ド平凡少年は異世界テンプレを知らない

琴浦まひる

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第2章 空飛ぶ家

指輪到着!発動せよ風の魔法

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「では第一案を改めて確認して行こう。」

俺はデカめのスケッチブックを取り出す。

「ビジュアルは庭付きで三階建ての家とします。」

俺は洋風の建物を指差す。
俺は絵がそんなに上手くないので完全に長方形の豆腐に屋根をつけたようなビジュアルになっているが、そこは仕方ない。

部屋はのちに住人が増えた時を考慮して少し多めに作ってある。三階はテオの大きさを考えてワンフロア一部屋で天井を少し高めに作ってある。三階へ直接飛んで入ることも可能だ。

「庭の広さは結局どのくらいになったのかしら?」

プリオルがあくびをしながら質問する。みんな交互に仮眠を取っていたから全員少しずつ知らないところがあるんだよな。

「家庭菜園くらいの畑と池が設置できてテオがドラゴンになってものびのびと動き回れるくらいかな。」

「思ったより広いわね。これが実現すれば表彰ものの歴史的快挙よ。」

「いや表彰されたら観光地になっちゃうじゃん。普通に暮らしたいからステルス機能もつけたいなって思ってる。」

ちなみに池はテオが水浴びできるくらいの広さを想定している。ゆくゆくは魚も育ててみるつもりだ。

「この建物の下の構造結構大きいですね。」

タルファちゃんがスケッチブックを指差す。

「ここには飛ばすための動力やいろんなライフラインを設置したからね。」

「それだけではない、地下室もあるのじゃ!」

ブラッドは本能的に暗いところを好むらしいので地下室を作ってあげることにした。それに地下室ってなんかカッコいい感じするしね。

「と言ってもこの魔法をずっと行使するための機会を作ってもらわないと話にならないんだよね。俺こういうのは完全に専門外だから飛行系の魔法に詳しい人に聞かないと。」

「うちは確かに空を飛ぶ魔法に関しての専門家は沢山いるけど、これ下の部分はカラクリ……みたいなものよね。そういうふうにシステム化する技術者は少ないのよ。」

「そうだな、これを実現させるには隣の大都市マシナの技術者でやっと手が届くレベルかもしれぬ。」

マシナ……少しだけ聞いたことがある。魔道具の商人が村に来た時、商品のほとんどはマシナで発明されていると聞いた記憶がある。

「じゃあまずは魔法だけこっちで作成しておいてその資料をマシナってとこに持っていけばいいのか。」

「そうね、けど魔法の確立にも時間がかかるわね。家が完成するまでに何年かかるか……」

「悩む必要はないわ。」

「!?」

いつのまにか扉が開いており、そこにはとんがり帽子を被ったシスター服の女性がにこにことした笑顔で立っていた。

「スザンナさん!どうしてここに?」

「ジョンくんの指輪が思ったより早くできたからお届けに。それよりも巨大な物体を浮遊させ続ける魔法はその魔道書がよく知っているんじゃないかしら?」

いつの間にか瞬間移動していたスザンナさんが部屋の棚に置いてあるおれの魔道書を手に取る。

「そいつが?」

「ええ、けどまずこの指輪をつけてほしいの。性能の確認ができるまで帰れないのよね。」

「そういえばこの指輪を作ってる魔道具研究所ってどこにあるんですか?」

「マシナよ。本当は片道だけで徒歩1ヶ月かかるんだけどこの大都市の配達人は飛行魔法のプロフェッショナルでね。3日で往復できるのよ。」

「3日でもう着いてるって作る時間ほぼなかったんじゃないですか?」

「それがたまたまジョンくんのように全ての属性が互角の強さを持つ装置を作る研究をしていた子が研究所にいたらしくて。それを応用してあっという間にこの指輪を作ったみたいよ。」

それってすごい天才なんじゃないか?そんな子に偶然担当してもらえるなんておれはなんで運がいいんだ。ありがとう神さ……

「うわぁぁぁぁ!しないしない神に感謝なんてしない!!」

「ふははジョンが壊れたのじゃ、頭を地面に打ち付けるのは楽しいのか?」

「ぜんっぜん!!」

ごほん。気を取り直して、

「指輪つけますね。」

左手に赤青黄緑、右手に白黒……だっけ?

「よし,付け替え完了。」

「早速何か外してみて。」

スザンナさんに言われた通り緑の指輪を外してみる。

「あっ全然平気だ。」

少しだけ違和感があるけど、前に比べたらあってないようなものだ。

「よし、これで私のシスターとしての本当のお仕事ができるわね。まずはその本を浮かせてみて?」

そういえばスザンナさんって初めて魔法を使う子供たちを指導するのが仕事なんだっけ。
俺は意識を集中させて手を魔道書に向け、呪文を唱える。

風よ、この魔道書を浮かせよ


すると指先から風が生まれ、魔道書がふわりと舞い上がる。

「やった!……ってあれ?」

指先から放たれる風は徐々に勢いを増し、暴風と化する。
スケッチブックもおやつのゴミも枕も全て巻き込んで一つのミニ竜巻となってしまった。

「ちょっと、これどうやって止めるの!?」

「手を下ろして風のイメージを脳内から消すのよ。」

パニックになる俺にスザンナさんが優しく指導する。
なんとか止めることに成功した俺は勢い余って床に尻餅をつく。
部屋はぐちゃぐちゃでとてもじゃないけど今日は寝れなさそうだ。

「清掃係を入れるから問題ないわ。」

やっちゃった感溢れる表情をする俺にプリオルがフォローを入れてくれる。申し訳ないから後で最低限の片付けはしておこう。
俺はまず舞い上がってしまった魔道書を拾ってページが破れていないかをチェックする。
本を開くと、

『緑魔法基本の全て。』

というタイトルとともに今までにないほど何ページにもわたってびっしりと解説が書かれている。
風に巻き上げられてご立腹なのか死ぬ気で頭に叩き込めという圧を感じる。

「全属性である程度使えたデータを提出しないといけないの。申し訳ないけど出力が調節できるようになるまで特訓に付き合ってもらうわ。」

スザンナさんがすごくイキイキとしている。

「魔法が使いこなせれば家の計画もかなり進むと思うわ。頑張りなさい。」

「よーし頑張るぞ!」

みんなの応援を背に俺のやる気はメラメラと燃える。

そしてその数時間後、


俺は完全に燃え尽きることとなる。



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