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第十六夜 流れ
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第十六夜 流れ
「はあ、マジ何なんだよ…。意味わから…、」
「サイっ…!!」
「え?」
バーンとカフェの扉が開いてエルさん登場の巻…って、は? エル?
「サイ、サイ、サイッ! ごめん! 俺が悪かった! ほんとにごめんなさいッ!!」
店内にワーッと飛び込んできたエルがDV夫のような謝罪をしながら土下座をキメてきた…。
「ちょ! エル?! な、おま、何?!」
「俺、頭に血が昇ってあんなヒドイ事…、サイを傷付けた…。サイが居なくなった部屋でひとりになって…、なんてバカな事しちゃったんだって…。こんなの牙狼さん達にボコらても当たり前…だ…、」
エルは土下座のまま額を床に打ち付ける。ズンと鈍い音が響いた。
…数人しかいない店内がざわ・・・っとした。
メチャクチャ視線が刺さる…。しかもドン引き系の気不味いヤツ…。
完全に暴力沙汰ド修羅場の空気なんですが…?!
「エ、エ、エルさん? ちょっと、ここで、それは…!」
椅子から飛び退き、土下座からエルの肩を引き上げる。
…うわ、額が真っ赤に…、って言うかガチ泣きしてるんだが?! ど、どうしてこうなった?!
「ごめん、サイ、許してっ…ひぐっ、ウウ、俺を捨てないでぇっ…!」
「ぐえっ!!」
ガバッとエルにタックルが如き腹に突進されそのまま抱きつかれた。あ、あ、あかん、パワーが、アカンレベルッ! 内臓が口からはみ出しそう!
「…エルッ、だ、だめッ、離せって!」
バンバンとエルの背中を必死に叩いた。
「ッう、ウウ、拒否しないでぇ…、やだよぉ…、」
斜め上の反応?!ダメだ、コイツ!!
誰かーっ! 助けてーっ!
「…お、おい、落ち着け!彼、死にそうだぞ?!」
カウンター席にいたオークっぽいお兄さんが近づいてきてエルの肩を叩いてくれた!
救世主ーーーッ!
「…ッ、オーク! まさか貴様クッコロオークか?!そんなクッコロなんてさせはせ…、」
スパーンッ
「ありがとう! 助かりました!」
ええ、腰から離れた瞬間を狙ってエルの頭をスパコーンと叩いておきましたとも! バカ犬、正気に戻れ!
だがエルからごっつい殺気を当てられた優しいオークお兄さんは泣きそうになってた…。
「あの…、もしアレでしたら、仲介に自警団でも呼びます?」
オークお兄さんの彼ピっぽいちょっと小柄なオークお兄さんが、卒倒しかけた彼氏を支えながらそっと声をかけてくれた。
「…だ、大丈夫です! ちょっとコイツ、なんかどっかで混乱喰らっただけみたいだから! 今、解除したんで、あの、ほんとお騒がせしてすいません…。」
「サイ、俺は、「だまれ。」…、あ、はい。」
俺がまたエルを勢いよくスパコーンしたので若干周りがざわ・・・ついたが、小柄なオークお兄さんは肩をすくめて小さく笑った。
「そうですか。 じゃあ彼氏さん、これ僕が作った飴ちゃん。あまみつ草が入ってるから気分が落ち着くよ。…色々事情があるかもしれないけど、あんまり思い詰めないでね。」
エルに小さな飴ちゃんの包みをそっと握らせ、お兄さんも思い詰めちゃダメですよ、と小っちゃい目で可愛くウィンクをして彼氏を俵に担いで店を出て行った。イケメンいやイケオーク…!
…優しい世界すぎる。もうオークさん村に足を向けて寝れません…!
感謝の気持ちをこめ、2人に癒しの魔法を飛ばした。
「(…おいエル、外にでるぞ。)お騒がせしてすいませんでしたーッ!」
カウンターにいるマスターやお客さんに謝り、テーブルの上に金貨3枚(エルが額を打ち付けた床にヒビが…迷惑代と修理代にして欲しい…)を置いて逃げるように店を出た。
温泉街の外れにある川側の小さな庭園に入り、四阿のベンチによっこいせと腰を降ろす。
エルは座らず、四阿の柱にしょんぼりもたれた。
「…はあ。まったく、何でこんな騒ぎに…。エル、お前さ、何でこんな、」
…いや、ダメだ。こう言う言い方は多分だめ。
俺のこう言う所、人を責めるような言い方がトラブルになる。
ナイミリで昔ギルドを組んだヤツらに言われたんだ。そんなミスひとつでギルメン(※ギルドメンバー)にキツい事言わなくてもいいだろ、冷たいな、って。
その後少しづつギルメンから距離を置かれ始め、気づけばいつの間にか周りから人数が減り、所属ギルドはじわじわと閑散として、気不味くなった俺はそこからそっと脱退したのだけど…。それ以降は知り合いのギルドに拾われるまでソロで、拾われてもボロが出そうであまりチャットはしないようにしてた。
あの当時は若気の至り的な面もあったけど、やはり今思い出しても…ああ、人を思いやれない最低なヤツだな、俺、って。
「…いや、…えーと、なんか俺が…悪い。心配かけてごめん。」
…ああ、クソ。上手く言葉が出ない。
膝の間に組んだ手の平に嫌な汗がじわりとにじむ。ゴシとローブでこっそり拭った。
「…えと、さっきは店内だから個チャできなくて、あ、その時報告書書いてて丁度送信直前の時で、すぐ画面変えられないなくてさ。メッセ無視した感じになって、んで、」
「…ごめんなさい。」
「はえ?」
いつの間にか俺はエルの腕の中にいた。後ろからすっぽり抱きしめられている。
「俺、…俺、サイが好き…、」
「あ、…うん。ええと、俺も…だけど、」
あ、あれ? 待って、これどんな流れ??
「リアルで初めて出来た恋人に、…もうどうしていいかわかんなくて、」
おんん? エルの初めての恋人? もしかして俺?
待って、マジで待って? コイツはイケメンからのモテメンではないのか?
「他の男の話されて…、頭がぐちゃぐちゃで、」
あ、まあわかる。付き合いたては情緒ジェットコースター!になるけど、だけど…他の男って。
「エルさん、エルさん、ちょっといいかな?」
「うん…。」
「もしかして他の男とやらは、魔王か?」
「うん……。」
ギュッと回された腕に力が入る。
今回は内臓はみ出そうな力加減ではなかった。…良かった。ここには止めてくれるオークお兄さん(救世主)いないからな…。
「…エル、ちょっとお説教。今から多分厳しいこと言うけど、もし耐えられない暴言はいたら止めて。…あー、もしくはさっき貰った飴ちゃん食べて。見たらすぐやめる。…俺さ、他人の気持ちに疎いから合図がないと気づかない。」
せめてもの俺の暴走防止策。
「…わかった。」
「じゃあ、まず!」
「うん。」
「隣りに座れよ、エル。そのデッカい図体が抱きついたままだと鬱陶しい。話の邪魔。」
ぽすんと肩口に乗っかっている金髪頭に軽くチョップをいれた。
「…サイ、もう暴言です。」
「まだ始まってないから却下。」
しゅーんとしてたエルから少し緊張が抜けた気配がした。
1人分空けて隣りにそのデッカい図体を小さくしながら座ったのを見届けてから、息をひとつ吸い説教をはじめた。
「エル、最初に言ったと思うけど、あの話は真面目な仕事の話な? だいたい俺達はここに………」
これ仕事だぞ!って言う説教な。
案の定エルの耳と尻尾は下がったまま、もし漫画なら背景にズーンとか縦線とかどんより効果か入ってただろう。
でもエルは俺の説教を止めなかった。飴ちゃんも食べなかった。
「…まあ色々言ったけどな、仕事は真面目にこなすは当たり前だけど、プライベートって言うかなんて言うか…、そんな拗らせる前に、…こ、恋人の俺に話せって! ふざけてじゃなく、真面目に話していい。…俺、お前の『恋人』なんだから。」
「…キュンっ!」
突然横から子犬の鳴き声が。片手で顔を覆い、もう片手で胸を押さえ前傾姿勢な狼さんから漏れたようだ。
ヤベ、言い過ぎたか?!
「…悪い、少し言い過ぎたみたいだな。もう俺の話はおわ、」
グイッ
「っんんんッ!」
またしてもいつの間にかエルに抱かれ、つーか横抱きに古い洋画のクライマックスさながらの熱烈なキスを喰らっていた。な、なんだ、この流れええ?!
意味も分からず受け入れてしまった激しいキスに、頭から色々な事が吹っ飛ぶ…、
ばないっ!
「ええいっ! やめい、このバカ犬! お座りッ!」
渾身のフルパワーでガッとエルをひっぺがした!
こ、このおバカは~!!
「ふええ、ごめんなさいぃぃ。」
ズサーーーッと四阿の床に正座したエルは土下座した。
「…はあ、こんな所でキスとか…。情緒ジェットコースターすぎんだろ。」
「だって…、サイが可愛くて…、ふぅ、ツンデレ最高か。いや、ええと、ちゃんと俺の恋人なんだなってと思ったらつい…。普段サイはそんな好きとか言わないからたまにすごく不安で、それに…最近エッチもほとんどしてなくて、もしかしたら恋人じゃなくて仕事仲間にもどりたいのかなって…、しかも悔しいけどあの魔王はイケメンだから、俺みたいな平凡バカよりあっちの方がいいのかなって…、」
うっ、確かに、…す、すき、って恥ずかしくて言ってない。つーか、エッチな事はしてるだろう!…って思ったけど、最近タイミングが悪くて所謂最後まではいたしてないか…。
…あれ、結構な塩対応だな、俺。
ーーーしかし、エルよ。
おまえ、自分の事を平凡と?
それはイケメンの大罪、無自覚美形非凡の大罪だぜ。許さん。
「うっさいわ! イケメンが平凡のふりしてんじゃねえよ! 鏡みろ、お前! 平凡はそんなキラキラの金髪碧眼にカッコイイ顔なんか持ってねえわ。だいたいさ、アバ無しで街を歩けば必ず逆ナンされてたじゃん? ナンパって言うのはイケメンだから声かけんの。つまりエルはイケメン、めっちゃカッコイイ男前なの。魔王なんか目じゃないの。わかったか?!」
某独自路線少年漫画風のイカす立ち方でビシィっと指摘ですよ! ビシィっと!
「~~~ぴゃぁぁッ!!」
なんて言う事でしょう、目の前の狼さんが謎の鳴き声あげ顔を真っ赤にしながら固まってしまいました! って、どうしたエルよ…?
余りの様子のおかしさにしゃがんで顔を覗き込んだ瞬間、エルはオークお兄さんの飴ちゃんをばっと口に放り込んだ。
「え?」
今のって耐えられない『暴言』の流れだったか…?
<次回予告>
川の流れは穏やかではない。時には激しく、時には抉るように。
流れに浮かべた木の葉の船はどこまで行くのだろう。
次回、確かなのは?『第十七夜 踏破』
お楽しみに!
「12月と残業が交差する時、繁忙期は始まる。」
※次回予告はあんまり本編に関係ありません。
「はあ、マジ何なんだよ…。意味わから…、」
「サイっ…!!」
「え?」
バーンとカフェの扉が開いてエルさん登場の巻…って、は? エル?
「サイ、サイ、サイッ! ごめん! 俺が悪かった! ほんとにごめんなさいッ!!」
店内にワーッと飛び込んできたエルがDV夫のような謝罪をしながら土下座をキメてきた…。
「ちょ! エル?! な、おま、何?!」
「俺、頭に血が昇ってあんなヒドイ事…、サイを傷付けた…。サイが居なくなった部屋でひとりになって…、なんてバカな事しちゃったんだって…。こんなの牙狼さん達にボコらても当たり前…だ…、」
エルは土下座のまま額を床に打ち付ける。ズンと鈍い音が響いた。
…数人しかいない店内がざわ・・・っとした。
メチャクチャ視線が刺さる…。しかもドン引き系の気不味いヤツ…。
完全に暴力沙汰ド修羅場の空気なんですが…?!
「エ、エ、エルさん? ちょっと、ここで、それは…!」
椅子から飛び退き、土下座からエルの肩を引き上げる。
…うわ、額が真っ赤に…、って言うかガチ泣きしてるんだが?! ど、どうしてこうなった?!
「ごめん、サイ、許してっ…ひぐっ、ウウ、俺を捨てないでぇっ…!」
「ぐえっ!!」
ガバッとエルにタックルが如き腹に突進されそのまま抱きつかれた。あ、あ、あかん、パワーが、アカンレベルッ! 内臓が口からはみ出しそう!
「…エルッ、だ、だめッ、離せって!」
バンバンとエルの背中を必死に叩いた。
「ッう、ウウ、拒否しないでぇ…、やだよぉ…、」
斜め上の反応?!ダメだ、コイツ!!
誰かーっ! 助けてーっ!
「…お、おい、落ち着け!彼、死にそうだぞ?!」
カウンター席にいたオークっぽいお兄さんが近づいてきてエルの肩を叩いてくれた!
救世主ーーーッ!
「…ッ、オーク! まさか貴様クッコロオークか?!そんなクッコロなんてさせはせ…、」
スパーンッ
「ありがとう! 助かりました!」
ええ、腰から離れた瞬間を狙ってエルの頭をスパコーンと叩いておきましたとも! バカ犬、正気に戻れ!
だがエルからごっつい殺気を当てられた優しいオークお兄さんは泣きそうになってた…。
「あの…、もしアレでしたら、仲介に自警団でも呼びます?」
オークお兄さんの彼ピっぽいちょっと小柄なオークお兄さんが、卒倒しかけた彼氏を支えながらそっと声をかけてくれた。
「…だ、大丈夫です! ちょっとコイツ、なんかどっかで混乱喰らっただけみたいだから! 今、解除したんで、あの、ほんとお騒がせしてすいません…。」
「サイ、俺は、「だまれ。」…、あ、はい。」
俺がまたエルを勢いよくスパコーンしたので若干周りがざわ・・・ついたが、小柄なオークお兄さんは肩をすくめて小さく笑った。
「そうですか。 じゃあ彼氏さん、これ僕が作った飴ちゃん。あまみつ草が入ってるから気分が落ち着くよ。…色々事情があるかもしれないけど、あんまり思い詰めないでね。」
エルに小さな飴ちゃんの包みをそっと握らせ、お兄さんも思い詰めちゃダメですよ、と小っちゃい目で可愛くウィンクをして彼氏を俵に担いで店を出て行った。イケメンいやイケオーク…!
…優しい世界すぎる。もうオークさん村に足を向けて寝れません…!
感謝の気持ちをこめ、2人に癒しの魔法を飛ばした。
「(…おいエル、外にでるぞ。)お騒がせしてすいませんでしたーッ!」
カウンターにいるマスターやお客さんに謝り、テーブルの上に金貨3枚(エルが額を打ち付けた床にヒビが…迷惑代と修理代にして欲しい…)を置いて逃げるように店を出た。
温泉街の外れにある川側の小さな庭園に入り、四阿のベンチによっこいせと腰を降ろす。
エルは座らず、四阿の柱にしょんぼりもたれた。
「…はあ。まったく、何でこんな騒ぎに…。エル、お前さ、何でこんな、」
…いや、ダメだ。こう言う言い方は多分だめ。
俺のこう言う所、人を責めるような言い方がトラブルになる。
ナイミリで昔ギルドを組んだヤツらに言われたんだ。そんなミスひとつでギルメン(※ギルドメンバー)にキツい事言わなくてもいいだろ、冷たいな、って。
その後少しづつギルメンから距離を置かれ始め、気づけばいつの間にか周りから人数が減り、所属ギルドはじわじわと閑散として、気不味くなった俺はそこからそっと脱退したのだけど…。それ以降は知り合いのギルドに拾われるまでソロで、拾われてもボロが出そうであまりチャットはしないようにしてた。
あの当時は若気の至り的な面もあったけど、やはり今思い出しても…ああ、人を思いやれない最低なヤツだな、俺、って。
「…いや、…えーと、なんか俺が…悪い。心配かけてごめん。」
…ああ、クソ。上手く言葉が出ない。
膝の間に組んだ手の平に嫌な汗がじわりとにじむ。ゴシとローブでこっそり拭った。
「…えと、さっきは店内だから個チャできなくて、あ、その時報告書書いてて丁度送信直前の時で、すぐ画面変えられないなくてさ。メッセ無視した感じになって、んで、」
「…ごめんなさい。」
「はえ?」
いつの間にか俺はエルの腕の中にいた。後ろからすっぽり抱きしめられている。
「俺、…俺、サイが好き…、」
「あ、…うん。ええと、俺も…だけど、」
あ、あれ? 待って、これどんな流れ??
「リアルで初めて出来た恋人に、…もうどうしていいかわかんなくて、」
おんん? エルの初めての恋人? もしかして俺?
待って、マジで待って? コイツはイケメンからのモテメンではないのか?
「他の男の話されて…、頭がぐちゃぐちゃで、」
あ、まあわかる。付き合いたては情緒ジェットコースター!になるけど、だけど…他の男って。
「エルさん、エルさん、ちょっといいかな?」
「うん…。」
「もしかして他の男とやらは、魔王か?」
「うん……。」
ギュッと回された腕に力が入る。
今回は内臓はみ出そうな力加減ではなかった。…良かった。ここには止めてくれるオークお兄さん(救世主)いないからな…。
「…エル、ちょっとお説教。今から多分厳しいこと言うけど、もし耐えられない暴言はいたら止めて。…あー、もしくはさっき貰った飴ちゃん食べて。見たらすぐやめる。…俺さ、他人の気持ちに疎いから合図がないと気づかない。」
せめてもの俺の暴走防止策。
「…わかった。」
「じゃあ、まず!」
「うん。」
「隣りに座れよ、エル。そのデッカい図体が抱きついたままだと鬱陶しい。話の邪魔。」
ぽすんと肩口に乗っかっている金髪頭に軽くチョップをいれた。
「…サイ、もう暴言です。」
「まだ始まってないから却下。」
しゅーんとしてたエルから少し緊張が抜けた気配がした。
1人分空けて隣りにそのデッカい図体を小さくしながら座ったのを見届けてから、息をひとつ吸い説教をはじめた。
「エル、最初に言ったと思うけど、あの話は真面目な仕事の話な? だいたい俺達はここに………」
これ仕事だぞ!って言う説教な。
案の定エルの耳と尻尾は下がったまま、もし漫画なら背景にズーンとか縦線とかどんより効果か入ってただろう。
でもエルは俺の説教を止めなかった。飴ちゃんも食べなかった。
「…まあ色々言ったけどな、仕事は真面目にこなすは当たり前だけど、プライベートって言うかなんて言うか…、そんな拗らせる前に、…こ、恋人の俺に話せって! ふざけてじゃなく、真面目に話していい。…俺、お前の『恋人』なんだから。」
「…キュンっ!」
突然横から子犬の鳴き声が。片手で顔を覆い、もう片手で胸を押さえ前傾姿勢な狼さんから漏れたようだ。
ヤベ、言い過ぎたか?!
「…悪い、少し言い過ぎたみたいだな。もう俺の話はおわ、」
グイッ
「っんんんッ!」
またしてもいつの間にかエルに抱かれ、つーか横抱きに古い洋画のクライマックスさながらの熱烈なキスを喰らっていた。な、なんだ、この流れええ?!
意味も分からず受け入れてしまった激しいキスに、頭から色々な事が吹っ飛ぶ…、
ばないっ!
「ええいっ! やめい、このバカ犬! お座りッ!」
渾身のフルパワーでガッとエルをひっぺがした!
こ、このおバカは~!!
「ふええ、ごめんなさいぃぃ。」
ズサーーーッと四阿の床に正座したエルは土下座した。
「…はあ、こんな所でキスとか…。情緒ジェットコースターすぎんだろ。」
「だって…、サイが可愛くて…、ふぅ、ツンデレ最高か。いや、ええと、ちゃんと俺の恋人なんだなってと思ったらつい…。普段サイはそんな好きとか言わないからたまにすごく不安で、それに…最近エッチもほとんどしてなくて、もしかしたら恋人じゃなくて仕事仲間にもどりたいのかなって…、しかも悔しいけどあの魔王はイケメンだから、俺みたいな平凡バカよりあっちの方がいいのかなって…、」
うっ、確かに、…す、すき、って恥ずかしくて言ってない。つーか、エッチな事はしてるだろう!…って思ったけど、最近タイミングが悪くて所謂最後まではいたしてないか…。
…あれ、結構な塩対応だな、俺。
ーーーしかし、エルよ。
おまえ、自分の事を平凡と?
それはイケメンの大罪、無自覚美形非凡の大罪だぜ。許さん。
「うっさいわ! イケメンが平凡のふりしてんじゃねえよ! 鏡みろ、お前! 平凡はそんなキラキラの金髪碧眼にカッコイイ顔なんか持ってねえわ。だいたいさ、アバ無しで街を歩けば必ず逆ナンされてたじゃん? ナンパって言うのはイケメンだから声かけんの。つまりエルはイケメン、めっちゃカッコイイ男前なの。魔王なんか目じゃないの。わかったか?!」
某独自路線少年漫画風のイカす立ち方でビシィっと指摘ですよ! ビシィっと!
「~~~ぴゃぁぁッ!!」
なんて言う事でしょう、目の前の狼さんが謎の鳴き声あげ顔を真っ赤にしながら固まってしまいました! って、どうしたエルよ…?
余りの様子のおかしさにしゃがんで顔を覗き込んだ瞬間、エルはオークお兄さんの飴ちゃんをばっと口に放り込んだ。
「え?」
今のって耐えられない『暴言』の流れだったか…?
<次回予告>
川の流れは穏やかではない。時には激しく、時には抉るように。
流れに浮かべた木の葉の船はどこまで行くのだろう。
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