ド平凡少年は異世界テンプレを知らない

琴浦まひる

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第1章 風の大都市

たまには風通しをよくすべし

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地図を広げて魔道書店の位置を確認する。

「ここからちょっと歩くんだな。じゃあちょっと休憩したら行こ。」

魔道書かぁ、そういやオタクの鳳凰院くん(※3話参照)もよく教室でそういうの読んでたな。

『ボンタロー殿、見て欲しいでござる!これこそイギリスでかつて使われていた本物の魔道書でござるよ!!週末に現地でわざわざ買い付けに行った甲斐があったというもの。値段もたったの1000万円!これで異能力が使えるようになればきっと何処からともなく同じ力を持つ美少女が現れてモテモテハーレムが(以下略』

鳳凰院くんって金持ちで将来高身長になりそうなイケメンだったのに早口長文の喋り方と謎の口調と思考のせいで奇跡的にモテなかったんだよな……。
あと意味はわかんなかったけどあいつの口癖で面白かったのは、

「ステータスオープン!だっけ」

その瞬間、目の前にホログラム画面のようなものが現れる。そして、ザザっという機械的な音の後俺の名前と共にいくつかの数値とグラフが表示された。
こんなものこの世界で生まれてから一度も見たことがないし、鳳凰院くんが言ってたセリフと同じということはつまり神が俺に与えた能力。これを使えばきっと色々なことがわかって便利なのだろうけど、それは奴の思う壺になりそうで嫌だ。

なんとか画面を消そうとチョップしてみたけれど空気を切るだけでなんの効果もない。

「閉じろ閉じろ閉じろ!!!」

腹が立ったので適当に言ったらプツッと画面が消えた。これでええんかい!


ふと騒がしくなった気がして大通りの方を見ると何人かの人間が俺の方を見ていた。しまった、大きな声出したから不審がられてる。
俺は地面に置いていた地図をつかんでそそくさと逃げるように魔道書店へ向かった。


「はあ、はあ、ここか。」

魔道書店は他の店よりかなり年季の入った木造の建物だった。他の店が一階につき一店舗なのに対してここは入り口が一階にしかなく、三階すべてが書店になっているようだった。扉が閉まっているので少し入るのに勇気がいる。

「お、お邪魔しますぅ。」

中に入ると、少し埃っぽい独特の匂いがした。一階から三階までが一つの空間になっていて下から上までびっしりと本が詰められている。
前世ではあまり本屋に行かなかったからちょっとワクワクしてきた。
店主はどんな人だろうか?魔道書とか全然わからないしアドバイスしてくれる優しい人だといいんだけど。

「いらっしゃいまー」

のんびりとした声が聞こえたと思ったら頭上から俺より少し年上くらいの女の子が逆さまに降ってきた。そしてそのまま着地することはなく俺のまわりをふわふわ浮いている。パンフレットに箒は空を飛ぶための魔道具だと書いていたから体一つで飛んでいる人間も存在しているとは驚きだ。

「人って箒とかなくても浮けるんだ……。」

「いいや、あたしは人間じゃなくて魔女だから。」

魔女って魔法を使う女の略だよな?人間とどう違うんだろう。

「坊やは魔女や魔法使いを知らない?」

頷く俺に

「魔女や魔法使いは元は人間だったけど、いろんな要因で不老不死を手に入れてしまって人の輪を外れた存在の事だよ。我々のほとんどはあまりにも生きてきいる時間が長くて得意な属性を極めてしまうんだ。あたしの場合はもう風と一体化してるようなもんなのさ
。」

なるほど、魔法を極めると魔道具の補助の必要がなくなるのか。

「あたしは1000年前からここで魔道書を売っている。中央市場で最も古い店を構えるウチを観光がてら訪れる人が多いから君もそのクチだと思ったんだけどなぁ。」

「俺この間初めて魔法検査を受けてそれでスザンナさん……聖エメラルディア教会のシスターさんにここで本を買うといいって教えてもらったんだ。」

「スザンナ……あーあの女ここ100年集会に来ないと思ったら、ふふっシスターって、あはは似合わなー。」

この人スザンナの知り合いなんだ。確かにノリが良さそうな所とか似てるかも?

「面白いこと教えてくれたし本はタダでいいよ。じゃ、まずそこの椅子に座って目を閉じて。」

座って目を閉じるって書店でやらない動作第1位だろこれ。
疑問半分、好奇心半分で俺は言われた通りにする。

「よしよし、じゃっ始めるよ。何が起きても私がいいっていうまで目を開けないでね。」

何が起きてもって何!?ねえ本当に本選ぶだけなんだよね?
そして店主はのんびりした声で呪文を唱える。


1000年より汝らに仕える魔女、ペリエが求む


すると、突然どこからともなく突風が吹く。
うえぇ横の毛が口に入っちゃったよぺっぺっ。
ガタガタと四方八方から何か……おそらく本が大量に崩れる音がする。そしてぱったぱったと紙が舞う音も聞こえてきた。
俺これ死んだりしない?車に轢かれて死ぬのも嫌だったけど本に押しつぶされて死ぬとかもっとやだよ。

魔道書よ、この者にその叡智を与えたまへ


瞼を閉じていても分かるほどの眩しい光に包まれる。その光が収まると、膝の上に本一冊分の重みがあることに気がついた。

「目、開けていいよ。」

ぱちりと目を開けるとそこには一冊の、年季の入った国語辞典のようなサイズの本があった。











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