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第1章 風の大都市
噂話は風下で聞くに限る
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魔道書はくまさんバッグに入れずにもらった栞を挟んで腕にかかえることにした。ちょっと重い本だけど、この都市に来てからずっとテオを抱っこしていた俺にはむしろしっくり来る。
「本当に無料でいいんですか?一応お金はあるんですけど。」
「うーんその本大体一般男性の生涯年収くらいの金額は余裕で越えるんだけど払える?」
「タダで本をくれるなんてー店主さんはなんてお優しく心の広い方なんだーダイスキー!」
「あっははすっごい棒読み。じゃっ、またねースザンナに会ったらペリエが会いたくてしくしく泣いてたって伝えてて。」
すっごい笑顔で手を振る店主に見送られて魔道書店から出ていく俺の後ろ姿をじっと見つめていた店主はぼんやりとした顔でつぶやく。
「やっぱ店に置くなら普遍的な本に限るわー。世界トップクラスで貴重な本に限って買い手がつかないんだから。」
そしておもむろに立ち上がりどこからか大量の書類を取り出す。
「あの子は普通の子だけど例の魔道書の持ち主になったからには会で共有しとくべきなんだろうなぁ、あーめんどくさ。なんか腹立つし報告書長くなるし魔力のことはだんまりでいいよねぇ。これは後で絶対面白いことになるぞぉ。」
にやりと含み笑う魔女の姿を唯一見ていた叡智の結晶達は、ただ黙するだけである。
よしよしよーし!お使い完了だ。疲れたしあとは帰って寝よう。
ぺっとんぺっとんと下手くそなスキップをしながら坂を登る俺の耳に偶然不穏な会話が入ってくる。
「……セレスのガキの……はどうなった?」
「うまくい………ますぜ!泣き……助……聞こえやしやせん………な……」
セレス?まさか……
声は路地裏から聞こえる。俺はさっと付近の店の入り口で商品を眺めるふりをしながら聴力を必死に働かせた。
「そりゃあただでさえ人々に忘れられた屋敷の更に地下なんだから聞こえる訳ねぇっつーの」
ギャハハと下品な声が耳に痛い。
つまりプリオルの妹はどこかの屋敷の地下……
「それにしても地下に儀式場があるって昔の金持ちの考えることは不気味っすね。」
「しっ、もしそれを聞かれたら俺らの首が物理的に飛ぶぞ。」
「おっとこりゃいけねぇや。じゃあまたあのガキの叫び声でも聞きに行きますかねぇ。」
男は視界の端でナイフをすりすりと手で擦り、そしてもう1人の男と共ににやにやと気持ち悪い笑いを浮かべながら路地の奥へと消えた。
胸糞悪い会話に、まだ子供の脳は会話から先の展開を連想する事を拒絶したいのか吐き気を催す。
この事を誰かに報告しに行くか、いや屋敷の場所がわからない今この男達をつけて場所の把握をするのが先決だ。
「うう、あいつらナイフ持ってたし俺見つかったら死ぬかも。でもここで動かなかったら俺一生この瞬間を思い出すんだろな……。」
気合を入れるために頬をパチンと叩くと注目されそうなので片手でモミモミする。
「よし、頑張るぞ。」
そうして俺の姿もすぐに薄暗い路地に吸い込まれていった。
「本当に無料でいいんですか?一応お金はあるんですけど。」
「うーんその本大体一般男性の生涯年収くらいの金額は余裕で越えるんだけど払える?」
「タダで本をくれるなんてー店主さんはなんてお優しく心の広い方なんだーダイスキー!」
「あっははすっごい棒読み。じゃっ、またねースザンナに会ったらペリエが会いたくてしくしく泣いてたって伝えてて。」
すっごい笑顔で手を振る店主に見送られて魔道書店から出ていく俺の後ろ姿をじっと見つめていた店主はぼんやりとした顔でつぶやく。
「やっぱ店に置くなら普遍的な本に限るわー。世界トップクラスで貴重な本に限って買い手がつかないんだから。」
そしておもむろに立ち上がりどこからか大量の書類を取り出す。
「あの子は普通の子だけど例の魔道書の持ち主になったからには会で共有しとくべきなんだろうなぁ、あーめんどくさ。なんか腹立つし報告書長くなるし魔力のことはだんまりでいいよねぇ。これは後で絶対面白いことになるぞぉ。」
にやりと含み笑う魔女の姿を唯一見ていた叡智の結晶達は、ただ黙するだけである。
よしよしよーし!お使い完了だ。疲れたしあとは帰って寝よう。
ぺっとんぺっとんと下手くそなスキップをしながら坂を登る俺の耳に偶然不穏な会話が入ってくる。
「……セレスのガキの……はどうなった?」
「うまくい………ますぜ!泣き……助……聞こえやしやせん………な……」
セレス?まさか……
声は路地裏から聞こえる。俺はさっと付近の店の入り口で商品を眺めるふりをしながら聴力を必死に働かせた。
「そりゃあただでさえ人々に忘れられた屋敷の更に地下なんだから聞こえる訳ねぇっつーの」
ギャハハと下品な声が耳に痛い。
つまりプリオルの妹はどこかの屋敷の地下……
「それにしても地下に儀式場があるって昔の金持ちの考えることは不気味っすね。」
「しっ、もしそれを聞かれたら俺らの首が物理的に飛ぶぞ。」
「おっとこりゃいけねぇや。じゃあまたあのガキの叫び声でも聞きに行きますかねぇ。」
男は視界の端でナイフをすりすりと手で擦り、そしてもう1人の男と共ににやにやと気持ち悪い笑いを浮かべながら路地の奥へと消えた。
胸糞悪い会話に、まだ子供の脳は会話から先の展開を連想する事を拒絶したいのか吐き気を催す。
この事を誰かに報告しに行くか、いや屋敷の場所がわからない今この男達をつけて場所の把握をするのが先決だ。
「うう、あいつらナイフ持ってたし俺見つかったら死ぬかも。でもここで動かなかったら俺一生この瞬間を思い出すんだろな……。」
気合を入れるために頬をパチンと叩くと注目されそうなので片手でモミモミする。
「よし、頑張るぞ。」
そうして俺の姿もすぐに薄暗い路地に吸い込まれていった。
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