ド平凡少年は異世界テンプレを知らない

琴浦まひる

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第1章 風の大都市

順風満帆

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あれだけの人数が動いているならもう大丈夫だな。
けれどなんだかモヤモヤが晴れなくて無意識に手元の魔道書をぱたぱたと開閉していた。

『目がチカチカ、やめて。』

魔道書に目なんてないだろ、と思いつつもなんだか可哀想になったのでそっと閉じておいた。

「魔道書を手に入れられたのね。」

また突然聞き覚えのある声がした。スザンナさんって絶妙に死角から現れるからちょっとびっくりするんだよな。

「うわっスザンナさん、もしかしてずっと無視しちゃってました?」

「ううん、今瞬間移動してきたの。」

「本当にできる人いたんだ……。」

「冗談よ。普通に今扉開けたところ。」

ツボにハマったのか口に手を当ててひたすら笑うスザンナは、魔道書の表紙を目にした途端そのポーズのままスッと目を細める。

「そう、その子なの。」

彼女は何か呟いた気がしたが、小さな声でよく聞き取れなかった。

「そういえば荷物はちゃんと届きましたか?市場はすごく楽しかったんですけどそれだけが気がかりで。」

「ばっちりよ、ありがとね。」

「あと、魔道書店の店長さんがスザンナさんにまた会いたいって。」

「ところでジョンくんはまだ教会の中は全部まわってないんじゃない?」

「はい、そうですね。大聖堂もはじめに行ったきりでだいたいベッドと中庭の往復でしたし。」

すごい、堂々と店主さんについての話題無視してきたよこの人。店主さんの態度もそうだけどこの2人なんだかややこしい事情がありそうだしこういうのは触れないに限るね。

「だったら明日私が案内してあげるわ。今白魔法の使い手が通常業務を行えないせいで何日か教会を閉めることになっちゃって、私も暇なのよね。」

「いいんですか!嬉しいです。」

実は都市のガイドブックにあった聖歌隊や聖獣見学がこっそり気になっていたのだが、聖獣の欄の画像を見ているとテオが物凄く不機嫌になったので断念していた。聖獣を見るならテオがいない今がチャンス!

それに、当初の予定にあった聖エメラルディアについての話を聞くこともできそうだ。

「それでは明日迎えにくるから、それまでこれを読んで暇つぶしをするといいわ。」

スザンナさんは、緑色で銀の装飾が施された絵本らしきものを俺に手渡す。

「これは、」

「セレスの歴史をわかりやすく物語にした絵本よ。教会の人が書いたものでね、子供達に大人気なのよ。内容の補足は明日案内しながらやるからとりあえずは流れだけ頭に入れて置いて。」

絵本か、この世界に来てから両親に文字の勉強はさせてもらったけど娯楽本なんて買ってもらったこともなかったな。
これを読めば聖エメラルディアについて何かわかるだろうか?

「ありがとう、また明日。」

「ええ、またね。」



スザンナさんが去って静かになった部屋がちょっとだけ寂しくて、せっかくだから絵本を音読してみることにした。

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