ド平凡少年は異世界テンプレを知らない

琴浦まひる

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第1章 風の大都市

無憂無風

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俺は気が遠くなりながらも明るくなっていく空をを見つめることに集中する事でなんとか意識を保つことに成功した。
何回も見覚えのある天井と出くわすわけにはいかないからな!
テオは俺たちを下ろすとまた猫の姿になる。
「それにしてもお前その格好どうにかならんのか。」

テオの指摘でみんなが一斉に大蛇の方を見る。

「なんじゃ?確かに手とか足とかは普段の体にないから違和感はあるが、ワシの肉体はいつだってどこに出しても恥ずかしくないじゃろ。」

「肉体美の話じゃなくて服だよ。」

「ふくぅ?要らん要らん、そんな邪魔そうな布を被るなど正気ではないわ。」

「だったらテオみたいに姿を変化させることはできないの?ジョンにとって無害と判定される姿ならなんでも大丈夫なはずだけど。」

「それならまぁ、やってみるか。」

大蛇が呪文を唱えると、少女の体がぐにゃりと歪む。
テオみたいにパッと変身しないせいで蛹の中を見せられている気分だ。
しばらくぐにゃぐにゃしているうちに形が定まってくる。
そして、コーンスネークくらいの小さな蛇が現れた。

「可愛い!もふもふじゃないけどこれもいいね。」

「俺様の威厳……」

「小蛇ちゃんね、悪くないわ。」

「そっそうか!?」

プリオルと俺で全然反応違うじゃん。

「それと私もどうにかした方がいいわね。血はシミで分かりにくくなってるとはいえ、公衆を歩ける臭いじゃないわ。」

プリオルはそう言いながら頭上に水を召喚しバシャバシャと自分を洗い流している。
その後は緑魔法で風を吹かせて全身ドライヤー、魔法って本当便利だな。

「帰るぞ、妹の方を早くベッドで休ませてやれ。」

箒を操縦できるのがプリオルだけなため、歩きながら城を目指す俺たち。
猫を抱き抱えて首に蛇を巻く俺と妹を背負った有名人のお嬢様。

それはもう目立つ目立つ。
けれど、静かに眠っているタルファちゃんを気遣っているのか、誰も話しかけず笑顔で手を振るだけにとどめていた。
本当に優しい住民だ。この人達が犠牲にならなくて良かった。

城に着くと、使用人達が素早くタルファちゃんを回収し、彼女の部屋へと連れて行く。
同時に俺たちも客室へと案内された。

「仕事が早いね。」

「一応魔法で連絡を入れておいたのよ。貴方たちも沢山休んで。客人なのに随分と巻き込んでしまったもの、本当に申し訳ないわ。」

「プリオルは?」

「私は事後処理、と言いたいところだけどさっき資料を取りに行ったら待ち伏せしていた担当医にストップをかけられちゃったのよ。だから私もしばらく休み。」

ナイスドクターストップ!事後処理なんて大人にやらせとけばいいんだよ。
「暇だと不安になるから私としては仕事か礼拝をしておきたいのだけれどね。」

「じゃあ休みの間なにやるか考えといてよ!また明日プリオルに会いに行くから。」

プリオルはきょとんとしている。

「もしかして私を遊びに誘っているのかしら?」

「そうだけど。」

彼女は更に戸惑いの表情を浮かべる。

「あ、いえ、もちろんよ。……ごめんなさい、私誰かと遊びに行くなんてことほとんどしてこなかったから驚いちゃって。」

照れ臭そうに笑いながらプリオルは言う。

「そういえば観光全然してないのよね。なら私がセレスおすすめポイントを紹介するわ!よし、こうなったら今からパンフレットを作らなきゃ。」

「えっ、ちょ、今から休むんじゃないの?」

走り去る彼女を追いかけようとする俺をテオが止める。

「娘の顔を見たか?あんなにも楽しそうにしておるのだ、水を差してやるな。」

それもそうだね、と答えながら自分に割り当てられた部屋に入る。





部屋には部屋着が用意してあったので早速着替えることにした。籠には俺の服と小さな女の子の服、そしてなんと猫用の服まで用意されていた。

「テオ!これ着てよ。」

「いや、着ない。」

「えー、じゃあ小蛇ちゃん先に着て。」

「嫌、着ない!小蛇じゃないのじゃ!」

2人ともわがままだな。

「猫に服を着せるな。」

「蛇に服を着せるな!」

いや、子蛇ちゃんにいたっては部屋に入ってから完全に人の姿に戻ってるじゃん。

「ほら、小蛇ちゃんの部屋着手触りいいよ?プリオルってばいつの間にここまで指示したのかなぁ?」

「エメ……プリオルが用意したのか?」

「そりゃあこの城の関係者で人型の君のことを把握している人といえばプリオルくらいでしょ。」

「じゃあ着る。」

ちょろい、プリオル関係になると信じられないくらいちょろいぞこの蛇。

ベッドに座った俺たちはたわいも無い話をいくつかした後、ふと俺は疑問に思ったことを口にする。

「子蛇ちゃんって名前ないの?」

「無い。名前を呼びあうほど関係を築いた相手など居なかったからな、上位存在ならよくある話じゃ。」

ふうん、でも人前で蛇って呼ぶのもかなり違和感あるよな。これからは必要になってくるはずだ。

「だったら俺がつけていい?」

「別にどうでも良い……いや、カッコいい名前にしろ!周りの人間が恐れ慄く様な名がベストじゃ。」

急にノリノリになるじゃん。いいね、俺そういうの好きだよ。

「我の名をテオと略すお前にちゃんとした名前がつけられるのか?」

「大丈夫、大丈夫!」

蛇、スネーク、黒、破壊……

「ブラちゃn」

俺が言い終わる前にべしーんと頬が思いっきり打たれる。

「あ、あれ?俺に危害は加えられないんじゃなかったの?」

「正当な対応だからな、問題ない。だがまあ、クク、あの破壊の使者が、ははは、ブラちゃん……無理だ耐えられん。」

「お前らぁ、もういい明日他の人につけてもらうことにするのじゃ。」

そう言うと、子蛇ちゃんは隣のベッドで体を丸めてすやすやと眠ってしまった。

「俺たちも寝るか。」

思った以上に拗ねてるらしい少女に、俺たちはちょっとバツの悪い顔を見合わせながら彼女と同じように少し遅い就寝をすることにした。



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