはされるがままに、その安らぎに身を委ねていた。
***
――これは、夢なのか?それとも……。
ぼんやりとした意識のなかで、マサはセシルの美しい姿だけを見つめていた。
「あなたのその全てを、出しきってくださいね?」
そしてセシルはマサの上へと跨り、静かに腰を下ろしていた。
マサの強く滾る熱が、セシルの熱いその身へと埋められていく。時折漏れ出る艶やかな息づかいが、マサの熱をさらに強くさせていた。
まるで全てを包み込むかのように、セシルの内はあたたかで柔らかくマサの身をほどよく締めつけていた。
思わず動こうとするものの、やんわりとその瞳で制されてしまう。
「マサ、いいですね?」
その言葉に頷けば、セシルはゆっくりと腰を浮かした。
次第にその動きは速まり、マサは言いようのない快楽に身を任せていた。自らの上で、その美しい顔に眉が寄る。形のいい口からは、淡い吐息がこぼれおちる。その響きは風のささやきのようでもあり、マサの身へと深く染み渡る。
「……セシル、いいよ……」
マサのその言葉に、セシルもまた笑みを浮かべて頷いた。
いつしかマサの腰もわずかに動き出し、ふたりは更なる深みへと快楽を求めていた。
「……マサ、いいんですよ。私に、あなたの全てを……っ……」
その手はセシルの華奢な腰元に添えられ、マサはその思いの丈を打ち明けるように何度も腰を揺らしていた。
やがてセシルの白い頬にも赤みがさし、その身は静かに震えていた。
「セシルっ……!」
その全てを搾り取られ、マサは最奥へとその熱を解き放った。
セシルもまた、その熱に清らかな笑みを浮かべながらマサの熱を一際強く締め付けていた。
***
窓から、朝の光が差しこんでいた。
セシルは、静かにマサの髪を撫でていた。
「もう、大丈夫ですからね」
その声に、マサは穏やかに微笑んでいだ。
まどろみのなか、いつしかセシルの姿は霞んでいく。
「また……、来てくれる?」
「さあ、どうでしょうね」
その瞳に優しさを含みながら、セシルはマサの胸の上へと唇を落とした。
「どうかこれからは、あなたが自らのその身を大切にすることができますように……」
祈るような声とその笑みは、光の粒となって消えてしまった。
***
マサは、穏やかな笑みを浮かべながら目を覚ましていた。
あのひとときは、疲れ果てていたマサが自らに見せていた夢だったのかもしれない。
しかしその胸の中にはまだ、あの温もりが残っていた。
出勤し、施術室に入りアロマの瓶を開けると、わずかにあの夜の香りがした。
「……ありがとう」
そう小さく呟くと、ささやかな風がカーテンを揺らす。
まるで、その声に応えるかのように。
END
夜の施術室には、淡いアロマの香りがかすかに漂っていた。
昼も夜も、マサは人の疲れを受けとめる日々であった。誰かの痛みが癒えることを嬉しく思うと同時に、自らの心の中に灯るその炎が少しずつ消えていくような気がしていた。
「大丈夫、もう少しだけ……頑張れる」
そう自らに言い聞かせ再び指圧にあたるものの、いつしかその声さえも渇いていく。
退勤し、家へと戻るとマサは視界が歪むのを感じていた。
やがて辺りは暗くなり、その身は静かに床へと崩れ落ちてしまう。
それは眠りと呼ぶにはあまりにも深い、沈黙の底であった。
***
どこかで風の音がした。
それは心の奥にまで染み入るような、柔らかい響きでもあった。
「マサ」
そう呼ぶ声に目を開けると、そこにはひとりの美しい青年が立っていた。
長い金の髪をその背に流し、その肌は白く、まるで月明かりのような光を纏っていた。
その整った顔つきに、マサはなぜだか懐かしいような感覚に襲われる。
「私は、あなた様を癒すセシルと申します」
不思議と、言葉が胸に落ちた。
これは夢の続きなのではないのかと思ったが、セシルの手がマサの手へと触れた瞬間に、あまりに現実的な温もりが広がった。
それはマサの冷えた心に、春風が吹き通るかのようでもあった。
***
セシルは癒しの世界から遣わされたのだとマサに向けて伝え、その身を静かに抱きしめた。
「私には、あなたの痛みがわかります。例えば、このあたりなど……」
白く細い指が、マサの肩元をなぞる。
セシルの指は、痛みの場所を知っていた。
「どうして、わかるんですか?」
驚きの表情を浮かべるマサに向けて、セシルは控えめに微笑んでみせた。
「それが私の、使命なのですから」
その箇所を強く押せば、そこに眠る疲労が音もなく溶けていく。
わずかな温もりを持つ手のひらは、マサの背を大きく撫でた。すると途端に、張り詰めた心が少しずつ息を吹き返すようでもあった。
「マサ、あなたはいつも人々を癒しているのですね」
「それが俺の、……仕事ですから」
「いいえ。あなたは誰かの痛みを、自らの内へと抱えてしまう人なのですよ」
セシルは優しく、マサの黒髪を撫でた。
その手つきだけで、マサ胸の奥はほどけていく。
「セシルさん……」
マサは思わず、その手を掴んでいた。
指先が重なる。それだけで、何か大切なものを取り戻すことができたような気がしていたのだ。
「セシル、とお呼びください」
セシルの指はマサの手を包み込むように軽やかに触れるものの、そこには確かな熱が残っていた。
次第に腕へと、そして頬へとのぼり額へと静かにあてられる。
いつしかこわばっていたマサのいつもの表情は、次第に穏やかなものへと変わっていく。
その手も軽やかに、慢性的な頭痛も消えていた。
まるでもみほぐされていくかのように、全ての緊張はなくなっていたのである。
「いま取り去ったのは、あなたがその身に抱えていた……これまでの他の人の痛みなのですよ」
その言葉に、マサは目を見開く。
――他の人の痛み。それなら、俺自身の痛みは?
その表情に答えるかのように、セシルは静かにマサの頬を撫で上げた。
「これから、あなた自らの痛みを取り去りましょう」
セシルは長い髪をかき上げながら、艶やかに微笑んでみせた。
***
ベッドの上へと横たえられ、こわばりのなくなったマサの頬をセシルはそっと撫でていた。
その仕草はまるで慈しみを抱いた母のようであり、甘い恋人のようでもあった。
「いつも、あなたは頑張っていますね」
その一言で、マサの目からは涙がこぼれ落ちてしまう。
そのような言葉は、誰にも言われたことがなかったのである。
そして誰も、マサの身を労ってはくれなかった。自らが癒した人々の笑みや礼を言われることはあっても、マサはそれを当たり前のことであると受け止めていたのだ。
「大丈夫ですよ、あなたも……その疲れをみせてもいいのです」
その言葉が、マサの胸の奥深くへと沁みていく。
セシルの柔らかな指が、涙をそっと拭う。
それはそのまま頬に、額に、唇のすぐそばにまで触れていく。
やがてふたりの呼吸は重なり、世界が音を失った。
それは、これまでにしたことのない優しい口づけであった。
マサはさらに涙を流しながら、セシルの身を強く抱きしめた。
静かに、ただ、確かめるかのように。
自らがまだここにいることを、誰かに必要とされていることを全身で感じたかったのだ。
セシルの滑らかな髪が頬に触れ、わずかに花のような香りが漂う。
その香りの中で、マサの心は柔らかく溶けていく。
「マサ。あなたのその全てを、私は受け入れましょう……」
セシルはマサの全身に向けて、丁寧にその唇を落としていく。
髪から、額へ、そして頬や胸元にまで。セシルの形のいい唇が自らの肌に触れるたびに、マサは自らの胸があたたかくなるのを感じていた。
「セシル、」
その名を呼べは、セシルは微笑んで軽く音を立てた。
次第に啄むように、その唇は腹部をなぞり下半身へと行きわたる。
全身の疲労が和らぎ、その身もいつしかほかほかと血の巡りがよくなったような気もする。
いつしかマサの涙は止まり、今度はうとうとと耐えがたい眠気に襲われていた。
「目を閉じていてくださっても、いいのですよ?」
しかしマサは首を横に振って、セシルの姿を目に焼き付けようとしていた。
美しい青年が、自らの身を労わりその笑みを向けている。その姿にも、マサは癒しをおぼえていたのだから。
「ありがとう、セシル」
そう言葉を返しながら、マサは穏やかな顔をしてセシルの姿を見つめていた。
***
いつしかその唇から薄い舌がのぞき、マサの肌に触れていた。
なんともいえぬその感覚に、思わずマサはくすぐったく思ってしまう。
「セシル、そんなことしなくても……」
思わず咎めるものの、セシルは変わらぬ美しい笑みを浮かべてマサに言葉を返していた。
「あなたの全てを、私は癒してさしあげたいのです」
そのように言われてしまっては、マサも静かに口を閉じることしかできないでいた。
柔らかに這いまわるその舌は、先ほどと同じように全身をたどっていた。
まるで動物にでも舐められているようなその感覚に、マサはいつしか喜びを感じてしまう。
「……っ!」
いつしかその舌先はマサの胸元にある飾りをつつき、静かに舐め上げる。
ざらりとしたその感触に、マサは甘い痛みを感じていた。そして漏れ出た声に思わず口に手をあててしまうものの、セシルはその手を取って指の間を舐めた。
「マサ、力を抜いて……楽にしていてくださいね?」
その瞳の奥には、有無を言わさぬ鋭さが宿っていた。
思わずマサは頷き、その手を静かに体の横へと置いた。
左右の胸元に執拗に与えられるその刺激に、いつしかマサの腰元は浮いてしまう。
下半身の熱はゆるやかに持ち上がり、その先からは光る液体がゆっくりと溢れ出ていた。
しかしセシルはそれを気にも留めることなく、その飾りを口に含み静かに吸い上げていた。
何も出るはずはないというのに、マサの心には母性のようなものが浮き上がっていた。
――もっと、飲んでほしい。
セシルはその手で胸元を優しく包み込みながら、しかしその舌先は何かを探り窄められた口元はその全てを飲み干すような動きをしていた。
「ここにも、疲れが溜まっているようですね」
そう微笑みながら、セシルは何度も胸元を吸い上げた。
その口元が離された時、マサは頬を赤く染めながら熱い息を吐いていた。
しかしセシルは涼しげな表情を崩さぬまま、次はほどよく引き締まった腹部へと顔を近づけ、その陰影を静かに舐め上げていた。
「セシルっ……、」
たまらず出てしまったマサその声に、セシルは柔らかな笑みを浮かべていた。
「マサ、まだまだ……これからですよ?」
その言葉の通り、セシルはマサの熱を躊躇なく口へと含んだ。
セシルの口内はその指先よりも熱く、滑らかにマサの熱を包み込む。時折舌を這わせては、溢れ出る疲労を吸い上げる。まるでその味を楽しむかのように、舌で転がしては口元に弧を描く。
その姿にも、マサは自らの胸の鼓動が早くなるのを感じていた。
あまりにも美しく、そしてあまりにも甘やかなその表情にいつしかマサの口角は上がっていた。
「気持ちいいですか?」
その囁きに、マサは静かに頷いた。
その疲労を解き放った後も、セシルは疲れを知らぬようにマサの太ももへと舌を這わせる。
「あなたの全てを、私に教えてください」
そのような言葉を口にしながら、セシルはおもむろにマサの脚を持ち上げた。
そして次の瞬間、マサは自らの目を疑うこととなる。
セシルが、マサの足の裏を舐めだしたのだ。
「セシル、汚いから……!」
しかしセシルは、首を振るだけでその行為をやめようとはしなかった。
先ほどその手にもしていたように、セシルは足の指の間までをも舐め取り指の一本一本に至るまでをしゃぶりつくしていた。
マサは初めて味わうその感触に、下半身から再びその熱を放ってしまう。
セシルは笑みを深めながら、全ての指を舐めきった。
いつしかその身は小さく震え、マサは荒い息を吐いていた。
力を入れようにもその身はゆるやかに和らぎ、顔を上げることすらもままならなかった。
「マサ、あなたに汚いところなど存在しないのですよ?」
そうセシルは静かに髪に口づけをして、満面の笑みを浮かべていた。
マサはされるがままに、その安らぎに身を委ねていた。
***
――これは、夢なのか?それとも……。
ぼんやりとした意識のなかで、マサはセシルの美しい姿だけを見つめていた。
「あなたのその全てを、出しきってくださいね?」
そしてセシルはマサの上へと跨り、静かに腰を下ろしていた。
マサの強く滾る熱が、セシルの熱いその身へと埋められていく。時折漏れ出る艶やかな息づかいが、マサの熱をさらに強くさせていた。
まるで全てを包み込むかのように、セシルの内はあたたかで柔らかくマサの身をほどよく締めつけていた。
思わず動こうとするものの、やんわりとその瞳で制されてしまう。
「マサ、いいですね?」
その言葉に頷けば、セシルはゆっくりと腰を浮かした。
次第にその動きは速まり、マサは言いようのない快楽に身を任せていた。自らの上で、その美しい顔に眉が寄る。形のいい口からは、淡い吐息がこぼれおちる。その響きは風のささやきのようでもあり、マサの身へと深く染み渡る。
「……セシル、いいよ……」
マサのその言葉に、セシルもまた笑みを浮かべて頷いた。
いつしかマサの腰もわずかに動き出し、ふたりは更なる深みへと快楽を求めていた。
「……マサ、いいんですよ。私に、あなたの全てを……っ……」
その手はセシルの華奢な腰元に添えられ、マサはその思いの丈を打ち明けるように何度も腰を揺らしていた。
やがてセシルの白い頬にも赤みがさし、その身は静かに震えていた。
「セシルっ……!」
その全てを搾り取られ、マサは最奥へとその熱を解き放った。
セシルもまた、その熱に清らかな笑みを浮かべながらマサの熱を一際強く締め付けていた。
***
窓から、朝の光が差しこんでいた。
セシルは、静かにマサの髪を撫でていた。
「もう、大丈夫ですからね」
その声に、マサは穏やかに微笑んでいだ。
まどろみのなか、いつしかセシルの姿は霞んでいく。
「また……、来てくれる?」
「さあ、どうでしょうね」
その瞳に優しさを含みながら、セシルはマサの胸の上へと唇を落とした。
「どうかこれからは、あなたが自らのその身を大切にすることができますように……」
祈るような声とその笑みは、光の粒となって消えてしまった。
***
マサは、穏やかな笑みを浮かべながら目を覚ましていた。
あのひとときは、疲れ果てていたマサが自らに見せていた夢だったのかもしれない。
しかしその胸の中にはまだ、あの温もりが残っていた。
出勤し、施術室に入りアロマの瓶を開けると、わずかにあの夜の香りがした。
「……ありがとう」
そう小さく呟くと、ささやかな風がカーテンを揺らす。
まるで、その声に応えるかのように。
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