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終わりを迎える
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目覚めるたびに、胸の奥は冷えていく。
まだ、終わらない。
まだ私は、この世界から逃げられずにいた。
何度繰り返しても、結果は同じ。
血の臭いに、泣き叫ぶ声。
私は何度も、未来をねじ曲げようとした。
運命を避けようと、ガルに嫌われようとしたこともあった。
距離を置き、無関心を装い、涙ながらに冷たく突き放した日もあった。
けれど、どれも無駄だった。
どんな道を選んでも、ガルは王のもとへと向かい、私は血の海の中で膝をつく結末へと辿りついてしまう。
誰かが死に、誰かが泣き叫び、世界は巻き戻されるだけ
ガルはゆっくりと、私に背を向けたまま言う。
「……行ってくる」
振り返れば、いつもと変わらない穏やかな横顔がそこにあった。
強く、静かで、決してその弱さを見せない顔。
私はその顔を、何千回と見送ってきた。
そして、その背中を失っった。
喉が焼けるほどの痛みに満ちているはずであるというのに。
その 声だけは、いつも出なかった。
――行かないで。
その言葉だけが、いつも胸の中で消えていく。
「待っているわ」
私はいつも、そう言っていた。
その言葉が全てを引き起こす呪いでもあったのだ。
そう気づいたその日から、私の世界は崩れはじめる。
この決定的な一言を、私はただの一度も言っていなかったのだと気づいたとき。
私は勇気を振り絞ってその背に触れていた。
「行かないで、ガル」
私はずっと、強がっていた。
愛が重いと思われることを、恐れていたのだ。
この言葉によって、 ガルを縛りつけてしまうのが怖かった。
だから、世界は壊れ続けていたのだ。
この声は、涙に濡れてひどく掠れていた。
それでも私は、言葉を続けた。
「私だけを見つめていて。王なんて、どうでもいい。戦いなんて、もういらない。あなたがいなければ、私は息をすることもできないの……」
ガルは目を見開いて、驚いたように息を呑む。
「だから、お願い……。行かないで。ガル、私を置いていかないで……!」
ガルは固まったように動かず、ただ私のことだけを見つめていた。
このような表情を、私はこれまで目にしたことがなかった。
弱さと戸惑いと、深い哀しみとが混ざったような顔を。
「……そのような顔をするくらいなら、どうしてもっと早く言わなかった」
ガルは力強く私を抱きしめ、静かに髪を撫でていた。
「ずっと、言われたかった。お前の中で俺は、ただの騎士だと思っていた。王のために生き、王のために死ぬ。それが、俺の役目だと……。でも本当は、ずっとお前のために生きたかった」
その言葉に、今度は私が息を呑む。
「ガル?」
ガルは骨が軋むほどの力で、さらに強く私を抱きしめた。
そして、深く熱い口づけをした。
「行かない。もう二度と、お前を一人にはしない。俺は、お前だけを見て生きていたい」
その瞬間、世界が崩れる音がした。
石が砕けるようなとても重い響き。
どこか遠くで聞いたことのあるかのような、終焉の鐘の音。
そこには血の臭いもなく、眩いほどの光が差し込み、空気はひどく澄んでいき。
まるで、これまでの朝とは違う静けさが訪れていた。
全てが、終わったのだと。
私はそう確信して、泣きながらガルにしがみついた。
「どうして、今まで言うことができなかったの……」
「怖かったんだろう。でも、こうしてお前が言葉にしてくれた。それだけで、俺は幸せだ」
ガルの頬が触れて、私たちは溶けるような深い口づけを何度も交わした。
その口づけは、永遠の始まりのようでもあった。
まだ、終わらない。
まだ私は、この世界から逃げられずにいた。
何度繰り返しても、結果は同じ。
血の臭いに、泣き叫ぶ声。
私は何度も、未来をねじ曲げようとした。
運命を避けようと、ガルに嫌われようとしたこともあった。
距離を置き、無関心を装い、涙ながらに冷たく突き放した日もあった。
けれど、どれも無駄だった。
どんな道を選んでも、ガルは王のもとへと向かい、私は血の海の中で膝をつく結末へと辿りついてしまう。
誰かが死に、誰かが泣き叫び、世界は巻き戻されるだけ
ガルはゆっくりと、私に背を向けたまま言う。
「……行ってくる」
振り返れば、いつもと変わらない穏やかな横顔がそこにあった。
強く、静かで、決してその弱さを見せない顔。
私はその顔を、何千回と見送ってきた。
そして、その背中を失っった。
喉が焼けるほどの痛みに満ちているはずであるというのに。
その 声だけは、いつも出なかった。
――行かないで。
その言葉だけが、いつも胸の中で消えていく。
「待っているわ」
私はいつも、そう言っていた。
その言葉が全てを引き起こす呪いでもあったのだ。
そう気づいたその日から、私の世界は崩れはじめる。
この決定的な一言を、私はただの一度も言っていなかったのだと気づいたとき。
私は勇気を振り絞ってその背に触れていた。
「行かないで、ガル」
私はずっと、強がっていた。
愛が重いと思われることを、恐れていたのだ。
この言葉によって、 ガルを縛りつけてしまうのが怖かった。
だから、世界は壊れ続けていたのだ。
この声は、涙に濡れてひどく掠れていた。
それでも私は、言葉を続けた。
「私だけを見つめていて。王なんて、どうでもいい。戦いなんて、もういらない。あなたがいなければ、私は息をすることもできないの……」
ガルは目を見開いて、驚いたように息を呑む。
「だから、お願い……。行かないで。ガル、私を置いていかないで……!」
ガルは固まったように動かず、ただ私のことだけを見つめていた。
このような表情を、私はこれまで目にしたことがなかった。
弱さと戸惑いと、深い哀しみとが混ざったような顔を。
「……そのような顔をするくらいなら、どうしてもっと早く言わなかった」
ガルは力強く私を抱きしめ、静かに髪を撫でていた。
「ずっと、言われたかった。お前の中で俺は、ただの騎士だと思っていた。王のために生き、王のために死ぬ。それが、俺の役目だと……。でも本当は、ずっとお前のために生きたかった」
その言葉に、今度は私が息を呑む。
「ガル?」
ガルは骨が軋むほどの力で、さらに強く私を抱きしめた。
そして、深く熱い口づけをした。
「行かない。もう二度と、お前を一人にはしない。俺は、お前だけを見て生きていたい」
その瞬間、世界が崩れる音がした。
石が砕けるようなとても重い響き。
どこか遠くで聞いたことのあるかのような、終焉の鐘の音。
そこには血の臭いもなく、眩いほどの光が差し込み、空気はひどく澄んでいき。
まるで、これまでの朝とは違う静けさが訪れていた。
全てが、終わったのだと。
私はそう確信して、泣きながらガルにしがみついた。
「どうして、今まで言うことができなかったの……」
「怖かったんだろう。でも、こうしてお前が言葉にしてくれた。それだけで、俺は幸せだ」
ガルの頬が触れて、私たちは溶けるような深い口づけを何度も交わした。
その口づけは、永遠の始まりのようでもあった。
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