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第11話 いけすかない王子
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高級な馬車に揺られて、神殿から街の方へと向かって行きます。
「あ、あの、レオルド様」
「ん、何だい?」
「その、レオルド様は王太子で、とても有名なお方です。街に出ても平気なのですか?」
「ああ、平気だよ。僕は庶民的な王族でありたいからね」
「そ、そうですか……けど、申し訳ないのですが、私の方はちょっと……あの、決してレオルド様と一緒に街を歩くのが嫌と言う訳ではなく、気恥ずかしいと言うか、申し訳ないというか……」
訥々として言う私を見たレオルド様は、ふむと少し唸ってから、
「では、このローブを貸してあげよう」
そう言って、私に渡して下さいます。
「これを着てフードをかぶっておけば、きっと大丈夫さ」
「そ、そうですね」
「それに僕だって、可愛い君を他の男に見せたくないからね。むしろ、この方が都合が良いよ」
「そ、そんな……あまり、私を困らせないで下さい」
嫌だ、また顔が赤くなっているのを見られたら、恥ずかしい……
「じゃあ、これが僕たちにとって、記念すべき初デートかな?」
「デ、デート……きょ、恐縮……いえ、光栄です」
「はは、まだ固いなぁ。まあ、すぐに僕がほぐしてあげるけど」
少し意味深な風に言われて見つめられ、私はもうレオルド様を直視できませんでした。
◇
~ブリックス視点~
「ねえねえ、ブリックス様ぁ~。私、あれが欲しいですぅ~」
「全く、アメリアはワガママさんだな~。おい、店主。これをくれ」
「ありがとうございます」
俺はアメリアと一緒に街に出ていた。普通なら今は仕事の時間であるが、彼女がどうしてもとねだるので、仕事は部下たちに任せて、こうして彼女のワガママに付き合ってあげているのだ。でも、決して苦痛ではない。可愛いワイフとなる女のためならな。
「わっ、王太子さまだ!」
その時、店の外でざわめきが聞こえた。
「ねえ、ブリックス様! 王太子さまがいらしているそうよ! 見に行きましょうよ!」
「お、おい、そんなに引っ張るなよ」
俺は買い物袋を腕に下げたまま、アメリアに引っ張られて店の外に出た。
「「「「「「きゃー! レオルド様ぁ~!」」」」」」
女性たちの黄色い声援が響き渡る。その先には、みんな大好きな王太子のレオルド様がいた。
「きゃ~! すごいイケメンだわ~!」
アメリアもはしゃぐ。
「……ちっ」
俺は聞こえないように舌打ちをした。
王太子であるレオルド様がイケメンであることは知っている。さらには人格者でもあるから、男女問わずに人気が高い。まあ、女の方が感情表現が豊かだから、露骨に声を響かせていて目立っている訳だが……気に食わない。王族相手だから、決して口には出来ないけど、気に食わない。
「あ~ん! 何て甘いマスクなの~!」
アメリア、俺はこんなに苦労して買い物に付き合ってやっているのに、あんな生まれと顔だけに恵まれた優男に目がくらんで……ちくしょう。
「ていうか、一緒にいるの誰だろう? ローブで顔とか分からないけど……」
「ふん。ただの付き人だろう?」
「そうよね。もし、女とかだったらショックだわ~」
何でショックなんだよ。お前にはもう、このブリックス・オメルダ公爵さまがいるだろう?
「おい、アメリア。ここは騒がしくていけない。早く離れよう」
「え~、もうちょっとイケメン王太子さまを見ていたいの~!」
俺は明確に舌打ちを響かせそうになて、寸前の所でグッと堪えた。
このクソ女……今晩は、ベッドの上でたっぷりとお仕置きをしてやる。どうせ、あの王太子さまいたいなイケメンは、夜の生活はイマイチって相場が決まっているんだ。その点、俺さまは経験が豊富だからな。事実、毎晩のようにこの女をヒィヒィ言わせていることだしな。
「きゃ~! レオルド様、こっち向いて~!」
他の男に発情しているこのメスビッチの尻を今すぐ揉みくちゃにしてやろうと思ったが、それは夜の楽しみに取っておこうと自分に言い聞かせ、心を落ち着かせていた。
「あ、あの、レオルド様」
「ん、何だい?」
「その、レオルド様は王太子で、とても有名なお方です。街に出ても平気なのですか?」
「ああ、平気だよ。僕は庶民的な王族でありたいからね」
「そ、そうですか……けど、申し訳ないのですが、私の方はちょっと……あの、決してレオルド様と一緒に街を歩くのが嫌と言う訳ではなく、気恥ずかしいと言うか、申し訳ないというか……」
訥々として言う私を見たレオルド様は、ふむと少し唸ってから、
「では、このローブを貸してあげよう」
そう言って、私に渡して下さいます。
「これを着てフードをかぶっておけば、きっと大丈夫さ」
「そ、そうですね」
「それに僕だって、可愛い君を他の男に見せたくないからね。むしろ、この方が都合が良いよ」
「そ、そんな……あまり、私を困らせないで下さい」
嫌だ、また顔が赤くなっているのを見られたら、恥ずかしい……
「じゃあ、これが僕たちにとって、記念すべき初デートかな?」
「デ、デート……きょ、恐縮……いえ、光栄です」
「はは、まだ固いなぁ。まあ、すぐに僕がほぐしてあげるけど」
少し意味深な風に言われて見つめられ、私はもうレオルド様を直視できませんでした。
◇
~ブリックス視点~
「ねえねえ、ブリックス様ぁ~。私、あれが欲しいですぅ~」
「全く、アメリアはワガママさんだな~。おい、店主。これをくれ」
「ありがとうございます」
俺はアメリアと一緒に街に出ていた。普通なら今は仕事の時間であるが、彼女がどうしてもとねだるので、仕事は部下たちに任せて、こうして彼女のワガママに付き合ってあげているのだ。でも、決して苦痛ではない。可愛いワイフとなる女のためならな。
「わっ、王太子さまだ!」
その時、店の外でざわめきが聞こえた。
「ねえ、ブリックス様! 王太子さまがいらしているそうよ! 見に行きましょうよ!」
「お、おい、そんなに引っ張るなよ」
俺は買い物袋を腕に下げたまま、アメリアに引っ張られて店の外に出た。
「「「「「「きゃー! レオルド様ぁ~!」」」」」」
女性たちの黄色い声援が響き渡る。その先には、みんな大好きな王太子のレオルド様がいた。
「きゃ~! すごいイケメンだわ~!」
アメリアもはしゃぐ。
「……ちっ」
俺は聞こえないように舌打ちをした。
王太子であるレオルド様がイケメンであることは知っている。さらには人格者でもあるから、男女問わずに人気が高い。まあ、女の方が感情表現が豊かだから、露骨に声を響かせていて目立っている訳だが……気に食わない。王族相手だから、決して口には出来ないけど、気に食わない。
「あ~ん! 何て甘いマスクなの~!」
アメリア、俺はこんなに苦労して買い物に付き合ってやっているのに、あんな生まれと顔だけに恵まれた優男に目がくらんで……ちくしょう。
「ていうか、一緒にいるの誰だろう? ローブで顔とか分からないけど……」
「ふん。ただの付き人だろう?」
「そうよね。もし、女とかだったらショックだわ~」
何でショックなんだよ。お前にはもう、このブリックス・オメルダ公爵さまがいるだろう?
「おい、アメリア。ここは騒がしくていけない。早く離れよう」
「え~、もうちょっとイケメン王太子さまを見ていたいの~!」
俺は明確に舌打ちを響かせそうになて、寸前の所でグッと堪えた。
このクソ女……今晩は、ベッドの上でたっぷりとお仕置きをしてやる。どうせ、あの王太子さまいたいなイケメンは、夜の生活はイマイチって相場が決まっているんだ。その点、俺さまは経験が豊富だからな。事実、毎晩のようにこの女をヒィヒィ言わせていることだしな。
「きゃ~! レオルド様、こっち向いて~!」
他の男に発情しているこのメスビッチの尻を今すぐ揉みくちゃにしてやろうと思ったが、それは夜の楽しみに取っておこうと自分に言い聞かせ、心を落ち着かせていた。
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