33 / 101
健全黒字経営目指します!
素人目にはわからない
しおりを挟む第33話 素人目にはわからない
「…あ、そうか!手前にダミー作るか!」
入口の前に小さい丘を新たに作って、そっちにダミー洞穴をつける。そして本来の洞窟入口は丘の横に繋がるようにして蔦を垂らす。これは前に見た箱庭動画内で他の箱庭ユーザーさんがやってた隠しダンジョンの手法だ。このユーザーさんのダンジョン、なかなかユニークでいつか真似しようとこっそり企んでたんだよね。
よおし、周りの岩に合わせた岩は…、うん、安山岩ブロックだ。安山岩を気前よく配置!
ドンドン!
安山岩が積み上がり、元の入口前に小さな丘を形成する。自然になるよう一番上の層には土ブロックを乗せ、ランダムに草の種を蒔いておく。
「…岩がそんなに出るのか…。」
レオさんはもう理解諦め顔で俺の隣りに胡座をかいて座りこんでいた。
俺的にはロックスのほうが不思議です…。俺のは最初からある岩を出してるけど、ロックスの魔法は土の地面から岩を捻り出してる。その素材違い、マジでどう捻り出してんの…?魔法不思議パワーなの?魔法ウラヤマ…!!
魔法…ギリィ…!と脳内歯噛みをしながら、ダミーの洞穴を作る。確か来た時の洞穴は八畳の広さくらいだったかな?…あ、ちょっと丘小さかった!六畳で!
「ん、こんなモンかな。レオさん、これって洞穴に見えますか?」
「え…?ああ、すまん。もう全てが予想外すぎて半分呆けてた。…ちょっと、中見てもいいか?」
当物件は内覧歓迎です!
と、言ってもただの洞穴なんだけどね。俺がどうぞどうぞと促すと、レオさんは洞穴の入口から中を覗いた。
「…前よりは入口が短くてちょっと狭いがちゃんと洞穴だ。これは余裕で一夜の宿に使えるな。」
よし、現地人にオッケー貰えたぜ!
再現系はやっぱ現地人の目がないと嘘臭くなるんだよねえ…。俺作の海外遺跡再現シリーズは結構高評価だったが低評価も地味に多く、更に現地人コメントほんっっと辛辣だった思い出だよ…!ツラ…!
「よかった。一応、こっちはダミーなんで前と似たような体裁保てればいいんですよ。じゃあ、本来の入口も作っちゃいますね。こっちは穴掘るだけだからすぐですよ。」
少し突き出したダミー丘の横に回り、境目をポチポチ掘る。7ブロック掘ると元の穴が出てくる。
通路が少し暗いので、外からは見えない真ん中辺りの天井にライト石を埋める。うん、通路、通路。おっと中の入口にドアつけないと。一応、安全を期して鉄扉よな!お、グラ通り上にちゃんとのぞき窓がある。これは良き良き!
さて、仕上げは外の入口へ蔦を垂らして…ってツタ…、
なんかこのツタ、太めな上、触手的なツヤネットリ感凄いんだが…?!?!異世界、触手と蔦間違ってない?!?!
いや確かに箱庭通り、緑で葉っぱがある蔓植物グラで間違いないけど…。グラからは伝わらないこのホースのような蔓の太さに、もったりぬるりな滑り感…、
やっぱこれツタじゃなくて触手じゃね…?
むしろうねうね動いてないのが不思議よ…?
「…レオさん、こちらの蔦ってこんな感じなんですか…?」
「…あー、まあな。この森の代表的な蔦って言えばこの濡れツタだな…。一応、この森からちょっと離れれば普通の乾いた蔦もあるからな?」
何故かツタにフォローを入れるレオさんであった…。なるほど、この森のツタがおかしいんですね…?
…なんでこんなに現地ナイズされたんだ、ツタァァァ…!!!!
俺は無言で濡れツタをゴミ箱にぶっ込んだ。
さあ、木を植えよう!低木と混ぜて入口付近を見えなくしよう!そうしよう!
ポチポチと入口より少し遠巻きにブナの植林をする。
ふふふ、ブナはね!どんぐりがなるんだよ~!夢だけど夢じゃなかったごっこも夢じゃない(ニッコリ)と言うのは冗談で、ブナ材は素材として色々使えるのだ。リアルでもベニヤなんかに使われてるし、有名ドコロだと秋田の曲げわっぱの材料だ。前の会社で高級贈答ラインのうどん容器の候補になったからちょっとお勉強した。まあ、曲げわっぱ高級すぎていつもの桐箱になりましたけどね!おっと閑話休題。
箱庭だと次の日にはデカい木になるんだが、こっちじゃ成長スピードどうなるかわからんので、ブナの後ろは低木と草で薮風にする。ちなみに薮は木と違って何故かそのまま出てくる箱庭七不思議。なんでそんな設定にしたんだろうな…。ほんと謎だわ。
これでブナの木がなくても薮を周り込んだ森側からしか見えないカモフラ入口が完成!
「ふぅ、なかなか良き!あ、レオさんお待たせしましたー。」
振り返るとレオさんは無になっていた…。
「え?え?レオさん?どうしたんですか??」
「はっ!!…お、終わったのか…?」
お、帰ってきたっぽい。
やっぱ見てるだけだと暇だったんだろうなぁ。昔、恋人候補までいった女の子に俺の箱庭見たいってせがまれて、箱庭をちょっとプレイした事があったんだけど…。基本ソロプレイ、見てる方は蚊帳の外、ってね。一時間後にはお帰りになられたね…。
レオさんの意識はどこまでお出かけしてたんだろうな…。すまんな…。
「あ、はい。急拵えですけど一応終わりました。随分待たせてしまってすいません…。」
「あ、いや、待ってない。大丈夫だ。大丈夫。気にしたら負けだ…。」
ちょっとレオさん、何を気にして負けそうになってんの…?マジ、どこまで意識お出かけしたの…?
「ああ、お疲れですよね。そろそろ中に入りましょ…、アッ!!!!」
「な、なんだ?!どうしたんだ、コウ?!」
思い出した…。お昼ご飯、デリバリーしてたわ…。アレって受け取らないとどうなるんだろうか…。
「昼ご飯すっかり忘れてて…。お肉だったんですけど…。」
思い出したらめっちゃ腹減ってきた。
「驚かすなよ…。そう言えばメシ食ってなかったな。」
ぐーぅと、目の前の腹の虫がアピールしてきた。そんなレオさんをチラリとした瞬間、こちらからも一声腹の虫がないた。
思わず二人でニヤリとする。
「なんか食いモンあるのか?」
「部屋に戻れば準備できると思います。上手くいけばすぐお肉食べられるかも、です。」
「肉か、いいな。じゃあ部屋に戻るとすっか。」
「ですね!いきましょう!」
さて特選松坂牛A5ステーキ弁当、どうなったかな!!
入口の通路を抜け、鉄扉をくぐる。
チーン!
中に入った瞬間、手に持ったタブレットから通知音が鳴る。あ、この通知音は!
『ご注文ありがとうございます!
お受け取り通知がなかった為、
商品は第二指定場所へ
配達とさせて頂きました。
指定場所をご確認下さい。』
第二指定????そんな指定あった????
ピコーン!
今度はメッセか!何この通知ラッシュ??
『総括チーム: お疲れ様です。
amazooで注文した商品が届いたので納品しますね。
今回ダン箱を一括転送なので、転送先が決まりましたらボスへ連絡して下さい。』
ピコン
『総括チーム: 何故かボスがステーキ弁当を差し入れてくれたんですが、これはコウさんが注文した弁当ではないでしょうか?」
ピコン
『総括チーム: コウさん、しばらく返信がないようですが大丈夫でしょうか?
あと先程のステーキ弁当、こちらでいただいてしまいました。
とても美味しかったです!ありがとうございました!』
アーーーッ!!!!第二指定場所、総括チームーーーッ!!!!
ピコン
『イケオジ: 電話繋がんない…(泣き顔絵文字)』
ピコン
『総括チーム: このメッセージ繋がったらすぐ返信ください!』
お、おう?なんかこれ緊急??
とりあえず返信するけど、部屋に入って座りたいんだなぁ。レオさんもさっきから入口で立ちっぱなしだし。
レオさんに入りましょうと告げ、ささっと部屋に入ってブーツから足を解放、そして毛玉のラグへ崩れ込む。
あはー、やっぱ毛玉最高だぜ…。ちょっと何かの液体臭がしたが気にしないぞ…。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
260
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる