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しおりを挟む翌日から何事もなかったかのようにいつも通りの学校が始まった。
ジューー
「んん、なんかいい匂いする…」
寝ぼけたままキッチンへ向かうと、珍しく僕よりも先に起きた悠汰が朝ごはんを作っていた。
明日は雪、いや槍でも降るかな。
「ゆーた、おはよ。悠汰が朝ごはん作るなんてどうしたの?」
「まぁ気分がよくてな、雪、オレンジジュース飲むだろ?ほれ」
悠汰が不気味にも冷蔵庫から僕の大好きなオレンジジュースを取り出して、コップに注いでまでくれた。
え!!!?
きっもちわる!!!!
「ゆ、悠汰……?
ぼ、僕の好きな食べ物は?」
「オムライスとハンバーグ!オムライスはふわふわオムレツので、ハンバーグはデミグラスソースのやつだろ?」
「僕の嫌いな食べ物は?」
「ピーマンとしめじとしいたけと長ネギと練り製品と祭りで食べる生焼けのたこ焼き!だろ?」
なんてことだ。僕の情報を知りすぎている…。はっきり言おう。正直言って、今日の悠汰はさいっこーに気持ちがわるい。
まぁ朝ごはんは食べるけど。
席に着くと黒い僕とお揃いのエプロンをした悠汰が僕の前にシャケ、ご飯、お味噌汁、たくあんを出してきた。
お箸にはきちんと箸置き、そしてなによりランチョンマットが引いてある。
良妻賢母すぎんか???
いつも僕は大体ピザトーストで朝ごはんを終わらせるけど、悠汰が夜ご飯ばっかり担当してるせいで忘れてた。
こいつA型だった…。
まぁA型とは思えないほどA型要素ないけどな。
「悠汰、ありがと」
「いえいえ~、昨日のお礼だよ。イグアナ飼っていいって言ったし。」
それか。それがこの良妻賢母の理由か。
「もう俺昨日の夜、寝る前にイグアナの飼育用の小屋買っちゃったもんね~!めっちゃ高かったぁぁ、」
「いくらぐらいだったんだ?」
「んー、覚えてないや☆高すぎて☆」
悠汰は貧乏だが、なぜかイケメンでもないのにモデル業をやっているせいでかなり貯金はある。
あまり手をつけないようにしているのか、かなりの額らしい。
その貯金から出したのか…
そんなにイグアナが飼いたかったとは…
「明日には届くってよ。」
「何が?」
「小屋が。速達便で頼んでもらったから!」
「は?悠汰明日撮影って言ってたじゃん。誰が受け取るのさ。」
「俺以外にもこの家の住人いるじゃん」
「まさか、僕???
まじかよ~、どーせ重いんだろ??」
「まじ重いと思う。全面ガラス張りのめっちゃでかい水槽みたいなもんだから。
お前壊すなよ。高いんだから。
で、明後日イグちゃん連れてくるね~♡」
明後日イグアナくるのか~、ほんとにやだ。
イグアナってトカゲの仲間だろ?
見たことないけどやだな~、
「悠汰、イグアナってくさい?」
「んーん、草食動物は大抵フンとかの排泄物が臭い代わりにあんま体臭は臭わないんだよ。うさぎとかヤギがいい例な。」
たしかにうさぎもヤギも尿は臭いけど体はあんま臭わないな。へぇ、悠汰でもためになること言う時あるんだ。
「あっ。」
そんなことをだらだらご飯を食べながら話しながら、ふと時計を見ると、普段悠汰が「そろそろ行くかぁ~」と腰を上げる時間だった。
つまり始業の5分前。
そして制服も着てない上に寝癖も整えていない男二人がここに。
どうしようどうしよう。
「ゆ、悠汰!!!どうする!?」
「休もー、俺まだ寝れる気がするし。やっぱ1日くらいサボる日があったって、お前なんか先生に気に入られるほどの優等生なんだからバチなんてあたんねぇよ。」
「えぇ、悠汰は先生に怒られてばっかじゃん、どうすんのさ、」
「俺ぇ?俺はどうもしねぇよ。だってお前のおかげで俺今まで無欠席だから!」
「せめて無遅刻も足せると良かったんだけどね…」
まぁそこは致し方なしか。
結局悠汰の説得に負けて、僕は悠汰が熱を出して僕も風邪がうつったらしいので休むという旨を担任の先生に電話で伝えた。
ん?なぜ悠汰は伝えないのかって?悠汰の言葉が先生に信じてもらえるかはわからないからね。
悠汰、僕が優等生でよかったね。
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