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第九夜 策略の城

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第九夜 策略の城


「無理しないでね?」

「あ、うん。治癒かけたから大丈夫…。」

 今現在街の大通りど真ん中で、エルさんは俺の腰を支えながらイチャイチャカップル状態です。でも周りも同じようなカップルだらけなんで目立ちませんけどね!流星群仕事しすぎ!

「サイ、四天王闇堕ちフラグ折れたけど、こっからどうなるの?」

 少し離れたところを勇者改め勇者バカップルがキャッキャしながら歩いている。後をついて行く魔法使い君と神官君もべっとりイチャイチャだ。…と言うか昨日まで魔法使い君って男役のタチってヤツだったよな?
 なんで晴れやかなツヤツヤ笑顔の神官君に腰支えられながら内股気味で歩いてんの…? あとその魔法使い君のキスマークだらけの首に嵌るワンちゃん用首輪は一体…? 

 いやいや、闇堕ちしなかったからそんな些細ささいな事キニシナイゾー! キニシナイったらキニシナイ!

「…そうだなぁ。闇堕ち四天王戦が無くなったから、あとは魔王城まで…あ、いや、その前に、闇堕ちをそそのかしたヤツだ。魔王城行く途中のど真ん中がソイツの城で、ストーリー修正しなかったら最後の四天王戦はそこで起こった。ストーリー変わったけど、多分唆したヤツとバトルはありだな。」

「めんどくさいね。」

 ハイ、身も蓋ない感想ー!

「仕方ないよ。唆したヤツって一応参謀とか顧問とかの役付き幹部って設定だし、戦わないってのは無しじゃない? 問題は…頭脳職ってトコかな。」

「頭脳しょく…、それ美味しいの?」

 エルさん…、ベタベタな脳筋回答ありがとう…。

「頭がいい役職って事。今まではおバカな雑魚ばっかりである意味力押しでいけたけどさ。策略系はなぁ…。状況を逐一ちくいち見ないと対応できない。」

「んー…、東方とうほう偽王ぎおうみたいな?」

 正式イベ名『東方義王ぎおうたん』、これはナイミリのお使い系期間限定イベントで強運ゲーやらタイミング無理ゲーなど悪名高きイベであった。
 イベ特別マップの東方諸島連邦で、策略により冤罪追放された王兄おうけいがプレイヤーの協力で弟王ていおう(表記が偽王)にクーデターを起こし、正しい王(表記が義王)に成り上がる復讐系ストーリーだ。だがこのイベ、クーデターのお使いクエのタイミングがシビアすぎて尽く失敗する地獄をみせられる初見殺しイベ。
 但し、ラック(幸運)値が高いと失敗判定を覆す時もあるのだが、失敗判定が重なりすぎるとイベクリアしてもエピローグの最後で、だが数年後、彼こそ無能な偽王とされ弟王の子供達に討たれたのであった…、とテキストが表示されバッドエンドを仄めかされる。報酬も一部減額。しかもクリアまでいくとやり直し不可。マジ地獄。
 結構ヘビーなシナリオだったが、バトルが少なく攻略にめっちゃ頭を使うので後衛職組に大人気だった。あと義王と偽王ってなんかカッコいい(中二魂)。

「かもね。あれに出てきた黒幕の宰相補佐官をイメージするといいかも。めっちゃ全てを裏切ってくるヤツ。」

「あー、あの腹黒補佐官ね。めんどくさいなぁ。」

 マジ身も蓋もないな!

「まあ戦闘力はそれ程ないだろうから、いざとなったら勇者君に聖剣でボコってもらうよう誘導すればいいかな。」

「力技脳筋すぎて草生える。」

 …エルに脳筋言われるとは解せぬ。

 腑に落ちないまま、勇者パーティーの街デートに付き合い本日の業務は終了した。ちなみに流星群商法に乗っかった露天商からペアアミュレットブレスを買ったのは見逃してくれ…。付き合いたてなんだ…。てへっ!



 バカップルやっててもストーリーはどんどん進み、勇者一行もエロバトル…いや、ちゃんとバトルでも経験値をつみ、とうとうやって参りました、策略の城。

「まあ妥当な戦力か。ステータス可視化出来ないけど、中級相手にスマートに勝てるようになってきたし。後はアタマだな。魔法使い君頭脳労働頑張って欲しい。」

 魔法使い君の機転で上手い事城に潜入した勇者パーティーを柱の影から見守る。
 城は外部に接する部分が迷宮化しており、防衛員よりトラップが多く策略系の主の気概を感じる。ま、その迷宮を丸々スルーしちゃえば何の事はない、ただの城である。敵さん本丸(?)までバトルで推して参るだね。

「魔法使い君、ナイミリだったらイイ線行きそうだよね。攻撃魔法もだけど、デバフのタイミングとか上手い。」

「四天王最強枠だったからなー。ちな、彼の裏設定は賢者の子孫一族。母が一般人の庶子だけどね。」

 母が突然の消息不明後、引き取られるが庶子故ウンタラカンタラからのアレですね。魔法は賢者んちの図書館で独学の孤独なアレ。清々しい程のテンプレ。
 そんな孤高の魔法使い君は今現在神官君のワンちゃん(調教済)にジョブチェンジしたけどね…。

「へえ、賢者の…っと、そろそろボスフロアかな? 警備のメンツ変わった。」

「うわぁ…、コレはヒドイ…。」

 四階に上がるとフロア警備兵が厄介な編成になった。
 アタッカーはパワータンクタイプで変わりないけど、サポにサキュバス(本来はインキュバスだけど女子がいない世界故に…察して…)の魅了デバフ隊。

「俺らには魅了きかないからいいんだけど…、ああ、勇者に魅了入った。めっちゃミノ(※ミノタウロス)に赤面してモジモジしてる。王子、ミノにガチギレじゃん…。」

「…サキュバス(?)はパーティークラッシャーだもんねえ。」

「うわあ、今度は神官君が魔法使い君に抱きついて…、いやアレは魅了じゃない。あの神官君、確か魅了耐性持ちだ。」

 バトル、真面目にやって欲しい…。

「あっ、…ヤバ、俺もなんかエッチな気分に、」
「ハイハイ、エル君は魅了耐性持ちだから。黙って。」

 ワキワキとエッチな手つきで俺の尻を揉もうとしたエルにチョップを入れた。

「ケチぃ。たまにはラッキースケベ的なの許してよ。」

「自力でやったらラッキーなスケベじゃありませんので。さてと、いい加減流れを変えますか。ミノは俺が遊んでやる。エル、合図したらサキュバス隊に戦意喪失か気絶狙って。」

 ふっふっふ、ここは敢えてミノタウロス君にバフを授けてしんぜよう。

「"いくさ乙女の息吹"。」

 フッと手のひらから息を吹きかけると、タゲってたミノタウロスがフワッと発光する。
 
ダンっ

 ミノタウロスが床を大きく踏み、手にした戦鎚せんついを振り上げる。

「ウオオオオオオーーーッ!!」

 ビリビリと大音量の咆哮がフロア中に響く。周りの敵、勇者パーティーどちらにも衝撃が走り、威圧系の耐性無しはバインド(※一時的な行動不能)状態だ。

「…ハッ?!…一体、俺は…?」

 勇者君が咆哮で正気に戻る。

 そう、今回はミノタウロスに戦意高揚のバフ掛けして、ワザと咆哮させるように仕向けた。
 咆哮はバインド系行動不能のステ異常をもたらすが、実はデメリットとして咆哮前の精神系ステ異常を解除する性質があるのだ。
 つまり、ぼんやり居眠りしかけてたトコにワッと大声だされたら驚いて目が覚めるって話だな。

「これでしばらくは脳筋バトルだ。エルさんや、やっておしまい!」

「なるほどね。じゃあ、さくっと気弾でもぶち込みますか。」

 獣人バージョンのエルの毛が少しブワッとなる。これは体内の気を溜めてるアクションなそうで、いつもはシュッとしてる狼尻尾が狐尻尾みたいにモフモフになり微笑ましい。
 モフモフにほっこりしてたら、秒でサキュバス封じ終わってた…。微笑ましいなんて気のせいだったぜ…。

 戦力ダウンした雑魚壁達を破り、勇者パーティーはとうとうボスの間にたどり着いた。
 謁見の間だと思われるそこには、キラキラ系イケメン紳士なボスがニコニコしながら晩餐のご馳走テーブルを準備してお誕生日席で待っていた。

「…予想外の展開なんだが?」
「…晩御飯にご招待ってどんなイベ?」

 俺とエルもだが、当事者の勇者パーティーも煌びやかな晩餐会場ぽかーんである。策略系マジ読めない…。
 敵対する相手にメシってどんな罠。絶対毒入りだろうし、無防備に席につくなんて有り得な…、

「わ、すっごい! これ、ちょう美味しい!!」

 オイコラ、勇者ァァァーーーッ!
 何勝手に座って前菜的なトマト食ってんじゃーーーいッ!! 
 天然だすとこ間違えてんじゃねえーーーッ!!

 …うっかりツッコミを叫びそうになって慌てて口を押さえた。

「…勇者君ってサイと同郷だよね? あれ普通?」

 腕組みしたエルがチラッと俺を見ながら半眼してる。

「…なワケない。あれは天然って言う珍獣だ。」

 多分勇者君と生きてる年代が違うっぽいが、普通のおウチの子はいきなり、突撃知らない人の晩ごはんなんてしないから…。

「だよね…。あ、神官君が浄化の祈りしてる。」

 毒(?)対処はしたらしい。ってお前らも食うんかい…。天然怖…。
 勇者以外はピリピリとした緊張感は一応出してるので聞き耳たてながら様子見だ。魔法使い君は今更闇落ちしないとは思うが…、と言うかすげえキレた顔しながらヘルメーウ卿を睨んでるな。別な意味でヤバい雰囲気だ。

 楽しい(?)お食事会はしっかりした食事会のテイを取って、前菜(いきなり勇者が摘んだヤツ)、スープ、魚に、肉とコースが進む。
 そこに彩りとばかりに策略の主こと外交長官ヘルメーウ卿の軽快なおしゃべり。話題も魔族v.s.人的な物騒なネタはなく、外交で培ったネタをセンスよくのせてくる。たまに王子にそちらの国の〇〇も素晴らしいとか持ち上げたり、こちらとそちらの利益が見合えば貿易も…など、ビジネスランチいや外交ランチみたいな流れも盛り込んでくる。

「…うーん、やっぱ頭いい奴の話って難しいな。今戦争中だけど実は和解してもいいのよ的な話をしてるけど…、全然ウラが読めない。勇者は外交官じゃなく戦闘員なのに。一応王子いるけど、コイツ第三王子だけど騎士団寄り脳筋だからあんまり政治メリットなくない?」

「…ごめん、全然わかんない。ナイミリ的に言えば疑わしきボスはボコれ、かな。」

「…えええ。」

 ナイミリ攻略的にはあるあるだけど!
 今メリットがあるかどうかの話だぞ、エル…。



<次回予告>

策略の城、それは魅惑に塗れた迷宮。主もそれであった。
しかし魔法使いは決断する。
次回、戦いの末には。『第十夜 束の間の』
お楽しみに。

「これが僕達のリアル出張。」

※次回予告はあんまり本編に関係ありません。
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