再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

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第3章

119 次なる流行のお披露目

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艶のある黒のドレス。レースはなく、肩が出ている。
とてもシンプルなドレスって感じのドレスだ。そこに木か蔦を象かたどったように白く輝く「もの」が装飾されている。

あれは、「貝殻」だ。

オートヴィル公国の貝、俺が鍛冶場に椅子や机が欲しいと言った時、シーラがくれたもの。

あの時シーラが言っていた。

まだ貝を使った装飾は使用経過を見る実験段階にある。価値が定めきれてない。
だから価値は低い、と。

そして今、その価値が最上級に位置付けられた。


「…あれは……なに……?」

隣でセシルが驚きと興味を示した。
そう、これが普通の貴族の反応だ。初めて見る美しいものに関心を持つ。

「………これから貝の生産は増えるな。」

(『たぶん今後値段が爆発的に上がるだろうけどね。』)

シリウスの言葉が頭をよぎった。そして現実となった。

「ははっ。 あ~なるほどなぁ!!」

思わず笑ってしまう。


   そうか。 これがシーラか。


これでシーラはオートヴィル公国に恩を売ったわけだ。
自国の産業を1つシーラが作ったんだ、そりゃ感謝する。もちろんこれはシーラじゃなければできなかった。シーラじゃなければ貝は最上級品には位置付けられなかったかもしれない。

周りの貴族は皆、礼をしたままの姿勢で必死にシーラを凝視している。

シーラの隣にいる人は女性だった。

とても美しく凛とした格好良さのある女性で、男性の黒色のタキシードを着ており、そこにも貝の装飾が流線のように綺麗にあしらわれていた。そのおかげでただの黒のタキシードがとても華やかさになっている。

黒めの短髪をピシッと固めたその人は、髪の右側だけに貝殻の髪飾りを付けていた。シーラは髪を綺麗に上にまとめ、左側に貝殻の髪飾りを付けている。天使の血筋が特有の髪色を封じてまで新たな存在を見せつけているのだ。

食いつくような貴族の視線の中を、2人で優雅に美しく歩いていた。


   あーあ。もう…ほんと見事だよ。
   これ以上完璧なことはない。


シーラは今、流行を作ったのだ。







・・・







シーラが入場した後、帝国の宰相であるシャルト公爵が現れた。公爵はグレーのタキシードに濃藍色の刺繍が入っていた。これぞダンディーだ!と思わせる渋さがあって、俺はめちゃくちゃ好きだった。

この色合いが似合う公爵はやっぱすげぇ格好いい。


そして、噂のファーストダンス。

各学院の代表者が踊る。
第1の代表はシルヴィア。
濃緑の制服を着た第2の生徒は黒茶の髪に青灰色の瞳。ガタイがしっかりしている。いかにも軍部志望者だ。
綺麗な赤の制服をお洒落に着こなした第3の女子生徒は金色に近い茶髪に真っ青の瞳。
第4の生徒は黒色の髪に濃い青の瞳の男子。双子以外で黒髪を見たのは久しぶりだ。

各学院の代表者とそのパートナーはシルヴィアに対し深く深く一礼をしてから位置についた。


そして音楽が始まった。





・・・






『やぁ。アグニ、セシル、良い夜だね。君たちを見つけようと思ったらまず食事の近くから探せばいいんだね』

コルネリウスが着ているのは青寄りの紫色の制服だ。キラキラとした芸石のアクセサリーがたくさん着いていて貴公子然としている。

「お、コル!!いい夜だな!今日の飯も美味しいぞ!せっかくだから食べてみろよ!!」

『うん……アグニ、ファーストダンスは見てないとだめだよ。』

「えっ…あ、そうなの…?」

俺はセシルの方を振り返って確認をとった。セシルはわかってて俺の誘いに乗ったのだろう。俺に一回頷いてから再度食べ始めた。

「皆さん、良い夜ですね。」

「お、バルバラ!!」

バルバラもやってきた。綺麗な赤髪を垂らし、制服にも邪魔にならない程度にレースが追加されている。あと今日は髪色に合わせたヒールを履いているっぽい。

『バルバラ。素敵な夜だね。』

コルネリウスは芸石の輝きに負けないくらいキラキラした笑顔でバルバラに決まりの言葉を言った。

「え、ええ……とても…素敵な夜ですね、コルネリウス……」


   ぬぉ?バルバラの芸素が不安定だな。


「バルバラ、どうした?具合悪いか?」

俺の質問にバルバラは芸獣並みに凶暴な目をした。俺もその様子につられて一瞬臨戦態勢を取りそうになった。

「べっ!別に?!具合なんて悪くないわよ!」

「お、おお……そうか…??」


曲調が変わった。
学年代表と、天使の血筋、他の王族らがダンスを行い終わり、皆が踊れる順番になったのだ。


「 アグニ 」


呼ばれた瞬間、誰だかわかる。

「シーラ」

シーラのパートナーの女性は少し後ろで待機している。セシルもコルもバルバラも急いで礼を取った。天使の血筋に自ら話しかけてはいけない。向こうから話しかけられるまで待機だ。この場合、シーラは俺にしか話しかけてないので他の3人は喋ってはいけない。

俺もシーラに対して綺麗に頭を下げた。それを見てシーラはおかしそうに噴き出した。

「なぁに?どうしたの急に?」

「これが天使の血筋に対する礼儀だって習ったんだよ」

礼法の授業で習ったことだ。天使の血筋が「頭を上げていい」というまで俺も頭を下げねばならない。

「ふふっ。頭を上げて聞いてちょうだい。私、そろそろ帰るわね。」

「え?もう??」

俺は頭を上げて問うた。シーラは優雅に微笑み頷いた。

「えぇ。今日の役割は果たしたわ。アグニはきちんと楽しんでから帰りなさいね」

「おう。わかった……」

パートナーの女性が近寄り、シーラに片腕を出した。シーラはノールックで腕を取ると輝くシャンデリアの中を去っていった。確かに貝殻のお披露目が今日の目的なのであれば、皆が興味津々のうちに去ってしまった方がいいかもしれない。貴族の追求心を最大限刺激できる。


「おい!!!」


   うっわ。またかよ。


「エベル王子……」

俺は振り返りながらも心の中で特大のため息を吐いていた。こいつパーティーのたびに絡んでくるんだもん。

「お前!!先ほどの踊り子はどこへ行った?!」


   シーラ…こうなることわかってたな?
   だからこんな早く帰ったのか。


使は先ほどお帰りになられました。」

俺はシーラの名ではなくあえて立ち場の名称を言った。

「なに?踊り子は帰っただと??!」


   え~うそだろ。
   敬称も敬語も無しかよ…


わざわざ立場の名称を使ったのに、意味を理解してくれなかったようだ。普通に敬虔な天空人信仰者相手ならぶちぎれてるぞ。

「……はっ!!貴族でもないお前と一緒の屋敷に住まわされてるんだ。そりゃあ苦痛だろうし体調も崩すのも納得だな。仕方がない。あとで私自らがお見舞いに行くとしよう。」


   ……え??なんだって??
   俺んちに来るの??


最初からちょっとよくわからなかったけど、今お見舞いに行くって聞こえた気がする。俺の後ろで今までの発言を聞いていたコルネリウスが思わず口を挟んだ。

『それはあまりにも……』

無遠慮だ。俺もコルネリウスと同意見だが……

エベル王子はコルネリウスをちらっと見てからわざとらしく耳をおさえた。

「なんだ?今許可をしていない者の口から言葉が聞こえた気がするぞ?」

『………。』

すぐこういうことになる。まじでめんどいな。

「……シーラ…様には私からお話を致しますので、エベル様がわざわざ動く必要はございません。一国の王子がそんなに簡単に動かれては国の品位に関わりますよ」

自分でも何を言ってるのかわかんないことを言ってみた。
俺は何を言ってるんだろう?けど上手い具合にエベル王子も訳が分からなくなっている。

「??…ま、まぁ、そうかもな。じゃあ…?」

『そろそろいいかな?』


   っ! うわっ。救世主!!!


少し遠い距離から声をかけてきたのは、シドだ。

深みのある美しい暗緑色の制服に片方の肩に白く美しい芸獣の毛皮のマントを付けている。制服のボタンや縁に金色を使っており、華やかさもある。
コル、バルバラ、セシル、そして俺はまた頭を下げ、礼をする。数秒遅れてエベルが渋々頭を下げた。

『皆、頭を上げてくれ。アグニ、久しぶりだな!』

「シド!ほんとに久しぶり!!去年以来か?」

『あぁそうだな。エベル王子、遠慮せずに好きなところへ行っていいぞ』

シドがにこやかな笑顔でエベルにそう告げる。エベルは見るからに安心した顔をした。だめだよ。そんな表情に出しちゃ。

「あ、あぁ。では…失礼。」

エベル王子はそそくさとその場を去っていった。シドは薄く苦笑いをして俺たち4人に笑った。

「なんだか大変そうだったな…。ところでアグニ、紹介したい者がいるんだ。少し時間をくれないか?』

「え?あぁ、もちろん。」

『ありがとう。3人とも、アグニを連れて行っても構わないか?』

シドがコルとセシルとバルバラに問う。3人は話しかけられたことに多少驚きつつも嬉しそうに笑って頷いた。

『もちろんです!』

「はい……」

「構いませんわ。」

3人の言葉をきちんと聞いて、シドは優しく笑った。

『ありがとう。では…アグニ。ついてきてくれ。』

「わかった。じゃあ3人とも!またな!」


俺は3人に見送られ、シドの後ろをついていった。







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