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依頼書
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装備に錬金術で属性を付ける工程では魔力の注入が二度ほどある。
一度目は装備に魔力を通し、属性錬金が付与しやすくする下地作りの工程。
魔力で素材由来の余計な微属性を消し去る。
師匠はこの工程のことを地均《じなら》しと呼んでいる。
そして二度目は属性錬金の本番、魔力に乗せて目的の属性を付与する工程だ。
ポーション作りと比べて工程が増えているので難易度も跳ね上がる。
また必要魔力量も多くなるので、ポーション作りが出来たからと言って属性錬金が必ずできるとは言えない。
最初は勝手がわからずに、自分でも納得できる出来じゃなかったけど、散々練習して慣れた今は装備の隅々まで魔力を行き渡らせることがことが出来るようになって納得の仕上がりだ。
さらに訓練を続けていると、徐々に上手くいくようになり今ではハイクオリティー品も作れるようになった。
「属性付与の錬金でハイクオリティー品じゃと?」
「そんなの聞いたことないわよ!」
師匠もウィスダムさんも目を丸くして驚いている。
会心の耐火属性を付けた鎧はとんでもないことになっていた。
「全属性耐性じゃと!」
「なによそれ! それに属性耐性だけじゃなく物理耐性まで付いているから、単純に計算して60倍の防御力アップよ!」
「3000ゴルダで買った革鎧が王家の宝物庫で大切に保管されている鎧と同じ性能っておかしいぞ」
剣の方も水属性を付与したはずなのに、全属性攻撃が付与されおまけにクリティカルアップや攻撃力アップ耐久力アップまで付いている。
もちろん、アーキの限度を知らない幸運のせいである。
「普通、属性錬金て言ったら一個しか属性が付かないのが常識なのに、一体何個の属性錬金を付与してるのよ?」
「3000ゴルダの銅の剣が聖剣レベルの攻撃力じゃと! さすがにわしでも少しおかしいと思える性能じゃ」
もちろん、アーキの自重を知らない幸運のせいである。
ちなみにホムもノーマルクオリティー品ならほぼ100%の属性付与が出来るようになったので錬金術士としては一人前以上の褒められるべき結果だったが、ハイクオリティー品を作りまくっているアーキがすぐ傍にいたので陽の目が当たることはなかった。
「ホムはまだハイクオリティー品の錬金に成功していない。もっとがんばる」
やる気満々のホムであった。
*
錬金が成功したとリサさんとマイカ姉ちゃんに報告しにギルドへ行くと、装備を渡しながら驚かれた。
「一週間でも早いと思うのに、たった三日で属性錬金を覚えたのか?」
「アーキ君は化け物か?」
大騒ぎされると困るので、ハイクオリティー品が作れるようになったことは黙っていた方がいいな。
早速、リサさんはサラマンダーの依頼受注をすることにした。
「二度目だから、受注保証金とられるのが痛いな」
「まあ、今回は坊ちゃんがいるので負ける気がしない」
「じゃ、依頼を受注してくる」
「うん!」
リサさんが依頼票を取りに掲示板に行くと、異国風の派手な格好の男と依頼票の取り合いになった。
男は依頼票を譲らなかった。
「またお前か。シルバー空挺団にまたケンカを売るつもりか?」
「またって、なによ? 忙しいんだから、絡まないでくれる?」
男の名前はシルバー。
二人は知り合いというか、過去に因縁があったようだ。
シルバーはリサさんの相手にしようとしない態度に怒りをヒートアップさせる。
「バーナリアの冒険者ギルド所属のNo.3のチーム、シルバー空挺団に入れてやると言ったのに断っただろうが!」
「そんなこともあったわね」
「そのあとに報酬でケンカを売ってきたし!」
「あの、合同依頼の件か。あれはお前たちの言い分の方がおかしいだろ」
「なんでこっちのチームは12人もいるのに、2人だけのチームと報酬を同額で分配せにゃならん! 吹っ掛けすぎだろ! セコ過ぎる!」
「セコいのはどっちだ! 私たちは2人で倒せるといってるのに、報酬欲しさにギルド長を巻き込んで無理やり合同依頼にしてケンカを売ってきたのはどっちだよ! おまけに実力もないし!」
「なんだと!」
「お前たち全員で私一人分ぐらいの戦力しかないんだから本当は2:1でいいぐらいだわ」
「バカにするのはここまでだ。お前たちが逃げ帰ったというサラマンダーを倒して実力の差を見せつけてやる。今すぐこの依頼票をシルバー様に寄越せ!」
「これは渡せない。明日倒しに行くために、どれだけの準備をしたと思ってるのよ!」
「俺たちは今日倒しに行くんだよ! ギルドの規約第23条を知らないのか?」
「『討伐依頼は先に討伐に向かう者を優先とする』」
「知ってるじゃないか」
しぶしぶ、受注票を渡すリサさん。
「俺たちの方が先に倒せたら、実力が上と認めてうちのチームに入れよ」
「いいわ。ただし、そっちが勝手に条件を付けて来たんだから、私たちが先に倒したら何を貰えるの?」
「そうだな……飛竜の一匹でもくれてやるわ」
「その賭け乗るわ」
シルバーはサラマンダー討伐を受注し、4頭立ての飛竜艇で旅立った。
「あんな約束しちゃっていいの?」
「あんな奴に負けるわけないじゃない」
「でも勝負は直接の対決じゃなく、シルバーが先に倒したら向こうの勝ちなのよ」
「あっ……」
だが安心して欲しい。
アーキの関係者にケンカを売った時点で、アーキの幸運が襲い掛かることを!
運命はすでに決まっているのだ。
一度目は装備に魔力を通し、属性錬金が付与しやすくする下地作りの工程。
魔力で素材由来の余計な微属性を消し去る。
師匠はこの工程のことを地均《じなら》しと呼んでいる。
そして二度目は属性錬金の本番、魔力に乗せて目的の属性を付与する工程だ。
ポーション作りと比べて工程が増えているので難易度も跳ね上がる。
また必要魔力量も多くなるので、ポーション作りが出来たからと言って属性錬金が必ずできるとは言えない。
最初は勝手がわからずに、自分でも納得できる出来じゃなかったけど、散々練習して慣れた今は装備の隅々まで魔力を行き渡らせることがことが出来るようになって納得の仕上がりだ。
さらに訓練を続けていると、徐々に上手くいくようになり今ではハイクオリティー品も作れるようになった。
「属性付与の錬金でハイクオリティー品じゃと?」
「そんなの聞いたことないわよ!」
師匠もウィスダムさんも目を丸くして驚いている。
会心の耐火属性を付けた鎧はとんでもないことになっていた。
「全属性耐性じゃと!」
「なによそれ! それに属性耐性だけじゃなく物理耐性まで付いているから、単純に計算して60倍の防御力アップよ!」
「3000ゴルダで買った革鎧が王家の宝物庫で大切に保管されている鎧と同じ性能っておかしいぞ」
剣の方も水属性を付与したはずなのに、全属性攻撃が付与されおまけにクリティカルアップや攻撃力アップ耐久力アップまで付いている。
もちろん、アーキの限度を知らない幸運のせいである。
「普通、属性錬金て言ったら一個しか属性が付かないのが常識なのに、一体何個の属性錬金を付与してるのよ?」
「3000ゴルダの銅の剣が聖剣レベルの攻撃力じゃと! さすがにわしでも少しおかしいと思える性能じゃ」
もちろん、アーキの自重を知らない幸運のせいである。
ちなみにホムもノーマルクオリティー品ならほぼ100%の属性付与が出来るようになったので錬金術士としては一人前以上の褒められるべき結果だったが、ハイクオリティー品を作りまくっているアーキがすぐ傍にいたので陽の目が当たることはなかった。
「ホムはまだハイクオリティー品の錬金に成功していない。もっとがんばる」
やる気満々のホムであった。
*
錬金が成功したとリサさんとマイカ姉ちゃんに報告しにギルドへ行くと、装備を渡しながら驚かれた。
「一週間でも早いと思うのに、たった三日で属性錬金を覚えたのか?」
「アーキ君は化け物か?」
大騒ぎされると困るので、ハイクオリティー品が作れるようになったことは黙っていた方がいいな。
早速、リサさんはサラマンダーの依頼受注をすることにした。
「二度目だから、受注保証金とられるのが痛いな」
「まあ、今回は坊ちゃんがいるので負ける気がしない」
「じゃ、依頼を受注してくる」
「うん!」
リサさんが依頼票を取りに掲示板に行くと、異国風の派手な格好の男と依頼票の取り合いになった。
男は依頼票を譲らなかった。
「またお前か。シルバー空挺団にまたケンカを売るつもりか?」
「またって、なによ? 忙しいんだから、絡まないでくれる?」
男の名前はシルバー。
二人は知り合いというか、過去に因縁があったようだ。
シルバーはリサさんの相手にしようとしない態度に怒りをヒートアップさせる。
「バーナリアの冒険者ギルド所属のNo.3のチーム、シルバー空挺団に入れてやると言ったのに断っただろうが!」
「そんなこともあったわね」
「そのあとに報酬でケンカを売ってきたし!」
「あの、合同依頼の件か。あれはお前たちの言い分の方がおかしいだろ」
「なんでこっちのチームは12人もいるのに、2人だけのチームと報酬を同額で分配せにゃならん! 吹っ掛けすぎだろ! セコ過ぎる!」
「セコいのはどっちだ! 私たちは2人で倒せるといってるのに、報酬欲しさにギルド長を巻き込んで無理やり合同依頼にしてケンカを売ってきたのはどっちだよ! おまけに実力もないし!」
「なんだと!」
「お前たち全員で私一人分ぐらいの戦力しかないんだから本当は2:1でいいぐらいだわ」
「バカにするのはここまでだ。お前たちが逃げ帰ったというサラマンダーを倒して実力の差を見せつけてやる。今すぐこの依頼票をシルバー様に寄越せ!」
「これは渡せない。明日倒しに行くために、どれだけの準備をしたと思ってるのよ!」
「俺たちは今日倒しに行くんだよ! ギルドの規約第23条を知らないのか?」
「『討伐依頼は先に討伐に向かう者を優先とする』」
「知ってるじゃないか」
しぶしぶ、受注票を渡すリサさん。
「俺たちの方が先に倒せたら、実力が上と認めてうちのチームに入れよ」
「いいわ。ただし、そっちが勝手に条件を付けて来たんだから、私たちが先に倒したら何を貰えるの?」
「そうだな……飛竜の一匹でもくれてやるわ」
「その賭け乗るわ」
シルバーはサラマンダー討伐を受注し、4頭立ての飛竜艇で旅立った。
「あんな約束しちゃっていいの?」
「あんな奴に負けるわけないじゃない」
「でも勝負は直接の対決じゃなく、シルバーが先に倒したら向こうの勝ちなのよ」
「あっ……」
だが安心して欲しい。
アーキの関係者にケンカを売った時点で、アーキの幸運が襲い掛かることを!
運命はすでに決まっているのだ。
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