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黒賢狼ダークファング
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「そっか、此処って魔王の呪いを受けし森だったな」
「うん」
軽く頷くレノア。
そうなのだ、だからレノア達ダークマギデ族は色素が黒い。
ダークウルフも然りだ。
早い話、ユキはその恩恵を受けておらず、瘴気の漂う此処にいるのは毒でしかないって事だろう。
まあ、俺は777の恩恵でどうにかなってるっぽいけど……。
だから、ギルド長はウィンフィルさん達一般人をここには連れてこなかった。
「じゃ、急ごうか!」
「うん! 本当は道中で金目の素材をもう少し、採取していきたかったんだけどね」
(だよなあ……)
まあ、仕方ない。
これも可愛いユキの為だ。
「あ、よく考えてみたら杉尾の担いでるリュックにしまえないのかな?」
「ゴメン無理。アイテムや食料としてとして認識したものはいけるけど、生物は無理っぽい」
薬草とか肉系は入るんだけどね……。
もしかしたら魂の収納は無理ってことなんかもしれん。
「駄目なのかー」
「いや、アイデアは悪くなかった……」
俺達はそんな会話を続けながら、瘴気漂う薄暗い森を静かに駆抜けていく。
とりあえず入り組んでる場所さえ出れば、あとはユニコーンでサクッと移動してこんな場所さよならバイバイよ!
(もう少し我慢しろよユキ……。此処を抜けだしたら、一緒に宿屋で美味しいビーフシチューでも食べようじゃないか!)
それから数十分後……。
辺りは更に漆黒に染まった森に包まれていく……。
「……あれ? 可笑しいね?」
「どうした?」
レノアは周囲の木の中でもひと際大きい大木に手を当て、立ち止まる。
「うん、間違いない。真ん中の深淵部には来てないはずなんだけど……?」
「え? もしかして迷ったの?」
「あ、流石にそれはない」
「だよな、レノア達って元ここの森の住人だしな……」
おそらく、大木に手を当ててるのはレノア達の祖先が何かしらマーキングしたものを調べてるものと俺はみてるが。
「杉尾も気が付いているとは思うけど」
「うん、何か暗くなってきてるね……?」
「森の最深部とかがこんな感じになってるんだけど。調べたけど此処は違うし、出口が近いはずなんだ」
「え? じゃ何故?」
「そ、それは……考えられるとしたら、多分……」
何か思い当たる節があるのか、顔が険しい表情だ。
その時、妙に甲高い遠吠えが聴こえて来る……。
「しまった! ダークウルフの群れか⁈」
俺は片手にライトボーガンを素早く構える。
「ち、違う……。これは……一匹だ……つまり……」
「え?」
(ダークウルフは習性として必ず群れて行動すると、ギルドメン達から聞いていたが……?)
ふと気が付くと、いつの間にか俺達の目の前には数メートルはあろうかと思われる漆黒の毛皮に包まれた巨大な狼が佇んでいたのだ。
「な、7魔将黒賢狼ダークファング……」
その姿を見て、呆然と立ち尽くすレノア。
「へ?」
(ま、マジか……? てかいつの間に……? 気配を全然感じなかったんですが……?)
俺は昔此処に来た時に、ギルド長から言われた言葉を思い出す。
『杉尾君、7魔将黒賢狼ダークファングは7魔将でも最も賢い賢狼。だから絶対に戦っては駄目だ』
あのギルド長からも釘を刺される超ヤバイモンスター。
賢いってことは、間違いなく強いってことだからね。
(……あ、でも、逆に話は通じるって事なんだよな)
俺は黒賢狼ダークファングをよく観察する。
その佇まいは堂々としており、澄んだ金色の大きな瞳には知性を感じるし、毛並みは艶やかかで美しい。
ここら辺は流石は7魔将黒賢狼ダークファングといったところか?
それによく見ると、その瞳には優しさを感じ、更には俺の手元にその視線が向けられているのが分った……。
(あ……コイツもしかして?)
『①職業チャラ男スキルの内訳 【チャラ男の勘レベル9】にアップ! ???』
例の女神様の優し気な声が聞こえてくる。
とりあえず、分っている事はここが大事な運命の分岐点ってことだけ。
(選択を失敗したら間違いなく死ぬ)
だから……最初の一言が大事だ。
俺は深く息を吸い込み、黒賢狼ダークファングに話しかけてみる。
「黒賢狼ダークファングよ。俺はあんたのこの子供を助けてあげたいんだ! アンタの子供は特異体質で先祖返りを起こしているから、この森にいると瘴気にあてられこのままでは死んでしまうんだ!」
……そんな俺の話が通じたのか、黒賢狼ダークファングは俺の目を優し気な目でじっと見つめて来る。
『お前、どうやら正直者みたいだな……。それに賢い』
「え?」
『驚かなくていい。私の賢狼眼で分かるだけだ』
(あ、ああ……レノア同様、コイツも特殊な目を持ってるって事か……)
きっと魔王の恩恵ってやつだろうが……。
て、ことはやはりユキの親はコイツってことだろうな。
もし、親だとしたら助けてやりたいと思うハズ……。
『そうだな、お前の思ってる通りだ。私ではこの子を助けてやれそうになかったから、なるべく出口に近い場所に置いてきた』
「そっか、お前こいつを単純に見殺しにしたわけじゃなかったんだな……」
実際に黒賢狼ダークファングはとても穏やかな表情をしているしね。
森の外にユキを置いておくと狩られる可能性があるから、俺達みたいな変わり者に望みを託したってわけか。
流石賢狼、納得した。
「あ、じゃあ頼みがあるんだけどさ。なあに、あんたにとっても悪い話じゃない」
安全と確信したからだろうか、レノアは俺達の会話に割って入る。
『ほう? 言ってみろ?』
「うん」
軽く頷くレノア。
そうなのだ、だからレノア達ダークマギデ族は色素が黒い。
ダークウルフも然りだ。
早い話、ユキはその恩恵を受けておらず、瘴気の漂う此処にいるのは毒でしかないって事だろう。
まあ、俺は777の恩恵でどうにかなってるっぽいけど……。
だから、ギルド長はウィンフィルさん達一般人をここには連れてこなかった。
「じゃ、急ごうか!」
「うん! 本当は道中で金目の素材をもう少し、採取していきたかったんだけどね」
(だよなあ……)
まあ、仕方ない。
これも可愛いユキの為だ。
「あ、よく考えてみたら杉尾の担いでるリュックにしまえないのかな?」
「ゴメン無理。アイテムや食料としてとして認識したものはいけるけど、生物は無理っぽい」
薬草とか肉系は入るんだけどね……。
もしかしたら魂の収納は無理ってことなんかもしれん。
「駄目なのかー」
「いや、アイデアは悪くなかった……」
俺達はそんな会話を続けながら、瘴気漂う薄暗い森を静かに駆抜けていく。
とりあえず入り組んでる場所さえ出れば、あとはユニコーンでサクッと移動してこんな場所さよならバイバイよ!
(もう少し我慢しろよユキ……。此処を抜けだしたら、一緒に宿屋で美味しいビーフシチューでも食べようじゃないか!)
それから数十分後……。
辺りは更に漆黒に染まった森に包まれていく……。
「……あれ? 可笑しいね?」
「どうした?」
レノアは周囲の木の中でもひと際大きい大木に手を当て、立ち止まる。
「うん、間違いない。真ん中の深淵部には来てないはずなんだけど……?」
「え? もしかして迷ったの?」
「あ、流石にそれはない」
「だよな、レノア達って元ここの森の住人だしな……」
おそらく、大木に手を当ててるのはレノア達の祖先が何かしらマーキングしたものを調べてるものと俺はみてるが。
「杉尾も気が付いているとは思うけど」
「うん、何か暗くなってきてるね……?」
「森の最深部とかがこんな感じになってるんだけど。調べたけど此処は違うし、出口が近いはずなんだ」
「え? じゃ何故?」
「そ、それは……考えられるとしたら、多分……」
何か思い当たる節があるのか、顔が険しい表情だ。
その時、妙に甲高い遠吠えが聴こえて来る……。
「しまった! ダークウルフの群れか⁈」
俺は片手にライトボーガンを素早く構える。
「ち、違う……。これは……一匹だ……つまり……」
「え?」
(ダークウルフは習性として必ず群れて行動すると、ギルドメン達から聞いていたが……?)
ふと気が付くと、いつの間にか俺達の目の前には数メートルはあろうかと思われる漆黒の毛皮に包まれた巨大な狼が佇んでいたのだ。
「な、7魔将黒賢狼ダークファング……」
その姿を見て、呆然と立ち尽くすレノア。
「へ?」
(ま、マジか……? てかいつの間に……? 気配を全然感じなかったんですが……?)
俺は昔此処に来た時に、ギルド長から言われた言葉を思い出す。
『杉尾君、7魔将黒賢狼ダークファングは7魔将でも最も賢い賢狼。だから絶対に戦っては駄目だ』
あのギルド長からも釘を刺される超ヤバイモンスター。
賢いってことは、間違いなく強いってことだからね。
(……あ、でも、逆に話は通じるって事なんだよな)
俺は黒賢狼ダークファングをよく観察する。
その佇まいは堂々としており、澄んだ金色の大きな瞳には知性を感じるし、毛並みは艶やかかで美しい。
ここら辺は流石は7魔将黒賢狼ダークファングといったところか?
それによく見ると、その瞳には優しさを感じ、更には俺の手元にその視線が向けられているのが分った……。
(あ……コイツもしかして?)
『①職業チャラ男スキルの内訳 【チャラ男の勘レベル9】にアップ! ???』
例の女神様の優し気な声が聞こえてくる。
とりあえず、分っている事はここが大事な運命の分岐点ってことだけ。
(選択を失敗したら間違いなく死ぬ)
だから……最初の一言が大事だ。
俺は深く息を吸い込み、黒賢狼ダークファングに話しかけてみる。
「黒賢狼ダークファングよ。俺はあんたのこの子供を助けてあげたいんだ! アンタの子供は特異体質で先祖返りを起こしているから、この森にいると瘴気にあてられこのままでは死んでしまうんだ!」
……そんな俺の話が通じたのか、黒賢狼ダークファングは俺の目を優し気な目でじっと見つめて来る。
『お前、どうやら正直者みたいだな……。それに賢い』
「え?」
『驚かなくていい。私の賢狼眼で分かるだけだ』
(あ、ああ……レノア同様、コイツも特殊な目を持ってるって事か……)
きっと魔王の恩恵ってやつだろうが……。
て、ことはやはりユキの親はコイツってことだろうな。
もし、親だとしたら助けてやりたいと思うハズ……。
『そうだな、お前の思ってる通りだ。私ではこの子を助けてやれそうになかったから、なるべく出口に近い場所に置いてきた』
「そっか、お前こいつを単純に見殺しにしたわけじゃなかったんだな……」
実際に黒賢狼ダークファングはとても穏やかな表情をしているしね。
森の外にユキを置いておくと狩られる可能性があるから、俺達みたいな変わり者に望みを託したってわけか。
流石賢狼、納得した。
「あ、じゃあ頼みがあるんだけどさ。なあに、あんたにとっても悪い話じゃない」
安全と確信したからだろうか、レノアは俺達の会話に割って入る。
『ほう? 言ってみろ?』
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