婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空

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第10話 お仕事中なのに……

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「ふわぁ……」

 いけません、大切なお祈り中なのに、ついあくびをしてしまいます。けど、昨晩はなかなか眠ることが出来ず、おかげで寝不足なのです。ちょっと油断すると、レオルド様の甘いマスクと声を思い出してしまって、色めきだってしまう自分がとても恥ずかしいです。でも、仕方がありません。今まで、殿方に優しくしてもらった経験がなく、免疫が少ないのですから」

「……ふぅ」

 何とかお祈りを終わらせると、朝食をいただくために食堂に行きます。神官さまやシスターさんたちとあいさつをかわして朝食を済ませると、特にやることもないので書類のチェックを買って出ました。私、どれくらいお給料がもらえるのか分かりませんが、場合によっては嫌らしい金喰らいになってしまいます。それは避けたい所ですが……

「――失礼いたします」

 すると突然、神殿の扉が開き、凛々しい声が響き渡りました。

「えっ……?」

 その声に、私が聞き覚えがありました。ハッと顔を向けると……

「レ、レオルド様!?」

 私が驚いた声を上げると、彼は笑顔で手を振ってくれます。その様子を見て、周りの人たちはとても驚いています。

「お、王太子さま。まさか、いらっしゃるとは……」

 オクトレイル様が慌てて対応に向かいます。

「神官長殿、急にお邪魔して申し訳ない。しかし、どうしても、ユリナの顔を一目見たくて来てしまいました」

「ああ、それは、それは……ユリナ様」

「あ、はい」

「王太子さまが、あなた様にご用ですよ」

 オクトレイル様は、気持ち含みのある笑みを浮かべておっしゃいます。

「す、すぐに行きます」

 私は椅子から立ち上がると、そちらの方へ向かいます。

「やあ、ユリナ」

「こ、こんにちは、レオルド様。まさか、本当に来ていただけるなんて」

「すまない、迷惑だったかな? 仕事中なのに」

「い、いえ。前にも申しました通り、暇でして……」

「それは良かった……あ、この言い方はあまり良くないかな?」

「いえ、そんな。ただ、他にせっせと働いていらっしゃる神官さまやシスターさん達に申し訳なくて」

「何をおっしゃいますか、ユリナ様。あなたは偉大なる聖女さまなのです。ただ、お祈りをしているだけと思われるかもしれませんが、それは並の神職やれば1日で精根尽き果ててしまうくらいなのですよ?」

 オクトレイル様がおっしゃいます。

「そ、そうなのですか?」

「はは、ユリナは本当に良い子だね……っと、いけない。呼び捨てにして良いのは、2人きりの時だけって約束なのに」

「い、いえ、お気になさらず」

「そうかい? ありがとう」

 微笑み合う私たちを見て、

「では、私は仕事に戻りますので。ユリナ様は、休憩がてら王太子さまとお茶でもいかがですか?」

「あ、はい」

「う~ん、お茶も良いけど……せっかくだから、ちょっと外に出掛けないか?」

「えっ?」

「神官長殿、ユリナをお借りしてもよろしいか?」

「ええ、どうぞ、どうぞ。あ、お昼のお祈りの時間までには、お戻りいただけると助かります。まあ、ちょっとくらいサボっても、バチは当たりませんでしょうけど」

「そ、それはダメです。私の数少ないお仕事ですから」

 私が慌てて言うと、レオルド様が笑います。

「君は本当に可愛いね、ユリナ」

 微笑む彼を見て、私はまた頬の火照りを感じてしまいます。

「では、レディ、参りましょう」

「は……はい」

 せっかく聖女様になれた私だけど、失格になってしまうかもしれない。

 素敵なレオルド様に、すっかり女にされて……

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