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エピローグ(完)
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ガルは鎧を脱ぎ捨てて、剣を壁に立てかける。
そして、私の手を強く握ってこう言った。
「これからは、王を護り戦うためではなく。お前と生きるために、この身を捧げたい」
私は泣きながら笑みを浮かべていた。
「ずっと、そばにいて。ガル」
ガルは私を抱き上げ、柔らかな寝台へと横たえた。
朝の光が、まるで私たちのことを祝福するかのように降り注ぐ。
「行かなくても、いいの?」
「もう、いい。今はお前のことだけを、愛していたい」
その瞳の強い熱に浮かされて、私もまた素直に口づけに応えていた。
触れ合う指先、絡む息。互いの名前を呼び合うその声。
血も、絶望も、もうどこにもない。
ただ甘やかな温もりと、永遠を約束する幸せの息遣いだけがそこにはあったのだ。
やっと、未来へと歩き出すことができていた。
ガルの指が私の指を絡め取る。
「愛している」
「私も、ずっと……愛しているわ。ガル」
――私はいま、初めて未来を生きている。ガルとともに。
***
その後ガルは、王に向けて護衛騎士を辞めると言いに行っていた。
剣を返し、鎧を置き、これからは愛する私のことだけを護るのだと。
しかし、王はこう告げた。
「護べきものを得た者ほど、強くなる。私はそれを知っている。これからは国ではなく、そなたの家を護り抜け」
ガルはその言葉を胸に、騎士団に籍を残す決意をする。
そして必要なときだけ、国のために剣を振るうことにしていた。
それ以外の時間は、すべて私と過ごしていた。
「今日は昼までには、必ず帰ってくる。午後はずっと、お前のそばにいる」
「約束よ?ガル」
「ああ、約束しよう」
そうガルは、私の手の甲に口づけを落としていた。
「……行ってくる」
「行ってらっしゃい、あなた」
その言葉を、私はもう恐れてはいない。
扉が閉まっても、胸を締めつけるような痛みは起きなかった。
太陽の柔らかな光が差し込む頃。
扉が開く音がした。
「ただいま」
「おかえりなさい、ガル」
鎧を外し、外套を脱ぎ、ガルはまっすぐ私に歩み寄る。
私はその胸に静かに飛び込み、頬を寄せた。
「寂しかったか?」
「……ええ、とても」
「なら、その埋め合わせをしなくてはいけないな」
ガルの大きな手が私の腰を強く引き寄せて、軽く唇が触れ合う。
まさかとは思いその顔を見上げると、ガルは満面の笑みを浮かべていた。
「ガル……?せめて、寝室に……」
「誰もいない」
「そうだけど……、でも……」
「一刻も早く、お前と愛し合いたい」
ふわりと漂うのは、鎧の匂いと汗の香り。
激しく脈を打つその心臓の鼓動は、私の胸へと伝わってくる。
「いいだろう?」
その鋭い瞳に私は抗うことができず、気付けば小さく頷いていた。
やがて唇は深く重なり、私の衣服は床に落とされていた。
ガルは、私の耳元で囁いた。
「俺の帰る場所は、お前だけだ」
その声に、この身は強く震えてしまう。
私はガルの頬を手で包み、唇をそっと触れさせた。
「おかえりなさい。愛しているわ」
「俺も、愛している」
その言葉は、何度耳にしても胸の奥へとあたたかく広がっていく。
激しく互いを求め合ったあと、私は静かに笑みを浮かべていた。
ガルがいて。私だけを見つめて、愛してくれている。
これ以上の幸せはないと思った。
***
しばらくして、私の身にある変化がおきていた。
この身はひどく熱く、月のものも遅れていた。
もしかしたらと医師を呼べば、そこには再び小さな命が宿っていた。
ガルが屋敷に帰ってきたとき、私は笑みを浮かべながら泣いていた。
「ガル。ここに、私たちの子が……」
ガルは一瞬、言葉を失った。
それから、何も言わずに強く私のことを抱きしめていた。
その腕は、ひどく震えていた。
「ありがとう……」
ガルの涙が、私の肩を濡らしていた。
いつかの過去にもこのようなことはあったというのに、その反応は違うものだった。
「お前と、この子のすべてを……。俺は愛して、守ってみせる」
その後も穏やかな日々は、ゆっくりと流れていく。
満開の花が咲く季節に、大きな産声が屋敷中に響いていた。
ガルは目に涙を浮かべて喜んで、小さな手に大きな指で触れていた。
私は、ガルと協力して子供を育てていた。
やがて息子も大きくなり、三人で食卓を囲み、庭で遊び、同じ寝台で寄り添って眠る。
そのような毎日の繰り返しは、とても幸せなものでもあった。
「ガル、私……すごく幸せよ。愛するあなたに、可愛い息子……。これ以上、何もいらないわ」
「俺も……すごく、幸せだ。ありがとう、愛している」
幾度夜が明けても、もう何も恐れるものはない。
世界は私たち三人のために、今日も美しいのだから。
END
そして、私の手を強く握ってこう言った。
「これからは、王を護り戦うためではなく。お前と生きるために、この身を捧げたい」
私は泣きながら笑みを浮かべていた。
「ずっと、そばにいて。ガル」
ガルは私を抱き上げ、柔らかな寝台へと横たえた。
朝の光が、まるで私たちのことを祝福するかのように降り注ぐ。
「行かなくても、いいの?」
「もう、いい。今はお前のことだけを、愛していたい」
その瞳の強い熱に浮かされて、私もまた素直に口づけに応えていた。
触れ合う指先、絡む息。互いの名前を呼び合うその声。
血も、絶望も、もうどこにもない。
ただ甘やかな温もりと、永遠を約束する幸せの息遣いだけがそこにはあったのだ。
やっと、未来へと歩き出すことができていた。
ガルの指が私の指を絡め取る。
「愛している」
「私も、ずっと……愛しているわ。ガル」
――私はいま、初めて未来を生きている。ガルとともに。
***
その後ガルは、王に向けて護衛騎士を辞めると言いに行っていた。
剣を返し、鎧を置き、これからは愛する私のことだけを護るのだと。
しかし、王はこう告げた。
「護べきものを得た者ほど、強くなる。私はそれを知っている。これからは国ではなく、そなたの家を護り抜け」
ガルはその言葉を胸に、騎士団に籍を残す決意をする。
そして必要なときだけ、国のために剣を振るうことにしていた。
それ以外の時間は、すべて私と過ごしていた。
「今日は昼までには、必ず帰ってくる。午後はずっと、お前のそばにいる」
「約束よ?ガル」
「ああ、約束しよう」
そうガルは、私の手の甲に口づけを落としていた。
「……行ってくる」
「行ってらっしゃい、あなた」
その言葉を、私はもう恐れてはいない。
扉が閉まっても、胸を締めつけるような痛みは起きなかった。
太陽の柔らかな光が差し込む頃。
扉が開く音がした。
「ただいま」
「おかえりなさい、ガル」
鎧を外し、外套を脱ぎ、ガルはまっすぐ私に歩み寄る。
私はその胸に静かに飛び込み、頬を寄せた。
「寂しかったか?」
「……ええ、とても」
「なら、その埋め合わせをしなくてはいけないな」
ガルの大きな手が私の腰を強く引き寄せて、軽く唇が触れ合う。
まさかとは思いその顔を見上げると、ガルは満面の笑みを浮かべていた。
「ガル……?せめて、寝室に……」
「誰もいない」
「そうだけど……、でも……」
「一刻も早く、お前と愛し合いたい」
ふわりと漂うのは、鎧の匂いと汗の香り。
激しく脈を打つその心臓の鼓動は、私の胸へと伝わってくる。
「いいだろう?」
その鋭い瞳に私は抗うことができず、気付けば小さく頷いていた。
やがて唇は深く重なり、私の衣服は床に落とされていた。
ガルは、私の耳元で囁いた。
「俺の帰る場所は、お前だけだ」
その声に、この身は強く震えてしまう。
私はガルの頬を手で包み、唇をそっと触れさせた。
「おかえりなさい。愛しているわ」
「俺も、愛している」
その言葉は、何度耳にしても胸の奥へとあたたかく広がっていく。
激しく互いを求め合ったあと、私は静かに笑みを浮かべていた。
ガルがいて。私だけを見つめて、愛してくれている。
これ以上の幸せはないと思った。
***
しばらくして、私の身にある変化がおきていた。
この身はひどく熱く、月のものも遅れていた。
もしかしたらと医師を呼べば、そこには再び小さな命が宿っていた。
ガルが屋敷に帰ってきたとき、私は笑みを浮かべながら泣いていた。
「ガル。ここに、私たちの子が……」
ガルは一瞬、言葉を失った。
それから、何も言わずに強く私のことを抱きしめていた。
その腕は、ひどく震えていた。
「ありがとう……」
ガルの涙が、私の肩を濡らしていた。
いつかの過去にもこのようなことはあったというのに、その反応は違うものだった。
「お前と、この子のすべてを……。俺は愛して、守ってみせる」
その後も穏やかな日々は、ゆっくりと流れていく。
満開の花が咲く季節に、大きな産声が屋敷中に響いていた。
ガルは目に涙を浮かべて喜んで、小さな手に大きな指で触れていた。
私は、ガルと協力して子供を育てていた。
やがて息子も大きくなり、三人で食卓を囲み、庭で遊び、同じ寝台で寄り添って眠る。
そのような毎日の繰り返しは、とても幸せなものでもあった。
「ガル、私……すごく幸せよ。愛するあなたに、可愛い息子……。これ以上、何もいらないわ」
「俺も……すごく、幸せだ。ありがとう、愛している」
幾度夜が明けても、もう何も恐れるものはない。
世界は私たち三人のために、今日も美しいのだから。
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