嘘つきわんこは愛が重い

鈴谷なつ

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わんこの文化祭

助けてくれた女の子

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 制服に着替えた後も、メイクとヘアアレンジはそのまま記念に残しておいた。
 せっかくなので、蓮や咲夜と文化祭記念に写真を撮る。陸は着替えた後すぐに教室を出てしまったので、かなでは陸を探しに行くことにした。

 文化祭の来場者で混雑する学園内を、駆け回ること数十分。かなでが陸を見つけたのは、女子テニス部が出しているクレープ屋の屋台の前だった。
 ちょうどおやつどきだからか、クレープ屋の前は長い行列ができていて、その途中に陸の姿を確認する。
 声をかけたいけれど、列に割り込むわけにもいかない。そもそも行列に並びながら写真を撮るくらいならば、他のタイミングがいい。
 陸が買い終わるまで待っていよう、とクレープ屋が見えるところでかなでは立っていることにした。

「ねぇ、きみ、さっきファッションショーでドレス着てた子だよね?」

 唐突に声をかけられ、かなでは上を向く。
 背の高い男の二人組だった。
 人を見た目で判断してはいけない、というが、いかにもやんちゃをしていそうな風貌をしていたので、かなでは思わず身を引いてしまう。

「え、えと…………はい、そうです、けど……」
「お、ラッキー! 実は俺たち連れの女子と逸れちゃってさ。スマホも繋がらなくて」
「そうそう。で、確かお化け屋敷に行きたいとか言ってたからそっちにいると思うんだけど、場所が分かんなくてさー」

 よかったら案内してくれない? と言われ、かなでは頷いた。
 見た目の印象で遊んでいそうだなと思ってしまったが、一緒に来た女の子を探しているなら、早く合流させてあげたい。

 パンフレットを広げ、たくさんある出し物の中からお化け屋敷を探して、場所を確認する。
 お化け屋敷は結構大きな規模でやっているようで、第二体育館を使っていた。確かに第二体育館の場所は分かりづらい。
 校舎をぐるりと迂回して、学園内にある小さな森を通り抜けると、第二体育館に辿り着くことができる。

 男の人たちの隙間をぬってクレープ屋の方を見ると、もうすぐ陸の買う番になりそうだ。
 ここで陸を見失うと、また探さなければいけない。
 でもせっかく外部から遊びにきてくれた人には、文化祭を楽しんでもらいたいと思ってしまう。
 陸のことはまた探せばいいか、と考え、かなでは二人を第二体育館まで案内しようとする。

 そのとき、ちょっと待って、と凜とした女の人の声が響いた。
 振り向くと、そこには見覚えのない制服を着た女の子が立っていた。
 かなでよりも少し背の高い、ぱっちりとした二重が特徴的な、かわいらしい人だ。整った顔がもったいないくらい、眉をひそめている。

「この人たち、たぶんタチの悪いナンパだよ。連れて行かなくていいと思う」

 危ないからやめた方がいいよ、と言った女の子は、かなでを引き止めるために手首をぎゅっと握っている。
 ナンパをされた経験がないかなでは、彼女の言うことが本当なのか、それとも勘違いなのか、判断しかねてしまう。
 眉を下げ、かわいい女の子と男二人組を見比べる。
 かなでが迷っていることに気づいた男たちは、続けて言葉を紡いだ。

「ちょっとー。やめてよ、言いがかりつけんの」
「この子が心配ならさ、きみも一緒に来てくれればいいじゃん」

 それなら安心でしょ? と笑う男たちが、急におそろしく見えてくる。

 もしかして、本当に下心があるのかもしれない。
 だってもし本当にナンパだとしたら、かなでなんかよりも、このかわいい子と一緒がいいに決まっている。

 案内をするのはやめるべきだろうか。
 それか、近くの男子生徒に声をかけて、代わりに案内を頼もう。そう決めたときだった。
 大好きな人の声が、殺伐としたその場に響いた。
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