ド平凡少年は異世界テンプレを知らない

琴浦まひる

文字の大きさ
19 / 35
第1章 風の大都市

昔話絵本 エメラルディアと悪いおおへび

しおりを挟む
昔々のセレスは、大きなもりの中に小さな集落があっただけでした。

集落の中心には今のセレス城と同じ真っ白なお城がありましたが、今よりもずっとずーっと小さいお城でした。

そのお城にはエメラルディアという緑の目をしたおてんばなお姫さまがいて、毎日のように平民の格好をしては集落のみんなとおしゃべりをしたり、気まぐれにお仕事を手伝ったりしていました。

集落にはのんびりとした時間が流れ、いつもみんな笑顔で幸せそうでした。
しかしある日、そんな日々を揺るがす恐ろしいことが起こりました。

畑の作物が一夜にしてほとんど枯れてしまったのです。畑の土はガサガサで栄養も全く感じられませんでした。まるでそこだけ命をまるごと奪われてしまったかのようです。

慌て嘆く住民にエメラルディアはいつもと変わらない笑顔で安心してよ、と言って呪文を唱えました。

すると、白い光とともにあっという間に土はふかふかになって、枯れかけていた作物は何事もなかったかのようにみずみずしく葉を天に向けていました。

住民達は涙を流しながら大喜び。
既に枯れていた植物は治せないのごめんね。と謝るエメラルディアにみんな口々にいいんだよ、ありがとう。とお礼を言います。

そんな喜びも束の間、突然当たりが闇に覆われ、エメラルディア達の前に集落ごと丸呑みできそうなおおきくて真っ黒なへびが現れました。へびは不機嫌そうにきりきりと怒鳴りつけます。

せっかくこの地の生命力を奪ったのにお前達は絶望するどころか元に戻してしまった。このような屈辱は許されぬ、みんなまとめて食ってしまおう。

地をぬるぬると這うような恐ろしい声と言葉に住民は恐怖でその場から動けなくなってしまいました。でも、1人だけ希望を胸に灯して堂々とへびの前に立った少女がいました。

エメラルディアです。

彼女が再び呪文を唱えるとなんとへびの周りで風がぐるぐると渦を巻き始めたではありませんか。

エメラルディアは大きく手を広げてへびに言い放ちます。

ここは私の集落よ、絶対に誰一人貴方に食べさせないわ。わるいへびさん、あっちへ行って。

そうして巨大な竜巻に巻き込まれた蛇はぐるぐると目を回して動かなくなってしまいました。

エメラルディアはへびに近づいて封印の魔法をかけます。

姫さま、このへびは殺さないのですか?

この子は確かに悪いへびさんだけど、いつかはいい子になれる日が来るかもしれないでしょう?だからそれまで森で眠っていてもらいましょう。

住民たちはエメラルディアの慈悲深さに感動して、彼女が亡くなった後もこの功績が世界から忘れられないように、集落で最も貴き聖女エメラルディアとして祀ることにしました。

聖エメラルディア教会にはおてんばなお姫さまが静かに眠っています。彼女はきっと今でもわたしたちを優しく見守ってくれているでしょう。




















すごく……模範的な優しさと勇気を伝えるストーリーだった。歴史にしてはあまりにも都合のいい物語になっているからきっとそこそこ脚色されているんだろうな。
というか言葉がちょくちょく難しくて子供の口だと詰まりまくったんだけど、これ本当に子供向けの絵本なのか?

とりあえず明日スザンナに質問する為にいくつか疑問をピックアップして今日は寝る事にした。

その夜、金髪で緑の目をした少女が倒れた大蛇に自分の血を垂らしているという奇妙な夢を見た。そしてその場面は急にぐるりと変わり、何人かに囲まれた、同じく金髪だがこちらはとても幼い少女が血を垂れ流している様子に切り替わる。その血が垂れた先は真っ黒でよく見えないが、薄明かりの反射か、鱗の様なナニカがキラリと光ったことだけは印象に残っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...